フルダイブ修羅 ~リアルで殺人拳をマスターした僕がフルダイブMMOで無双したら続々修羅が集まって来た件~ 作:ジャントゥ
「お前たちが皆死に絶える前に教えてやろう。――僕はコウガ、『全殺流』のコウガーーお前たちの死だ」
仮面をつけたその奇怪な大男は、ハッキリと、ギルド全員に言い放った。
舐めやがって、とすぐさま仮面の大男をなで斬ろうと近くのソードマンが鞘走る。
「な、はッ!やってみやが――ゴゲッ!?」
「ほうら、やってやったぞ!」
仮面の大男はまず正面から迫ったソードマンの袈裟切りを、剣の刃の腹を軽く手の平で押すようにずらした。
そして返す手を手刀としてソードマンの首を力づくで切り落とした。
そして影から影を移動してほぼ同時に後ろから迫ったアサシンのバックスタブーー背後からの急所攻撃を、ソードマンの首を落とした手刀をその流れのまま背に回し、指で掴むことで押し止める。
「ーー凄いな。これが魔法か!興味深い!」
「なぁっガッ!?」
そのままクルリと独楽のように回転しながら空いていたもう片方の手をこれまた手刀としてアサシンの首を両断した。
「さあこれで3人目だ!どんどん行こう!」
これで10秒足らずの攻防で2人死んだ。
ソードマンもアサシンも纏っていたエフェクトからスキルは起動していたはずだが、全くかすり傷も与えられていない。
反して仮面の大男の方は何のエフェクトも出ておらずーースキルや魔法の――ゲーム的バフを全くうけていないのは明らかだった。
つまり仮面の大男は、ゲーム的なモーションの補正、スキルのダメージ補正無しで、素の装備やステータス、本人の技量だけで今の攻防を征したことになる。
「嘘…だろ?ヤベッダメだ!?止まっーーオゴッ!!??」
「何だこの人、なんで真っすぐ突っ込んできたんだ? ともかくこれで4人目……」
比較的仮面の大男の近くにいたウォーリアはその事実に気が付いたが、既に大剣を担いで突撃スキルのモーションに入っており、それを止めることも出来ず一人仮面の大男に突っ込み、大剣を振り下ろすこともなく、顔面にカウンターの拳を入れられて絶命。
「アグッ!?」
「グエッ!?」
「なんゲェッ!?」
「5.6.7ーーうーん、さっきから速いは速いけれどもっと工夫がほしいな」
その後も、とにかく生意気でいかれたPKプレイヤーを先んじて倒して名を上げようと突撃や移動スキルを起動して仮面の大男に近づこうとしたプレイヤーは、近づいた順に一撃で抹殺されていった。
これで1分秒足らずで計7人死んだ。
「な、なんだそりゃ……」
「どうやって……レベル100でもそうは出来ないでしょ……?」
「カウンター系のスキルか? でもエフェクトが出てないし……」
最前線に出た仲間を後ろからフレンドリーファイアしても面白くないと一瞬様子見してしまった後衛職、魔法職、そして二の足を踏んだ前線職の者たちは、自分たちがどんな化け物を相手にしているか理解した。
通常如何に強いプレイヤーであっても、一対多は避けるものだ。
理由は単純。プレイヤー同士では多少の自力の差はあれど、あくまで同じ人間同士。
装備やレベルでゲタを履いたとて、相手も同じく履いているなら意味はない。
それが1対2、1対3ともなれば、単純に手数や対応力に置いて差がありすぎて勝負にならないからだ。
だが、目の前の仮面の大男は違う。
周囲から迫る剣を、ただ自分に近づいた順に処理し、使い手を一撃で殺す。
ーー言葉にすると平素な、実行しようとすれば恐ろしく難事を、ごく当たり前にやってのけたのだ。
どう考えても尋常の者ではない。
「馬鹿っ!ぼーっとすんな!とにかく撃て!近づけさせんな!!!」
「よ、よし!う、うおらあああああああああ!!!」
恐怖に駆られたように後衛職から矢が、弾が、魔法が射線も気にせず雨あられのように仮面の大男へ飛ぶ。
火や雷、風などの複数の属性の魔法が飛び交い、空中で激突し派手なエフェクトとダメージを周囲にばらまき、ギルドハウスのエントランスを、そして仮面の大男の近くに居た間が悪かったギルドメンバーを巻き込み容赦なく破壊する。
「わあ、何て煌びやかなんだ! 良いね、ただの弾丸より趣があるなっと!!」
「死体を蹴っ――? うわああああっ!?」
「あはは! いいよけっぷり!!でも隙だらけだな!」
しかしその反撃は余りに遅すぎた。
仮面の大男は自分の近くに倒れたまだ消えていない死体を、後衛職がちょうど纏まっていた所へ蹴り込んで隙を作り、矢を、弾を、札を、魔法を掻い潜って突貫。
魔法の破壊の嵐はその場をすでに離れた仮面の大男の後方で破裂したに過ぎない。
そして仮面の大男は近くに居た人間を時に盾、時に剣、時に弾として大暴れの大乱戦を開始。
「そらそらそらそら!もっと抵抗しろ! 頑張れ頑張れ!!」
「ふざけやがーーうわっ、やめっ、オガガガガガ!!??」
仮面の大男に蹴りこんだ足首を捕まれた武道家はそのままヌンチャクよろしく振り回されてそこら中のギルドメンバーと顔面衝突させられて絶命。最終的にブーメランのように投擲され、他ギルドメンバーを巻き込みながら窓をぶちやぶり隣の別ギルドにぶち込まれ。
「仲間意識は良いけど下半身への意識が足りないなぁホラ!!」
「ひっげええええ!!?」
タンクとして何とか前線を張ろうと仮面の大男と後衛職の間に入ろうとした重戦士は股ぐらから掬いあげられ矢や魔法の傘とされて絶命。死体はギルドハウスの2階席に仮面の大男が飛び込むための足場として壁に頭から突き立てられた。
「凄いな毒ガスか! でもそれだと自分たちも食らうのでは……? えい!!」
「あっやべっ! あ……」
「バカヤロー! 密集してんのに何考えてやがる!!」
フレンドリーファイアも気にせず麻痺ガス魔法を放ったデバフ系魔法使いは、大きな丸テーブルを団扇とされて一振りでガスを払われ、むしろ戻ってきたガスで自分と周囲が麻痺する始末。
「どうした!?何が、うわわわわっアガッ!?」
「アッハッハッハ!これで27ー!!」
騒ぎを聞きつけギルドの奥から出てきたギルドメンバーなど、状況を把握する前に仮面の大男の暴力の嵐に飲み込まれてしまう。
「無理!こんなん無理!!アイテムだけ拾って逃げーーコパッ」
「やったーストライク!!」
「もうやだー!!アタシもうこのゲームやめる!!!ログアウト!!」
「あのアマ逃げたぞ!!」
「くそっ、コレだから女は!!」
恐慌、暴力のるつぼから自分の装備と経験値を護ろうと逃げ出す者もいたが、目ざとい仮面の大男がそこらに落ちる他プレイヤーの装備ーー手斧を拾いスローイン。
見事脳天をかちわり絶命させた。
余りの惨状にログアウトする者だけが、経験値と装備、アイテム、そして友情を犠牲に地獄から逃れることが出来た。
「アハ!!アハハハハハハハハハハ!! すごいな!皆現実の生中な人たちよりよほど速い!力も強い! 魔法も、武器も、なんて素敵なんだ! アハハハハハ!!」
「ひでえ、皆の装備を踏みつけにして笑って……マジでキルしか興味ないのかよ……」
「なんでこんな当たんないんだよ、チートかよ。居ないって話はなんだったんだよ……」
「もうこっち見ないでええ……やああ……」
そうして、殺して、殺して、仮面の大男は足元に落ちる死んだプレイヤーの装備のドロップを踏みつけにして楽しそうに嗤うのだ。正に悪鬼羅刹の所業である。
戦闘能力が余りに違いすぎる。
これはチートだ。チートに違いない。チートでなければならない。
そうでなければ……余りに残酷な、生命体としての差ではないか。
一矢報いようという気概さえ、その仮面の奥の双眸の迫力に一瞬で折られる。
「何でうちのギルドが、こんな簡単に、たった一人に……」
『PKぶち殺会』のプレイヤーは皆1対1の戦闘はやったことがある。
十対十を、なんなら千対千や万対万の大勝負だって参加したことが有る者がいた。
しかし100対1を、それも1側がハチャメチャに強い上で乱戦になるような戦闘をしたことが有る者はいなかった。
そもそもそんな経験をしたことがあるものが現実さえ含めてどれ程の数いるだろうか。
想像もしなかった戦闘を、起こらないはずの場所で急に押し付けられ、大手PKKギルド『PKぶち殺会』は仮面の大男のいいように蹂躙されていった。
慈悲はなく、老若男女種族関係なく、その場に生きる者全てが仮面の大男の悪魔的暴力に破壊されていく。
「もう終わりだ、お終いだ」
こうして「修羅王降臨新都バルカーン崩壊事件』の一番目の被害ギルドは粉砕され――
「『第7機動隊』、『PKぶち殺会』の応援にきたぞ! この町で暴れようっていうアホはどいつらだ!!」
「『弱肉強食BBガーディアンズ』、『PK大好きっこクラブ』が協定どおりきてやったぞ!!クズだクズだと思ってたけどギルドカチコミまでやるとかマジの馬鹿がよ!!! ここだけは一応手を貸すが、このあとすぐに詫び入れにいかねぇとおめぇら……え、誰あのデカいの」
「誰だテメェうちのギルドに死体突っ込みやがったバカは!!!窓直すのだって金掛かるんだぞ!!」
「わあっ!! お替りだ!!」
「やったねコウガくん!!!」
――――悪魔の皿に贄は重ねられ、地獄の宴はさらに加熱する。
暴力大好き、戦闘大好き、気軽でジャンクな小説を目指しております。
コウガ、この世の春です。
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