神楽輪視点
暫くはそのまま平和な日が続いた。
そんなこんなで、任務の回ってこない学生である私は、歌姫先生から講義を受けたり、東堂先輩からしごかれたりしながら過ごしていた。
だが私は心中穏やかではなかった。
その原因は前日の訓練からある程度経った日の、真依が任務で外していた深夜のこと。
私の自室に押しかけてきた三輪ちゃんは、挙動不審だった。暫くなにかを迷っているようだったが、やがて私に身を乗り出してこう告げた。
「その…いけないことだとは分かっています。でも、私を、輪の第二の恋人にしてくれませんか!」
「……………………は?」
呆然。今三輪ちゃんは何て言った?
暫く言葉を頭で咀嚼する。
…は?
「…真依が一番でも構いません。でも、私輪を…す、好きになってしまったんです!」
「な、なに言ってるの!?」
「愛人枠でも構いません!だからどうか…」
「い、いや、ちょっと待って!落ち着いて!」
そう私は怒涛の追撃を入れてくる三輪ちゃんに、私は自分にも言い聞かせるようにそう言った。
「気持ちは嬉しいよ。ありがとう。でも、それはできないよ、真依への裏切りになるし…」
「それは…分かってます。」
三輪ちゃんから罪悪感を感じる。しゅんとしてしまった三輪ちゃんに、私がアワアワしていると、三輪ちゃんは何かを決心した顔になり、ぎこちない動きで私の腕に体を纏わせてきた。
「い、い…いけませんか?」
腕に三輪ちゃんの健康的な形の整った胸が当たる。やばい。落ち着け。落ち着け私。
「え、あ…うう………だ、ダメったらダメ!」
二人とも顔を真っ赤にしながら、取り敢えずそれで話は終わり、三輪ちゃんは帰った。
…が、それからも二人きりになると、三輪ちゃんは私にぎこちないアピールを続けた。
ある時は胸元を恥ずかしがりながら見せてきたり、(途中で彼女から顔を赤くして去っていった。)
腕を組んできたり。
幸い真依は気づいていないようだが、メカ丸と西宮先輩と東堂先輩にはまずバレている。
視線が痛い。特にメカ丸の。
ついでに東堂先輩から真顔で「二股はダメだぞ、ベストフレンド。」
と常識的に諭された時は、泣きそうになった。
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三輪視点
私は、最低だ。
あの訓練の後、スポーツドリンクを買って戻る時に、私がそれを聞いたのは偶然だった。
「それと…お前の術式の影響で真依が強くなった、というのは周りに悟られていないか?」
加茂先輩のその言葉に、耳を疑った。
三級から、急に一級に上がりそうな真依。
私は、正直祝福すると同時に、妬ましくも思ってしまった。
呪霊の影響とは言うが、私がなれるものならなりたかった。
だって、そうすれば家族に楽をさせられる。
貰える給料は、三級と一級では比較にならない。
私なりに努力しているつもりでも、なかなか結果は伴わない。
それが、輪のおかげ?しかも、どうやらそれを隠しているようだった。教えてと頼んで教えてくれる雰囲気ではない。
私は、こっそり隠れて聞くことを選んだ。
その結果、とんでもないことを知った。
輪の術式は、好感度で人の強さを変える。
…なら、私は。
罪悪感が無かったわけではない。
真依には本当に悪いと思っている。でも、家族に楽させる選択肢が目の前に転がっているのに、それを無視する罪悪感の方が、大きかった。
「その…いけないことだとは分かっています。でも、私を、輪の第二の恋人にしてくれませんか!」
ああ、私は最低だ。