特級呪『縛』師 禪院直哉くん   作:黒山羊

73 / 143
第73話

「あ、これお土産です」

「あ、お気遣いありがとうございます」

 

 なんてやり取りで『 木挽町(こびきちょう)よしやのどら焼き』*1や『千葉半立(はんだち)*2、『鮒佐の江戸前佃煮』*3、『上野風月堂のゴーフル』*4、『木村屋總本店の酒種あんぱん』*5、『塩瀬総本家 志ほせ饅頭』*6などの東京土産の紙袋を代表として坂田あずきに渡す一幕からしばらく。

 

 京都校のグラウンドに集合した両校の面々は、意外な人物と遭遇していた。

 

「や、こんにちは! 君たちは、どんな異性がタイプかな?」

「九十九さん こないなとこで どうしたん?」

「いや、東京校の学長経由で一応招待が届いたんだ。面白そうだから審査員を引き受けてみた」

「なるほどな。そういう事か 納得や。ところで好み 言わなあかんか?」

「ま、直哉君には何度か聞いてるけど、一応聞いとこうかな」

「乳と尻 それと太もも ムチムチの 肉感的な 美女が好きやね。特に乳 デカけりゃデカい 程ええな」

「相変わらずだね〜。で、君が五条くんかな? 初めまして。私は九十九由基。世界から呪霊を無くしたいだけのただの美女さ。あと『他人の好みのタイプ蒐集家』でもある」

「……ただの美女にしちゃ物騒な術式だなアンタ。好みのタイプだっけ? あんまり考えたこともないけど、今はエマ・ワトソンが滅茶苦茶アツいなとは思うよ。毎作安定して可愛いよなハーマイオニー。でもハリポタで一番可愛いのはアズカバンの囚人の2代目パンジーの子じゃねえのって毎回言ってんだけど誰も聞いてくんないんだよね、あの子はジュヌヴィエーヴ・ゴーントだっけ?」

「存外ミーハーなんだね最強。じゃあ、最近特級のお仲間になった夏油くんはどうかな?」

「私は、包容力のある年上の女性がタイプですね」

「おいボカすなよ傑。ちゃんと三十路前半くらいのちょっと天然気味だけど真面目で優しいお姉ちゃん気質な若見えお姉さんが好きって言え」

「……悟? 人の好みをガンガン晒すのは良くないよ?」

「なるほど? 良いセンスだね夏油くん」

 

 などと、特級4人がワイワイやっている中で、新たに現れたのは呪術高専京都校学長の楽巌寺と、天元守護の関係で東京を離れられなかった東京校学長から名代を命じられた次期学長の夜蛾正道。

 

「ふむ……学生は揃ったか?」

「あ、お爺ちゃんじゃん。元気?」

「おい悟。失礼だぞ」

「ハァ、五条の糞餓鬼は相変わらずか……」

 

 そんな呆れを孕んだ溜め息を吐く楽巌寺学長の横でこめかみに青筋を浮かべている夜蛾が、直後悟にゲンコツを落としたのは言うまでもなく。

 

 悟が頭を抑えて転げ回るその中で、『第一回呪術高専東西対抗式神(ロボット)コンテスト』の開催が楽巌寺学長により宣言され、審査員が紹介されていく。

 

「まず、儂と夜蛾が高専賞の審査を行う。次に審査員賞は、特級呪術師・九十九由基、特別一級術師・禪院直毘人、特別一級術師・加茂憲嗣(のりつぐ)の3名による合議で決定する。今回は公平を期すために、審査員には『審査依頼料と引き換えに厳正な審査を行う』縛りを交わして貰っている」

「という訳だ直哉! 儂を味方と思うなよ! ハッハッハ!」

「オトンはな どのみち味方 ちゃうやんけ。おもろい方に 票入れるやろ」

「はいはいはーい! お爺ちゃん! 五条家(ウチ)がハブられてまーす!」

「五条家からは招待を送ったところ、『どちらを選んでも当主の不興を買いそうなので、参加しない方がマシ』との返答が来ておる。お前の人徳が伺えるのぅ」

「悟、実家で何したんだい?」

「……逆らう奴全員に男女平等パンチ?」

「逆に何故、それでご実家から人が来ると思ったんですか五条先輩」

 

 などと東京校の面々が自然体でワチャワチャと騒いでいる一方、一世一代の勝負に臨む京都校の面々は、ヒソヒソと小声で密談中。この辺りにも両校の差が色濃く出ていると言っていいだろう。

 

「禪院の御当主は、あの感じだとワンチャンありそうね」

「はい先輩。私たちの式神ならきっと大丈夫です!」

「学長が縛りを宣言したんだ。公平性は担保されているとみてよさそうだね。加茂家の人は見たことがないけど……あんな()()()()()()()の人だっけ御当主」

「いや、坂田家から新年の挨拶に伺った時に加茂家の御当主には会ってるけど、もっと恰幅がいい感じのおじさんだったよ。後若干、視線がキモかった」

「あー、加茂家って一夫多妻制だっけ確か」

「で、結局、あの加茂憲嗣さんは誰なんですか坂田先輩」

「わかんないなー。当主の名代とか?」

「加茂家の当主がエロ親父という情報しか得られてないんだが?」

 

 なんて、小声で会話している彼らに対し、当の『加茂憲嗣』なる縫い目頭の人物は、にこやかな笑みを浮かべて手を振っている。

 

 あんまりに露骨な『聞こえてるよ』というメッセージに慄く京都校メンバーだが、彼らにとって幸いだったのは縛りの存在。ちょっと加茂家のゴシップを話していたぐらいなら、評価にさほど影響はないだろう。

 

 そんな彼らの焦りを尻目に、『式神紹介』の発表順を決める籤引きが楽巌寺学長により引かれ、紹介は東京校からの開催となったのであった。

*1
甘党の五条が東京土産ならコレでしょ、と買ってきたもの

*2
ナッツばっかり食べている直哉オススメの高級ピーナッツ。広義の関東土産という事で選定。

*3
硝子チョイスの酒のあて。セットで酒も包もうとしたら夜蛾に怒られたので佃煮だけになった。

*4
東京土産のチョイスに迷って実家の母に相談した夏油が買ってきたお土産。「これ東京発祥なんだね」とは買ってきた夏油本人の弁。

*5
東京校きってのパン派である七海が買ってきたお土産。麹を使っており、パンなのに和風な食べ心地。

*6
灰原が買ってきたお土産。元祖お饅頭と言ってもいいレベルの銘菓。が、そういう背景はあんまり考えず試食で美味しかったのでいっぱい買ってきたらしい。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。