特級呪『縛』師 禪院直哉くん   作:黒山羊

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第62話

「いやっほーぅ! 海だぁ!」

「海じゃぁ!」

 

「失礼ですが、悟さん*1はお嬢様と同年代だったでしょうか?」

「いや、悟が三つ上の筈なんですが……不思議な事に私にも同年代に見えますね。理子ちゃんが大人びているのかな?」

「どう考えても五条がガキなだけでしょ」

 

「灰原、レジャーシートの位置はこんなもので良いですか?」

「オッケー! パラソルで良い感じに日陰だよ!」

「それは良かった。……しかしまあ、中々の眺めですね。海が青い。館山の海も良かったですが、別格です」

「南国の海はプランクトンが少ないから澄んでるんだって! 売店の人が言ってたよ!」

「なるほど」

 

 などと、楽しげな声を蒼天に響かせるのは、星漿体御一行。

 

 無事に七海と灰原も合流し、7人の大所帯となった彼等は、ハイエースをレンタカー屋で借り上げて沖縄旅行を満喫する準備はバッチリ。

 

 その一番手として夏の沖縄の海で海水浴を楽しんでいるのは、五条悟と天内理子。そして、楽しげな理子の世話を焼くのが黒井。

 

 その一方で、楽しみつつもちゃんと護衛の仕事をしているのが、夏油、七海、灰原、家入、の4名だ。

 

 まぁもちろん、五条とて六眼と無下限術式によってバッチリ天内を守っているので決して油断はしていない。ただ単に天才なので、護衛を片手間にやりつつ全力で遊んでいるだけである。

 

 では、天才ではなく秀才な4人はといえば。

 

 まず七海だが、彼の場合、ぶっちゃけ感知系の才能はない。無敵クリティカルイケメンクォーターゴリラな彼は、呪力強化を絶やす事なく張り巡らせ、いざ事が起これば即応できる様に常に備えて居る状態だ。

 

 次に灰原。彼は『結界術を頑張れ』という方針を愚直に突き詰めた結果、生得術式こそ無いもののかなり優秀な結界使いとなっており、現在も『呪霊を炙り出す機能を縛って、視覚効果を完全にオフにした帳』を展開して、晴天のビーチのままに帳で非術師集団の『盤星教』に対する欺瞞工作を行っている。

 

 非術師からは天内理子達が居るアラハビーチの一角は認識できず、術師に対しても『視覚効果がない』事により『帳』による侵入防止効果を罠の様に展開できている為、中々に堅牢な守りであると言えるだろう。

 

 そして灰原が対応を除外した『呪霊』についてだが、コレについては夏油傑という呪霊退治の専門家がいる以上、心配するだけ無駄というもの。

 

 いざとなれば灰原の帳を外殻に夏油の征裡(せいり)牲呑(せいとん)逝葬(せいそう)棲傑(せいけつ)を展開する事で瞬時に内部の敵性存在を呪力欠乏に陥らせる手筈となっており、呪霊対策は呪詛師対策以上に万全と言えるだろう。

 

 そして最後に家入硝子。優れた反転術式の使い手である彼女だが、そこに加えて甚爾の薫陶により彼女は優れた銃器の使い手にもなっている。ライフジャケットに麦わら帽子という釣り人スタイルな彼女が担いでいる『がまかつ』のロッドケース*2の中身は、釣竿ではなく彼女の呪具である呪いのライフル『エクスプレス』とサイドアームのアサルトライフルAK-47。

 

 ライフジャケットのようなオレンジのジャケットもその正体は防弾防刃ベストであり、徹底して人間対策を行っている彼女のターゲットは『非術師』。

 

 呪術規定こと『呪術師の義務に関する覚書』の第9条曰く、『呪術師は呪術、呪霊、呪物を用いて非術師に危害を及ぼしてはならない。ただし、自己または他人の生命を守るためやむを得ない場合はこの限りではない』とある。

 

 もちろん、事前に甚爾が夜蛾に相談し、東京・京都の学長の連名で『今回の星漿体護衛の為ならばやむなし』という一筆を血の拇印付きで貰っている為『盤星教』のテロリスト達に呪術をブチ込んでも問題はないのだが、そこは腐ったミカンのオンパレードな高専上層部。どんな難癖をつけてきてもおかしくは無いと断言する五条の要請で、『ただのアサルトライフル』であるAK-47を家入が装備する次第となっているのだ。

 

 要は普通の銃で普通に射殺する分には呪術的に問題無し、というわけである。法的な面は、それこそ呪術規定に『本覚書に定める規則は、法令に優先して適用される』と書いている通り超法規的存在である呪術師にはあまり関係がないので、硝子が殺人罪でどうこう言われる心配もない。

 

 そんな何重も張り巡らされた警戒網があって初めて、年相応の少女らしい『沖縄満喫旅行』が可能な天内理子。

 

 彼女を見守る呪術師達の視線は、優しさと少しの憂いを帯びながら、澄み渡る沖縄の『蒼い海と青い空』の中ではしゃぐ少女を映していた。

 

 

 * * * * * *

 

 

 やぁどうも。甚爾君の口車に乗って天内理子の保護を頑張る直哉君やで。

 

 みんなは今頃沖縄旅行を満喫しとるんやろか? 俺の懐事情やと沖縄なんざ週8でも来れるけど、他人が遊んどる時に労働すんのはムカつくわな。

 

 逆に他人が働いとる中で遊ぶんは最高やけども。なんでなんやろねアレ。躯倶留隊の雑魚共連れて呪霊狩りに行ってた時は、俺がサクッと強い呪霊ブッ殺したったらあのアホ共喜んで雑魚呪霊共と雑魚同士イチャついとったもんや。それを横目にDSやるんが最高やった。

 

 やっぱり優越感的なもんが大事なんやろか? 

 

「おい直哉。何ボケっとしてんだ」

「留守番は 暇な身分や 思うてな」

「仕方ねえだろ。あとどう見ても暇じゃねえよ俺ら」

 

 なんて、甚爾君とダベる俺が座っとるんは、空港のロビーに積み上げた『呪詛師(アホ)』と『盤星教徒(カス)』の山の上。

 

 全員死んではないけども、意識がしばらく戻らん程度にはボコボコにしとる。

 

 盤星教徒相手には呪術が使えんとはいえ、甚爾君は元々呪術を使えん非術師。普通にただのバールでブン殴ったらそれで終いや。俺が呪詛師、甚爾君が非術師っちゅう割り振りで空港に来るテロリスト共をしばき回しとるんが現状やね。

 

「ほら、また来たぞ。その山見たらケツ捲ったが、アレ呪詛師だろ。行ってこい」

「真面目やね 逃したっても ええやろに」

 

 とか思わず愚痴ってまうけど、俺の身体は呪詛師を認識したらボコボコにせな気が済まん『懲悪』の縛りに支配されとるわけで。

 

 フリスビー投げられた犬みたいに全力で走ってドロップキックしてまうんやから、難儀なもんやでホンマに。

 

「はい終わり。所属と名前 言わんかい。言ったら命 取らんといたる」

 

 とか言いながら引き千切ったアホ本人の腕でベチベチビンタするぐらいの『遊び』を交えんとマジでやってられん。

 

 沖縄っちゅうたら青い空、蒼い海。

 

 そして何より、ビーチには観光客の女共がギッチリ! ボンキュッボンの姉ちゃん眺めるぐらいは出来たやろうに、なんで俺はむさ苦しい呪詛師のおっさん眺めやなあかんねんホンマ。

 

「呪詛師にも 女はおると 思うけど。なんで此処には ()やんのやろね」

「まぁ、女は危険の匂いに敏感だしな。自分が死にそうな土壇場には来ねえんじゃねえか? 普通に非術師呪殺してるだけでもボロ儲けだしな呪詛師稼業は。わざわざ高専とバチバチにやり合うなんざ、一攫千金を夢見る男連中だけだろ」

「ムカつくわ この案件が 終わったら 呪詛師連中 しばいて回ろ」

「悪人狩りでストレス発散とか、つくづく正義の味方させられてんなお前も」

「禪院の 家のアホ共 みたいには 振る舞えんから 仕方ないやろ」*3

「お前もやればいいじゃねえかギャンブル。ストレス発散にゃ悪かねえぞ」

「アホ抜かせ 犯罪やんけ できるかい。*4……大人なったら 考えるけど」

 

 俺の目の保養は、一体いつになったら出来るんやろね? 

 

 可愛いCAさんも『テロリスト襲撃!』って偽装情報流したせいで避難してもうとるし……。

 

 JALのポスターの『オキナワチャージ』とか書いとるビキニの姉さんはあんまり乳無いし……。

 

あーあ。俺も乳のデカい美人な女の子侍らせて沖縄で遊びたかったなぁ〜! 

 

 

 * * * * * *

 

 

「ッ! 浮気の気配……!」

「は? 何言ってんだ真依」

 

*1
年齢発覚後に色々あって下の名前呼びになった。

*2
釣竿用のカバン

*3
禪院の男連中は女性陣を虐めてストレス発散しがち。ドブカス。

*4
直哉はまだ15歳なのでパチンコを含めた賭場には基本行けない

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