ようこそ愛情至上主義の教室へ   作:西のご都合主義者

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14話

『―――――――さえいなければ』

 

 

 

 

『お前は天皇になるんだ、翠!』

 

 

『翠ちゃん、あなたは強い子でしょ?』

 

 

 

 

『気持ち悪い...あんたみたいなのが弟だなんて恥だわ』

 

 

 

 

 

無人島試験3日目、その日は悪夢を見た。

 

悪夢?いや、日常だ。いつもの日常だったもの。

 

ボクはあそこに帰りたくない。

 

 

そんなことを考えていると、自分でもわかるくらい寝汗をかいていた。

ボクはさっさとテントを出て、仮設シャワーに入る。

 

そして、ボクの思い出したくない過去のことを嫌でも考えさせられる。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

ボクが生まれたのは、日本の天皇の血筋の家だった。

大きく立派な日本家屋、温かいご飯、分厚く寝心地のいい布団。

 

それだけ聞けば、裕福な家に生まれたのだと思われるだろう。

 

だが、現実は違う。

実父は権力に溺れ、自分でなし得なかったことを息子に押し付ける。

 

実母は、実父とは違うと実母自身言っていたが権力に溺れているのは同じで、それどころかすぐ手が出る性格だった。

 

そしてなにより実姉だ。

実姉は家を継ぐボクのことを酷く嫌っており、容姿に関しても気味が悪い、吐き気がする等言われていた。

 

幼い頃から家を継ぐ者として以上の、教育というよりも洗脳や調教に近い扱いを受けてきた。

 

そしてその教育が終わった12歳の夏、姉は本気でボクのことを殺そうとしてきた。

ボクはその日に身の危険を感じ、使える術を全て使ってどうにか高校入学までの4年間弱、身を置ける場所を探した。

 

そして花萌葱家の家臣の内の1つの東司(とうじ)という家に身を隠すことになった。

 

そこでボクは家族と呼べる人たちと出会った。

 

少し寡黙だが、文句の一つも言わない優しい父。

 

笑顔の絶えない献身的な母。

 

そして、ボクに愛をくれた姉。

 

 

そこでボクは初めて家族というものを、愛というものを知った。

 

他にも東司家では色々なことを知った。

姉に本気で殺されそうになるまでは、自分の家族は普通だと思っていた。

だがそれは普通ではないらしく、普通の家族がどんなものかも教えてもらった。

 

あと自分の力についてどうすればいいか、についても。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「はぁ...気分、晴れないなぁ」

 

 

シャワーを浴びながら、そんなことを呟く。

 

そこでボクはあることに気が付いた。

 

 

「あれ、ボクタオル持ってきたっけ...?」

 

 

タオルがない、つまり身体が拭けないということ。

 

つまり全裸でタオルを取りにいかないといけないということ。

 

あれ、ボクもしかしてやばい?

 

だけどまぁかなり早く起きたし、そんな都合よく起きてくる人いるわけないし大丈夫だろう。

 

 

そう思い、シャワーから出た瞬間。

 

 

 

そこには一之瀬さんが顔を真っ赤にしてこちらを見ていた。

 

 

 

「にゃにゃ!?////// ごっごめんね!////」

 

猫のように叫んでから、一之瀬さんは後ろを向く。

 

「ううん、こっちこそごめんね一之瀬さん/// あとタオル忘れちゃったからタオル持ってきてくれないかな...?」

 

 

「う、うん!/// わかった、すぐ持ってくるね///」

 

そう言って一之瀬さんは逃げるように走っていった。

 

 

 

 

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一之瀬side

 

 

私の同級生に、とても可愛らしい男の子がいる。

名前は、花萌葱翠くん。

見た目はほとんど女の子で、寧ろ男の子だっていうのを疑うレベルだ。

 

そんな彼と初めて出会ったのは、いつかの職員室。

その日は確か星之宮先生に呼ばれて職員室に向かったんだっけ。

職員室に入ると、Dクラスの茶柱先生とDクラスの生徒らしき2人と、後ろをこっそりつけようとしている星之宮先生がいた。

そのDクラスの生徒らしき2人のうちの1人が、花萌葱くんだ。

最初見たときは女の子だと思っちゃった。

 

その日から無人島試験が始まるまで、少し成績のいい容姿の優れた生徒としか思っていなかった。

だけど、無人島試験が始まった直後、彼がしてきた提案には度肝を抜かれた。

その提案を理解した瞬間、彼の評価を改めた。

それと同時にBクラスに彼がいたなら、とも思った。

でも神崎くんは彼を警戒しているらしい、なんでだろう?

 

そして今、なぜか彼が全裸で仮設シャワーから出てきた。

 

そして見てしまった。彼の華奢で可憐な体格に見合わないモノを。

 

父以外で初めて見る、男の人のあそこ。

私は直ぐに体温が急上昇するのがわかった。

 

はぁ、これからどんな顔して会えばいいんだろう...。

 

 

 

花萌葱くんにタオルを渡すと、花萌葱くんはすぐに身体を拭いてシャワーからでてきた。

シャワーを浴びた後のため、花萌葱くんの頬は血色がよく、髪も濡れているため凄く官能的だ。

 

「あー、ごめんね?一之瀬さん。誰もいないと思ってたからさ」

 

少し苦笑いを浮かべながら、手を合わせて謝ってくる。

 

「大丈夫だよ、びっくりはしたけどね...///」

 

さっきのことを思い出し、また少し赤くなってしまう。

すると花萌葱くんが顎に手を当て、少し俯きながら話し始めた。

 

「そういえば一之瀬さんってさ、優しいって言われると少し気まずそうにしてるよね」

 

 

「あ、あははー。そんなことないよ」

 

私は取り繕うように笑う。

 

「いつも優しいって言われると、私はそんなんじゃないって言ってるような顔してるんだもん。すぐわかるよ」

 

自分が上手く笑えているのは自分でも自覚があったから、花萌葱くんは物事の本質を見れる人なんだなと思った。

 

「でも本当に、私はそんないい人じゃ...ないからさ」

 

私は苦笑いを浮かべながら少し言い淀む。

 

「.....昔、なにかあったの?まるで罪の意識...贖罪?

 

花萌葱くんがボソッと呟いた時、私は鳥肌がたった。

それと同時にこの人なら...とも。

 

「っ!.....実はね、私――――――――

 

 

 

 

そして気が付けば、私は花萌葱くんに全てを打ち明けてしまっていた。

 

もし、花萌葱くんに軽蔑されたらどうしよう。

もし、花萌葱くんに嫌われたら。

 

そんな思考に頭を奪われて俯いていると、花萌葱くんは私の手を握ってこう言ってくれた。

 

 

『がんばったね』

 

 

私はなんだか救われたような、落ちなかった汚れが取れ、身が清められたような感じがした。

 

その後、みんなが起きてきてBクラスとDクラスの共同生活がまた始まった。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

翠side

 

無人島試験3日目、今日は綾小路くんと森に入ることになった。

昼前に拠点から離れ、森に入り少し歩くと愛里ちゃんがやってきて、どうやら一緒に行きたいらしい。

ボクは綾小路くんに断りを入れ、愛里ちゃんも一緒についてくることになった。

 

どうやら昨日、綾小路くんはハンカチを木に巻き付けたらしく、そこに行きたいそうだ。

ていうか高円寺くん、また変なこと言ったんだ。

 

「何か気づかないか?」

 

ハンカチを巻き付けた場所まで到着し、高円寺くんが立っていたという場所から森を見てみるが、よくわからない。

 

「うーん......なにか違うかなぁ.....?」

 

 

「ボクも見ただけじゃよくわかんないなぁ」

 

 

「とりあえず手当たり次第調べてみよう。ただしお互いの姿が見えなくなるまで遠くに行かないように、定期的に確認しながらな。集中して探していると注意力が散漫になりやすい」

 

綾小路くんがそう言うと、3人で少し離れながら、辺りを散策する。

視覚からだけじゃなく、聴覚からも情報を取り入れるために耳を澄ませる。

 

「わ!?」

 

愛里ちゃんが悲鳴に近い声をあげたので、すぐにそちらに向かう。

 

「ねぇ、これっ。すごいもの見つけちゃったよ!」

 

ボクは駆け寄ったあと、少し茂みをかき分けると、そこにはトウモロコシがあった。

 

「これって......トウモロコシ.....だよね?」

 

 

「どうやらそうみたいだな」

 

うーん.....明らかに人工的に植えられたものだ。

わざとらしく茂みに囲まれるような場所に植え、見つけにくくしている。

やはり手入れされているのは確定と見てもいいだろう。

 

「高円寺が思わせぶりなセリフを言っていたのはこれか.......」

 

あそこからこれに気づくのか.....やっぱり警戒するに越したことはない、かな。

 

「鞄持ってこればよかったね.....とてもじゃないけど一度に持って帰れないかな」

 

愛里ちゃんが少し困り顔でそう言うと、綾小路くんが突然服を脱ぎだした。

えっ...?

 

「あっ綾小路くん!? な、なにしてるの!?」

 

愛里ちゃんは持っていたトウモロコシをボトボトと落としながら視界を塞ぐ。

 

「悪い悪い。断ってからにすればよかったな。」

 

 

「ああ、服を脱いだのはトウモロコシを持ち運ぶためかな?」

 

 

「そうだ。シャツの口を結べば袋の代わりになるかなら。一回で運べる量を多くできる。」

 

 

「じゃあボクも脱ぐよ。一着じゃ心許ないかもしれないしね」

 

 

「みみみみ翠くんっ!? そっそれは早すぎるよぉ!」

 

さっき落としたトウモロコシを拾い上げていた愛里ちゃんはまたトウモロコシをボトボトと落とし、顔を赤らめながらも指の隙間からチラッと顔を覗かせてくる。

 

「あはは、ごめんね。ていうか早すぎるってなんのこと...?」

 

ボクがそう言うと愛里ちゃんは取り繕うように誤魔化してきたので、気にしないようにした。

 

「戻ったら他のクラスメイトに報告して収穫に向かわせよう」

 

 

「そうだね」

 

 

「うんっ」

 

なんて会話をしていると、人がやってきたようで、近くから足音がした。

 

「見てください葛城さん! すごい量の食料ですよ!」

 

あれは確か洋食屋で敵意を向けてきた生徒かな...?

それとその時近くにいた貫禄のすごい生徒だ。

 

「すまない、驚かせるつもりはなかった。この男にも悪気はない、許してやってくれ」

 

 

「おまえ、昨日スパイに来てた奴か!」

 

一瞬、真澄ちゃんとのことかと思い内心びっくりしてしまったが、どうやら違うらしい。

綾小路くんの方をみて言っていたので、恐らく綾小路くんが堀北さんでも連れていったのであろう。

 

「俺はAクラスの葛城。こっちは弥彦だ。二度目だから自己紹介くらいいいだろう」

 

 

「Dクラスの花萌葱翠だよ。そしてこちらが綾小路くんに、佐倉愛里ちゃん」

 

軽く紹介する。すると葛城くんはボクたちが持っていたトウモロコシの方に視線をやり、話し出す。

 

「それは君たちが見つけたものだ。無理やり横取りするつもりはないから安心しろ。しかしここを他の誰かに見つかれば持ち去られてしまう可能性は高いだろう」

 

 

「まぁ、3人で鞄もないしね。持っていける量には限度があるよ」

 

 

「バカ、どっちか片方が残って見張ってればいいんだよ。ですよね?葛城さん」

 

 

「分かっていないのはお前だ弥彦。森の中を単独で動き回る危険性を軽視するな。男だけならともかく、女子もいるのならどうしても行動に制限は付く」

 

葛城くん、噂には聞いていたけどやはりとても慎重な性格をしている。

 

「我々も手伝おう」

 

 

「ほ、本気ですか葛城さん。Dクラスのために協力するなんて―――――」

 

尤もな拒絶だろう。

 

「あー、ごめんね?ありがたいんだけどさ、ボクの拠点で注意するように言われてて。後から怒られるのも嫌だし、断るよ」

 

DクラスとBクラスが組んだという情報がどこまで行き届いてるかわからない。だから最低限の情報も与えないためには関わらないのが一番だ。

 

「なるほど。そうであるなら無理にとは言えないな。だが、こちらを信用できるのか?お前たちが立ち去った後全て持っていく可能性もあるだろう」

 

 

「それじゃあ今持っていける分で諦めるしかないね、後は好きにしていいよ」

 

そう言ってボクたちは拠点に戻り、あったことを報告した。

 

「すげえお手柄じゃん花萌葱! それに佐倉と綾小路も! 早速取りに行こうぜ春樹!」

 

池くんは山内くんに声をかける。

すると山内くんはこちらを見かけた瞬間に全力で走ってきた。

そして綾小路くんを連れて行ってしまった。

 

「おま、おま、おまえ! なんで上半身裸で佐倉と上半身裸の花萌葱と3人っ! なんだっ! よっ!?」

「落ち着け。盛大な誤解をしてるぞ、それは。何もしてないから安心しろ」

 

うーん、微妙に聞こえないなぁ。

まぁあんまり気にすることじゃないかな。

 

その後、上半身裸のボクを見て一之瀬さんは真っ赤になっていた。

朝のこと気にしてるのかな。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

現時点での花萌葱翠の情報

 

 

花萌葱 翠

 

身長154cm、体重48kgと高校生男子にしてはかなり小柄で、髪型も少し長めのボブカットにしているため、かなりの高頻度で女性に間違えられる。

実家は天皇の傍系で、身の危険を感じ、東司家に隠れていた。

 

家族構成は実家と東司家どちらも父、母、姉がいる。

翠自身は実父、実母、実姉と父、母、姉と呼び分けている。

 

能力を隠しているため、全貌は明らかになっていない。

 

 

花萌葱翠と交友関係のある人物

 

・鬼龍院楓花

 翠の実家と関係があり、翠が東司家に行くまでに知り合っていた一人。

 過去の翠について無機質、無気力と語っている。

 翠を変えられなかったことを悔い、嫉妬し、逆プロポーズした。

 

・高円寺六助

 皇室主催のパーティで翠を見たという、翠が東司家に行くまでに翠を知っていた一人。

 翠は警戒しているが...?

 

・綾小路清隆

 友人。

 

・櫛田桔梗

 入学式の日から仲がいいが、2人とも一線引いて関わっている。

 

・松下千秋

 お互い能力を隠していることを知り合っている仲。

 

・佐倉愛里

 以前ストーカーから助けたことで一気に仲が深まり、2人で遊んだりするほどの仲になった。

 

・堀北鈴音

 友人というよりクラスメイト。

 生徒会長のことを断ち切れればリーダー格になれると翠は思っている。

 

・山内春樹 

 セクハラ。

 

・一之瀬帆波

 5月に入ってすぐ知り合ったが、特別仲がいいわけでもなかった。

 無人島試験3日目で翠のイチモツを見てしまう。

 

・神崎隆二

 友人...?

 

・姫野ユキ

 素直に物が言えるところが好みだと翠は思っている。

 

・坂柳有栖

 友人だと思ってはいるが、翠が一番警戒している相手。

 

・神室真澄

 翠と過ごしている時間が一番多いかもしれない。

 しかも姉を除いた初膝枕や初ハグももらっている。

 

・茶柱佐枝

 個人的には教師と生徒という隔たりがなければ...と茶柱は思っている。

 教師としてはとてもいい生徒だと思っている。

 

・星之宮知恵

 教師としても個人としても翠が欲しいと星之宮は思っている。

 

 

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