九十九由基の弟子にして、呪術小1年所属の術師の卵でもある少年、与幸吉。
天与呪縛により極端に病弱な肉体を、長く苦しい訓練の末に会得した反転術式の常時展開と術式を活用した義手義足によってどうにか人並みの日常を得た、努力の人である。
そんな彼の術式『傀儡操術』は文字通り
「うおぉ! すげーっ! ガンダムだー! 凄いな伏黒!」
「うん、凄いな!」
そう、五条悟と夏油傑が任務終わりに一杯引っ掛けて気持ち良く酔った*1結果、ホビーショップで買ってきちゃった『ハイパーハイブリッドモデル』*2のザクとガンダムを、悠仁と恵の熱烈な要望で動かす羽目になっているのである。
「俺はエヴァ*3の方が好きなんだけどな……ガンダムは
「まぁ、ブツクサ言いつつしっかり動かしてやるのは人がいいよな、幸吉も」
「……2人の目がキラキラすぎて断り辛かったんだよ」
なんて言いつつ、ガンダムとザクを可動域の範囲でブンドド*4している幸吉だが、それはあくまで片手間。
彼が今本腰を入れて真面目に取り組んでいるのは、自身の得物である義手義足のメンテナンスだ。
正確には義手義足というよりは、強化外骨格に近い構造になっており、先ほど幸吉が言及したエヴァの『プラグスーツ』に近いデザインの首から下の全身を覆う事で、欠損した部位*5を補うのみならず、幸吉の身体活動全般を補佐してくれる優れものになっている。
反転術式についても幸吉の呪力供給が前提にはなるものの術式の行使システム自体はこの外骨格に組み込む事に成功している為、着ているだけで幸吉の繊細すぎる肉体を保護する事が可能な代物なのである。
もちろん、入浴などの際は脱いで自前の反転術式を回す必要はあるのだが、その時を除けば幸吉の脳にはそれほど負荷が掛からない仕組みになっているのだ。
この外骨格、ベースを考案したのは師匠の九十九由基なのだが、今では幸吉が色々と手を加えている為、すっかり彼のオリジナル機体となっている。
機体をバージョンアップする程に精密動作性や出力が向上しているカラクリは至極単純。幸吉が細かい作業が可能になればなるほど、その作品のクオリティが上がっていっているだけだ。
それ故に、その内幸吉のイメージ精度と製作物の精度が漸近していき頭打ちになるはずなのだが、幸い今はまだその段階には至っておらず、メンテナンスを行う度に幸吉の強化外骨格はより優秀なものへと改善され続けている。
「……随分と刃物を仕込んでるのね」
「
「えげつないわね。お姉ちゃんはともかく私には使わないでよ」
「いや、真希姐*6にも真依にも使うつもりはないよ、危ないし普通に死ぬだろ」
と言って『ナイナイ』と立てた手を顔の前で振る幸吉だが、真依はその発言に、さも当然の様に異を唱えた。
「いや、私はともかくお姉ちゃんは死なないんじゃない?」
そう言って、真依が視線を向けるのは、自身の双子の姉である禪院真希。釈魂刀により双子の宿痾を断ち切られたことで完璧なフィジカルギフテッドに覚醒し、その道の先達である甚爾と特級の九十九という2人の強者から薫陶を受けているその身体は、小学1年生として、というか人間としておかしいレベルの英雄的身体能力を有しているのだ。
が、正直言って、その事に真希があんまり自覚がないのもまた事実。周りにいる術師が上澄みどころか蒸留物レベルの連中しかいない為、『呪術師ならこんなもんでは?』という非常に間違った自己認識を抱いているあたりは、彼女もまだまだものを知らぬ幼児なのである。
「なぁ真依、私をなんだと思ってんだ? 普通に死ぬだろ。この刃滅茶苦茶切れそうだし」
「お姉ちゃんに刃がしっかり当たればね。この前の試合で、私のピルムを飛んできた端から掴んで振り回して全部壊したじゃない。*7幸吉の腕がミキサーになってもどうってことないでしょお姉ちゃん」
「……いやまぁ、やろうと思えば刃を捌くぐらいは出来るか? 幸吉、一回そのミキサー見せてくれよ」
「良いけど……『
「……結構見えるな」
「嘘だろ、展開速度コンマ
なんてやり取りを禪院姉妹とやりつつ機械いじりに勤しむ幸吉は、真希からの指摘を元に回転軸を複数設けるなどで見切りづらい斬撃軌道を描くように改良に勤しむ傍ら、悠仁と恵に混じってはしゃぎ出したパンダや棘の頼みでブンドドの追加*10を行う器用な真似を披露しつつ、友人との日常生活を楽しんでいるのであった。