交流戦の代わりに執り行われた「式神対決」から一夜が明けた土曜日。
両校学長の計らいで土日休みを得た京都と東京の学生達は、現在『ビッグボーイ』*1にやってきていた。
と、言うのもだ。
「あ、ここってジェフグルメカード使えますか?」
「はい、ご利用いただけますよ!」
なんて確認を夏油がしている通り、彼らが先の式神対決で『副賞』*2として入手したものは、いわゆる『お食事券』*3だったためである。
「金券で1万くれるよりは、普通に万札くれりゃ良かったのにな」
「まぁそう言うなよ悟。先生が『脳筋の癖にまわりくどいのが好き』なのは今更じゃないか。前途ある若者同士、皆で仲良く飯食って来いってことだよ」
「あーね? ファミレス11人分ぐらい俺の小遣いでそれこそ1万回行けるわ」
「……そこでサラッと奢るって話になる辺り、変わったよね悟も」
「んー? ……まぁ、最近はお花畑よりはジャングルって感じだし、お陰様でボッチは卒業したからな」
「なるほどね?」
「お前らがクズなのは変わってね〜けどな。金貰っといて文句言うなよ……あ、すいませ〜ん! とりあえずビッグボーイバイキング11人分で!」
「聞いたか傑、今の硝子の声」
「電話に出る時の母さんみたいな猫撫で声だったね」
「聞こえてんぞクズども」
なんて長椅子に仲良く隣り合って腰掛け、漫才の様なやり取りを楽しく行う東京校の2年生トリオ。平常運転な彼らとは打って変わって、カチンコチンなのがその対面に座る男子生徒2名。
「どした? 腹でも痛えの?」
「「イエ、ソンナコトハ」」
「何それ呪文?」
「ほぼ初対面の相手をイジるのはやめなよ悟。普通に緊張してるんだろ? 東京校に居ると麻痺しがちだけど私達は特級。唯一特級じゃない女子な硝子に助けを求めようにも、特級2人に余裕でタメ語だし、変な猫撫で声出すしで話しかけ難いだけだよ」
「夏油、なんか耳が疲れてるみたいだし後で胎の中身ごと反転かけたげようか?」
「おいおい、場を和ます小粋なジョークだろ? ……ま、こんな感じで私達も普通にタメか一個上なだけの学生だ。そう緊張しなくてもヘーキヘーキ。私と硝子は一般家庭出身だし、むしろ『呪術師家系』な君達の方が業界では立場が上かもよ?」
そう言って困ったように笑う夏油の態度と、マジで『正の呪力』を練り上げ、指鉄砲から小さな呪力弾として発射している硝子という子供っぽいやり取りに警戒心と毒気と肩の力を纏めて抜かれた京都校の男子組は困ったように苦笑する。
「……いや、流石にそら無いやろ。反転使いと特級の格に家柄持ち出す時点で負けとるもん」
「お、関西弁。何気に直哉以外じゃ初じゃない? ……悟も五条家自体は京都なのに全然標準語だし」
「なんや傑、そないに聞きたいんやったら聞かしたんのに」
「うわ気持ち悪、違和感が凄い! BBBBB!」
「誰がポケモンだよ。……御三家なんかに居ると、家にいる女連中が結構出身地バラバラでさ。結局標準語で喋るから、子供にもそれが『うつる』んだよね。直哉は結構レアっつーか、逆に母親がコテコテ関西人だったんじゃねえかな」
「聞くと納得ではあるけど、普通に別世界すぎて共感出来ね〜。もうソレ、夏油と私からすりゃテレビの中の話じゃん」
「……五条家は表の家も華族の子爵家、裏の家も呪術御三家の超サラブレッドやもんなあ。僕と卜部君からしたら呪術師家系って点以外共通点無いわ。ウチ普通に一夫一妻やし」
「え、御三家ってハーレムなんすか碓氷先輩」
「あれ、知らんかった? 坂田先輩が加茂憲嗣さん見た時にちょっと話に出たやろ? 加茂家は一夫多妻やって」
「マジかよ五条。お前実はモテモテとかいう感じ? クズ超えてドクズ超えてドドクズ超えてドドブランゴなのに? いや、ドドブランゴだからこそハーレムなの?」
「或いは悟にとびっきりかわいくて、とびっきり素直で、とびっきり愛らしくて、とびっきりの淋しがりや。しかも、そのうえみんなみんな、とびっきり! お兄ちゃんのコトが大好きな12人の妹が居る可能性が……?」
「兄弟姉妹も彼女も居ねえよ! つーか、傑のそれシスプリだし! 硝子は硝子で越えすぎだし誰が雪獅子だよ、毛の色しか被ってねーじゃねぇか! まだ無下限使う分ガノトトスの方が近いわ!」
「夏油、コレは新情報なんだけどガノトトスのタックルって無下限らしいよ」
「弄られすぎて悟がヤケクソになってるだけだよ硝子。まぁ、アレ確かにそれっぽいけど」
「モンハンとかやるんやね君ら……まぁ強い子が産まれたらその子の育成に注力するんが普通やしな。実際、呪術師家系出身で極端な強さの呪術師は末っ子とか一人っ子率高めやで。まぁ、僕の碓氷家とかは細々やっとるしとりあえず子孫繁栄っちゅうことで弟普通におるけど。そういや卜部君は?」
「俺、妹12人居るっすね……理由は碓氷先輩と大体一緒っす」
「「「「シスプリじゃねーか」」」」
なんて、緊張から一転愉快なやり取りを交わし始めたテーブルのその一方で、開幕から愉快なことになっているのは、東京校1年&京都校女子で占有されたテーブル。
男女比1:1ということで若干合コンっぽいその席は、着席の瞬間から直哉の針の筵と化していた。
「わぁ〜♡ 生のナオ様やぁ!」
「こら晶ちゃん。いきなり大きな声を出さない。ナオ様が面食らってるでしょ。というか昨日も会ったじゃない」
「そう言うても昨日は遠目やし対戦相手やったもん。話しかけられへんやんか。大体万葉先輩かておめかししてるやん」
「それは私達全員そうでしょ。先輩も昨日から寄せてあげてで必死だし」
「ちょっと万葉ちゃん、なんで今急に刺したの???」
なんて姦しい女子3人がハイテンションを隠そうともしない状態であるのも手伝って、最初から場の温まり具合は上々。
直哉が1人ゲンナリしている一方で、女子のノリにモロに乗り気なのが灰原、そして意外にも楽しんでいそうなのが七海。そんな2人に席を挟まれているのだから、直哉はもはや完全に四面楚歌である。
「しかしまあ、アレだけ緊急出動を繰り返していればファンクラブぐらい出来ても違和感がない、と言うのが直哉の凄いところかもしれませんね」
「夏は割と毎日、今でも週一くらいで放課後とか昼休憩に何処かしら助けに行ってるもんね直哉」
「俺よりも 受け入れとるん おかしない? 俺は未だに 飲み込めへんで???」
「それは君が当事者だからでは? 私達は外野からヤジを飛ばすだけなので気楽なものです」
「僕は中学の時、逆にファンクラブあったからね!」
「まぁ、灰原の性格とルックスならありそうですよねファンクラブ」
「絶対に 七海君にも あったやろ。西洋風の イケメンやしな」
「それは、まぁ、似たような物はあった気もしますが」
「……まあ俺も そういう意味で ファンクラブ 作られるんは まだ分かんねん。問題は その存在が 俺にまで 伝わってない ちゅう事なんや」
そう言って溜息を吐く禪院直哉。彼の表情に露骨に『禪院家の連中は何をやっとんねん』と書いてあるのを見た彼のファンガール、もとい坂田あずきはしかし、彼の発言に少しばかり疑問を抱いた。
「あれ? この活動、ナオ様に知られてなかったんです? ファンクラブ会員に禪院家の人達多いのに。というか、会長と副会長も禪院家の方みたいですし……会った事無いけど」
「真希ちゃんと 真依ちゃんはまぁ 神輿やろ。ホンマのボスは 冥冥さんや。……まぁそこは ええねん別に 知人やし。銭ゲバは 冥冥さんの 生き甲斐で 呼吸みたいな モンらしいしな。*4どうせまた、きっちり帳簿 つけとって 俺の取り分*5 作っとるやろ。その辺の 線引きとかは 上手やし……でもそのせいで 負けとるやんか? 言い訳は 見苦しいけど 知ってたら 隙を晒さず 済んだやろうに」
「直哉結構負けず嫌いだよねやっぱり。でもまあ、直哉が知ってたとしても、結局アレは僕らがウケちゃってたから仕方無いって。七海まで笑ってたんだもん」
「灰原、私だって面白い時は笑いますよ?」
「でも寮でバラエティとか皆で見ててもあんまり笑わないよね七海」
「笑点を たまに見とるで 七海君。単に笑いの ツボの差ちゃうか」
「ラーメンズなどのコントも好きですよ」
「あー、ちょっと賢くないと面白く無い系の奴だ……!」
なんて、徐々に話が逸れ始める野郎3名は、コレが合コンならレッドカード1発退場なダメ具合。
だが、女子3人は女子3人で、そんな彼らのやり取りを観てキャイキャイと騒いでいるのだから、もうコイツら全員合コン失格である。まぁ合コンでは無いのだが。
しかし、そんな無駄話や浮いた雰囲気も、学生の特権というもの。
レストランを舞台に歓談する京都と東京の学生達はその後楽しいひとときを過ごし、互いの連絡先を交換して、それぞれの学舎に帰っていくのだった。
曲折編もう少し色々やる?
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もう少しやる(リクエストは活動報告に)
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とっとと原作にGO。