「脾臓、右腎臓、胆嚢、右精巣……割と生きていける程度に内臓が無いねコイツら」
「へー。内臓が無いぞ〜ってヤツ?」
「悟、それ小学校で卒業するネタだよ? 内臓の喪失か。当然私も先生もそんな攻撃はしていないとなると————」
「内臓を 捧げる縛り いう事か? 急造の 鉄砲玉が やりそうな 杜撰な手口 ちゅう感じやね」
「
「
「これ以上のことは高専で調べないと何とも。補助監督呼んで検死に回してもらうしかないね」
そんな会話を小型の帳の中で行うのは、最強コンビと直哉、甚爾という、今回の会敵にてオフェンスを務めた面々
その一方で、結界を張り手堅く星漿体を護衛していた灰原とその相棒の七海は、目を覚ました護衛対象2名から現状の聴取を行っていた。
「襲ってきた連中は、コレが初めてという事ですが、今まではどの様に生活を?」
「理子様のご両親は早くに亡くなられて、それ以降は私がお世話を……」
「なるほど。家族2人暮らしだったんですね。……じゃあ2人を護衛しつつ、高専に向かう感じで良いのかな?」
「そうですね……理子様はどうされますか?」
「妾は……その……」
と言い淀む星漿体『天内理子』の視線の先にあるのは、戦闘の余波で完全に崩壊した『ホテルだったもの』。
そこにある圧倒的な破壊の痕跡は、基本的に天真爛漫ポジティブ思考な理子を以てしても、恐怖の念を抱かざるを得ないもので。
しかし、それでもなお、溢れる思いというものは、止められない。
「……学校、最後に行きたかったな」
そんな、ごく当たり前の女の子としての呟き。それを聞いて少しばかり顔を伏せる七海と灰原の心中は、今から自分達が護衛し、そして抹消する対象に対する憐憫に満ちている。
が、そんな湿っぽい空気に茶々を入れるバカが2人。
「よし、それなら学校に行こうか理子ちゃん」
「天元から『願いは全て叶えろ』とか言われてるしな! 行くか学校!」
「夏油先輩、五条先輩、そうは言いますが……」
「固いなぁ七海は、俺と傑だけでも充分だってのに、お前等まで居るんだしヘーキヘーキ」
「それに、今悟が言った通り、そもそも天元様からの命令でもある。理子ちゃんが望むのなら叶えるべきじゃないかな? ……護衛方法は幾らでもある訳だしね」
そう告げて、夏油が目配せする先にいるのは、護衛チームにおける紅一点。
「あん? 私? 何企んでんだクズども」
そう告げて溜息を吐く家入硝子の表情はしかし、どこか楽しげな色を浮かべているのだった。
* * * * * *
それからしばらく。天内理子が通う『廉直女学院 中等部』の2年生は、昼前に教師から受けた連絡の件で持ちきりだった。
「出資者の人が視察に来るってどんな感じなんだろうね!」
「スポンサーって事でしょ? ウチ私学だから献金とかかな?」
「真面目に勉強しろって言われても緊張するなぁ……」
「視察に来る人滅茶苦茶お嬢様らしいよ?」
「マジ?」
「マジマジ! めっちゃ黒服のSPみたいな人連れてたって、見た子が言ってた!」
そんな会話が飛び交う教室の中で、内心冷や汗をかくのは誰あろう天内理子。
そんな中、昼休みの終わりを告げる予鈴が鳴り、生徒たちが席に着く中で、教室の後部ドアから入ってくるのは、厳つい黒尽くめのスーツを着込み『来客』の腕章を付けた長身の男達。
目にはサングラス、耳にはインカムというどこからどう見ても『護衛』にしか見えない3人組は、いずれも長身。短めの銀髪、長めの金髪、かなり長い黒髪とそれなりに差別化されている彼らはいずれも整髪料で髪を整えており、ウブな少女達には物珍しく映る。
そして、そんな彼等に護られる様にして教室に入ってきたのは、明らかに身なりの良い、ワンピース姿のご令嬢。泣きぼくろが艶やかな彼女は、生徒達の視線を一身に浴びながらも、にこやかな笑みを浮かべて会釈を返す。
————その正体は無論、おめかしした家入硝子。護衛の3人は、五条、夏油、七海である。
『こちら
『こちら
『こちら
『こちら
『
『こちらFT、
『こちら
『こちらGS-1、HYは後でしばく、どうぞ』
『こちらGS-2、HY、音量を絞ってくれ、どうぞ』
なんてやり取りをインカムで交わす彼らは術式でステルス化している直哉を除き全員スーツにサングラスとインカムを装備しており、校内各所を堂々とうろついている。
それもこれも、全ては夏油と五条のアイデアに甚爾が手を加えて編み出された護衛計画によるものだ。
題して『いっそ堂々と護衛しよう作戦』。廉直女学院に潜入中の『窓』を通じて学校経営陣に接触し、札束*1と外圧*2で往復ビンタして『出資者様の視察』という錦の御旗をゲットした呪術高専の面々は、実に堂々と学校内に侵入したのである。
コソコソしない分、護衛体制に隙も少ないこの作戦は、まさに鉄壁。
だが、そんな事実を知らぬ者は当然いるわけで。天内理子を狙う魔の手が、今まさに廉直女学院へと迫っていた。
「呪術師でもないタダのガキ1人殺して1億! 美味すぎる……!」
そう考えた呪詛師の数は、1人2人では収まらぬもの。伏黒甚爾に言わせれば『バカ』の集まり、烏合の衆。
だが、誰も彼もが一番乗りを狙う愚物だからこそ、その無軌道な脅威は油断ならないものとなる。
『こちらHY、侵入者と会敵しました、どうぞ』