フルダイブ修羅 ~リアルで殺人拳をマスターした僕がフルダイブMMOで無双したら続々修羅が集まって来た件~    作:ジャントゥ

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燃える街、そして『修羅』

夜、『新都バルカーン』の街が燃えていた。

 

様々なギルドが思い思いに、様々な種族、職業のプレイヤーが自分たちのカラーを出してデザインしたギルドハウス。それが立ち並ぶ大通りは、まさに異世界と言えるような華やかさでバーサークブラッドでも有数の映えスポットだった。

 

「それがまたこんな風になるとはな……」

 

大手PKKギルド『PKぶち殺会』の古参メンバーである犬頭獣人忍者のポムボムゼリーはその映えスポットが何もか燃やし尽くさんとする炎嵐に飲まれる様を、そこから少し離れた丘の上の公園で諦観と共に見物していた。

 

この丘には現在、戦場から何とか逃げ出し、一息ついているプレイヤーが集まっている。

誰もが疲れきった目をしているが、まだ戦闘状態が続いているため、装備と経験値を惜しみログアウト出来ない者たちの集まりだ。

ポムボムゼリーは自ら望んでこの戦場に来たので、彼らと立場が違うが。

 

ポムボムゼリーはこの街が出来た当初からその変化を見てきた。

 

何もないようなつまらない街が、人が集まり、悪所となり、そしてそれが大規模PvPで焼け、それがまたPvPの街として蘇る様――それを全て見てきた。

 

今の街の様は、まさにその大規模PvPの――いや、それ以上の地獄の有様だった。

 

街のあらゆるところから様々な攻撃魔法が打ち上がり、誰かの思い出が籠ったギルドハウスが破壊されてゆく。

 

複数の戦士同士がもつれ合うように衝突し、周囲がその戦闘の余波に巻き込まれ破壊される。

 

守衛NPCゴーレムががんじがらめのこんがらがった契約に基づき、目につくプレイヤー、NPC関わらず攻撃し、誰もかれもが攻撃対象、戦闘状態に落とされる。

 

騒ぎを知ってプレイヤーのレアドロップにハイエナしに来たプレイヤーとそれを護ろうとするプレイヤーも戦闘を起こし、また、暴力が連鎖する。

 

あらゆる場所で戦闘が起こり、その破壊が街に広がり、被害はどこまでも拡大していく。

 

その輝きは空に輝く星々が、地上に下りてきたかのように眩い。

 

瞬く星々は戦う者、傷ついた者、何かを護ろうとする者、奪う者、今そこにある全ての命であり、そのすべてが同様に破壊の波に飲まれて消えていく。残るのはドロップされた装備と、砕け燃えつきる街並みばかりだ。

 

ギルド同士一対一の対決では起こりえない、混沌が支配する地獄。

 

この地獄の発端が、たった一人のプレイヤーとは……。

 

「ポムさん、無事だったんですね!ギルドハウスはどうでしたか!?」

 

避難プレイヤーをかき分けて近寄って来た、フルプレートの聖騎士といった恰好の青年にポムボムゼリーは声を掛けられた。

同じギルドメンバーで後輩の爆死〇である。

 

爆死〇はポムボムゼリーと同じ、今回の騒ぎを聞きつけ、ギルドの手助けの為に来た有志の一人だった。

 

街中を駆けまわってギルドメンバーを、比較的大通りから遠く戦闘に巻き込まれていなかったこの丘に救助して来たのだろう、普段は白銀に輝く鎧が、黒い煤と戦闘痕でみすぼらしく汚れている。

 

「ギルドハウスはもうだめだ。魔法ぶち込まれ過ぎて天井どころか柱一つまともに残っていない。ゲコ太さんのコスモノヴァブレードも行方知れずだ。街がこのざまで匂いを追う事もできん」

 

ポムボムゼリーは苦々し気にそのイヌ科の長い鼻を鳴らして答えた。

ポムボムゼリーはこの戦場に来た時、戦闘も何もかも無視してまず自分たちのギルドハウスへと走った。助けを求める者がいる可能性があるし、それに大切なあのアイテムがまだある可能性が万に一でもあったからだ。

 

「畜生! ゲコ太さんはPvPガチじゃ無かったんだから、支部長になったからってうちに三つしかないXユニークの一つなんて持たせるべきじゃ無かったんだ!近くのメンバーもなんで拾ってないんだ!! XユニークだぞXユニーク!!」

 

爆死〇は燃える街を見ながら激昂する、

 

Xユニーク、5000万のプレイヤーを抱えるバーサークブラッドに、ただ一つ存在する超激レアアイテムたちの通称。あらゆるプレイヤー、ギルドの誇り。

ポムボムゼリーにとっても、もちろんそうだった。

 

そしてそれが失われたことに、爆死〇は憤っていた。

 

「ゲコ太さんにだって最低限やれる実力はあったし、何より大勢を纏める人徳があった。ゲコ太さんが他ギルドとの折衝が多いバルカーンで支部長するのは実際適任で今まで問題らしい問題も起ったことは無かった。違うか?……頭を冷やせよ爆死〇」

 

ポムボムゼリーはそんな爆死〇に冷や水を浴びせる。

爆死〇は素直な良い後輩だが、少し言葉が直情的過ぎた。

今の言葉も、現場で被害にあったメンバーが聴けば関係に溝を作るに違いない言葉だ。

可愛がっている後輩がそんな軋轢の中心になるのは気持ちのいいものではない。

 

きっと爆死〇が言わなくてもそういう話は蔓延し、ギルドは割れてしまうだろうが。

 

「すいません……。クソ、何もかもカチコミに来たイカレPKのせいだ……!」

 

「仮面を付けた悪魔みたいな黒ジャージの巨漢、な。正直、近接職が一人で100人近くPK出来るなんてなかなか信じられないが……」

 

保護したプレイヤーから聞いた、異常な、それこそ悪魔的な戦闘能力をもつPKの話は、いささか誇張がすぎるように思ったが、事実目の前に広がる地獄と化した炎の街がそれに説得力を与える。

 

「チートじゃないですか?他のゲームじゃ無敵チートなんて珍しくないですし」

 

「世界中のゲーマーやハッカーが躍起になって試して一度も成功報告が無いんだぞ?俺も最低限情報収集しているが、可能性は低いな」

 

実際の所、ポムボムゼリーはそのゴールデンレトリバーLV100みたいな顔からは想像もできないが、ダークウェブに入りびたるほどその手のオタクだ。

 

あくまで自衛のためにとバーサークブラッドのチート情報を集めていたが、チートが成功したという話はついぞ聴いたことが無い。

 

むしろ一時期賞金まで掛けられてハックを仕掛けられていたのに、そのことごとくを返り討ちにしたバーサークブラッド運営の実力を、一般のプレイヤーより高く評価し、恐れていた。

 

宇宙人が運営していると言われたら信じても良いくらい、バーサクブラッドの技術力とプロテクトは隔絶している。

 

それを破ったのが仮面の男だとするなら、その背後には最悪ハッカーコンビ『アノとカス』を超えるハッカーが集団で山ほどくっ付いている事になるのだ。

 

ポムボムゼリーにとっては超強い個人よりそちらの方が現実味が無い。

 

「とりあえず俺は、そのプレイヤーが本当にめちゃくちゃに超強いと考えて想定するつもりだ。コスモノヴァブレードだって、起動すればプレイヤーの10人20人まとめてキルできなくはないはずだしな。仮面の男もXユニークを持ち、それを使いこなしていると考えた方が現実的だ」

 

「ポムさんがそうするなら俺もそうします!」

 

「いや、多角的に考えるためにお前は他の考え方をしろ。チート以外で」

 

「じゃあ素で強いゴリラ野郎なんですよ!化け物ゴリラ!!」

 

「ゴリラがプレイヤー……可能性はある……か?」

 

「マジですかポムさん!?」

 

凄まじい爆音が響いた。

 

遠くで街のシンボルの塔が半ばから爆発を起こし崩れ落ちたのだ。

 

この街にもう時間はないとポムボムゼリーは判断する。

 

コスモノヴァブレードの所在は分からなかったが、道中もう戦えないギルドメンバーや、無関係ながら逃げ遅れたプレイヤーを保護している。

 

彼らと共にこれ以上ここにいては自分たちも逃げ遅れる可能性が高い。

 

「行くぞ爆死〇。俺が殿、お前が先頭だ。他のメンバーもまとめてしっかり気張れよ」

 

「ウス!! 死ぬ気で頑張ります!」

 

爆死〇の気合の入った態度を、ポムボムゼリーは好ましく思う。

 

街中は地獄の大乱闘状態であるし、疲労したプレイヤーを狩ったり、その場に転がるドロップアイテムをハイエナしようと多くのプレイヤーがこの街に集まり自然と包囲網が作られている。どうしたって戦闘は避けることはできない。

敗残兵じみた現状でも、とにかく気炎を吐ける爆死〇の存在は共に逃げる避難プレイヤーにも気力を分け与えるだろう。

 

単純で直情的で口も軽い人間だが、そういうところが良い。

 

 

「ふっ、死ぬ気でどうする、死ぬ気で。お前、馬鹿みたいに高い装備で固めてるのに、ドロップしたらどうするんだーーむっ……」

 

ポムボムゼリーの視界の端に映っていた魔法の爆発の煌めきが此方に少しずつ動いていた。

爆発の中心が此方に動いているのだ。魔法の標的になる何かが居る。

その動きは少しずつ早くなり――明らかに意思を持って此方に向かっている。

このままいけば逃げる避難プレイヤーに追いつく可能性が高い。

 

ポムボムゼリーの首筋に、痛みと言っていいような疼きが奔った。

 

危機感知スキルの発動――そしてこの疼きの強さは難敵の証だ。

 

「爆死〇、先に行っていろ」

 

ポムボムゼリーは腰からするりと短刀を抜いた。薄く赤く輝く愛刀『狂犬牙』。Xユニークならずとも、レジェンドとは呼ばれる激レア武器である。

 

「ポムさんは!?」

 

ただ事ではない雰囲気に、爆死〇に緊張が奔る。

 

この場にいるプレイヤーでもっとも強いであろうポムボムゼリーが離れるのを恐れているのだ。

 

そんな様子の爆死〇を、ポムボムゼリーはマズルを覆うようにマスクをずり上げながらおかしそうに笑った。

 

「たかがゲーム、そう緊張することはない。それにさっき言ったろう、俺は殿だと。何、心配するな」

 

すっと指を振って、ポムボムゼリーは自分のステータスを開いて見せる。

 

「俺は『修羅』――PvPはお手の物よ」

 

ポムボムゼリーのステータス画面に映る彼の名は通常の白地黒枠でなく、黒枠の赤地に染まっていた。

 

それは歴戦のPKの証、100戦無敗を記録したものだけが与えられる、『修羅』という称号を持つ証であった。

 

 

 

 

 




暴力大好き、戦闘大好き、気軽でジャンクな小説を目指しております。

タイトル通り、修羅は主人公一人じゃありません。

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