フルダイブ修羅 ~リアルで殺人拳をマスターした僕がフルダイブMMOで無双したら続々修羅が集まって来た件~    作:ジャントゥ

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修羅を狙う恋愛蛮族

神楽坂 琴 の人生は、今、正に絶頂にあった。

 

修多羅 荒我くん。

 

もう、本当に、堪らないほど好きな人とふたりっきりのデートである。

 

入学式からこの一か月、必死に好き好きアピールしているのをことごとく受け流され、

友達からは完全に脈なしと言われていた所からの大チャンス。

 

琴の感覚では恥ずかしくて死ぬかもしれないというほどギリギリまで攻めた、自分の少ない『女』の部分全開の恰好をした甲斐もあり、コウガくんが明らかに自分を意識しているのを感じる。(それでも『バーサークブラッド』では余り珍しくない程度の露出だが……)

 

彼の視線が何気なくむき出しとなった琴のふとももに行く事があるが、彼はすぐ恥ずかしそうにそこから視線を逸らし、そして琴がさりげなく体を触ると、彼の体は少し固く反応したりするのだ。

 

とってもかっこよくて、優しくて、素敵な彼が、私を『そういう風に』意識している。

 

コウガくんのその視線や反応を感じる度に、琴はもう、その場で身悶えしてしまいそうなほど甘い痺れを感じた。

 

仮面を外していれば、と思わないでもないが、コウガくんの個人情報を守る為だし、

なによりあの仮面の下の彼の整った顔をこのゲームの中で知るものはいないのだと思うと、

なかなかどうして気分が良い。

 

琴自身、自分が完全にコウガくんに入れ込んで、入れ込みすぎているということは自覚している。

 

一度だって男女のお付き合いをしたことがない……というかお付き合い自体に大して興味が無かった自分が、こんなにも一人の男性に心囚われ、その人のことばかり考えているなんて、入学前の自分には想像も出来なかった事だ。

 

でも、仕方ない、仕方ないのだ。

 

だってコウガくんの顔がハチャメチャに良いのだ。

 

切れ長の涼しげな目元に、男性的ながらも無骨でないフェイスライン。

すっと通った鼻が顔全体の印象を引き締まったものにしており、顔のパーツの全てが、神の意図を持って精緻に作成されたよう。

 

浅黒く焼けた肌も健康的で良いし、肩に少しかかるような長さの無造作な黒髪も、野性味を感じさせて決して不快ではない。というか好き。ムチャクチャ好き。

 

しかも体つきがエロい。すごくエロい。

 

制服時の少し開けたワイシャツから覗く首元とか、手が大きくて骨張った感じとか、本を読むときに無意識に組んだ長い足とかもエロいが、今日なんて体つきが目立つパッツパツ黒ジャージ渡したら何の疑問もなく着てくれたのである。

 

ちょっと体曲げたり反るだけで、その体のしなやかさ、強靭さを想像させる脈動感があり、完全にエッチ。

 

このままキッツキツのタキシードとか漢服とかを渡しても着てくれるのでは?

 

これでは無知無知着エロドスケベ丈夫である。

 

初デートで無ければ琴は耐えられなかっただろう。

 

そのうえコウガくんの目は、なんていうかもう、底知れぬ魔性の物なのだ。

 

暗く、深く、何もかも引き寄せて離さぬ黒の星のように、覗いたものを支配する漆黒の瞳。

 

友達は、『面食いすぎる。顔は良いけどあんな大きくて怖い人よく好きになるね』と評したが、琴には全く理解できない。

 

あの目が良いのだ。あの体が良いのだ。あの声が良いのだ。

 

視線が合った瞬間、心臓を締め付け破裂させてしまいそうなほどドキドキさせてくれる目。

しなやかで、厚く、抱きしめたらもっと強く、壊れるほど抱き返してくれそうな体。

渋くて、深くて、甘くて、耳から脳を溶かして妊娠させそうな声。

 

あの魅力にどうして抗えるのか、そちらの方が琴には理解できない。

コウガくんの魅力全部に、もっと近くで、身体全体で溺れることが出来るような特別な関係に琴はなりたかった。

 

そのためならば『戦うべき野生動物の候補が減って困っている』という彼の謎すぎる悩みにだって協力する。

 

どうも彼は珍しい家業を継ぐために、長い休みの時はわざわざ野生動物と戦うため国内外に旅に出ているらしい。

 

全く意味が分からない。

 

中二病やナルシズムの一種かな、と思うが、もうそれさえ可愛く思えてしまう。

 

彼がそういうのなら、それを利用してもっとお近づきになるだけだ。

 

そして琴がプレイしていた『バーサークブラッド』はそれにうってつけだった。

 

5世代先を行くというリアルさを売りにしていて様々な動物型のモンスターもいるし、現実味があってもゲームだからケガもしなくて、旅なんてするまでもなく何度もすぐ戦うことができる。

 

何より自分が先行しているのでアドバイスを名目に二人っきりで長時間一緒にいられるのが良い。あわよくばコスプレだってしてもらえるかも……。

 

そう、全ては自分とコウガくんが、ずっぷり、ふか~い仲になるためなのだ。

 

神楽坂 琴という少女は完全に恋と情欲の奴隷であり、今日、掛かりきっていた。

 

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「シッーー!」

 

「gobu……!?」

 

 

ゲーム初期配置であるエヌルエリア内にある初心者の森、その裾で10匹ほどのゴブリンの群れが全員纏めて消滅した。

 

コウガがゴブリンを発見し特攻。

 

群れのど真ん中に降り立つと、ゴブリンが反応する前に全てのゴブリンの急所、眉間や水月などの全身の急所を打突し、抹殺したのだ。

 

「ふーん、ゴブリンの手ごたえは普通に人に近いんだ。このゲーム作った人たちって本当に凝り性なんだなぁ。猿とかでためしたのかな?」

 

目にも止まらぬ早業を披露した本人は、なんとも物騒な感想を呑気に述べた。

 

コウガの豊富な戦闘経験から言っても、『バーサークブラッド』の打感は現実そのものと言ってよい。

 

これならば十分に『全殺流』の訓練に使えるだろう。 

 

森の木の影からコウガの特攻を見守っていた琴が、さっとコウガの近くに陣取った。

 

「これでとりあえず初心者エリアのモンスターとはざっと全部戦ったけど、どうだった? 練習になりそう?」

 

「はい、おかげさまでかなりいいですね。殴った感じがかなり現実に近いですし、数戦えるのも、倒した後に死体が残らないのも助かります。強いて言うならすぐに消えやすいかなってくらいです。実戦だと死んだかどうかすぐわかるものではないので」

 

「全部瞬殺だったもんね。――それもバグじゃないみたいだし……」

 

「あ、ハイ、そうですね……?」

 

琴が自然な動作でコウガの胸元をタッチして、コウガのステータス画面を開いた。

 

(なんだがボディタッチが多い気がするけど、そういうゲームの仕様なんだろうか……?)

 

とコウガは思ったが、もちろんそんなことはない。

わざわざ対象に触らなくても、指を近づけるだけでステータス画面は開ける。

強いて言うならこれはゲームの仕様ではなくコウガにタッチしたい琴の性欲仕様である。

 

 

琴は自分の胸元も触り、自分のステータス画面を出した。

 

コウガと琴の前に手抜きを疑うほどシンプルなステータス画面が並ぶ。

 

=========================================

 

プレイヤーネーム:コウガ

 

LV5

 

STR 802 VIT 815 DEX 530 AGI 752 INT 80

 

フリーステータスポイント 50

 

 

 

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プレイヤーネーム:リラ

 

LV32

 

STR215 VIT 221 DEX 233 AGI 232 INT 160

 

フリーステータスポイント 0

 

=========================================

 

 

 

「現実の20歳男性の平均を100として、プレイヤーの能力をざっと数値化してるって話だから……コウガくんってステータスポイントも振らない初期状態で普通の男の人の8倍くらい力があるってことだよね。ステータス割り振って装備ちゃんとしたら飛んでもない数字になるんじゃ……?」

 

「いえ、どうでしょう。僕、自分がどれくらい力強いのか数字で知らないんですよ。握力計とか測りきれないですし、バーベルとかも限界まで持ったことないので……。もちろん人並以上の自信はありますけど。ゲームですし元々強いと数字盛る仕様なんじゃないですか?」

 

「そういうもの……かなぁ?」

 

「そうですよ、いくら僕の身体が大きいからって、同じ人間なんですから」

 

「うん……そうか、そうだよね、ゲームだものね」

 

もちろんそんなことはない。

 

『バーサークブラッド』は現実の肉体能力をフルダイブギアでリアルタイムで測定し、そのまま参照してステータスが変化するシステムである。

 

現実の肉体を鍛えれば、そのままゲーム内のステータスもアップするが、そこに付け届けも遠慮も存在しない。

 

ゲーム内、そして現実で鍛えた分強くなる事が売りでさえある。

 

そんなゲームでは最初から200に届く初期ステータスを持つ方が稀だ。

 

400や500というのは通常、レベルアップ時に溜まるステータスポイントというゲーム的下駄を現実で鍛えた体に履かせ、装備を整えて初めて到達するはずのステータスである。

 

それを遥かに超えるコウガのステータスはハッキリ言って桁外れの高さである。

 

――INT以外。

 

 

「しかしこの数字の中でひときわ目立つのはこの数字ですね。INT、つまりインテリジェンスが80。人並の80%って事でーー、そうか僕ってバカだったのか……確かに少し覚えがある……入試も頑張って勉強したのに足きりギリギリだったし……」

 

「こ、コウガくんはバカじゃないよ! 一応うちの学校偏差値そこそこあるし! それにもしバカでも私が勉強教えるから! ほら、私のINT素で160!」

 

「うう、僕の2倍の頭の良さ……。お世話になります神楽坂さん……!」

 

「大丈夫任せて! 一緒に図書館や家で勉強しようね! 」

 

「あ、ありがとう御座います! これが、友情……!」

 

INTは運営が魔法を後付けで実装した際、記憶力や想像力、ひらめきやモチベーションなどを運営の感覚でふわっと観測し纏めたステータスの為、「INTとはなんぞや? 上げるにはどうすれば?」 と運営に質問しても「魔法の効果に影響するステータス。栄養バランスを考えた食事と適度な強度の運動をして寝ろ」というカスみたいな説明がされた謎ステータスである。

 

実際の頭の良さを表すステータスではもちろんなく、魔法を使わないプレイヤーにとってほとんど飾りと言ってもいいステータスだ。

 

 

だがしかし、INTの高低が全くのでたらめに設定されている訳ではない。

 

 

「友、情……? うんうん、ねえコウガくん、ね? これからは神楽坂じゃなくて琴って、下の名前で呼んでくれない……?」

 

「へ? あ、近っ……」

 

気が付けば琴は元々お互いのステータス画面を覗き合える距離だったのを更に詰め、肌が触れ合いそうなほど近い距離で、潤んだ瞳でコウガを見上げていた。

 

戦いで感じたことのない圧力を感じ、知らぬうちにコウガは熊や虎相手でも下がった事のない一歩を後ずさった。

 

コウガは気が付いていないが、この神楽坂 琴という女、コウガの学業不安に漬け込んで図書館デートや家デートの約束を取り付けるに飽き足らず、更に距離を詰めようと言うのである。

求めれば求めるだけ手に入る状況に眼がくらみ、加減を知らない恋愛蛮族と化していた。

 

「あ、すいません、またつい苗字で呼んでしまって……あれ? ゲームで本名を使うのはダメなんですよね? 下の名前で呼んでも同じでは……?」

 

疑問はもっともであるが、蛮族は強引な攻撃の手を緩めない。

 

「うんうん、苗字はダメだね。でも私のプレイヤーネームはリラ、つまり楽器の琴の事だから大丈夫。琴って呼んでも親しい友達同士のあだ名で通せるよ。だからね?」

 

「んん……? そのままリラさんでいいんじゃ……? そういうものなのかな…?」

 

「コウガくんは……、私のこと下の名前で呼ぶの、嫌? 友達ならもっと親しく名前で呼んでほしいだけなんだけど……」

 

自分を見上げる琴の瞳に真剣な光が宿っているようにコウガには見えた。

 

(友達か……正直、友達なんてほとんどいなかったからよくわからないけど……琴さんの真心からの言葉なら、拒否する必要はないかな)

 

――未熟なり、コウガ。完全に蛮族の手中である。

 

その光は真に心から漏れ出る物であったが、しかしそれが下心から来る輝きであることが、コウガには分からなかった。

 

「なるほど……? 分かりました。じゃあそうしましょう――琴、さん」

 

――これがコウガの弱点……違和感や疑問があってもなんやかんやとりあえずまず受け入れてしまうという柔軟な、悪く言えば場当たり的な判断。

 

激強生命体ゆえの危機意識の低さが低INTの理由であった。

 

自分がいま、飢えた蛮族に襲われる生娘側である自覚が全くない。 

 

「~~~~~~コウガくんコウガくんコウガくん!!!!!」

 

「はい琴さん。そんなに喜んでもらえるとは……」

 

名前を呼ばれただけで喜色満面でぴょんぴょんと飛び跳ねる琴と裏腹に、コウガは少し申し訳ない気持ちになった。

 

自分にはどうも、人付き合いというのがよく分からない。

適度なスキンシップも、言葉使いの適切さも分からない。

 

父と母の顔も知らず、祖父に連れまわされる形で小さいころからずっと『全殺流』を一番にした生活をしてきた為、一年以上長く定住したことが無い。

 

『全殺流』は単純に面白かったし、一人が全く苦にならない性格の為辛くは無かったが、

おかげで親しい人付き合いなどしたことは無かった。

 

今のコウガのコミュニケーションはつまり、祖父との関係以外、本なりテレビなりから参考にした血の通わぬ空論と、友人のいない学校での水のように薄い経験を両輪としていた。

 

だから下の名前を呼ぶのは少し馴れ馴れしいかな、という知識でなんとなく苗字で呼んでいたのだが、すぐにコウガを下の名前で呼んでいた琴には、きっとそのことで距離を感じさせていたのだろう。

 

だからこんなに小さな事で喜んで……それが申し訳ない。

 

こんなに心を開いてくれた友人に、もっと自分から親しくなる努力をしなければと強く思う。

 

コウガは多少狂っていて、コミュニケーション能力にも難があったが、善や優しさには同様に報いたいという価値観はあった。ただの戦闘狂ではないのである。

 

しかしまぁ、その相手の琴はといえば心がどうのと小難しく考えておらず、今だって喜色満面というか、コウガの舌の上で自分の名前が転がされるという喜悦に悶えているだけであったが。

 

そして――

 

「コウガくんコウガくん! もうバトルは切り上げて私のプライベートエリアに行こう!! ね! 行こう!!!」

 

この蛮族、更に更に味を占めて行くとこまで行こうとしやがった。

 

プライベートエリアとはつまり、ログが残らず映像記録も残せない、プレイヤーが管理する課金エリア――一般的にはワンルームの小部屋から小さめのダンジョンまで様々――だが、記録が残らないのを良いことにそこを如何わしい何某に使うのはプレイヤー暗黙の了解となっていた。

 

フルダイブゲームの進歩が早すぎて法整備が整っていない為の闇である。

 

その闇にコウガを連れ込もうというのだこの女。

 

琴はコウガの両手に自分の両手を絡ませ、絶対に逃がさん、という強い意志を露わにした。

 

「わ、わ、プライベートエリア、ですか? それはどういう――?」

 

「大丈夫、怖くない、怖くないから!! 私初めてだけど絶対気持ちよくするから!!頑張るから!!」

 

「はぁ、なんだかよくわからないですけど、よろしくお願いしま――」

 

「テメコラ!!『バブ』でいちゃついてんじゃねぇぞゴラァ!!!!」

 

――そうして脳みそ茹って不純異性交遊のラインをぶっちぎろうとした琴を、突如謎の怒声が阻止したのである。

 




暴力大好き、戦闘大好き、気軽でジャンクな小説を目指しております。

金、女、暴力暴力暴力、のなかの女がこのヒロインです。

愛欲の強い娘ですがよろしくお願いします。

面白いと思ったら評価、感想の程よろしくお願いいたします。

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