ボクが教室に入ると、いつもに増して池君や山内君が騒いでいるのがわかった。
こっそり聞き耳を立てていると、恐らく水泳の授業が始まるため、スクール水着の話をしているようだった。
そこから話は飛躍し、胸部のサイズで賭けをするようだった。
もちろんクラス中はドン引きした様子だ。彼らはモテたいと本当に思っているんだろうか。
「てか、花萌葱ってスク水も女子用なのかな?」
なんて鼻息を荒げながら話している声も聞こえる。
だが残念だったな、ボクのスク水は男子用なのだよ!!
なんて思っているとクラスの女子から「花萌葱君も被害者なんだね...」と言われ、皆池君や山内君を白い目で見ている。
すると桔梗ちゃんが手を振りながらこちらへ向かってきている。
「おはよう、翠くん!」
「おはよう桔梗ちゃん。」
なんていつも通りの挨拶をして、世間話をしている。
「そういや、翠くんってスク水は男の子用なの?」
「うん、そうだよ。制服が女の子用だからスク水も女の子用だと思った?」
なんて少しふざけた口調で話す。
「へぇ、スク水は男の子用なんだ。なにか理由でもあるの?」
理由はあるが、とても女の子に言う理由ではない。
なぜなら
ボクのボクがモロに見えてしまう
からなんて言えない...
ボクが「あ~」とか「う~ん」とか唸っていると桔梗ちゃんは気を遣ってくれる
「言いたくないことならいいんだよ?無理に聞いてごめんね。」
「言いたくないわけじゃないんだ。ただ女の子に言える話じゃないというかなんというか...」
「?...よくわからないけど、そっか!」
問い詰められなくて本当によかった。
そして水泳の授業はやってくる。
さっさと着替えてプールに到着すると、池君山内君はもうすでに待っていた。
「花萌葱って本当に男なんだな...」
「でもなんかエロくね!?」
とても本人の前でする会話じゃない。
「ところで女子は!?女子はまだか!?」
「緊張する!勃ったらどうしよう!」
さすがにあの会話には入れない。
ボクは一人でいる綾小路君を見つけ、せっかくなので話しに行く。
「綾小路君だっけ?初めて話すね!」
「そっちは...花萌葱、だったか?」
名前、憶えててくれたんだなー。
「うん!花萌葱翠、よろしくね!」
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綾小路side
「綾小路君だっけ?初めて話すね!」
黒髪緑メッシュでボブカットのやつに話しかけられる。
たしか名前は...
「そっちは...花萌葱、だったか?」
「うん!花萌葱翠、よろしくね!」
合っていたようだ。ていうか本当に男なんだな。
女子に間違えられる、というか女子用の制服を完璧に着こなしていて、だれも疑わないレベルの容姿だ。
「綾小路君って、何かスポーツやってた?」
「いや別に。自慢じゃないが、中学は帰宅部だった。」
そんな会話をしていると、女子が着替え終わり、プールにやってくる。
「き、きたぞ!」
「は、長谷部は!?いないぞ!?」
女子がプールにやってきたが、圧倒的に少ない。
二階席に結構な数の女子が現れるあたり、今朝の池と山内の会話のせいもあるんだろう。
少し経つと、女子の視線が花萌葱に降り注がれる。
どうやら本当に男子か疑っていたらしい。だがこの視線はもっと別の...興奮してるような視線がほとんどだ。
「綾小路君?」
「どうした?」
「いや、ボクの体をじっとみてたから、なにかあったかなーって。」
そういわれてやっと自分が凝視していたことに気が付く。
おそらくクラスの女子たちもさっきまでの自分と同じように視線を奪われているのだろう。
すると
「花萌葱の身体やっぱエロくね!?」
「ああ、貧乳で筋肉質な女子って言われても納得するぜ。」
「もう女子が上半身裸になってるようにしか見えなくなってきた!」
なんて池と山内の下劣な会話と視線に花萌葱は恥ずかしくなったようで、顔を真っ赤にしながら俺の後ろに隠れる。
「ごっごめんね綾小路君、ちょっと恥ずかしくて...///」
「大丈夫だ、落ち着くまで好きなだけ後ろにいろ。」
「楽しそうだねっ!何の話してるの?」
「くっ櫛田ちゃん!」
池に声をかけたスク水を着た櫛田の豊満な体に男子たちは目を奪われる。
すると池や山内のセクハラ発言が止まったからか、花萌葱が横に戻ってくる。
「綾小路君、ありがと。」
「問題ない、悪いのは池達だからな。」
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翠side
「綾小路君、ありがと。」
「問題ない、悪いのは池達だからな。」
「何を黄昏ているの?」
堀北さんが更衣室からでてきたようだ。スク水がとっても似合っている。
「脳の赴くままに思考の境地に没頭しようとしていたところだ。」
ちょっと何言ってるかわかんないなぁ。
「堀北さん、スク水とっても似合ってるね!」
「花萌葱君...本当に男の子だったのね。」
「まだ疑ってたの!?」
「正直上半身裸だと露出している女の子にしか見えないわ。」
「ボクそんなに胸大きくないよぉ...」
そういいながら胸を寄せる仕草をすると堀北さんだけでなく、桔梗ちゃんや見学している女子生徒たちからも視線を向けられる。
もしかしてボクすごいエッチな人だと思われてる!?
「花萌葱君...そういうことはしない方がいいわ///」
「あはは...ごめんね?///」
また顔が熱くなりかけていると。
「よぉーし集まれ!授業を始めるぞ!」
とTHE・体育会系のような教師が号令をかける。
「見学も多いがまあいいだろう。ではさっそくお前たちの実力をみせてもらう!」
「先生、僕あんまり泳げないんですけど...」
なんて泳ぎに不安のある生徒から声があげられる。
「心配ない。俺が指導する以上夏までにしっかり泳げるようにしてやる!泳げるようになれば役に立つぞ!必ずな!」
『必ず』その言葉に違和感を感じる。
そこからの授業はいたって普通だった。レースを除いて。
レースでのボクの結果は予選で高円寺君に負け、決勝にはでれなかった。
プールの授業の後、着替えるときに感じた視線はなんだったんだろう。
まぁ気のせいだよね。
翌日、ボクは神室さんとデートの約束をしていたので、お昼すぎから部屋をでる。
お洋服はお姉ちゃんにもらったかわいい服で。
「神室さん!こっちこっち~。」
神室さんはカジュアルでそれでいて綺麗さがある格好をしていた。
とてもよく似合っている。
「神室さん、今日の服とっても似合ってるね!」
「...んた...て..」
「え?」
「あんたも似合ってるって言ってんの!//」
頬を染めながら言うその姿はとてもかわいらしい。
「あはは、ありがと。じゃあ早速色々見て回ろっか!」
そういってボクと神室さんはケヤキモールを見て周る。
服をみたり、化粧品や、香水をみたり。
アクセサリーショップに行ったときに、神室さんがネックレスを見つめている姿がとても印象的だったので、店を出た後、トイレに行くといい、こっそり買っておいた。
そして予約しておいた和食のお店に入る。
「私和食の店ってあんまり来たことなかったわ。」
「そうなんだ!じゃあいろいろ教えてあげましょう!」
なんて会話をしながら店員さんに注文をする。
並べられていく料理はどれも美味しそうだ。
「どれでも好きなのから食べてね!今日はボクの奢りだから。」
「別に割り勘でいいわよ。」
「いいのいいの。誘ったのはボクなんだし。」
ならお言葉に甘えて、と言わんばかりにゆっくり箸をすすめていく神室さん。
「んっこれおいしい。」
「どれどれ...んっほんとだ、おいしいね。」
そういってボク達はどんどん食べ進めていく。
「お会計おねがいします。」
そう店員に告げると
「7826円になります。」
「っ!?ほんとに奢ってもらっていいの?」
「大丈夫だって。」
そういって素早く会計を済まし、話しながら帰路につく。
「あっそうだ神室さん。」
「なに?」
「これプレゼント!」
ボクはカバンの中から紙袋を取り出し、神室さんに渡す。
「ここであけていい?」
「いいよ。」
「えっ!?これってさっきの?」
「なんだか欲しそうに見つめてたから、欲しいのかなーって。」
「でもこれかなり高かったんじゃ...」
「そういう時はありがとって言えばいいの!」ニコッ
「そっか...ありがと///」
そういった神室さんの笑顔はボクにはまるで星のように輝いて見えた。
「ねぇ、あんたのこと翠くんって呼んでもいい?」
「いいよ。じゃあボクは真澄ちゃんって呼ぶね。」
「...///」
こんな会話をしながら寮まで歩いて帰った。
神室の口調おかしかったらごめんなさい!おかしかったら修正するので教えてください。