愛ほど歪んだ呪いは有らず   作:カバー

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愛ほど歪んだ呪いは有らず その16

 

 

 

 

真依視点

 

 

「で、どういう風の吹き回しなの?」

 

案の定、輪と乙骨くんが去ってから、クソ親父たちの態度は露骨に変わった。

 

 

「どうも何も、輪の術式は禪院家の役に立つ。それだけのこと。」

 

甚一のおっさんはそう端的に述べる。潔いことだ。

 

 

「よくやったな、真依。お前を不出来な娘と言ったのは、過ちだったようだ。よく私のためにここまでしてくれた。」

 

すると、クソ親父が何やら語り始めた。

 

「何故、私ではなく兄が禪院家当主なのかを知っているか?」

 

「単に実力だろ。」

 

真希のその的を射た一言を無視して、クソ親父は一人で話し続ける。

 

「兄の術式は歴史が浅く、相伝であるか否かはそこまで争点ではなかった。術師としてただ一つを除いて兄に遅れをとったことはない。」

 

「それは子供のオマエ達が出来損ないだったことだ…!!」

 

 

いつものが始まったよ。だが、今日のクソ親父の発作はそこからがいつもと違った。

 

「…そう思っていた。が、どうだ。真依は今や一級に成ろうとしている。そして、例の特級を禪院家に引き入れようとしている。」

 

 

「あれの術式は凄まじい。保守派筆頭の加茂家に取り込まれるものとばかり思っていたが、まさかこう転ぶとは。」

 

 

「本当に感謝するぞ真依!これだけの功績があれば、私は禪院家の次期当主になれる!確実にな!天は私を見捨ててはいなかったのだ!」

 

 

そう言うと、クソ親父は天を仰いで涙まで流し始めた。あまりの異様さに、甚一のおっさんまで若干引いている。

 

 

「………ふざけないで。私が輪を選んだのは、私が好きだから、それだけよ!禪院家なんて関係ない!」

 

 

頭に血が昇る。こいつらは、輪を術式でしか見ていない。あの娘は、繊細で、自己肯定感が低いのが玉に瑕だけど、笑顔が可愛くて、優しくて…とっても…とっても可愛い私の恋人なのに!

 

 

「別にどちらでも構わん。結果的には同じことだ。」

 

甚一のおっさんがそう淡白に切って捨てる。

 

 

「……ほんと、根っこから腐ってやがるな、お前らは。」

 

 

そう真希が吐き捨てるかのように言う。これには完全に同意見だった。

そして真希は私の肩を叩いて言う。

 

 

「安心しろよ、真依。私が禪院家当主になって、こんなふざけた連中からお前らを守ってやる。」

 

「よくほざく。未だに四級の出来損ないが。」

 

「言ってろ。すぐに追い抜いてやるよ、クソ親父。」

 

「…お前の価値は、真依の代わりに子を成せる。それだけだ。」

 

クソ親父と真希のいつもの罵倒の連続が始まる。

すると、襖が唐突に開かれる。

そして、今一番聞きたくなかった声がした。

 

「なんや、皆さんお集まりで楽しそうやん。俺も混ぜてや。」

 

「直哉。お前何しに来た。」

 

そう甚一のおっさんが嫌そうに問う。

 

 

「別に?単に久しぶりに帰ってきた真依ちゃんの面見にきただけやで。ああ、ついでにあの化け物も見てきたで。しけた面しとったわ。」

 

 

「あれはアカンわ。男を立てられる顔しとらへん。顔はええけど、胸も尻も貧相やしなあ。真依ちゃんとは大違いやわ。」

 

 

…途端に頭に血が昇る。よりにもよって、輪を化け物と言われて我慢ならなかった。立ち上がって銃を突きつける。すると、直哉は面白そうな顔でこちらを眺めてくる。

 

「何?真依ちゃんの癖に、俺に歯向かうんか?残念やわ、真依ちゃんは女の程度ってもんをよう分かっとると思ったったんやけど。また思い知らせたろか?」

 

そう言いながら舌なめずりをする。その姿に気圧されそうになる。でも何とか踏ん張る。するとクソ親父が立ち上がり剣を抜いた。

 

「……直哉貴様。流石にそれ以上は私も我慢ならんぞ。」

 

「おーおー。娘が棚ぼたの力で一級になれそうになってから急に親面かいな。面の皮の厚さにビビるで、扇のおっさん。」

 

すると、甚一も静かに立ち上がり上半身を裸にして臨戦体勢に入る。真希も持参の薙刀を手に取った。

 

「…今はただでさえデリケートな時期だ、直哉。お前に引っ掻き回されて禪院家そのものが終わるようなことにさせるわけにはいかない。」

 

「………」

 

臨戦体勢の甚一を見て、直哉の顔色が変わる。

 

「私の妹に手ェ出そうなんて私が許すわけねぇだろ。」

 

そう真希も啖呵を切る。が、

 

「黙っとれや、カス。お前なんぞ数に入れとらんわ。」

 

「直哉の言う通りだ。下がっていろ、出来損ない。」

 

「…どっちの味方だよ、クソ親父…!」

 

場は混迷を極めていた。そんな中、最初に動いたのは甚一だった。拳を振り上げ、直哉に向けて振り下ろす。

直哉は投写呪法の高速スピードでそれを躱す。

扇が刀を振り翳すが、その瞬間に直哉に蹴りで飛ばされる。

 

「クッ!」

 

私は呪力を込めてサプレッサー付きの銃から弾を発射する。が、容易く躱される。

 

「…へえ。言うだけあって、それなりの呪力込めれるようにはなったんやね。でもまだまだやわ!」

 

そう言うと、直哉は私の頬を掌で引っ叩いた。

「ッ…!」

鋭い痛みを頬に感じる。次の瞬間、私の胸ぐらが掴まれる。

 

「…てめえ!」

 

真希が怒声をあげて薙刀を振り下ろそうとする。

…次の瞬間、誰も予想できていない事態が起こった。襖が開けられ、彼女が戻ってきていたのだ。

 

「…真依?」

 

「真依に…何してる?何してるんだ?」

 

瞬間、直哉が青ざめる。が、もう遅い。

 

「…死ねよ、クソ野郎。」

 

神楽輪の術式が、発動した。

 

 

 

 

 

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