フルダイブ修羅 ~リアルで殺人拳をマスターした僕がフルダイブMMOで無双したら続々修羅が集まって来た件~    作:ジャントゥ

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修羅たちの楽園

男が二人、エヌルエリアの一角の草っぱらで向かい合っていた。

 

決闘である。

 

すでに決闘を開始して2分が経過するが、どちらも構えてから動きはない。

 

二人とも見るからに尋常の者ではなかった。

 

比較して背の低い方の男は初期装備の皮鎧でこそあるものの、鎧を着こんでも分かる筋肉質な鍛えられた体をしている。また、その無精ひげの生えた顔には頬から口にかけて大きな斬り傷の跡があり、髭男の荒事まみれの人生を端的に表していた。

普段暴力と縁遠い堅気の世界の住人であっても感じ取れる暴力の世界の住人である。

 

大上段で刀を構える姿には一辺の疲れも見られない。

 

真剣で斬り慣れている。そういう迫力があった。

 

そしてもう片方、髭男と相対する男の方は……余りに異様な存在であった。

 

まず体がでかい。2mはあるだろうかという上背に、鋼鉄の綱のように引き締まった筋肉が隙なく搭載され、まるで金剛力士がごとく見た者に息苦しさと畏怖を与える鍛え抜かれ、締まりきった肉体。

 

そんな肉体兵器とも呼ぶべき体を包む漆黒のジャージは、その圧倒的な肉量によって内側から逼迫し、ボディスーツのようにぴっちりとしてしまっている。

 

そして顔から頭まで全てを包み表情を読み取らせない、攻撃的な印象を与えるフルフェイスの鉄兜ともヘルメットとも仮面ともいえるような装備。

 

まるで休日外でランニングをする特撮のダークヒーロ―のような奇怪ないでたちだった。

 

そんな仮面の男が構えーー両手を前に大きく広げ、まるでこれから抱き合おうとでも言うような独特な構え――で髭の男と相対している。

その構えの狙いは無機質な仮面からは読めない。

 

 

(……これが『1000年無敗の全殺流』、これが修羅王 コウガ、か……)

 

髭の男は仮面の大男――コウガを正面から見据える。

髭男とてただものではない。少年期に刀の魅力に取りつかれてから示現流を学び、それだけで飽き足らず人の道を外れ、闇にて人を斬ることで日々を食んで来た裏家業の人間である。

無論人を殺したことも、自分と同じように暴力を食んで生きる修羅とも戦った事もある。

 

しかしそんな男の目で見ても、コウガは異常だった。

 

(本当に人間かこいつは……?)

 

見た目のことではない。

仮面の男には、見る者の背筋を凍らせるおぞましい気配があった。

その威圧感は物理的な力を持って空間に満ち、息を詰まらせる。

髭男が暴力の気配を漂わせているとしたら、仮面の男は死の気配をまき散らしていた。

常人であれば目を伏せ、神に祈り、ただ仮面の男に目を付けられないことを祈ることしか出来まい。

死が肉体を持ったなら、この男のようになるのかもしれない。

一人の修羅を自認する髭男であったが、どのような修羅場をくぐり続ければ人間がこの様な化け物になるか皆目見当もつかなかった。

 

(人間だけならずあらゆる生物を素手にて殺すことを目的とした幻の流派、『全殺流』……。蒙昧な伝説、酒の肴のバカ話も、目の前にすればこうも恐ろしいものかよ)

 

緊張から逃れるため手中の刀――この戦いの為に用意したものだが、中々どうして悪くはない――を握る手にも、無意識に力が入る。

 

髭男は表情こそ変えないが、すでにコウガに飲まれかかっていると自覚していた。

何か変化が必要だが、先手で動いて勝てる想像が出来ない。

コウガも動かないが、同じような思いなのだろうか、それとも他に何か狙いがあるのだろうか。

焦りで口の中が酷く乾く――。

 

 

「コウガくん、時間大丈夫? そろそろイベントボス ポップしちゃうよ?」

 

「コウガさん、時間ないんですからちゃちゃっと殺ってくださいよ。それとも私か代わりに

やりましょうか?」

 

 

コウガが先程までずっと傍で侍らせていた二人の少女が、男二人から脇に少し離れた大きな岩の上で、焦れたように声を上げた。今回の決闘の立会人、ということだった。

 

幼げな印象の顔と、控えめに、しかし確かに女性的な丸みを持つ体がアンバランスで妙に淫靡な雰囲気を持つ軽装盗賊装備の小柄な黒髪少女と、少し胡乱な目付きの、そして装備を下から押し上げる爆裂なボディを持つ和装侍装備の金髪少女。

 

少女二人どちらも印象は違うが、目鼻立ちがハッキリとしており、端的には美少女と言って差し支えない。髭の男から見れば明らかに年若すぎるが、きっとコウガにはそれが良いのだろう。

 

その二人が岩の上に座りつつ、決闘に茶々を入れたのだ。

 

髭男は二人を一瞥し、女が男の勝負に口を挟むとは、と眉をひそめつつ、これほどの男でも趣味の女を傍に置き、あまつさえこんなわがままを許すのかと内心鼻で笑い――

 

 

「大丈夫、もう始めるよ。 今、整ったみたいだから――そうですよね?」

 

 

コウガの仮面の奥から、少女二人を宥める声がした。

とても穏やかで、まるで月のない夜の海のように暗く深い声だった。

 

コウガは少女たちの方を全く向いていない。

 

仮面の奥に潜む、何もかも飲み込み破壊するブラックホールのような魔性を宿した双眸が、

髭の男を静かに見つめていた。

 

 

髭男は愕然とした。

 

今、初めてコウガに人間的な共感が湧き、侮りによって緊張が解れた瞬間だった。

 

心のバランスが整った瞬間でありーー致命的な隙だった。

 

それを真剣勝負の中見過ごされたのだ。

 

コウガが動かなかった理由は、自分が緊張しすぎて動けないから、それが解けるのをただ待っていただけ――という事実は、自分の武を人生を歩む杖としてきた髭の男にとって余りに残酷な、心を傷つける凶刃であった。

 

そしてもしコウガがその気であったなら、今の少女に目をやった一瞬の隙をついて決着がついていたであろうという確信が、髭の男の心をさらに深く傷つけた。

 

この男に何としても切らねばならない。切らねば自分の生き方が否定される。

 

これほど強く、砕け散りそうなほど歯を噛み締めるのは髭男の人生で初めてであった。

 

 

「――キエエエエエエエエエエエエッッ!!!!!」

 

 

空間を引き裂く猿叫と共に髭男が一足でコウガへと踏み込み、大上段から刀を振り下ろす。

 

勝算のある動きではなかった。

 

しかしそれは自らの必死の心に従った一撃。

心が、魂が乗ったその一撃は髭男の人生において最速の一振りであった。

 

「――飢虎断首脚!!」

 

「バ、バカなっ!!??」

 

が、それはつまり相手を殺すという一念の剣ではなく、心の痛みから逃れるための自分可愛さの悪あがき。いかに速かろうとそれはすでにただの棒振りであって剣の技ではない。

 

そのような一撃、この世のあらゆる全てを素手にて殺すことを目的とする魔人に通じるわけが無い。

 

髭男の大上段からの唐竹割りをコウガの蹴りが下から迎え撃ち、そして無残、刀を真っ二つにへし折ったのだ。

 

鋼刃を肉体一つにて砕く、常軌を逸した功夫の錬りである。

 

「暴牛穿頭踵!!」

 

「ゴゲエッ!!」

 

そして刀を砕き、その勢いで天まで蹴りつけんばかりに伸びたコウガの右足が、そのまま髭男の脳天へと振り落とされた。

 

文字通り暴れ牛さえ即死させる衝撃に、耐えようもなく髭男の頭蓋は陥没し、衝撃で頭が胴体へと半ば埋まるほど押しつぶされる。頭や胴だけでなく、背骨や足骨もまとめて粉々になる一撃だ。

 

これを受けた者がどうして生きていられるだろうか。

 

髭男は力なく草っぱらに倒れ伏した。

 

髭男の視界は暗くなり、立ち会っていた少女たちが上げる歓声もすでに遠く聞こえる。

 

先手を与えられ、武器を奪われ、命も取られる。

 

言い訳の仕様もなく髭男の完敗であった。

 

後悔はあるが、同時に満足でもあった。

 

『全殺流』の、武の頂きを見て、直接感じたのだ。

 

自分の技は出すことさえできず一方的な結果であったが……コウガの力は暴力を信奉する者への祝福だった。

 

なんて荒唐無稽な、ありえないほどハチャメチャな戦闘力。

 

あれを知れた事は暴力を身近に置く者にとって、どれほど得難き幸運だろう。

 

個人の武は、暴力は、ここまで絶対的に至れるのだ。

 

自分の人生を捧げた暴力の世界の奥深さに感動の涙が出る。

 

髭男の周囲がどんどん暗くなり、別れの時が近づく。

 

「クフフ、刹那の攻防が本当に楽しかったですね、あー……最強無敵サムライソードさん? よければまた殺し合いましょう」

 

最後に場違いなほど優しい音のコウガの声が聞こえ、そして――

 

 

 

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――『ログアウト』。髭男、もといサムライソードは見慣れた自分の部屋のベットの上で覚醒した。

 

 

「ハァッ!ハアッ!ハア――ッ!」

 

咄嗟にフルダイブギアを頭から外し、サムライソードは改めてベットに倒れこみ深呼吸を繰り返す。

 

心臓が異常なほど跳ね、死んでないのに死にそうに苦しい。

 

最後の一撃は現実で受ければ確実に即死だっただろう。

 

「あれが『全殺流』、あれが修羅王 コウガか……」

 

生を実感するように、手を力いっぱい握り締める。

 

自分は生きている。生きているのだ。

 

「――フルダイブゲームでほんっっっとに良かった!!!! よしっ!デスペナルティ解除されたらすぐダイブして特訓だ!!! うおー! 打倒『全殺流』! 打倒『コウガ』!! 俺も武の頂きに至るぞー!!」

 

サムライソードは科学と時代の進歩に心の底から感謝した。

 

フルダイブゲームの進歩により、修羅たちは命をかけず失敗も恐れず好きなだけ全力で戦える戦場を得たのだから。

 

世はまさに修羅たちの黄金期であった。

 

 

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西暦2050年、超リアルな体感と超人的なアクション、魔法的ファンタジーを組み合わせ、

5000万を超えるプレイヤーを抱える超人気フルダイブMMO『バーサークブラッド』。

 

その新人プレイヤーである修多羅荒我(スタラ・コウガ)は現実世界で幻とも伝説とも呼ばれる最強殺人拳、『全殺流』の使い手であり、その実力からPvPが盛んな『バーサークブラッド』で圧倒的無双を繰り広げてしまう。

その活躍は『バーサークブラッド』の外にまで広まり、結果『バーサークブラッド』は現実、ゲーム世界の修羅が続々と集まって死ぬこともなく血で血を洗う修羅の園と化していく。

 

 

現実のジムで肉体を鍛え、阿修羅さえ凌駕する肉体派ゲーマー『スーパー マルオ』。

ヨーロッパで連続殺人を起こし、終身刑の身で刑務所からフルダイブする凶刃『ジャック・ザ・リッパー・ネオ』。

ゲーム知識を極め、設置魔法攻撃と時間差起動による広範囲焦土戦術で一戦闘1000人PKを記録した『シャイニングシンデレラ』。

謎の未来技術と適当イベント、課金のザル勘定より未来から来た中学生の集まりと噂される『バーサークブラッド運営』。

そして、1000年無敗、あらゆるすべてを殺す者、『全殺流』、『修羅王 コウガ』。

そのほかの血に飢えた有象無象に魑魅魍魎。

 

『バーサークブラッド』、略して『バブ』を所かまわず暴れまわる彼らを、人々はフルダイブ修羅と呼んだ。

 

 

 

 

 

 




暴力大好き、戦闘大好き、気軽でジャンクな小説を目指しております。

金、女、暴力暴力暴力、くらいの割合の作品になる予定なのでよろしくお願いいたします。

面白いと思ったら評価、感想の程よろしくお願いいたします。
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