お日柄も良い、秋晴れの九月下旬。
京都校のメンバーの提言で開催が決定された『呪術高専東西対抗
「集合予定まであと2分……すっぽかされて無いわよね?」
などと戸惑いの言葉を投げるのは、京都校の最大戦力、3年生の一級術師『坂田あずき』。何故かいつにも増してメイクに気合を入れている彼女こそは、今回の式神対決の言い出しっぺ。
その原因は、6月に彼女と2年の後輩で二級術師の『
イタチの呪霊と聞いて色々と対策を立てて臨んだものの、蓋を開ければ能力と容姿の良く似たイタチ型の一級呪霊が3体徒党を組んで人間を切り殺す三位一体の『カマイタチ』の呪霊だったことが判明。
小さなカミソリの様な不可視の刃を操る術式で、薄皮を剥く様に少しずつ肉を削り獲物の恐怖する様を楽しむその呪霊に対し、あずきと万葉はどうにかこうにか1体を祓うのには成功したものの、残る2体の猛攻を前に敗走。
必死で3日ほど呪霊達が展開した異界の中を逃げ回ったものの、2人揃ってジワジワと嫐る様に肉を削ぎ切られ、ついに追い込まれて万事休す————と、いうところで、黒い稲妻と共に呪霊の生得領域をブチ抜いた『禪院直哉』が光の速さで呪霊2体を撲殺し、群がる低級呪霊の悉くを鏖殺したことで、2人はどうにか救出されたのだ。
で、その結果なんとか死ぬ事なく生還出来たあずきと万葉は、救出されたその足で家入硝子の元へと担ぎ込まれて反転術式による治療を受けた事で無事五体満足に復帰できたのだが……。
彼女達が『アレが一年として追加された上に五条と夏油がいる東京に勝てる訳ないでしょ!』というド正論を強く主張し、今回のイベントが開催されることになったのである。
当然、それには当初反対も多かった。しかし、直哉が八面六臂の活躍と度重ねる救出劇を幾度となく重ねる内に『仮に一年生の禪院直哉1名が相手でも絶対に一秒以内に壊滅する』と主張する坂田あずきの意見が受け入れられ、今日に至ったという背景がある。
で、そんな経緯の末に今回の式神対決に挑む京都校チームだが、彼らの式神対決への熱意は強い。何しろ、ハンデをくれと言い出した以上、この勝負に負ければもう後がないからだ。
3年は坂田あずき、2年は先述の渡辺万葉に加えて
で、そんな彼らにとって、ヤキモキする数十秒が過ぎ、集合予定時刻まで残り1分。
————もしや本当に遅刻か? それともバックレられたのか!?
なんて京都校の5人が本気で心配し始めたその瞬間、バキバキと空間が砕け、舞い落ちるガラスの破片の様な光のカケラの中から、やたらめったら平均身長の高い一団が現れた。
「いえーい、結構カッコいい感じになったじゃん。俺天才!? 天才だったわ」
などとふざけた口調ながら、その言葉どおりに天性の才能を持つ男。現代の異能にして現代最強の呪術師。そして今しがた、東京から京都までの距離を一瞬にして転移してみせた男、特級呪術師『五条悟』。
「今の悟のセリフでそのカッコよさも台無しじゃないか……?」
なんて五条を諌めるのは、オールバックのお団子ヘアーと一房飛び出た前髪が個性的な、もう1人の最強。最近、身近にドタイプな女性が居て友人にも囲まれ、割と人生が楽しい呪霊の支配者、特級呪術師『夏油傑』。
「お前らまずは挨拶しろよクズども。……どーも、東京校で〜す。今日はよろしく〜。あ、坂田先輩と渡辺ちゃんじゃん」
と、一見常識人らしいことを言いながら、葉巻を咥えて飲みかけのダークラムを片手に持ち、ライフルを担いでいるという超絶物騒な姿が全てを台無しにしている四級呪術師にして反転術式の使い手『家入硝子』。
「初めまして。本日はよろしくお願い致します」
そう告げて、ペコリと会釈をするのは、東京校の良心にして真面目な苦労人。それでいていざ戦いになれば無敵とクリティカルで理不尽格ゲーを相手に強いるインテリゴリラ、二級術師の『七海建人』。
「京都校の皆さん! よろしくお願いしまァす!」
うるさい! 説明不要! 元気爆発な結界術使いにして、近接戦では打って変わって急所攻撃と肉体破壊を連打する! 外道殺法を扱う
「……おかしいな? 何も聞こえん……どうなった? ……ああなるほどな 鼓膜裂けたか? ……治ったわ。灰原くんは しばきやね。————こんにちは お久しぶりな 子もおるね。禪院直哉 どうぞよしなに」
そして最後に、独特な韻律でそう告げるのは、現代、否、史上最速の術師、人造の異能。そして、さっきの転移エフェクトの為に五条悟に『停止させた光の板』を10枚作らされた男、特級呪術師『禪院直哉』。
以上6名の東京校チームが、今、京都校チームの前に現れたのだった。