特級呪『縛』師 禪院直哉くん   作:黒山羊

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第89話

 さて、早いもんで3年になった直哉君や。

 

 あの文字通りの意味で小便臭いガキどもがもう小学生とか、時の流れは早いもんやね。

 

 ガキはガキ同士つるむようになって、ここ最近は世話も随分楽になっとる。

 

 それでも熱心に俺んとこに来るんは、一体全体何でなんや真依ちゃん? 

 

 真希ちゃんはみんなと三角ベース*1とかモンハンとかやっとる中で1人だけ俺と修行て、ガキとして異常やろこの子。頭おかしいんちゃうか*2

 

 ……いやまぁ、キッカケはともかく仮にも師弟やと言うたからには面倒見るけども。

 

 血眼になって家入さんに反転術式を仕込んで貰っとったかと思うたら、今度は呪力の精密操作を教えろやの、呪力による肉体強化を教えろだの、ガキが嬉々として言うんはちょっと怖いやん? *3

 

 正直言ってちょっと引くわな。どんだけステゴロ戦闘やりたいねんこの子*4。女の子は三歩と言わず千歩下がって槍でも投げとけやホンマ*5

 

 で、流石にそんな真依ちゃんに、本人希望とはいえずっと修行ばっかりをさせるんはどうなんやろか、と思うた俺は今日この日、真依ちゃんとの3級呪霊討伐の帰りに、適当に近場にあった水族館に真依ちゃんを連れ出して、多少の気晴らしをさせてみとるんやけど————。

 

「真依ちゃんな この繋ぎ方 やめへんか? サイズ差あるし 指痛いやろ?」

「やだ。私はこれが良いの」

 

 てな訳で、悲しいかな小1のガキに恋人繋ぎさせられとる。

 

 周りの親子連れの微笑ましい目*6がクソムカつくわ。何見とんねん殺すぞ*7

 

 ちゅうか、適当に入ったけど水族館なぁ……俺、喰われへんから魚見てもあんまり感想が無いわ。ガキの頃は食った事あった筈なんやけど、もう味の記憶とか全部無いねんなこれが。ぶっちゃけガキども肉屋に連れて行く時も味の想像がつかんから食べログ評価頼りやし。……選択肢ミスったな。クソ暇やわ。

 

「ここの魚は幸せそうね」

「そうやろか 狭い水槽 入れられて 普通は嫌な もんなんちゃうか。海の中 自由に泳ぐ 方がいい ちゅう考えが 普通とちゃうの」

「私は水槽の中で飼われる方が良いの」

「そうなんか。まあええんちゃう? 知らんけど。変わっとるなあ 歳の割には」

「お姉ちゃんは海の方が良いんじゃ無い?」

「そうやろね。それが普通の 考えや」

「直哉はどうなの?」

「飼い殺し されるんよりは そりゃあまあ 自由がええわ 当たり前やろ」

「そんなに縛ってるのに?」

「いやコレは 寧ろ自由の 為やんか。真依ちゃんな 教えたるけど 弱者には 自由に生きる 道が無いねん。何かしら 強者に頼る 生き方を 弁えへんと 呼吸も出来ん」

「ふぅん。じゃあ、頼るし弁えるから、直哉が護ってね」

「……その歳で 言うことちゃうわ そのセリフ。奥さんは 3歩下がって 弁えて 亭主を立てる べきとは思う。せやけどな それは大人の 話やで。真依ちゃんキミな まだ子供やろ?」

「私、直哉の許嫁だし、もう立派なレディなの」

「アホ抜かせ まだ早いやろ レディには」

 

 ホンマ、女のガキは(はよ)うから(さか)しらに口が回って困るわ。何が面白うて、水族館でガキと人生哲学の話しやなあかんねん。

 

 あーあ。今だけ水槽の中のカニが真依ちゃんの話し相手代わってくれんやろか。俺この子と喋るとメッチャ疲れんねんけど。

 

 ……オトンが何を思うとるんか知らんけど、真依ちゃん真希ちゃんと俺の婚約は未だに有効。五条家と禪院家の差金で附属小学校を作ったんやから、扇のアホから双子の身柄を保護するんが目的なんやったら、もう俺との婚約は破棄してもええ筈や。

 

 俺がもうすぐ18っちゅう事で色んな家からアホほど見合いの釣書が来とるんは知っとるんやぞ。しかもしっかり巨乳の姉ちゃんばっかりで! 早う見合いさせんかいホンマに。

 

 このままやと俺どう考えても魔法使い確定*8なんやけども。同じ年齢差夫婦やとしても、姉さん女房な傑君はまだしも11歳半歳下の嫁とか明らかに犯罪者扱い待った無しやんけ。

 

 絶ッッ対に悟君は俺の事光源氏とか言い出すやろしな。今から容易に想像できるし絶対にそうなると確信を持って言えるんが最悪過ぎる……。

 

 そうなる前に早い事釣書の爆乳姉さんと結婚させてくれんかなホンマ。ダメ元やろうけど冥冥さんも送って来とったん知っとるんやぞ。あの人に手ェ出したら絶対根こそぎ財産毟られるからやらんけど。お小遣い制は嫌やで俺は。既にファンクラブの実権握られとるし油断は禁物やでホンマに。俺は弁えへん女は嫌いな筈やのに、あの爆乳とケツが全てを赦させようとするんや……なんかの術式効果か……? 

 

 そういえば、悟君と傑君のファンクラブもあの人が一枚噛んでた気がするわ……怖……。

 

 あと坂田先輩も送って来とったな。バストアップしてから出直してもろてええか? *9

 

 とか考えてたら「他の女のこと考えてるでしょ」とか抜かして真依ちゃんが膨れよるし、なんやねんホンマ。女は他の女レーダーでもついとるんか? 

 

 やっぱり水槽の中のウツボが変わってくれんやろか真依ちゃんの話し相手。

 

 そこのイソギンチャクでもええで? あかんか? あかんか……。

 

 ハァ……。

*1
野球っぽい遊び。地域毎に様々なルールがあるが、真希達がやっているのは『球は軍手を丸めたやつ』『バット無しで手打ち』『バッターは全員による順番制』『透明ランナーあり』という超簡易版。しかも、なぜか歌姫先生が永久にピッチャーをやって子供達が永久にバッターとして点を稼ぐだけという謎チーム分けシステムになっている。が、本人達は楽しいらしい。特に歌姫。

*2
盛大に自分の幼年期を棚上げにする人間のクズ(全身黒閃金玉強打事件の直後から、縛りを構築して修行を開始、その後今日に至るまで苦行と修行を継続中)

*3
どこまでも自分の幼年期を棚上げにする人間のカス(直毘人を投射呪法関係で質問攻めにしたり、呪霊部屋の呪霊を湯水の様に使って術式の実験をしたり)

*4
と、直哉は思っているが、真依の主目的は呪力による肉体強化と反転術式を応用した育乳である

*5
メイスは呪力砲、ピルムは投げ槍と、実は直哉は真依に遠距離武器ばかり与えている

*6
なんだかんだ従姉妹なので直哉と真依が親族である事は割とパッと見で分かる為、周囲からは妹を連れた兄あたりに見えている

*7
混じり気無しに何見とんねん殺すぞの意

*8
真希と真依は2002年生まれなので、18歳になるのは2020年。1990年生まれの直哉は30歳。

*9
Gカップ以下は嫌だという鋼の意志

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