荒廃した近未来探索VRゲームがいつの間にかインストールされていたけど全員刀で斬り捨てます   作:機動兵士ゴリアテ

8 / 10
拠点説明

 

 荒廃した世界。道路はひび割れ、建物には蔦が絡まり瓦礫が積み上がっている。足を踏み出せば砂利を踏みしめる音がする。そう僕は今、Defeat the unknownの世界にいる。

 

 日を改めて再びログインした時、僕は緑色の液体の中にいた。液体の中にいるのに苦しくないという違和感はあって不思議な体験だった。液体の中からはサクラの姿が見えて、僕がログインして少しすると緑色の液体が排出されていった。

 

「これ、ガラスの筒なんだね。なんだかホルマリン漬けにされた気分かも」

 

 液体が排出されて地に足がついた僕は、緑色の液体が入っていた僕が入る大きさの容器に触れてみると、つるりとした感触がしてガラスである事はすぐに分かった。そしてペタペタと触っていると情報端末を操作しながらサクラが近づいてきた。

 

 初めて会ったサクラは画面越しにあった時と同じ、桜の模様が入った着物を着ていた。歩く姿は綺麗で凛とした印象を受けた。

 

「お待ちしておりました、ロウ様。昨日の戦闘技能シミュレーションは誠にお疲れ様でございました」

「うん、ありがとうね。ま、それはそれとして今日は崩域?だっけ? そこに行ってみたいんだけど」

「承知致しました。各種説明を行った後、崩域探索の行い方を説明させていただきます」

 

 僕を囲んでいた筒が音を立てて地面に収納されていく。これって、何の演出何だろうか?

 

「これは?」

「これは正式名称”肉体培養装置”と呼ばれる使用者の肉体を再生、状態の改善、肉体の保全を目的に使用される設備です。戦闘技能シミュレーションをクリアする事を条件に旧軍区画廃棄領域においてアンロックされた、実質的に初のロウ様の為の設備となります」

「へー、なるほどねぇ。他に設備はいくつあるの? アンロックの条件は? 設備の効果内容は?」

 

 思わずサクラに質問を沢山投げかけてしまう。だがサクラは気にする事なく質問に答えてくれた。

 

「設備に関しましては正確な数は分からない、と返答させて頂きます」

「分からないの?」

「イエス、と肯定させて頂きます。」

 

 サクラは自身の事を拠点の管理を行うAIと自称していた。ならば分からない筈なんて無い筈だと思っていたのだけど。

 

「実際には現在、稼働もしくは修理を行う事によって稼働できる設備数は十五個です。しかし他にも修理を行っても現状では復旧が難しい設備が複数存在します。その為、設備数に関しましては正確な数は分からないと返答させて頂きます」

 

 なるほど。アップデート方式みたいなやつか。新しく実装されたら設備が追加されるから正確な数が答えられない的なやつ。

 

「設備のアンロックにつきましては肉体培養装置以外に実績での解除はなく、アイテムやエーテル、資源などを消費して修復、強化を行う事が出来ます」

 

 つまりはアイテム収集と敵性存在の討伐を頑張りましょうねって事か。アイテムがどんなものが崩域で手に入るかは分からないけど……まぁ、行けば分かるか。

 

「設備の効果内容としましては肉体培養装置に限定させて返答させて頂きます。時間経過によって肉体の回復という効果が得られます。時間に関してはログアウト後も適応され、肉体の完全回復には程度にもよりますが約四時間、必要だと思われます」

「戦闘技能シミュレーションみたいな負傷を崩域で受けても治るって認識で大丈夫?」

「イエス、と肯定させて頂きます。基本的にどんな傷であろうとも死にさえしなければ、肉体的損傷は例外なく回復が行えます」

 

 そしてサクラは情報端末の画面を操作すると、ウィンという音を立てながら空中にディスプレイが現れた。

 

「肉体培養装置を動かす為に必要なのはエーテルのみとなります。動かす際にはエーテルが常時消費されていきます。ご覧の通りこれがそのエーテル消費量、そして現在廃棄領域に貯蓄されているエーテル保有量です」

「大体、今でも十時間ぐらいは動くのか」

 

 エーテル総量を稼働して消費する量で割ったら大体そのくらい。でもこれはバロール・イミテーションの残骸から得られたエーテルの割合がかなり高い。入手先のリストからそのことが読み取れた。

 

 そして僕はサクラに導かれ、戦闘技能シミュレーションにやる前にいた水晶が埋め込まれたモニュメントの前に来ていた。

 

「これは”ポータル”と呼ばれる装置です。これから貴方様が崩域に潜る際に必要な出入口と成り得るものです」

「これが何処かに繋がっているの?」

「ノー、と否定させて頂きます。厳密に言えばこのポータルは”何処か”ではなく”何処とでも”繋がっております。ただそれは理論上の話であり、実際には様々な制約がある状態ではありますが……」

「ふーん? あれ、じゃあ帰りはどうするの? 崩域にポータルがあるとか?」

 

 なんだか妙に凝った設定の設備だな、と考えていた時に気づいた。これポータルを使って崩域に行くなら帰りもポータルを使わないといけない。だけど、戦闘技能シミュレーションのような所に探索しに行くのだとすればポータルのような装置は敵性存在に壊されていてもおかしくないんじゃないかと思った。そういうのもゲームにおいて鉄板だし。

 

「いえ、探索から帰還する際にロウ様にはこちらが指定する場所に到達していただきます。崩域のポイントに到着していただけば、こちらがポータルを用いていわゆる”脱出口”を作成する事ができます」

 

 ディスプレイに表示されている画面が移り変わり、ポータルに似た少し簡素な作りのモニュメントが映っていた。

 

「これが脱出口としての目印になります。他にもリングに触れれば、脱出口の方向は感覚的に分かる仕様となっております」

 

 僕はリングを付けている左腕を見る。そこにはちゃんと焼け焦げていない腕があった。ただ、現実の僕の腕にそっくりなのが気になるけど。

 

 というか面白いからいいけど、どうして僕のVRヘッドギアにこのソフトがインストールされてたんだろうか。……ま、どうでもいいか! どうせ短い命、出来る限り楽しんでいこう。

 

「最後に装備についてですが……戦闘技能シミュレーションと同じものが初期装備として支給されます。ご留意下さい」

 

 サクラがそう言い放つと、青い光と共に現れたそれは戦闘技能シミュレーションで慣れ親しんだ装備達。しかしその中に異彩を放つのが一つ。僕が戦った強敵、バロール・イミテーションが振るっていた異形の剣、近接戦闘対応型可変装甲ファンクションだ。

 

 良かった、ちゃんとあって。今の時代、VRではオートセーブが主流ではあるがそんな事を思った。あぁ、早く試してみたいな。

 

 ビルダー弐式を身に着け、回転式拳銃カラシスM01をホルスターに入れ、近接戦闘対応型可変装甲ファンクションを刀の形へと変化させて鞘に納める。バックパックを背負い、鎮痛剤や止血帯等の必需品、それから音を聞き分けるヘッドセットを装備する。

 

「おっけー! なら、いよいよ本番ってことかな?」

 

 ワクワクする心を抑えられず、顔が笑顔になっているのが分かる。そんな僕を見てサクラは微笑ましそうにしながら言った。

 

「はい、Defeat the unknownの世界をご堪能下さい」

 

 ポータルに刻まれた幾何学的紋様に青い光が走り、空間が歪み始める。現れるのは青い光を放つ穴としか言い表せない何か。中心が暗くて先が見えず、見つめていると変な気分になりそうな、不思議な色彩を放つそれに僕は飛び込む。

 

 かくして僕は死が蔓延る荒廃した世界を舞台にしたゲームに足を踏み出した。まだ見ぬ強敵を求めて、僕という存在の証明の為に。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。