ようこそ愛情至上主義の教室へ   作:西のご都合主義者

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次回の日付のところ間違えて9日になってました。正しくは8日でした。
10話に日常回入れて11話からは特別試験にいく予定です。


9話

「なに?ヴァイオリンのコンクールに出たいだと?」

 

 

そう言うのは茶柱先生。

ボクはある目的のため、校外に出たかった。

そこで以前少し触ったことのあるヴァイオリンが頭にでてきたので、これなら外に出れると思い、職員室で茶柱先生に打診していた。

 

「実力を疑うなら管弦楽部にでも行って演奏しますよ。」

 

 

「そこまでしてもらわなくてもいいが...なら管弦楽部の顧問の先生を連れてこよう。少し待っていてくれ。」

 

そういって茶柱先生は管弦楽部の顧問の先生を連れてくる。

先生は場所を変えなくていいのかと聞いてきたが、ボクの実力は場所に左右されるようなものではないのでそのまま職員室で慣れ親しんだ物を取り出す。

 

「ちょ、ちょっとまって花萌葱君、そ、それガスパロ・ダ・サロじゃないの!?本物!?」

 

顧問の先生がぎょっとした顔でボクを見てくる。

 

「ずっと昔からこれを使ってますけど、これすごいものなんですか?」

 

これは親...親と言っても肉親ではないが、親からもらったものだ。

高いものなんだったら悪い気がしてしまう。

 

「す、すごいなんてものじゃないわよ!?た、確か5400万円ほどしたわよ!?」

 

その言葉に職員室にいる先生は目をカッと開いてこちらを見ており、茶柱先生に至ってはショートしている。

 

「そんなにすごいものだったんですね!でも昔からこれしか引いたことないからよくわかんないや。とにかく、適当になんか弾きますね。」

 

ボクは咄嗟に思いついた『24の奇想曲』の第24曲を弾く。

 

悪魔に魂を売り渡したと言われるヴァイオリンの天才パガニーニが作曲したヴァイオリンの独奏曲。

この曲を選んだ理由としては、ヴァイオリンをやり始めてからこの曲に魅入られて、この曲は楽譜なしでも弾けるくらいに何度も何度も弾いたからだ。

そして曲自体も5分半ほどで弾けるため、これ以上の選曲はないだろう。

 

ボクは久しぶりに手に取るヴァイオリンの懐かしさに心安らぎ、それと同時にいつも演奏を聞いてくれていた家族がいないことに寂しさを感じる。

その感情を素直に受け止め、音色としてヴァイオリンにのせて弾く。

 

気が付くと曲は終盤を迎え、ボクはじんわりと汗をかいてきたのを感じる。

曲の最後には勢いが増し、弓を離すと至る所から拍手が巻き起こる。

どうやら弾いている間に観客が増えていったようだ。

 

「花萌葱君!...いえ、花萌葱様と呼ばせてください!」

 

管弦楽部の顧問の先生が意味のわからないことを言ってくる。

それに茶柱先生はとても驚いた表情をしていて、いつの間にかいた星之宮先生は顔を赤らめている。

 

「佐枝ちゃん、やっぱり私翠くんが欲しいわ。」

 

 

「ダメだ星之宮。花萌葱は私の生徒だ。」

 

そんな会話に苦笑いをしていると、管弦楽部らしき先輩に話しかけられる。

 

「君、管弦楽部に入らないか!?君がいればコンクール優勝は間違いなしだよ!」

 

熱烈に勧誘されるが、ボクとしては部活には入る気がないからなぁ。

 

「うーん、助っ人として行くのはどうですか?ボク、部活に入る気がないので。」

 

 

「それで充分だよ!暇なときはいつでも部室に来てね!それじゃ!」

 

そういって先輩は去っていった。元気な人だなぁ。

 

「花萌葱様!絶対にコンクールに出るべきです!100%優勝できますよ!」

 

 

「ひゃ、100%はちょっと言いすぎなんじゃ...。」

 

 

「いや、花萌葱。素人の私が聞いてもわかるくらい上手かったぞ。100%優勝できるかどうかはわからないが、入賞であれば確実にできるんじゃないか?」

 

ま、まぁとにかく校外にでれるならなんでもいい。

でも久々にヴァイオリン触ると楽しかったから今後はもう少し弾こう。

 

「ところで花萌葱様、どのコンクールに出たいんですか?」

 

あー、なにに出たいかはそんなに考えてなかった。

 

「じゃあ先生が優勝できると思う中で一番大きいコンクールでお願いします。」

 

そうすればPPtももらえて一石二鳥だ。

 

「わかりました花萌葱様!この私にお任せください!」

 

そう言って顧問の先生は走り去っていった。

 

 

 

 

後日学校ではボクの職員室での一件が話題になり、噂になっていた。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「あのね、花萌葱くん。私、今ストーカーに悩まされてて...。」

 

 

ボクは数日後、佐倉さんに話があると呼ばれ、カフェで話を聞いている。

どうやら、佐倉さんはストーカーというのに付きまとわれてるらしい。

それをどうすればいいかの相談というわけだった。

 

「とりあえず、男のボクがずっと傍にいたらどうなるか見てみない?」

 

 

「でも花萌葱くんとってもかわいいし男の子に見えるかなぁ。」

 

ボクこれでも武道の心得もあるし大丈夫でしょ。

 

「まぁなんにせよ、人が近くにいるときに接触はしてこないだろうしさ。それを続けてたら諦めてどっか行くかもしれないし。」

 

 

「そうだね...。」

 

 

「じゃあこれから登下校とか部屋の外に出るときは教えてね。トイレ以外はどこでも一緒にいるから。」

 

 

「あははっ...よろしくね。」

 

 

こうしてボクが佐倉さんと一緒に行動するようになって、数日が経った。

この数日間、ボクと佐倉さんは登下校を一緒にし、休日はケヤキモールに遊びに行ったりもした。

犯人はなんの行動も起こしてこないため、ボクは少し油断してしまった。

そんなある日のこと。

 

「佐倉さん、ボクちょっとお花を摘みに行ってくるね。」

 

 

「う、うん。なんだかお嬢様みたいだね。」

 

その言葉にギクッとしながらも、ボクはトイレに行った。

佐倉さんに魔の手が近づいているのに気づかず。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

佐倉side

 

 

 

 

それは、花萌葱君がトイレに行ってからすぐのことだった。

 

 

「し、雫ちゃん...だよね。」

 

声の主の方に身体を向けると、そこには電気屋の怖い店員さんがいた。

それに雫って呼んだ?

てことはこの人がストーカーなの?

 

怖い。身体の震えが止まらない。

 

「こっ来ないでください!」

 

 

「なんでそんなこと言うんだい...?あぁ、雫ちゃんは恥ずかしがっているんだ。」

 

気味の悪い笑顔でこちらに近づいてくる。

今はもう夕方で、人通りの少ないところにいた。

 

「やだっ...離して!」

 

 

「なんで暴れるんだい...僕がを教えてあげるよ...」

 

 

 

パシャッ

 

 

 

写真を撮る音がして、そっちに顔を向けると、顔は変わらないけど、いつもと雰囲気の違う花萌葱君が立っていた。

 

「愛...?」

 

 

「君、ずっと僕の雫たんの傍にいたよね。もしかして君も僕にを教えてほしいのかな...?」

 

花萌葱君はそう言われた瞬間、スマホを落とした。

そしてストーカーは花萌葱君に近づいていく。

 

ダメだ、私のせいで花萌葱君が。

ごめんなさい、花萌葱君。私があなたに相談なんかしたから。

 

そう思いながら、目を開けた瞬間。

 

花萌葱君の腕が、ストーカーの腹に打ち込まれていた。

 

「っ!?...がはっ!」

 

そして花萌葱君はストーカーの髪を掴み、顔を近づけて聞く。

 

「ねぇおじさん。今  って言った?」

 

 

「たっ助けt」

 

ストーカーが声を上げた瞬間に花萌葱君は被せて言った。

 

「あとは警備員さんも交えて話を聞くね。それじゃあ行こっか。」

 

花萌葱君はスマホを拾い上げ、髪を掴んでいる手をストーカーの首の後ろの襟を掴んで、警備員のいるほうに行ってしまった。

 

花萌葱君、どうしたんだろう。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

翠side

 

 

 

「.........だい...僕がを教えてあげるよ...」

 

ボクはその言葉が聞こえた瞬間、とてつもない何かに心が揺さぶられる。

 

 

『翠、お前は天皇になるんだ。』

 

 

『翠くん、あなたが天皇の座を奪還するのよ。』

 

 

ボクは今すぐこの付きまといに対する黒い感情を抑え、カメラで証拠写真を撮る。

 

 

「君、ずっと僕の雫たんの傍にいたよね。もしかして君も僕にを教えてほしいのかな...?」

 

 

ああ、ダメだ。

 

 

キモチワルイ

 

 

そう思った瞬間に、身体が動いていた。

 

こんなのが愛であっていいはずがない。

こんなのが愛なら、ボクはあの人たちから愛をもらっていたことになる。

絶対にちがう。こんなのは愛じゃない。

 

そんなことを思っていると、警備員さんたちがいるところに着いた。

 

 

「君、その人はどうしたんだい!?」

 

 

「ストーカーです。ボクの友達に付きまとっていました。証拠もあります。」

 

スマホで写真を見せると、二人の警備員さんがストーカーを連れて行った。

 

「君、被害者の子のところまで連れて行ってくれるかな?」

 

もう一人の警備員さんにそう言われたので佐倉さんのとこまで連れていくと、佐倉さんはまだ泣いていたが落ち着きを取り戻しつつあった。

その様子をみて、感情をコントロールできなかった自分を恥じた。

 

「佐倉さん、大丈夫だった?」

 

 

「うん、私は大丈夫だよ。花萌葱君は怪我とかしなかった?」

 

佐倉さんは優しい。ボクが触れてほしくない部分には触れてこない。

この後、警察がきて事情聴取を受けて、帰るころにはすっかり暗くなっていた。

 

「花萌葱君...これからその...翠くんって呼んでいいかな...?」

 

 

「うん、いいよ。ボクも愛里ちゃんって呼ぶね。」

 

 

「愛里ちゃん、さっきは傍にいてあげられなくてごめんね。」

 

ボクは自分の中にある素直な感情を愛里ちゃんに伝える。

こういう時は被害者にもっと寄り添ってあげるべきだった。

 

「う、ううん、全然大丈夫。むしろあの人を遠ざけてくれたから安心できたよ。」

 

正直もっと被害者に寄り添えと罵られても何も言えないくらいのことをしでかしたと自負している。

一人の人間として、一人の武道の心得がある者として、こんなことは二度と起こさないとボクは心に誓った。

 

 

 

そして数日経つと、須藤君の件はCクラスが訴えを取り下げたようだ。

Cクラスが訴えを取り下げたのは多分綾小路君が動いたんだろうなぁ。

佐倉さんも『なんだか自分でも成長できた気がする』って言ってたし万事解決。

 

 

こうしてボク達は、難なく期末テストを乗り越え、終業式を終え、夏休みがやってきた。

 

 

 




和風っ子の翠くんがヴァイオリン弾くギャップがいいんだ...。
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