フルダイブ修羅 ~リアルで殺人拳をマスターした僕がフルダイブMMOで無双したら続々修羅が集まって来た件~    作:ジャントゥ

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修羅、クズガキを抹殺する

 

「おっ、αチームの方でもう5人キルしたってよ。早いねー」

 

「5人みんなリア友だったぽい? ダッサ! αチームって3人だろ? 5対3で負けるとかダッサ!!」

 

「『バブ』はリアル重視の対人ゲーだからな。リアル雑魚が群れても話になんねーよ」

 

「マジそれなー」

 

初心者の森の裾で、少年達4人がけもの道を騒ぎながら散策していた。

 

少年たちは皆思い思いの武装――戦士職の物であったり魔法職の物であったりーーをしていたが、明らかにゲーム初心者帯の物でない、立派な武装である。

 

周囲のモンスターを警戒もしない彼らの様子は明らかに浮いており、レベル上げや、アイテムの探索に来た風でもない。

 

彼らの目的はだた一つ、今日も今日とてゲームを始めたばかりのプレイヤーをPK(プレイヤーキラー)するため、初心者エリアのエヌルエリアにギルド仲間で集まり、探索魔法で初心者プレイヤーを探して森を散策していたのである。

 

少年たちの行いは通称『初心者狩り』と呼ばれ、多くのプレイヤーから蔑視される汚い行為である。

 

しかし、『バーサークブラッド』内では決して違反行為ではなかった。

 

『バーサークブラッド』はPK推奨のゲームであり、セーフエリア――PK不可エリアなどという軟弱な物は存在しない。

 

街エリアなどは言うまでもなく、課金要素のプライベートエリアさえ、中に案内さえされればそこでエリア主をPKできる始末である。

 

そのため、集団で一人に対して粘着してPKを実施した場合、相手がゲームに入るたび複数人でPKし装備やアイテムを強奪、多重デスペナルティのステータス低下によって実質ゲームプレイ不可能にすることが出来た。

 

このシステムはプレイヤーからかなり賛否あるが、現在まで一度として運営から修正が入ったことが無い、つまり正規の遊び方である。

 

無論それを良しとしない有志のプレイヤーも多数存在しており、それらが対立し、PKギルド、PKK(プレイヤーキラーキラー)ギルドが乱立していた。

 

そのため初心者エリアのエヌルエリアは、普段大手のPKKギルドが巡回しており、ある程度の規律や安全が保証されていたのだが……。

「ギルメン同士で結婚とかキモくね? ゲームとリアルの区別ついてないんじゃないのあいつら?」

 

「それを他のギルメンも祝福してリアルでお祝いオフとかマジでイカレてるわ。絆ってやつ? 正義マン達って群れてそういうベタベタしててマジキモイ」

 

「セックスとか正常位しかしなさそー」

 

「マジそれなー!」

 

ギャハハハと下品に嗤う彼らとて、数十人規模のPKギルドの一員であり、仲のいい一部はあつまってオフ会をしているので完全に同じ穴のムジナであるし、結婚式オフ会で姿を見せぬ大手PKKギルドの目を盗んでわざわざ初心者をPKしにきているという点でより情けない側の人間である認識は彼らにはなかった。

 

自分たちは対人戦を畏れぬ、誉れ高き戦士なのだという歪んだ認知が、その言動には多分に含まれていた。

 

5000万を超えるプレイヤーを抱える超人気フルダイブMMO『バーサークブラッド』。

多くの人間が集まればこういうクズも集まるのは自然の節理ではあろう。

 

 

下品なジョークで騒ぎながら、4人は程なくして獲物を見つけた。

 

探知魔法に感があり、森の裾近いところで二人、男女のペアが互いのステータス画面を覗いているのを見つけたのである。

 

4人は二人に気が付かれない距離で一度身をひそめた。慣れた動きだ。

 

彼らの経験上、男女のペアが二人きりの場合――時折濡れ場になることがあった。

 

それは少年たちが普段見るVRAVとは違う趣があり大変いやらしかったし、盛り上がったタイミングで突っ込むと、それはそれは面白かった。

 

そのうえ、超人気MMO『バーサークブラッド』――人々が支持する『バブ』内で不埒な行いをするプレイヤーに天誅を与えることができるのである。

 

偽善のPKKギルドより、よっぽど正義を執行していると少年たちは内心胸を張ってさえいた。

 

つまり少年たちは自分たちをダークヒーローのように思っていて……実際の所は、強者に隠れて数に任せて弱い者いじめをする覗き魔でしかないというのは、こそこそと茂みに隠れる少年たちの姿からも明らかであった。

 

 

木の影から覗く男女のペアは異質な組み合わせだった。

 

女の方は小柄で、自分たちと同じくらいの年頃であろうか、遠目から見ても明らかにかわいい少女である。

 

それが大変煽情的な、体のラインが出るような装いで、黒いタイツと黒いショートパンツの組み合わせによって生まれた白い肌の絶対領域がいやらしい。

 

近くによって見れば更にエロいだろう。

 

少年たちは皆股間を熱くした。

 

『バーサークブラッド』にはプライベートバリアモードという異性がプライベートゾーンに体が触りそうになった時、間に無敵壁を張ってそれを防ぐモードがある。

 

しかし男女のペアの場合はそれを張っていることは稀で、女が状況を把握してログアウトする短い間でも十分楽しめた。

 

お楽しみの最中に突っ込んで、男の情けない所にショックを受けている女に性的な悪ふざけーー少年たちには唾棄すべき卑劣な行いであるという認識が無いーーをするという少年らの存在もまたフルダイブゲームの進化に法整備が整っていない為の闇と言えたあった。

 

股間を充足させた少年たちは、血走った目で男の方を観察する。

 

楽しむには状況を正しく判断する必要がある。気分は獲物を追い立てるハンターだ。

 

情けない姿を晒すはずの男の方は……なんというか、奇怪であった。

 

常識離れした長身に、70年ほど前の格闘漫画の主人公のごとく、いやそれを上回るレベルで筋肉ムキムキのマッチョマン。

 

そして顔から頭まで全てを包み表情を読み取らせない、攻撃的な印象を与える仮面は、まさにラスボスの風格。

 

だというのに全身は漆黒のピチピチジャージを装備しており、余りにも印象と食い違っている。

 

まるで休日外でランニングをする漫画のラスボスのようないでたちの奇怪な大男。

 

しかしネタ装備というには余りにも肉体の圧が強すぎて、少年たちは一瞬気後れしてしまう。

 

「なあ、あいつデカくね?」

 

「でもあれ、オシャレ装備のジャージに悪魔騎士の仮面だろ? VIT20も上がんないべ。それに武器も持ってない。経験者からいらない装備もらったんじゃね?」

 

「やっぱ初心者か。カモいなー」

 

「マジそれなー」

 

 

『バーサークブラッド』は基本体が大きいプレイヤーが有利だ。

現実の肉体能力をフルダイブギアでリアルタイムで測定し、そのまま参照してステータスが変化するシステムのためである。

 

しかしレベルアップ時に溜まるステータスポイントというゲーム的下駄とステータスをこれでもかと盛る武装があればそんなものは簡単にひっくり返る。

 

まして相手は装備から見て初心者の可能性が極めて高い。VITが低いカス防具を装備しているのだから。

 

大男がなにか格闘技をやっているなら少しは面倒かもしれないが、そんなものは誤差だろう。

 

悪意と武器を持った複数人に襲われるという状況は、慣れのない人間なら必ず動きが止まる。

 

いつも通り、余裕の相手だ。少年たちは下卑た顔つきを歪めほくそ笑んだ。

 

しばらく覗いていると少女が何かしら大男と話して、ズイっと体を寄せたのが見えた。

 

少年たちは互いに目で合図して、息をひそめて男女に近づく。

 

そして――

 

「コウガくんコウガくん! もうバトルは切り上げて私のプライベートエリアに行こう!! ね! 行こう!!!」

 

「はぁ、なんだかよくわからないですけど、よろしくお願いしま――」

 

まずい! プライベートエリアに逃げられる!

 

プライベートエリアへの移動はワープゲートが開けば一瞬だ。

獲物が消える事に焦った少年たちは一気に藪を超え二人の前に躍り出し、

 

「テメコラ!!『バブ』でいちゃついてんじゃねぇぞゴラァ!!!!」

 

怒声にて男女の気を引き留めることに成功し――

 

「ひっ!!??」

 

――そして、一瞬で後悔した。

 

藪から飛び出た少年たちに向き直った仮面の大男。

その仮面の奥に潜む眼。それが余りに自分たちと住む世界の違う怪物の目だったのだ。

 

その眼には少年たちが見たことも、想像したこともない暗い光がギラギラと輝いており、あらゆる命を殺し尽くす、と言外に宣言していた。

 

感受性が低く想像力のない少年たちでさえ分かる、圧倒的な害意を含む邪悪な眼。

 

絶対に、間違いなく、まともな人間ではない。

 

「な、なんだてめぇその目は!!」

 

「しょ、初心者のバブちゃんが調子のってんなよ!!」

 

「マジそれな!!!」

 

しかしこれはゲームだ。

 

いかにやばい奴でも、バ―サークブラッド初心者ーー通称バブちゃんであればいかにリアルで強かろうと関係ない。

 

少年たちは何とか気を取り直して更に怒声を上げる。

 

もしかしたら、万が一もしかしたら仮面男が普通の人間でびびるかもしれないという期待を込めて。

 

だが、願い虚しくーー。

 

「――えいっ」

 

「おぺっ!?」

 

仮面男のビンタ一閃。一瞬で3mの距離を詰めた仮面男が少年の一人の首元を掴み、そしてビンタで首の骨をへし折った。まず少年が一人死んだ。

 

「えいえいっ」

 

「ぷぺっ!?」

 

「ほぺっ!?」

 

仮面男のビンタ二閃。掴んでビンタで首の骨をへし折られ、少年が二人死ぬ。

 

 

「ハアッ!!??何がーー」

 

「えーー」

 

「コウガくん!その人たち人間!プレイヤー! 山賊のモンスターとかじゃないよ!?」

 

目にもとまらぬ早業で4人目が死ぬ前に、少女――琴が声を上げた。

 

別に少年たちを護るためではない。ただ大男ーーコウガが少年たちをモンスターと勘違いして適当に攻撃しているのをとっさに感じ取った為だ。

 

「え!? このガラの悪い人達、ちゃんと人なんですか!?っていうか人に直接攻撃できるんですかこのゲーム!?」

 

「うんうん。人気のゲームだからね。変な人も多くいて、中にはこういう人たちもいるんだよ。それに人と戦うのは大人気コンテンツだからね。PKって言って沢山の人がやってるよ。この人たちもそれで襲ってきたんじゃないかな……最悪のタイミングで」

 

琴はその明晰な頭脳で読み取った現在の状況をサラサラとコウガに伝える。

 

微笑みながら淀みなく説明しているが、その眼は全然笑っていない。

 

この襲撃で失われたもの……一発逆転のハメ殺し大チャンスを奪われた現実を必死に受け入れている淀んだ眼だった。

 

それに反してコウガの眼は驚愕と感心、そして興奮で強く輝く。

 

「すごい!! いきなり襲われるとか実戦さながらですね!! こんなに突然人に襲われたの大陸にトラを倒しに行った時以来ですよ!! トラを倒したら地元の神様の化身みたいな扱いだったみたいで現地の人たちの殺意がすごくてですね――ほらこの血走った目! 荒い息! まさにこんな感じです!! 本当にリアルだ!!!」

 

「……ああ、大興奮のコウガくん可愛いなぁ……私もそれくらい激しく触ってほしい……」

 

「いてえ!いてえ!ひいいっ!?なんだよコイツら!なんだよ!?」

 

にこにこコウガはビンタの手を最後の少年の頬の直前で止め、その指で少年の目をひん剝かせたり、口をひっぱったりして無遠慮にその感触を確かめた。

首元を抑えられた少年は抵抗もできない。

 

人間と戦えるのだ! この偏執的なリアルさで! 人間と!!!

 

コウガの腹の奥から熱い興奮が燃え上がった。

 

野生動物と戦ったり、ゲームの中でNPC相手に訓練するのが嫌いとは言わない。

 

だが、やはり、人間と戦うということは、意志と知恵持つ獣と戦う事は本当に特別に楽しい。

 

だが現実では命は一つ、戦いが楽しいからと言って決して簡単に賭けていい物ではなく、奪っていいものではない。

 

それがこんなに気軽に死ぬまで戦えるなんて――!!

 

 

捕まっている少年の方からはコウガがワープして目の前に現れたようにしか見えず。ビンタの腕の動きさえ見えなかった。

 

無遠慮に撫でまわす手は今にも首をへし折りそうな程力を強く、首元を掴む手は少年が身もだえしてもピクリともその場を動かない。

 

その力は人間離れしたもので、少年を見る目はコウガの目は、人ではなく物を見る目に見えた。

 

「ち、チーターだチーター! 一人もいないなんて無茶苦茶言ってると思ったらやっぱいるじゃねーかクソ運営!!!」

 

「ちーたー? ああ、チーターより速いですよ僕」

 

「なんだよーもう!! 日本語通じないかよ―!?」

 

「コウガくんコウガくん、チーターってゲームでズルしてる人の事だよ」

 

「ゲームでズル……? え、なんで? そんなことする必要あります?」

 

「まー、世の中にはホントいろんな人がいるから」

 

「はー、なるほどー……僕がズル? 参ったな、そんなことしたつもりないけど、意図せずとも反則をしていたとかそういう……? もしかして開始の合図とか無視しました?」

 

「いやーそういう事じゃないと思うよ?」

 

「うっ、クソっクソ!うごかねぇ!クソッ!」

 

コウガと琴の呑気な会話の傍ら、最後に残った少年はコウガの手から必死に逃げようとしていた。

 

最低のエロ助の彼はもちろんフルダイブギアからのフィードバックを最高――非推奨レベルにしている。

 

そのほうがいたずらしたときに感じる感触がリアルっぽいからだ。

 

しかしそれはゲームで死んだ際の痛み、衝撃もリアル化させてしまう。

 

流石にゲームで死んだらリアルでも死ぬなどということはないが、それでも噂でまことしやかに死ぬ可能性が囁かれる程度には痛く、暗く、恐ろしい。

 

初心者狩り狩りされるなんて、露とも思っていなかったのだ。想像力の欠如である。

 

かといってログアウトもできない。

 

通常デスペナルティで失われるのは少量の経験値と、ランダムの装備、アイテムが一つのその場でのドロップである。しかしプレイヤー同士の対戦中急遽任意でログアウトした場合、通常死より重いペナルティ、極大経験値消滅と複数装備・アイテムドロップが発生するためだ。

 

とくに装備ドロップは畏れられ、ほかのフルダイブゲームの癖で咄嗟にログアウトしたプレイヤーを憤死させたという伝説があるほどであった。

 

評判はすこぶる悪いが、運営はこれをまったく修正しない。

運営に質問が来た時には一度戦ったら死ぬまで戦えとのたまう筋金入りである。

PK推奨ゲーのくせにむしろPKしづらくしているバカ運営の誹りをプレイヤーから受ける仕様であった。

 

少年の装備はゲーム全体で見ればそこまで高価なものではなかったが、それでもリアルマネートレード、現実の金銭の取引で一つ数千円はするものがそろっていた。

それを失うのは少年の身、中学生としては余りに大きい。

 

「あー!!嫌だ!嫌だ!バカ!!離せよ!!クソ!俺はギルドマスターだぞ!ギルド総出で復讐してやる!掲示板でも晒してやるからな!!」

 

「奇襲するときは声を上げない方がいいですよ。慣れてる人間はべつに萎縮しませんから。今回を糧に次は頑張って――」

 

痛みとログアウト、どちらも嫌で駄々をこねる少年が半ば何を言っているかわからないままコウガはビンタを振りかぶりーー

 

「あ、待ってコウガくん? ちょっと思いついたんだけど……もっと沢山の人と、何十人といっぺんに戦ってみたくなーい?」

 

「ええっ!?いっぺんに何十人と!?」

 

――素敵な琴の提案にその手を止める。

 

自分の思い付きに愉快そうに微笑む琴の瞳には復讐と打算の光が映っていた。

 




暴力大好き、戦闘大好き、気軽でジャンクな小説を目指しております。

そろそろ暴力が加速し始めますので、お付き合いの程よろしくお願いいたします。

面白いと思ったら評価、感想の程よろしくお願いいたします。

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