愛ほど歪んだ呪いは有らず   作:カバー

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愛ほど歪んだ呪いは有らず その18

 

 

 

 

神楽輪視点

 

 

禪院家の方が出してくれた帰りの車の中で、私は真依の肩に寄りかかってぐったりとしていた。

私は真依と真希さんに挟まれて座っており、乙骨くんは助手席に座っている。

結局あの後、直哉は歯軋りしながら真依に頭を下げ、二度と舐めた真似はしないと誓った。

が、その代わりに私を殺さんばかりの目つきで睨みつけていた。

 

 

 

「いくらなんでも無茶しすぎよ…全く。」

 

そう真依は仏頂面で私の額にデコピンをする。

あうっと声を出して額を抑える私に、真依は呆れたように笑いかけた。

 

「ほんと…心配させてくれるわね、私の恋人は。」

 

 

「う…ごめん。真依があんな風にされてるの見たら、頭が真っ白になっちゃって」

 

「………ありがとう、輪。私のために怒ってくれて。気が晴れたわ。見た?あいつが頭下げるところ!」

 

 

「ははは…」

 

 

そう腹黒く笑う彼女を見て、今は元気になった証だとホッとする。すると、隣の真希さんも私に話しかけてきた。

 

 

「私からも礼を言っとく。真依を守ってくれてありがとな。その役目は…私がやるもんだと思ってたが。」

 

そう言うと、所在なさげに真希さんは目を伏せて自嘲するように笑った。

 

「真希さん…」

 

乙骨くんは、何やら不安げに真希さんを振り返って見つめている。…少し、気まずい雰囲気が流れる。

 

すると、真希さんが表情を一転させてニヤけた顔で真依をからかいだした。

 

 

「にしても、アツアツだったなあお前ら。私まだ…まだ貴女と一緒に居たいの!…だったか?妬けるねえ。」

 

 

「なっ!?」

 

 

真依の顔が沸騰したように赤くなる。

 

 

「もうキスは済ませたのか?どこまでやった?」

 

 

「は!?あんたには関係ないでしょ!相変わらずデリカシーないわね!」

 

「いいだろうが?なあ輪。教えろよ。」

 

「え?いや…その…」

 

「そのノリで輪に絡むのやめなさいよ!」

 

私を挟んで、姉妹でギャーギャー騒ぐのが一通り続いた。

乙骨くんも、どこか安心した様子で微笑んでそれを見つめていた。

 

そんなこんなで、私たちの禪院家訪問は幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

*************

 

 

 

禪院家の先ほどまで一悶着あった屋敷では、禪院甚一と禪院扇が一つの部屋で静かに語り合っていた。

その内容は、先ほどの直哉にかけられた輪の術式のことだった。

 

 

「にしても、肝が冷えたな。凄まじい勢いで呪力が吸われていた。あのまま直哉は死ぬものとばかり思ったが。」

 

「ふん。あれはあれで良かったかもしれんがな。あの当主の馬鹿息子には良い薬だ。」

 

 

そう扇が忌々しそうに返す。甚一は顔を顰めそれを諌めたが、やがて話題は輪の術式の話へと移行した。

 

 

「どう思う?あれは。聞いていた話と違うが。」

 

「一度発動した術式の中止…そんなことが出来るとは聞いていない。」

 

「だとするとやはり…」

 

 

「ああ。報告に穴があったとは考えづらい。楽厳寺学長の処置は、あくまで滅多なことでは術式は発動しないように、とのものだ。」

 

「一度発動した術式をどうこうするものではない、と。」

 

 

そうだった。二人が保守派から聞いていた報告では、幼少期にはニュースで見た程度の遠くの人物ですら、呪力と生命力を奪い呪い殺していた、輪を滅多なことでは呪わないように矯正する役を担っている、それが楽厳寺学長のはずだ。

 

そして、それが成功したから、神楽輪の呪いで大惨事になるのを恐れて、処刑対象としてあくまで観察中だった(本人は知らないが)輪が今も生きているのだ。

 

 

「が、一度発動した術式は止める術がないとも…」

 

「それでも安全だと踏んだから、輪を屋敷に招いたのだが。」

 

二人の頭にまたもや直哉が現れ、そして消えた。

 

「…ならば術式の制御は、何故できたのか。」

 

その扇の問いに、甚一は思案しながら答えた。

 

「恐らく、真依の影響…だろうな。」

 

「…というと?」

 

 

 

「輪の術式は感情に大きく左右されるものだ。そして最近で彼女は、生まれて初めて恋を知った。」

 

「それは…好都合だな。」

 

「ああ。」

 

元より禪院家が神楽輪を操るつもりだったが、それが確実にできるとこれで証明できた形になる。

そう二人は結論づけた。

二人は静かに微笑んだ。

 

 

 

 

一方、直哉は荒れに荒れていた。

たまたま近くにいた侍従を殴り、屋敷の一角をめちゃくちゃにしてもなお止まる気配はない。

 

その目には、明確な殺意が篭っていた。

 

面は覚えたで…神楽輪。いつか俺が必ず殺したる。」

 

こうして、禪院家もまた、神楽輪という存在を強く意識するようになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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