特級呪『縛』師 禪院直哉くん   作:黒山羊

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第58話

 全校生徒が無事に校庭に集合し、五条と夏油、家入、七海の4名と共に天内理子が学校を脱出した頃。

 

 1人だけ縛りの関係でスーツを着ていない直哉は、紙袋を覆面の様に被った大男5人を相手に、大立ち回りを演じていた。

 

「不思議やね もう3桁は 殺したで? どれも本体 ちゅうことやろか?」

「クソがっ、なんでこんなバケモンが居るんだよ!」

 

 どれか1人が本体なのかと殺し回ること数分。殺しても殺してもニョキニョキと生えてくる分身男に首を傾げる直哉と、直哉の圧倒的な殺戮能力に冷や汗を掻く男という謎の膠着状態はしかし、直哉が閃きを得た事で一気に直哉の側へと傾いた。

 

「本体と 分身達の 設定を、かなり自由に 変えれるんやね。ちゅうことは 一気に全部 しばいたら もう分身は 使えへんわな?」

「ッ!?」

 

 そう宣言した直後、有言実行とばかりに亜音速で5体全員を殴り付けた直哉は、分身男をノックアウトすると、適当に全裸に剥いて脚を折り、校内の警戒に移行する。

 

 そんな中、突如響いたのは強烈な爆音。

 

「何事や!? 戦っとんの 誰やねん? ————甚爾くんかい!? 相手は誰や!?」

 

 そう困惑の声を上げる直哉の眼前で、呪詛師と思しき少年に攫われていくのは、黒井美里。

 

 それに対して慌てて追おうとする直哉だが、そんな直哉の前に、立ちはだかる少年が1人。

 

「僕は呪詛師集団『Q』の最新型戦闘員、『ビッツ』と言います。初めまして、オリジナル」

「オリジナル? 俺の事なら 人違い しとるんちゃうか? まあ知らんけど」

 

 そんな会話の後、少年から放たれるのは無数の火の玉。マシンガンの様に振り撒かれるそれは、物体或いは呪力に触れると同時に爆発し、校舎諸共直哉を吹き飛ばさんとする。

 

 流石にそんな露骨な攻撃をマトモに喰らうほど直哉は甘くは無いが、黒井を攫った呪詛師を取り逃したのもまた事実。

 

『ZN 黒井美里が 拉致された。俺とFT 交戦中や』

『こちらGS-1。何やってんだ先生ェ————!?』

『こちらGS-2。理子ちゃんの携帯にメールがあった。人質交換のつもりらしい。指定場所は————沖縄!?』

『こちらGS-1、GS-2と天内と『お嬢様』連れて沖縄までワープするから後よろしく』

『こちらNK、校舎に戻りHYと合流してFTの支援に向かいます』

『こちらHY! ZNは暫く頑張って!』

『信用が あるんも時に 辛いわな』

 

 なんて連絡を手早く交わし、直哉が放つのは空気砲である『音衝(インパルス)』の両手撃ち。爆炎諸共に『ビッツ』を名乗った少年を吹き飛ばすその一撃はしかし、決して致命打たり得ない。

 

「気色悪! 呪力お化けか? 死んどけや……」

 

 そう毒を吐く直哉の目の前で、漲る呪力により強引に肉体を再生させた『ビッツ』の有様は、つい数時間前に直哉達を襲ったコークンと同様のもの。

 

 だが、違いとしては、ビッツはコークンとは異なり自我を保っている点が挙げられる。

 

「流石はオリジナル。呪力総量が僕の半分に満たないというのにこの威力とは」

「またなんか 仕込んどんのか コイツらは……Qやっけ? えげつないなあ 君のとこ。鉄砲玉に ガキ使うとか」

「僕は生後1年で死ぬ縛りが組み込まれた人造天与呪縛体の試作1号。鉄砲玉ではありませんよ」

「尚悪い 存在やんけ 気狂いが。黒幕の 奴は相当 やり手やね。……甚爾くん 梃子摺るのんも しゃあないか」

 

 などと溢しつつも、直哉が考えるのは、眼前の敵の排除。先程ペラペラと『天与呪縛の開示』を行っていた呪詛師の戦闘能力は高く、コークン同様に重篤な縛りによって無理矢理肉体を強化した、戦闘の為の生体呪術兵器とでも言うべき存在だ。

 

 天与呪縛の話が事実ならまだ1歳未満のはずだがどう見ても少年の姿をしているあたり、強制的な肉体の成長すら能力に含まれている可能性が高い。

 

 フィジカルギフテッドと呪術師の良いとこ取りを目指したのだろうが、そんなものを生み出した試み自体に直哉は狂気を感じてしまう。

 

 彼自身クズではあるが、流石に『洗脳された悪の改造人間』みたいなものを見た際に『酷いなあ、人の心とか無いんか?』と内心思う程度には人間らしい心を持っているのだ。

 

 で、そんな哀れな改造人間への手堅い対処としては五条の様に再生不可能な完全消滅に持ち込むか、夏油の様に寿命切れを待つかだが、前者に関しては術式的に、後者に関してはこの個体の寿命が不明な為、採用は不可能。

 

 であれば。

 

「再生が 追いつく前に 殺さなな」

「恐ろしいですね。しかし、それまで自分が生きているという仮定は些か楽観的ではありませんか? オリジナル」

 

 そう煽る『ビッツ』が繰り出すのは、例えるならば炎の鞭。長くうねる蛇の様な火炎放射が触れたもの全てを爆破するという破茶滅茶に殺意の高い術式は直哉をして「扇のな 面子潰すん やめようや」と苦笑いするほど高等な火炎系術式。

 

 炎と爆破を操るその術式の詳細は不明だが、人体がタンパク質の塊である以上、炎というのは強力だ。

 

 だがしかし。

 

「俺にもな 新技ぐらい あるんやで?」

 

 そう告げると同時に直哉が放つのは、圧縮された呪力のビーム。術式により『1秒の停止』を掛けることで1秒間に注ぎ込んだ呪力を瞬間的に解放する呪力砲の威力は凄まじく、炎の鞭を振るう『ビッツ』の腕を一撃で完全に消し飛ばす。

 

 技名は特に考えておらず、『溜めビーム』ぐらいの適当な名付けではあるものの、呪力砲というのはシンプルが故に防ぎにくいもの。溜めこそあるもののビーム本体は凄まじく出が早い為、なかなかどうして対処困難な攻撃なのだ。

 

 とはいえもちろん、『ビッツ』はその肉体に漲る大量の呪力によって腕の欠損を再生する為、腕の一本を失ったことはそう大きな問題では無い。だが、その再生速度は決して一瞬には程遠く、直哉が次々と放つ呪力砲に対処しながら腕を再生させる『ビッツ』の立ち回りは自然と『守り』に入りがちなものとなる。

 

 ————本人の申告通り、ホンマにガキなんやなコイツ。戦闘能力は高いけど経験値がカスやね。

 

 などと直哉が内心分析する通り、『ビッツ』と名乗る少年の動きは素人同然。だが、戦闘の最中に徐々に直哉の動きに適応し始めている辺り、成長性は高いのだろう。人生をわずか1年に圧縮するという非人道的な天与呪縛を仕込まれただけの事はある。

 

 だが。

 

魔虚羅(まこら)とか そういう訳や ないからな。底も知れたし 殺してまうか」

 

 そう告げる直哉は、高速で印相を結び、自身の領域展開を発動する。

 

魂極(たまきはる) 憂世夢(うきよのゆめの)走馬燈(そうまとう)————!」

 

 その直後、超高速に達した直哉によって完膚なきまでに五体をバラバラに引き裂かれた『ビッツ』は呪力を練る丹田と頭部を破壊・分断され、四肢を吹き飛ばされて死亡する事となる。

 

 ただ実のところ、そこまでしてもしばらくは肉片から再生しようとしていたのだが、幸いこの場は先程『ビッツ』自身が放った炎で炎上中。肉片を別々の場所で燃える炎に焚べて焼いておけば、そのうちどれも沈黙し、焦げきった炭になって死に果てた。

 

「さて後は 甚爾くんやね 無事やろか?」

 

 そう言いながら肩をグルグルと回し、無傷で勝利した直哉。彼もまた、五条や夏油とは別ベクトルの最強なのだった。




頭があんまり回らないので執筆ペースが落ち気味なんですが、これもしやブレインフォグって奴ですかね……?
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