ボクは人だかりができているのを見て、そこにクラス表があるんだとわかった。
視力は悪くないため、すこし遠くの方からでも自分の名前くらいは見つけられる。
確認したところDクラスだった。この学校はアルファベットでクラス分けするのか。
すると、急に後ろから肩を数回叩かれた。
「ひゃっ」
「ねえねえ、あなた何クラスだった?」
とっても愛嬌のあるかわいらしい人が声をかけてきた。
「ボク?ボクはDクラスだったよ。」
「じゃあいっしょだね!私の名前は櫛田桔梗!同じDクラスだよ。」
桔梗って桔梗の花からきてるのかな。ボクの翠って名前と近しいところを感じてすこし親近感を感じたのも束の間。
ボクは彼女の中にあるドス黒いなにかが溢れているのが見えた。
一体彼女は過去に何があって何のためにこの高度育成高等学校に来たのか、とっても面白そう。
「ボクの名前は花萌葱 翠。これからよろしくね、櫛田さん。」
「櫛田さんって呼び方は硬いよ~!桔梗って呼んでいいからね。」
「わかったよ桔梗ちゃん。ボクのことも翠って呼んでね。」
そんなやりとりをしていると流れで一緒に教室までいくことになった。
教室まで行く途中、なんだか周りの人によく見られてやっぱり桔梗ちゃんってかわいらしいしモテるよなあって思いました。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ガラガラッ
教室へ入ると中にいた人たち全員の視線がこっちに来る
「やばいぞ!めっちゃ可愛い子二人入ってきた!」
「茶髪の子おっぱいでっけぇ!」
なんて話している声も聞こえる。
高校生男児ってああいう会話をするのが普通なのかな。
桔梗ちゃんと暫し別れ、自分の席を探していると一番真ん中の列の一番後ろだった。
ちょっと桔梗ちゃんと遠いなあなんて思いつつ、左の席の黒髪ロングの美少女に話しかける。
「ねえ君、名前は?」
「なんでいちいちあなたなんかに名前を教えないといけないのかしら。」
キッと鋭い目つきをこちらへ向けながら彼女は言った。
「ほら、せっかく隣になったんだし、仲良くしないと損だよ?」
「はあ、めんどくさいわね、堀北鈴音よ。」
堀北さんはめんどくさいと言いながらも名前を教えてくれた。
「そっか、ボクの名前は花萌葱 翠。気軽に翠って呼んでいいよ!」
「あくまで隣人としての最低限のコミュニケーションのためよ。仲良くなんてしないわ。」
ズバッと一刀両断されてしまった。
「お前たち、席に就け。」
コツコツとハイヒールを鳴らし、後ろで髪を結び、胸の部分を少しあけたスーツの女性が教卓に立つ。おそらくこのクラスの担任なのだろう。
「Dクラスの担任となった茶柱佐枝だ。この学校にクラス替えはない、卒業まで三年間私がお前たちの担当となる。」
いかにも厳格そうな先生だ。この人はどんな愛をうけてきたんだろう。
「入学式の前に本校の特殊なルールについて書かれた資料を配ろう。前から後ろへ回してくれ。」
「まず全寮制で、在学中に敷地内からでることと、外部との連絡を制限している。だが心配するな、学園内にはありとあらゆる施設がそろっている。生活に必要なものはすべて手に入るだろう。娯楽も含めてな。」
ここまでは知っている。だがこれだけじゃないはずだ、そう思う根拠は二つある。
一つはこれだけなら外部との連絡やその他一切を禁じる理由がないからだ。
もう一つは、就職率、進学率ともに100%なんてたやすいものではない。きっとなにか大きなものがまちかまえていることだろう。
「買い物には、学生証端末に保有されているポイントを使う。この学校では、あらゆるものをポイントで買うことができる。ポイントは毎月1日に振り込まれる。1ポイントで1円の価値だ。お前たちにはすでに、今月分の10万ポイントが支給されている。」
ふーん、あらゆるもの、ね。それと今月10万か。
「っ10万!?」
「マジかよ!?」
Dクラスのみんなは支給額の多さに驚いているようだった。
「支給額の多さに驚いたか?この学校は実力で生徒を測る。入学を果たしたお前たちにはそれだけの価値はあるということだ。」
なるほど、なんとなくわかったぞ。これは毎月の給与額は変動するってことでほぼ確定で見ていいな。あとはこれが個人単位かクラス単位かの話だけだな。
「質問等はあるか?」
だれも手をあげない。
「ではこれにて解散とする」
あとでちょっとしかけてみるかとしよう。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
入学式のため、体育館に全員移動するようだ。
桔梗ちゃんと一緒にいこっと。
「ねえ桔梗ちゃん、よかったら体育館まで一緒に行かない?」
「翠ちゃん!いいよ、いっしょにいこ!」
翠ちゃん?
あ、これ勘違いされてる
そう、何を隠そうこの花萌葱 翠
手違い(姉が犯人)で女子の制服なのである。
やっぱり気づかないのかなぁ
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
少し話は飛び、入学式での生徒会長の挨拶だ。
と思ったら生徒会長はなかなか話しださない。
この生徒会長すごいなーなんて思っていると、ヤジを飛ばしている一年生がいた。だが生徒会長の無言の圧に気圧され、ついに全員が静かになった。
「初めまして、生徒会長の堀北学です。」
彼はそう話し始めた。
堀北なんて別にめずらしい苗字ではないが、さすがに髪色も似ているという理由で堀北さんの方をみてみると明らかな動揺が見て取れた。
やっぱり兄妹なんだ。ボクは自分のなかでそう結論付け、動揺している理由について考えてみた。
兄妹間の不仲?いや、それなら嫌悪やそれに近い表情をするはず、なら強すぎる憧れ、劣等感?のようなものが一番近い。
なんて考えていると、もう入学式は終わりを迎えていた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
入学式が終わり、教室にもどると皆席の近い人や趣味の合う人などと話し合っていた。
ガヤガヤ
「みんな、ちょっといいかな。」
一人の生徒が声をあげる。かなりイケメンだ。
「今からみんなで自己紹介をやって、一日もはやくお互いに友達になれたらと思うんだ。先生もまだ来ないみたいだし、どうかな?」
「賛成ー!」
「いいんじゃないのー?」
など、凡そ肯定する意見が多かったため、自己紹介をすることとなった。
「ありがとう。じゃあ、まずはぼくから。平田洋介、気軽に洋介って呼んでほしい。趣味はスポーツ全般で、この学校ではサッカー部に入る予定だよ。みんなよろしく。」
絵にかいたような爽やか系だなー、こういう人はクラスまとめるのに向いてそう。
「じゃあ次はわたしだね!櫛田桔梗といいます、ここにいるみんなと仲良くなることが目標です!たくさん思い出をつくりたいので、みなさんどんどん誘ってください!」
桔梗ちゃんも表向きは人当たり良いしまとめ役には向いてるかも。
なんて思っていると、某碇ゲン〇ウのようなポーズで考えている堀北さんの奥の生徒が気になる。彼の名前が聞きたいので、彼の番はしっかり聞き漏らさない。
「次はそこの君。」
「え、俺?」
「うん。」
なんてやりとりを平田くんとしているのでもうすぐ彼が自己紹介するのであろう。楽しみだ。
「えー、えっと、綾小路清隆です。えー、よろしくお願いします。あー、えー、得意なことは特にありませんが、えー仲良くなれるよう頑張ります。」
パチ,,,パチ,,,
へえ、彼は綾小路君というのか。彼は面白いな。
少ない拍手を送られているところを見ると、彼は失敗したんだな、と思いすこし憐れむ。
「よろしくね、綾小路くん。仲良くやっていこう。」
さすがだなー平田君。アフターフォローまでばっちりだ。
「じゃあ次はそこの君。」
ボクの番だ、ちょっと緊張する。
「ボクの名前は花萌葱 翠といいます!翠って呼んでください!趣味は結構多趣味なほうでいろいろやってて、好きなものは煎餅とおでんです!」
「うん、よろしくね。花萌葱さん。」
「あ、あと,,,」
「女の子の制服きてるけど、ボク男の子です!!」
『えええええええええええええええええええええ!?』
これには桔梗ちゃんや堀北さんもびっくりした表情でこちらを見ている。
「ほ、ほんとかい?花萌葱さ、いや花萌葱くん。」
「うん、ほんとだよ。」
「あんな似合っててかわいいのに男子なのかよ!?」
「山内、俺男でもいけるかもしんねぇ。」
「てか、なんで女子のせいふk
ドガンッ
「何が自己紹介だ、俺らはガキかよ。やりたいやつだけでやってろ。」
赤い髪のガタイのいい生徒が平田君に明らかな敵意を向ける。
「僕に強制することはできない。でもクラスで仲良くしていくには悪いことではないと思うんだ。不愉快にさせたのなら謝りたい。」
平田君ほんとやさしいなあ。でも桔梗ちゃんとはまた違う黒いものを抱えてる。怒り?悲しみ?のようなものの中に怯えがある。なにかトラウマでもあるのかなぁ。
「自己紹介くらいいいじゃない!」
「そうよそうよ!」
なんて平田君を擁護する声が多い。これじゃ赤髪の生徒が可哀そうだ。
「みんなしてこの子に言うのは可哀そうだよ。この子も悪気があって言ったんじゃないと思うから、許してくれないかな?」
そうボクが言うとみんなの表情に自責の念が見える。
「確かに,,,」
「大人数で言うのは違うかも,,,」
だが後ろを見るとさっきの赤髪の生徒はいなくなっていた。結局何人かの生徒はでていってしまったようだ。
そして平田君が次に促したのはさっきの赤髪君よりもガタイのいい金髪の男子生徒だ。
「私の名前は高円寺六助。高円寺コンツェルンの一人息子にしていずれはこの日本社会を背負って立つ人間となる男だ。以後お見知りおきを、小さなレディー達と小さなボーイ。」
その小さなボーイとはボクのことなんだろうか。
「それから私が不愉快だと感じる行為を行ったものには、容赦なく制裁を加えていくことになるだろう。その点に関しては十分配慮したまえ。」
「えっと、高円寺君?不愉快な行為って,,,」
「言葉通りの意味だよ。しかし例を挙げるなら、私は醜いものが嫌いだ。そのようなものを目にしたら果たしてどうやってしまうのやら。」
言っていることは傲慢さが感じられるが実力は本物だ。鍛え上げられた体、言葉から滲みでる知性、その立ち振る舞い。それらから社長息子なだけでないものも感じる。
そんなこんなで自己紹介は終わり、解散となった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――