『厳正なる調整の結果、あなたは優待者に選ばれませんでした。グループの一人として自覚をもって行動し試験に挑んでください。本日午後1時より試験を開始いたします。本試験は本日より3日間行われます。竜グループの方は2階竜部屋に集合してください』
午後8時、全生徒に一斉送信されたメールを見る。厳正なる調整、つまり適当ではないということ。なにか法則性に則って優待者を決めているとボクはビュッフェを食べながら考える。
「翠くん、難しい顔してるねー」
一緒に食べに来た千秋ちゃんがわかってしまうくらいには顔に出てしまっていたらしい。
「ごめんね、ご飯を食べる時間なのに」
「ううん、クラスのためを思っての行動でしょ? それなら誰も悪いなんて言えないよ」
箸を止め、そう言ってくれる千秋ちゃんのおかげで罪悪感がフッと消える。
「でもご飯はしっかり食べないとダメだよ? はい、あーん」
不敵に笑い、フォークで刺したものをボクの口に近づけてくる千秋ちゃん。これが意味することは単純明快だろう。
「ええっ...ちょっともう.....あ、あーん...///」
「ふふっ。翠くん可愛いね」
そう言って千秋ちゃんはボクの頭を撫でてくる。
「むー。....なんか千秋ちゃんってボクのこと弟かなにかだと思ってない?」
ボクは頬に空気を溜め、ジト目で千秋ちゃんを見ながらそう言う。
「~~っ可愛い! ほんと可愛いよ!」
千秋ちゃんはボクに抱き着き、胸にボクの顔を沈み込ませてくる。
「ち、千秋ちゃ、んむっ....ぷはっ。ち、千秋ちゃん....?///」
「あっごめんね。感極まっちゃって...」
両手を合わせ、苦笑いしながら謝ってくる千秋ちゃんに、ボクは軽くため息をついてから許した。そしたらボクに感謝しながら頭を撫でてきたのでボクは諦めて千秋ちゃんが満足するまで付き合った。
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「――――園くん。それから.....猫を被っていたのが見破られたら、随分とあっさり行動を共にするのね、伊吹さん」
人の少ないところを確認するために甲板の方に行くと、カフェが目に入ったので何の気なしに入ってみる。そこには鈴音ちゃんに綾小路くんがいて、それに相対するように龍園くんと澪ちゃんがいた。
「みんなここでお話してたの?」
ボクが声を出すと、その場にいた4人の視線がこちらに向く。
「なんだ花萌葱、鈴音と金魚の糞にハブられてたのか?」
ハブられる....?
「仲間外れってこと」
澪ちゃんが解説してくれた。ハブられるってそういう言葉なんだ。
「ありがと澪ちゃん。それと龍園くん、そうやってすぐ人を煽るのやめなよー?」
「.....つくづくお前はめんどくせぇやつだな」
そんな会話をしていると、鈴音ちゃんがすごく驚いた表情をしている。
「どうしたの鈴音ちゃん、鳩が豆鉄砲くらったような顔をして」
「誰が鳩よ.....。翠くんあなた、もしかしてCクラスとも仲がいいのかしら?」
「Cクラスというよりも、澪ちゃんや龍園くんと仲良しって感じかな」
「伊吹はわかるがなんで俺も含まれてんだ....」
龍園くんとも仲いいつもりだったんだけど...。やっぱりこれからもっと仲良くなれるってことかな...?
「あ、澪ちゃん。確か綾小路君と澪ちゃんって同じグループだったよね?」
「うん、そうだけど?」
「話し合い終わったらそっちのグループのほう行くから午後からどこかで遊ぼっ」
「ま、まぁ翠が言うなら....」
そんな話をしていると、鈴音ちゃんがとても不機嫌になっているのが空気で伝わってくる。
「......あなた、特別試験の最中だってことを忘れているわけじゃないでしょうね....」
「鈴音ちゃんがピリピリしすぎなだけだよ。まずこの試験はグループとして1つになるんだよ?」
「翠くんこそなに呑気なことを言ってるの。そもそもCクラスは超えるべき敵であって、仲良くする人たちではないわ」
「ねぇ、それ私と翠が二人っきりで遊ぶのに嫉妬してるだけなんじゃない?」
澪ちゃんが嘲笑するようにそう言うと、鈴音ちゃんはわなわなと怒りに震えている。
「龍園、さっさと離れた方がいいぞ」
「俺に指図するんじゃねぇ金魚の糞。それぐらいわかってる」
二人はそう言って別々に去っていった。
「あなたね....」
鈴音ちゃんの怒りがピークに達しそうになった時、ボクは咄嗟にそれを止める。
「ごめんね鈴音ちゃん。仲間外れにして寂しかったよね。明日二人っきりで遊ぼ?」
ボクは鈴音ちゃんの手を取り、目を見てお願いする。鈴音ちゃんの表情は怒りから羞恥のものへ変わっていき、そしてこう言った。
「まぁ、翠くんがそう言うなら...///」
「えへへ、ありがと。澪ちゃんのあんまり挑発しちゃダメだよ?」
「........うん」
間があったのは気にしないでおく。
その後に二人と会話を楽しみ、残りの時間を部屋でゆっくり過ごした。
そして第2回目の特別試験、干支試験が始まる。
竜グループの部屋の扉を開けると、既にそこには全員が集まっていた。
「ごめんね、ちょっと横になってたら遅くなっちゃった」
「かまいませんよ、花萌葱くん。言ってもまだ時間内ですから」
ボクはありがとう、と言い席に座った。
『ではこれより1回目のグループディスカッションを開始します』
そうアナウンスが入る。
「それじゃあ早速ですけど、改めて自己紹介でもしましょうか。私の名前は坂柳有栖と申します」
「俺は葛城康平だ。よろしく頼む。」
自己紹介は続いていき、ボクの番がやってきた。
「ボクは花萌葱翠。試験だからみんなピリピリしてるかと思ったけど、思ったよりみんな優しそうで安心したよ」
「優しい...? 八ッ、寝言は寝て言えよ」
龍園くんはボクの発言に食って掛かる。
「もー、龍園くん。そうやって煽るのダメってさっきも言ったばっかでしょ?」
「.....お前は俺の母親か?」
「? ボク男だよ?」
そう言うとなぜか龍園くんは不機嫌になっていた。ボクに女の子であってほしかったってことかな...?
「皆さん、私たちAクラスは全結果を結果1にするのが目標です。そうすれば全クラスが喜ぶ結果になるんじゃないでしょうか」
微笑みながらそう言う坂柳さん。でもこれはAクラスだからできる作戦だ。数少ないCPtの獲得の機会を棒に振るということは、下のクラスを蹴落とすことと同義だからだ。
「おい、坂柳。お前ならこの試験の法則性を見つけ、優待者を潰しに行くはずだ。何を企んでる?」
龍園くんの疑問は尤もだと思う。坂柳さんなら優待者が選ばれる法則を見つけ出し、結果3でCPtを増やしにいくと思っていたからだ。
「何も企んでなんていませんよ。全結果を結果1にすれば皆さん均等にPPtをもらえるんですから、それが一番でしょう」
うーん、なんだかとても胡散臭い....。
「それはAクラスだからできる作戦でしょう、坂柳さん。結果1を目指すということは下のクラスが逆転できるチャンスを無駄にするということなのだから」
そう言うとこの事実に気づいていなかった生徒がAクラスを批判し、議論はストップしてしまった。
そして自己紹介で時間を取ってしまったこともあり、そのあとすぐ議論の時間が終わってしまった。
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「澪ちゃん、ごめん少し遅れたね」
「...遅い」
「ほんとごめんね、どうしたら許してくれるかな?」
ボクがそう言うと、澪ちゃんはボクの手を取ってこう言った。
「もっとくっ付いてきてよ」
「......え?」
「私今不機嫌だから、機嫌取ってってこと」
ご機嫌の取り方....どうしよう、わからない。とりあえず何かしないと、と思ったボクは澪ちゃんの腕に抱き着いた。これはボクの視界の端に居た男女がやっていたからだ。あれ、なんか逆かも。
「.....」
「ど、どうかな....?///」
「....ま、まぁまぁやるじゃん///」
なにに対してのやるじゃんなのかわからないけど褒められたのは嬉しいな...。
「じゃあ行こ...?」
そう言ってボクは澪ちゃんと一緒に船内を楽しんだ。
そして日も落ちかけている頃、ボクと澪ちゃんがカフェでまったりしていると、あるメールが届いた。
『鼠グループの試験が終了いたしました。鼠グループの方は以後試験へ参加する必要はありません。他の生徒の邪魔をしないよう気を付けて行動してください』
『牛グループの試験が終了いたしました。牛グループの方は以後試験へ参加する必要はありません。他の生徒の邪魔をしないよう気を付けて行動してください』
『虎グループの試験が終了いたしました。虎グループの方は以後試験へ参加する必要はありません。他の生徒の邪魔をしないよう気を付けて行動してください』
『兎グループの試験が終了いたしました。兎グループの方は以後試験へ参加する必要はありません。他の生徒の邪魔をしないよう気を付けて行動してください』
『竜グループの試験が終了いたしました。竜グループの方は以後試験へ参加する必要はありません。他の生徒の邪魔をしないよう気を付けて行動してください』
『蛇グループの試験が終了いたしました。蛇グループの方は以後試験へ参加する必要はありません。他の生徒の邪魔をしないよう気を付けて行動してください』
『馬グループの試験が終了いたしました。馬グループの方は以後試験へ参加する必要はありません。他の生徒の邪魔をしないよう気を付けて行動してください』
『羊グループの試験が終了いたしました。羊グループの方は以後試験へ参加する必要はありません。他の生徒の邪魔をしないよう気を付けて行動してください』
『猿グループの試験が終了いたしました。猿グループの方は以後試験へ参加する必要はありません。他の生徒の邪魔をしないよう気を付けて行動してください』
『鳥グループの試験が終了いたしました。鳥グループの方は以後試験へ参加する必要はありません。他の生徒の邪魔をしないよう気を付けて行動してください』
『犬グループの試験が終了いたしました。犬グループの方は以後試験へ参加する必要はありません。他の生徒の邪魔をしないよう気を付けて行動してください』
『猪グループの試験が終了いたしました。猪グループの方は以後試験へ参加する必要はありません。他の生徒の邪魔をしないよう気を付けて行動してください』
ボクはメールを開いた瞬間、ゾッとした。周りの反応を見ていると、ほとんどの生徒が動揺しているようだった。
「なに....これ」
澪ちゃんもこんな声を漏らしている。つまりCクラスがやったことではない。つまりAクラスもしくはBクラスがやったということ。だがBクラスにはこの一瞬で法則を見抜く生徒はいないはず。つまり消去法でAクラス、坂柳さんがやった。というのがボクの予想だ。
「坂柳さん...派手にやるなぁ...」
「坂柳? 翠なにか知ってるの?」
「消去法だよ。ボクたちはやってないし、澪ちゃんも驚いてた。Bにはこれができる生徒がいない。だからAクラスの坂柳さんかなって」
そう言うと澪ちゃんも納得してようで、少し考えた後頷いていた。
「じゃあそろそろ出よっか。もう2時間くらい居ちゃったし」
「わかった、トレイ下げてくるね」
そして店を出ると、坂柳さんと付き添いの真澄ちゃんと出会った。
「おや、花萌葱くんではないですか。こんなところで奇遇ですね」
「坂柳さん....試験の件、無茶苦茶するね...」
「ええ。私には目標がありますので」
坂柳さんの目標...Aクラスで卒業すること...? いや、違うな。何かに準備しているように見える。けど今は情報が少なすぎる。どっちにしろわからないか。
「あんたが伊吹ね...」
「誰?」
「神室真澄。翠くんの初めて*1を貰った女よ」
「は? 幻覚見るのも大概にしたら?」
澪ちゃんと真澄ちゃんが一触即発の空気になっている...。
「二人とも、仲良くしないとダメだよ?」
「翠くんには悪いけどこいつとは仲良くできない」
「こんなのと仲良くする義理はないから」
うーん、困ったなぁ....。
「お二人がそんなゆっくりしているなら私が貰ってしまいましょうか?」
「坂柳さん...?」
坂柳さんはボクとの距離を詰め、スッと腕を絡めてくる。
「冗談上手いね坂柳さん、あはは」
「冗談じゃないですよ...?」
「えっと....?」
「お二人が白熱している間に話したいことがあります。少しついてきてください」
ボクは黙って坂柳さんに着いていくことになった。
坂柳が船上試験いたら速攻終わりそうって言う自分のエゴです。この選択をするに至った坂柳の頭の中はもう少し後で書きます。
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