特級呪『縛』師 禪院直哉くん   作:黒山羊

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第84話*

 特級術師・夏油傑婚約。

 

 そんな下世話なニュースが校内を駆け回り、五条と家入と理子がノッリノリで冷やかしまくる中、『あんまり弄ったら夏油君爆発しそうやし遠目に野次馬しといたろ』と安全圏からの観戦を決め込む事にした直哉は、自身の修練の片手間に弟子である真依の修行をつけるという穏やかな日常に戻っていた。

 

「真依ちゃんの 呪力も大分 伸びとるし そろそろメイス 以外も出すか?」

「えっ、良いの?」

「充分に 安全見ての 判断や。呪力出力 総量共に 次の呪具 作れるだけの レベルやね」

「じゃあ教えて!」

 

 などと乗り気な呪術少女マジカル真依ちゃんこと禪院真依。その身に掛けられた縛り故に自身の構築術式で構築できるものが『直哉次第』な彼女は、『自分が何を構築できるのか全ては知らない』という構築術式使いとしてあまりにハードモード過ぎる人生を悔やむ段階にはまだ無いらしい。

 

 そして、直哉が懐から取り出してパラパラと捲る『マジカル真依ちゃん大図鑑』についてもまだそこまで忌避感がない*1彼女に対し、直哉が見せたのは挿絵付きの紹介ページだった。

 

 

【挿絵表示】

 

*2 

 

「この槍が 今回使う アイテムや。構築は メイスと同じ やり方や。名前だけ 変更したら 作れるで」

「名前は何て言うのかしら?」

「この槍は 投げ槍やから 名前がな ちょっと変わった もんなんや。ランスとか スピアやのうて ピルムやね。銘は 『マジカル 真依ちゃんピルム』」

「へー! ピルム! 何かちょっと響きが可愛いかも」

「そうやろか? よう分からんな その辺は。……どうや早速 試してみるか?」

「うん! みんなの思いを力に変えて! マジカル真依ちゃん、メイクアーップ!」

 

 と元気良く叫んだ真依が変身するのは、呪術少女マジカル真依ちゃん。普段は落ち着いた色合い*3にしてあるマジカル真依ちゃんドレスが一気にドピンクな衣装へと変貌し、2時間限定の真依の戦闘形態、『呪術少女マジカル真依ちゃん』への変身が完了する。

 

 この格好に、真依はちょっぴり恥ずかしさを覚えてはいるのだが、同じ服を着ている真希の存在や、表面上は一切馬鹿にしていない*4な直哉の事もあり、変身への抵抗感は『ちょっぴり』で済んでいる。

 

 そして直哉同様にその身に多くの縛りを掛けた彼女の呪力出力は肉体の成長に合わせて急激に伸びており、そればかりか家入の指導によりこの一年で反転術式すらものにしている。*5将来有望なその実力は実力至上主義な禪院家でも高く評価はされており、『トンビが鷹を産んだなあ』などと言うセリフが扇を揶揄する陰口に加わっている程だ。*6

 

 そんな彼女は、声高らかに新たな武器であるマジカル真依ちゃんピルムを「みんなの思いを形に変えて! マジカルメイク! 『マジカル真依ちゃんピルム』!」と叫んで構築し、子供には手頃なサイズの投げ槍をその手に顕現させた。

 

「ええやんか よく出来ました 上出来や」

「かっこいい! 可愛い! これもメイスみたいに使うの?」

「ちょっとちゃう。投げ槍やから 投げるんや。でも的無いな。ちょっと待っとき」

 

 そう告げて、投射呪法で刹那の内にその場から消えた直哉が、暫しの間を置いて再び現れた瞬間、担いでいたのは五条悟と夏油傑。

 

 特級2名を連れてきて何をするのかと思いきや、それに対する直哉の答えはあんまりにあんまりなものだった。

 

「ちゅうわけで 的をよろしゅう 悟くん」

「いやふざけんな、何で俺が的なんざ……」

「先程直哉に的代わりの呪霊を貸して欲しいと頼まれたんだけどね。もっと良い的があると私が推薦したんだ」

「ハァ!? 傑お前ふざけんなよ!?」

「良いじゃ無いかどうせ無敵なんだし。真依ちゃん、人の恋路に口を挟む奴をどう思う?」

「サイテー」

「その最低な奴が悲しいかな悟なんだ」

「真依ちゃんピルム発射!」

「待てこのガキンチョ————!?」

 

 何てコントの中で真依が投げつけた投げ槍は、投げたのが幼女という事もあって若干暴投気味。明後日とまではいかないが明日の方向ぐらいには飛んでいきそうなノーコンな1投はしかし、マジカル真依ちゃんピルム自体が呪力のジェットを噴射して軌道を修正した事で、狙い過たず五条悟に向けて猛進する。

 

「お前これマジの呪具じゃん! うわウザッ! 避けても追ってくるじゃねえかこれ!」

「見た通り 狙った獲物 追いかけて 槍が勝手に 飛ぶ仕組みやね。一本に つき一回の 制限が 掛かっとるけど 便利そうやろ?」

「なるほど、悟が追い回されてるのはそれか。誘導弾になる投げ槍は普通に有用だね。効果時間は?」

「何らかの 物に当たるか 壊れるか。それ以外では 止まらへんなあ」

「無下限で受け止めてるのに悟をしつこく追い回してるのはそういう仕組みか。なるほど」

「呑気に解説してんじゃねえよ! ————(こがね)!」

「あー! 私のピルム!」

「構築物ならまた作れば良いじゃん! ……ったく。ちょっと傑を祝福して回っただけなのに酷無い?」

「思いつく限りの高専関係者に触れ回る行為を祝福とは普通言わないよ悟」

「あ、そうだ。私言ってなかった! 婚約おめでとう!」

「ありがとう真依ちゃん」

「どういたしまして! これで特級で婚約者がいない男は悟君だけだね!」

「ハァ? 恵も特級の男だろ」

「恵には津美紀ちゃんと華ちゃんが居るでしょ!」

「華はともかく津美紀は姉貴じゃね?」

「血の繋がってない姉と結婚とか漫画でよく見るもん!」

「どんな漫画読んでんだこのガキ……」

「まぁ、購買には高専生向けの漫画ラインナップが多いからね……でも確かに、そう考えると悟だけが女っ気がないのかな? なるほどなるほど、悟はそれが寂しかったわけだ」

「げ。傑最悪なこと考えてねえか?」

「いや別に? そんなに寂しいなら硝子と一緒に悟の婚約者を探そうかなと思っただけだよ? 新宿2丁目あたりで」

「いや、バッチリ考えてんじゃねぇかよ!?」

 

 と、ギャアギャア騒ぎはじめた最強コンビは、夏油が硝子を探すべく駆け出し、それを悟が追うことでグラウンドを去っていく。

 

 それを目で追いつつも、「元気やね 悟くんらは ようやるわ」などと皮肉っぽく嗤う直哉は、引き続き真依に修行をつけるべく、新たな的として恵の 魔虚羅(まこら)を借りるべく、再びその姿を一瞬で消し去り、程なくして恵と、それに付随する子供達を引き連れてグラウンドへと舞い戻って来るのであった。

 

「恵くん ちょっと 魔虚羅(まこら)を 貸したって。修行済んだら 飯奢るから」

「俺、ステーキが食べたい!」

「沖縄の アメリカ式の とこ行こか。ステーキハウス 行きたいんやろ?」

「やった! ————布瑠部由良由良『 八握剣(やつかのつるぎ) 異戒神将(いかいしんしょう) 魔虚羅(まこら)』!  魔虚羅(まこら)! 真依姉ちゃんの攻撃をひたすら受け止めるか回避! 修行だから反撃は禁止!」

 

 と、あっさりメシで釣られた恵により、サンドバッグ扱いされる事になった 魔虚羅(まこら)目掛けて、新たに構築したピルムを元気良くぶん投げる真依。

 

 そんな彼女の修行に触発されたのか、子供達も参加した『 魔虚羅(まこら)的当て大会』は結果として 魔虚羅(まこら)に強靭な刺突耐性や飛翔体への迎撃能力などを与える事になるのだが、それが判明するのはまた後日の話であった。

 

*1
昨年から引き続き、魔法少女はちょっと小っちゃい子向けかなという恥じらいはあるが、まだ激しい羞恥にまでは至っていない。

*2
挿絵はAI直哉君作

*3
今日は紺色と白で清楚ロリ系な感じだった。

*4
内心はチェシャ猫よろしくニヤニヤしているが縛りのせいで顔に出るのは優しい微笑み。

*5
動機が豊胸目的だというのは家入と真希しか知らない乙女の秘密である。

*6
当主になれない言い訳に娘を使う事も出来なくなったので扇のメンタルにはかなり効いていたりする。

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