フルダイブ修羅 ~リアルで殺人拳をマスターした僕がフルダイブMMOで無双したら続々修羅が集まって来た件~    作:ジャントゥ

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修羅、ギルドにカチコミする

 ――雑魚はバーサークブラッドに要りません。我こそはと思う強者募集。一緒に雑魚狩りしてバーサークブラッドのレベルの高さを護りましょうーー社会人不可ーー。

 

 

これが中堅PKギルド『弱肉強食BBガーディアンズ』の募集要項である。

 

ギルドメンバーは総勢42名。平均レベル60。要項通り全員学生。主に中高生。そして要項で規制してるわけではないが、ギルドメンバーの性別は全員男。

 

元々は男女混合でギルド名にも弱肉強食はついておらず、PKギルドでもなかった。かつてのBBガーディアンズはギルドマスターが若年ながらそれを補佐出来る良識あるプレイヤーも在籍している、特に年齢や性別縛りもない平凡なギルドでしかなかった。

 

しかしギルドのギルドマスターを含む一部の学生層がPKを、それもかなり質の悪い粘着と性犯罪紛いのことを行ったことが発覚。

 

良識あるメンバーがギルドマスターに悪質なPK行為をやめるよう諭したところ,

その態度を『軟弱』としてギルドマスターは同じ仲間であるはずのギルドメンバーを取り巻きとPKしたうえで追放。挙句に粘着と誹謗中傷を行った為、エロクソガキ共と一緒にいられるかとまともなメンバーは全員ギルドを脱退した。

 

その後残ったクズ人間の煮凝りのようなギルドに、他のコミュニティからはじき出されたクズ共が集まって数を増やし、それにともない名前を変えたカス人間集積ゴミ箱ギルド。それが『弱肉強食BBガーディアンズ』である。

 

 

そのギルドハウスは初心者エリアのエヌルエリアにほど近い『新都バルカーン』にあった。

 

バルカーンは初心者のレベル上げに最適なエヌルエリアへのアクセスの良さから初心者向けとなるはずだった街である。

 

だがそうはならなかった。

 

ゲーム初期、『新都バルカーン』はもっとも多くのプレイヤーが拠点とする『王都アルキング』と、当時ゲーム最前線エリアの『戦都アルバトル』からはじき出された人間性に問題のあるプレイヤーが初心者を食い物にするために集まる悪都と化してしまったのだ。

 

その影響で初心者の減少と質の悪化で急速に治安が悪化するバーサークブラッドを救うため大量のPKKギルドが協力してPKギルドの巣窟を根絶やしにするため都市攻めを実行。

 

バーサークブラッド初の超大規模PvP、3万対3万の市街地戦『新都バルカーン攻略戦』が実施された歴史ある街である。

 

今のバルカーンはかつての悪都の流れを残すPKギルドと、それをぶっ潰したPKKギルドの拠点ーーギルドハウスが数多く置かれる、まさにPKの都といった様相。

ギルドメンバーが思い思いに飾り付ける奇妙な外観のギルドハウスが並ぶ、独自色の強い街となっていた。

 

しかし、敵対しあった者たちが集まるからと言って治安が悪いわけではない。むしろ治安はとても良いと言える。

 

なんといってもこのバーサークブラッドというゲーム、闇討ち、カチコミ、裏切り上等の頭蛮族仕様である。

 

準備不足で孤立すれば、あっという間に自分たちより強いギルドに攻められてギルドハウスごと焼き討ち強奪の憂き目にあう。

 

そのため多くのギルドは近場のギルドと相互防衛協定を結び、お互いが攻められたときに戦力を融通するのはもちろん、互いの守衛NPCの防衛範囲にお互いのギルドハウスを含むなどの協力体制をひくことで、他ギルドを牽制するのがスタンダードとなっている。

 

そしてこの街はPKとPKKが直近で対立したままその動きが起った結果、こんがらがるほど協定が入り組んでしまい、街中で最下層ギルド同士が角を突き合せただけで街全体のギルドがぶつかり合う可能性がある、バーサークブラッドの恐るべき火薬庫と化していた。

 

現在のこの街周辺はPKとPKKがしのぎを削るエリアでありながら、街中であればちょっとした小競り合いも他プレイヤーから総叩きに合う、街中でもめ事を起こさないなら実質セーフエリアと言える安全な街となった。

 

だから悪いことは街の外でやって、都合が悪くなれば周囲が飽きるまでギルドハウスに籠って他のギルドやゲームをくさして暇つぶし。

そうやって『弱肉強食BBガーディアンズ』は街と共にこれからも存続するはずだったのだが……。

 

 

「よしよし、これで私達、弱肉強食BBガーディアンズのメンバーだね。コウガくんもなれてる?」

 

弱肉強食BBガーディアンズのギルドマスターの少年を脅しつけてギルドメンバーになった琴がなにやら満足げに頷く。

 

「はい、多分。ですがぎるどめんばー?になると何がどうなるんです?」

 

「フフフ、大丈夫大丈夫、私に任せて。今から私が言うようにすればきっと血風吹きすさんでコウガくんも大満足する結果になるはずだよ、楽しみにしててね」

 

「それは……楽しみですね!よろしくお願いします!」

 

「うんうん、無茶苦茶にするぞ~」

 

コウガは琴の企みを聞きながらニコニコと微笑む。

 

コウガの脳みそでは琴の思惑などサッパリ分からないが、友達の悪だくみに乗って遊ぶなんて生まれて初めての経験で、ワクワクが止まらないのだ。

 

それに琴の企みは血風がどうのとかなり暴力的らしいが――そもそもこれはゲームの中の話、しかも人同士が戦える仕様から察するにとんでもなくバイオレンスなゲームの中の話なのだ。当然、それを遊ぶ他のプレイヤーもバイオレンスドンとこい、むしろ望むところというわけなのだろう。

 

なんて素晴らしい人たち!! なんてすばらしいゲーム!!

 

コウガはこのゲームを遊ぶ人たち、作った人たち皆を熱く抱きしめたい気持ちだった。

 

皆、自分と同じように戦うことが好きなのだ!

その一心が同じなら、それは血より濃い絆で結ばれた同士とさえ思える。

 

自分と同様の心持ならば――戦いの中、如何様に殺されようと文句はあるまい。

 

コウガの双眸が不吉な孤を描き、細くなった目は暗い光を強くする。

 

それはコウガが闘争に囚われた狂人である証明であり、見る者にこれから訪れる狂騒と暴力の嵐を予感させる輝きであった。

 

しかし、その嵐が伴う力と火が『弱肉強食BBガーディアンズ』のみならず新都バルカーンをも灰塵に帰す事となるとは、たとえその光を見たものといえど、想像もできなかったに違いない。

 

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「こんにちはー!!『弱肉強食BBガーディアンズ』でーす!!皆さんをぶち殺しにきましたー!!」

 

最大手PKKギルド『PKぶち殺会』の有名RPGの酒場をモデルにしたギルドハウスのエントランスに、物騒な内容の元気な声が響き渡る。

 

テーブルを囲んで今日はどこを攻略するか相談するもの、バーカウンターで他のメンバーと情報交換するもの、ただ友人と立ち話に興じるもの……種族、職業、年齢様々な何十人のエントランスにいたプレイヤーが一斉にその声の方を向いた。皆一様に困惑の表情を浮かべている。

 

(琴さんって肝座ってるなぁ。背は小さいけど腹掻っ捌いたらホントに大きな肝してそう)

 

何十人分の訝し気なーーいささか負の感情の混じった視線をその小さな体に一身にうけながら不敵に微笑む琴に、隣に立つコウガは内心感心していた。

 

視線はときに凶器となる程人を苛むものである。これを真正面から受け止め平然としているのはかなり図太い証拠だ。

 

一見細身で可憐な琴がこんなことを出来るとは。人は見かけに寄らない。

友人の意外な一面を知れて、コウガは少し嬉しい気持ちになった。

 

 

ざわつくエントランスの奥のテーブルから、一人明らかに豪華な重装備の戦士職の男がコウガ達の方へ近づいてきた。ちょっと丸っこい、カエル頭の獣人戦士だ。

 

チラとコウガとも目があったが、すぐ逸らされ、琴の方へと向かっていく。

 

周囲がその様子をうかがっている事からも、ギルドの役職持ちなのかもしれない。

 

 

「弱肉強食BBガーディアンズってあのPKギルドの? 女の子が入るようなギルドじゃ……ああ、もしかして初心者さんが騙されてるのかな?あのね君、この町でギルド同士で揉めるなんてしたらーー」

 

話しかける男を尻目に、琴がコウガに目配せした。

 

おっといけない。自分もさっき打合せした通りにしなければ。

 

コウガは琴とカエル戦士の間に割って入り、カエル戦士の首を掴んで釣り上げた。

 

「ーーぬるい事を言うんじゃあない」

 

「ぐえ!?」

 

カエル戦士は首を締められたまま宙吊りとなり、空中で足をばたつかせながらまさに押しつぶされたカエルのような声を上げた。

 

「全員僕が皆殺しにしてやろうというんだ。雑魚なりに必死に抵抗して見せろよ」

 

琴が教えてくれたのだ――人間同士戦う時はロールプレイをして戦うのが一般的だと!

そしてPKを仕掛ける側は、とにかく悪そうにロールプレイをするのがマナーなのだと!!

 

納得である。

 

コウガと琴を襲ったPKもかなりガラが悪く見えたが、そういうロールプレイが一般的だとしたら納得だ。普通に考えればあんなにカスみたいな人間がゾロゾロいるわけがない。

このゲームをより楽しむため、善人悪人問わず思い思いのロールプレイをすることでこのリアルなバイオレンスゲームの没入感を更に高めているというわけだ。

 

郷に入れば郷に従え。コウガは遊びの場で水差し野郎になる気はない。

 

これからやろうとすることを考えればとにかく悪人のロールプレイが良いだろう。とコウガは一人納得する

 

それにこんなにたくさんの人といっぺんに戦えるのだ。

100人はいないだろうが、全員武装を携帯している。一人でどれだけぶち殺せるだろうか。

 

まさかこんな形で夢が敵うなんて――どうしようもなくワクワクする自分がいる。

 

「あは、アハハハハハハ!!!」

 

体の内側から獰猛な喜びが溢れてきてしまい、つい、演技を超えた笑いがでた。

 

(どうも僕は自分で思うよりずっと狂暴な、悪人みたいだし、悪人は悪人らしくした方がよりらしいよね)

 

「さあ!まず一人だ!!凶鳥首握殺!!」

 

「ゴゲッ!!??」

 

「そら!食らえ!!!」

 

「キャッー!!?」

 

 

コウガは持ち上げていたカエル戦士の首を片手でへし折り、その死体を酒場のバーカウンターに投げつけた。

バーカウンター奥の酒棚に死体が突っ込み、酒瓶が一気に複数割れて硬質な鋭い音が鳴り響く。

空中に散る酒とガラス片がきらめき、場違いなほどに美しい。

 

「間抜けどもめ!お前らが鈍いからもう一人死んだぞ!」

 

これ以上ない宣戦布告だ。

 

「野郎やりやがって!!!」

 

「初心者狩りしか出来ないカスギルドが調子にのんなよ!!」

 

「一気にたたむぞ!ほかのギルドの連中が来たら大問題になる!!」

 

「やべーゲコ太さんの剣ドロップしちまってる!? 誰か拾え拾え!!?」

 

 

近接職が虚空ーーアイテムボックスから武器を取り立ち上がり、魔法職の杖が煌めく。そうか、遠距離職には銃を使う人までいるのかーー全員が全員、自分を殺す気なのだ。

 

全く愉快、痛快である。

 

自分に集まる殺意のほどばしりを受けて、コウガ脳は完全に頭パーでハイテンションモードに突入。

 

「お前たちが皆死に絶える前に教えてやろう。――僕はコウガ、『全殺流』のコウガーーお前たちの死だ」

 

新都バルカーン崩壊の序章は、猛り狂ったコウガの黒歴史から始まったのであった。

 




暴力大好き、戦闘大好き、気軽でジャンクな小説を目指しております。

端的に言ってコウガは我欲の塊で、琴も同様です。

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