ようこそ愛情至上主義の教室へ   作:西のご都合主義者

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15話

 今日は無人島試験4日目、と言っても少し慣れてきたこともあり寧ろDクラス内だけでなくBクラスとの結束力も上がってきたように感じる。初日なんかは酷いものだった。Dクラス内で悪い雰囲気が広がり、Bクラスはそれに関わらないようにしていた。

 それが今はどうだろう。DクラスやBクラス関係なくそれぞれが自由に話したり行動を共にしたりしている。なんならこの試験を通じて仲良くなった人達もいるんじゃないかな。

 

「ねぇ堀北さん、ちょっと来てもらってもいいかな?」

 

 ボクは座って休んでいた堀北さんに話しかける。

 

「花萌葱くん...? えぇ、何か用かしら?」

 

 堀北さんはこの試験中、ずっと体調が悪そうにしている。もしかしたら船の上からずっとかもしれない。お兄さんのことがあるのか、背負い込みすぎる癖があるからね。

 

「まぁ、とりあえず付いてきてよ」

 

 そう言ってある程度拠点から離れ、周りに人がいないことを確認してから話し始める。

 

「堀北さん、ずっと体調悪いよね?」

 

 

「っ!?.....ええ、そうよ」

 

 堀北さんは酷く驚いた表情をした後、諦めるように肯定した。

 

「やっぱりそうだよね、見ててわかった。...なんでそこまで無理するの?」

 

 

「...別に無理をしてるわけじゃないわ」

 

 

「ちょっとおでこ貸してね」

 

 ボクはそう言った後、堀北さんの額にボクの額を当てる。38.3度位かな、きっと動くのもしんどいだろう。

 

「...やっぱり無理してるよね」

 

 

「....そうだとしても、私はこの試験をリタイアする訳にはいかないわ」

 

 

「それはやっぱり、お兄さんが関係してるの?」

 

 そう聞いた後、堀北さんは鋭い目つきでボクを睨んできた。

 

「いつから知っていたの?」

 

 

「入学式の時から。生徒会長の挨拶の時だけやたらと動揺してたからね」

 

 

「そう....。兄さんはね―――――――

 

 

 

 

 

 ボクは堀北さんからお兄さんとの関係のことを聞いた。完璧なお兄さんに追い付くためにひたむきに頑張ってきたことや、それでもお兄さんは振り向いてくれないこと。

 この話を聞いて、ボクは素直に同情してしまった。ボクの姉はとても親しくしてくれたけど、それがもし真逆の対応をされたら、なんて思うととても怖くなる。

 はっきり言って自分と重ねているだけだということはボク自身わかっている。それでも、ボクは堀北さんの足を引っ張っている重りを取り、堀北さんには成長してほしい。

 

「....堀北さん、ボクは君がまだまだ成長できると思ってる。だから君が成長するための努力は惜しまないし、ボクにできることがあればなんでもするから。ボクを、頼ってほしい。」

 

 

「...わかったわ。貴方の言う成長が何なのか、私にはまだわからない。それ自体、私が未熟なことの証拠だと思うの。兄さんに振り向いてもらえるように、力を貸して。花萌葱くん」

 

 兄さんに振り向いてもらえるように...か。まぁでも、他人に力を貸してと言えるくらいにはなったってことだね。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「ちょっと男子。集まってもらえる?」

 

 眠っていると、そんな声がテントの外から聞こえる。そして続けて声が聞こえると、男子もだんだんと起き始めたようだ。

 

「一体なんなんだよ...くそ眠ぃ」

 

 寝起きの須藤くんがすごく機嫌が悪そうだ。

 

「どうしたの?」

 

 平田くんが篠原さんに何があったのか聞きに行っている。一応重要そうだしボクも行こうかな。

 

「あ、平田君。それに花萌葱君も。......悪いけど、男子全員を起こして貰っていい? 大変なの」

 

 篠原さん、すごく慌てているなぁ。何かを取り逃さないようにしているようにも見える。

 

「分かった。今声をかけてきたから、すぐ出てくると思うよ」

 

 それからすぐ、眠そうな顔をしてみんな出てきた。みんな只ならぬ空気を読んで黙っている。

 

「それで、こんなに朝早くからなにかあったの?」

 

 明らかに女の子からの男の子に向けられる視線がおかしい。Dクラスの子だけじゃなく、Bクラスの生徒も睨むような視線を送っている。

 

「ごめんね花萌葱くん。花萌葱くんや平田くんには関係のない話なんだけど.......どうしても確認しなきゃならないじちがあるから集めたの」

 

 そして篠原さんは一部を除く全員に対して、侮蔑を込めた目でこう言った。

 

「今朝、その.....軽井沢さんの下着がなくなってたの。それがどういう意味かわかる?」

 

 

「え....下着が.....?」

 

 基本的にいつも冷静な平田くんも、まさかの事態なようで狼狽えている。

 

「今、軽井沢さん、テントの中で泣いてる。櫛田さんや一之瀬さんが慰めてるけど....」

 

 

「え? え? なに、なんで下着がなくなったことで俺たち睨まれてんの?」

 

 

「そんなの決まってるでしょ。夜中にこの中の誰かがカバンを漁って盗んだんでしょ。荷物は外に置いてあったんだから盗ろうと思えば盗れたわけだしね!」

 

 まだ寝惚け気味だった生徒も今の状況がわかってきたからか、ほとんどの生徒が驚いている。

 

「いやいやいやいや!? え!? え!?」

 

 

「そういや池、お前昨日......遅くにトイレに行ったよな。結構時間かかってたし」

 

 

「いやいやいや! あれは、その、暗かったから苦労したんだよ!」

 

 

「ほんとかよ。軽井沢の下着盗んだのお前じゃないの」

 

 

「ば、違うって! そんなことしねえよ!」

 

 昨日までいい雰囲気だった空気が一瞬で壊れる。そして罪の擦り付け合いがが始まる。

 

「とにかく。これ、すごく大問題だと思うんだけど? 下着泥棒がいる人たちと同じ場所でキャンプ生活するなんて不可能でしょ」

 

 というか横をみれば、こちらと同じように神崎くんが白波さんに詰められている。

 

「だから平田くん。なんとかして犯人見つけて貰えないかな?」

 

 

「それは――――でも、男子が盗ったって証拠はないんじゃ。軽井沢さんが無くした可能性もあるんじゃないかな」

 

 

「そうだそうだ! 俺たちは無関係だ!」

 

 殆どの生徒が平田君の後ろから声を上げている。

 

「僕はこの中に犯人がいるとは思いたくないよ」

 

 平田くん、やっぱり何かに怯えてる。犯人...に対する迫害? それとも――――

 

 

 

 

 

 その後、結局荷物検査と身体検査をすることになったが、誰の荷物からも下着は出てこなかった。

 

「ちょっと集まってもらえるかな」

 

 平田くんがDクラスとBクラスどちらにも集合をかけた。平田くんの近くには軽井沢さんが居たため、先ほどの騒動と関わりのある話をするのだろう。

 

「男子は信用できない。このまま同じ空間で過ごすなんて絶対無理....!」

 

 

「でも、男女で離れて生活するのはちょっと問題じゃないかな....。試験はもう少しで終わる。だからこそ、僕達は仲間なんだから信じ合い、協力し合わないと」

 

 

「....それは、そうだけど。でも下着泥棒と一緒の場所なんて耐えられない!」

 

 平田くんの言うこともわかるが、軽井沢さんの言っていることもまた真っ当な意見だろう。もし同じ空間にいたとしても空気が悪くなる可能性が非常に高い。

 それならいっそ、別の空間で残り少ない時間を過ごしたほうがまだいいのかもしれない。

 

「私たちは犯人が男子だと思ってる。だからここに線引きして男子と女子でエリアを分けてよ。男子はこっち側には絶対立ち入り禁止にするの」

 

 

「んだよそれ。俺たちを勝手に犯人扱いしやがって。荷物検査も身体検査も受けたろ?」

 

 

「鞄に隠してたとは限らないでしょ? 男って変態だし。とにかく犯人が見つかるまでの間、女子のテリトリーには入らないようにしてよね。てことで向こう行って」

 

 そう言って篠原さんは移動するように要求する。他の女の子も同意見らしく、篠原さんの後ろから声をあげている。

 

「疑うんならお前らでテントとか動かせよ。俺たちは動かないし手伝わないからな」

 

 

「あーそう、じゃあ結構。手伝うフリして荷物漁られちゃたまんないし」

 

 

「それにシャワー室も、2つある内の1つは女子専用にするからね。変態の泥棒がいるかもしれない男子に使わせるなんて冗談じゃないし」

 

 

「へっ。お前らにテントの杭とか打ち込めるのかよ」

 

 

「ねぇ平田くん。軽井沢さんのためにも手伝ってもらえる?」

 

 さすがに女子だけでは厳しいと判断したのか、篠原さんは平田くんに助けを求めている。

 

「....わかった、手伝うよ。時間はかかるかもしれないけどそれでもいいかな?」

 

 

「ありがとう平田くん。よかったね、軽井沢さん」

 

 

「うん。信じられるのは平田くんだけ」

 

 そう安堵する軽井沢さんを見ていると痛々しいものがある。

 

「けっ。平田が犯人かもしんねーだろ」

 

 

「はぁ? 平田くん犯人なわけないでしょ。バカじゃないの。死ねば?」

 

 

「な!? ふっざけんなよ軽井沢。彼氏だから犯人じゃないとか、証拠になんねーし!」

 

 うーん、軽井沢さんも少し言い過ぎだし、悪態をつく男の子も良くない。どうしたものか...。

 

「ちょっと待って。少し落ち着きなさい。特に軽井沢さん」

 

 ボクが困っている中、堀北さんが主張してきた。

 

「なによ堀北さん。今の話に不満あったわけ?」

 

 

「男女で生活区画を変えるまでは構わないわ。犯人が見つかってない以上、その可能性が高い男子から距離を取ることは間違いじゃない。だけど私は平田くんを信用していないもの。つまり彼が下着泥棒である可能性は除外できない。その彼だけが特別に女子のエリアに入って構わないルールを作るのは納得がいかないの」

 

 

「平田くんがそんなことするわけないでしょ。それくらいわかんない?」

 

 

「それはあなた個人の考えでしょう? 私にまで同じ考えを強要しないで」

 

 

「うーん...私も堀北さんの意見と同じ...かな。別のクラスだっていうのもあるし、何より証拠がないからね」

 

 今まで黙っていた一之瀬さんが話だした。

 

「一之瀬さんまで...。平田くんが犯人なんてこと絶対にないから」

 

 

「何度も同じことを言わせないで。彼一人じゃ納得しかねると言っているのよ」

 

 このままじゃ話は平行線だけど、どうするのかな。堀北さん。

 

「じゃあ聞くけど、平田くん以外に信用できる男子なんて.....」

 

 軽井沢さんがこちらをみて黙ってしまった。その様子をみて他の生徒もボクを見ている。

 

「あなたたちも気づいてるようね。単純な話、もう一人男子を増やせばいいのよ。そうすれば男手も2倍になるし、男同士互いに見張らせることで効果もあるもの」

 

 

「まぁ、花萌葱くんなら......ほぼ女の子だし

 

 軽井沢さんは渋々了承したようだ。っていうか今ほぼ女の子って言わなかった?

 

 

「私たちは犯人が分かるまでの間、絶対に男子を信用しないから。ね、軽井沢さん」

 

 

「当然よ。犯人は絶対男子の誰かに決まってるし」

 

 結局、この話し合いの後から男女別々で生活することになった。

 

 

 

 

 そして今、テントを移動する作業を平田くんとしている。Bクラスのものもあるため4つも移動させなければならない。

 平田くんがテントを運び、ボクが杭を打って地面に固定させる役割だ。もう4つ目で最後のため、平田くんも杭を打ってくれている。

 

「ごめんね。君にまでこんな大変な思いをさせて」

 

 

「ううん、全然大丈夫。平田くん一人じゃ大変でしょ?」

 

 

「一人でもできたかもしれないけど、花萌葱くんが居るから早く終わるよ。ありがとう」

 

 爽やかだなぁ、平田くん。

 

「....花萌葱くんはさ、一体誰が犯人だと思う?」

 

 これは下着泥棒の話でいいのだろうか。

 

「うーん、なんともいえないかな。でも可能性が高いと思うのはCクラスの二人だね」

 

 

「そっか。.......信じてあげたいけど、難しいのかな」

 

 平田くんなりにかなり悩んでるみたいだ。でなければあんな複雑な表情はできない。

 

「この特別試験、僕は戦いじゃなく皆が仲良くなるための大切な機会だと思ってる。それが別のクラスでも、ね」

 

 

「そうだね。でも手を組む人間は見定めないとだめだよ。じゃないと今大切な仲間を失う可能性もあるんだ」

 

 

 その後、女の子たちが平田くんを連れていってしまい、ボク一人で最後の作業を終わらせた。

 

「ちょっといい?」

 

 伊吹さんが話しかけてきてくれた。前から口きいてくれなかったから嬉しいな。えへへ。

 

「今朝の下着泥棒の件、何ていうか大変そうだな。DクラスはあれだけどBクラスまで男女別になるなんて」

 

 

「うん。でも女の子にとって下着を盗まれるっていうのはそれだけのことなんだろうね。ボクには全部はわかんないけど」

 

 

「......花萌葱くんってほんとに男子?」

 

 まだ疑われてたのかな。ちょっと落ち込むかも。

 

「ほんとだよぉ.....」

 

 

「っ!? わ、わかったから泣かないでよ!」

 

 ボクが少し涙目になると伊吹さんは焦って宥めてくる。

 

「話は戻るけどさ、誰が犯人だと思う?」

 

 

「うーん、まだわかんないかな」

 

 

「もしも男子が犯人じゃなかったとしたら、次に疑われるのはよそ者の私。疑う声だって絶対出たはずだ。男子が下着を盗んだように見せかけたのかもって。違う?」

 

 

「ボクは伊吹さんが悪い人じゃないって、思ってる。もしこの事件の犯人だったとしても、なにか理由があるって思ってるよ」

 

 正直伊吹さんの可能性が高いと思ってるけど、なにか理由があると思ってる。悪い人じゃないとも本心で思ってる。

 

「......ありがと/// そんな風に言ってくれるとは思わなかった」

 

 

「この試験が終わっても、仲良くしようね」

 

 

「!...うん」

 

 このやり取りで確信した、伊吹さんと金田くんは黒だ。恐らくは龍園くんの差し金。綾小路くんや他の人が言っていたリタイアというのは見せかけで、単独もしくは少数で潜伏してるね。

 

 

 

 

 

 無人島生活5日目の夕方。ボクは綾小路くんに声をかける。

 

「綾小路くん。この後はどうするの?」

 

 

「花萌葱か。この後は――――――

 

 

 

 どうやら綾小路くんは堀北さんの熱を悪化させ、リタイアさせるつもりらしい。そして伊吹さんと金田くんに盗ませ、リーダー当てを失敗に終わらせる。いい作戦だと思うけど、もう一押しできるね。

 

 

――――――――ねぇ、一之瀬さん。ちょっといいかな」

 

 

 




オリ展開の影響で変わる部分をうまく表現するのが難しい...。

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