呪術高専東京校、四年生用教室*1。五年生がモラトリアム期間となる関係で事実上の最終学年となる四年生になった五条悟、家入硝子、夏油傑のさしすトリオ*2にとって、今最も熱いトークテーマは、当然ながら進路関係になる訳で。
「進路ね〜進路か〜傑と硝子はどうすんの?」
なんて、生クリームチョコをガツガツと咀嚼しながら問うのは、最強すぎてあんまり人生に生き甲斐がない男、五条悟。
基本的に中身はガキのまま身体だけ成長している彼にとって、人生設計や進路という言葉はいまいちピンとこないものなのだ。
が、その一方でニヒルな現実主義者の家入と、真面目な理想主義者の夏油傑は当然進路をとうに決めている。
「私は美々子と菜々子の事もあるし、このまま高専教員かな。呪術界の明るい未来を育てるのも楽しそうだしね。あと美里さんとの事もあるし手に職は付けたいかな」
「夏油は今年中に挙式予定なんだっけ?」
「ああ、そのつもりだよ。……随分と耳が早いじゃないか硝子」
「私だってガールズトークは普通にするからね〜。……で、進路だっけ? 私は選択肢無いっしょ。反転アウトプットは私以外には恵君の
なんて、それぞれ回答する友人達の姿がちょっぴり大人に見えた五条。そんな彼は少し思索を巡らせたあと、努めて明るく己の進路を口にした。
「じゃあ俺も教師やろっかな〜。1人は寂しいし」
「五条が教師とかできんの? お前典型的な天才型じゃん。人に何か教えるってタイプかよ」
「んー。それは今まではマトモに他人に教える気が無かっただけだし大丈夫……多分。俺、やろうと思ってやれなかった事あんまり無いしね! ピアノもこの前ノリで弾けたし平気平気」
「いや、ピアノ必須は教師じゃなくて保育士じゃないか……? と言うか硝子、私もそうだけど、君も含めて術師って大概天才タイプだろう? 基本的に才能の世界だし」
と、この四年間の学生生活で清濁合わせ呑むようになり、理想主義者ながら現実が見えていないわけではない夏油が言う通り、基本的に呪術の世界は才能が8割。
伏黒恵が僅か5歳で特級なのはまさに才能の結果であるし、一昨年に襲撃してきた『Q』の人間兵器達も強力な術式を組み込まれていたが故に強かった。
が、そんな中、硝子は実にあっけらかんと『呪術界の例外』の名を口にする。
「直哉がいるじゃん?」
「アレはアレで努力の天才だろもはや。ロック・リーだよロック・リー。暇があったら自己鍛錬してるし、偶に
「
「アレ? 呪霊操術の呪霊って自我がないんじゃ無かったっけ」
「基本は無いけど、式神術を参考にちょっとした自我を植え付ける事に成功してね。自律稼働のチェックも兼ねて貸したんだけど……半殺しにされたよ。術式無しで」
「直哉、もう呪力量だけだと直哉以外の全生徒足しても届かないぐらいあるもんなアイツ。呪力効率も高いし……話逸れすぎじゃね? 進路の話じゃ無かった?」
と、
「でもまぁ、全員で高専就職なら、私も嬉しいかな。硝子もなんだかんだ言ってそう思うだろう?」
「まーね。折角同期なんだし、つるむのも良いんじゃない? 飲み会とか出来そうだし。酒飲もうぜ酒」
「酒ぇ? 俺下戸の甘党だからパスで」
「……そういえば何で悟は下戸なんだい? 五条家の遺伝?」
「いや、六眼のせい。酔うと脳が無意識に掛けてるフィルターが外れて何もかんも見え過ぎるんだよね。で、頭がイカれて吐く」
「滅茶苦茶弱点じゃん。アルコール系の術式とか気をつけなよ五条。あと
「あー、確かに薬物への防御は甘いかもなぁ俺。そっち方面も勉強するか?」
「した方が良いんじゃない? あ、そうだ。……よし。送信」
「硝子? 今何処にメールしたんだい?」
「伏黒先生に五条の弱点チクって『鍛えて欲しいらしいです』って言っといた」
「何してくれてんの? 俺死ぬじゃん」
「前に五条の弱点見つけて教えたら浴びるように高級酒呑ませてくれるって約束したんだよね。じゃあ仕方ないじゃん?」
「俺、硝子の私欲で売られたの!?」
「よぉ、さっきのマジか家入」
「もう来たし!?」
などと、残虐悪魔超人・体育教師伏黒甚爾の襲来で俄かに騒がしくなる四年教室。
その後臨時で開催された甚爾によるシゴキによって『LSDをたっぷり染み込ませた黒縄*3』によってたっぷりと幻覚剤の恐怖を味わった五条が暫く硝子以上に医学書を読み漁る本の虫になり、副次効果で彼の反転術式の精度が大いに向上する様になるのだが、それはまた別の話。
実質最終学年となっても尚、彼等の騒がしい青春は暫く続く様である。