愛ほど歪んだ呪いは有らず   作:カバー

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愛ほど歪んだ呪いは有らず その22

 

 

 

 

神楽輪視点

 

 

 

 

日本に5人しか居ない特級呪術師の一人

 

 

一般人を一夜にして100人以上大量殺戮し、呪術高専から追放された、故に『最悪の呪詛師』

 

元は盤星教と呼ばれる天元様を信仰崇拝する、非術師の宗教組織を乗っ取り、新興宗教の教祖となった。

 

何よりも凶悪なのは『呪霊操術』と呼ばれるその術式。

一人で呪霊の軍隊をも形成できると楽厳寺学長に聞いたことがある。

…もしかして最近呪霊の発生件数が少ないのは、彼が…

 

そんな凶悪な呪詛師が、白昼堂々と京都高専に立っている異常事態。

 

なればこそ…先手必勝!

 

 

 

 

「はあッッ!!!!」

 

 

私は咄嗟に呪力を全力で右腕に乗せて、目の前の地面をぶん殴り瓦礫に呪力を乗せ、夏油とペリカンの呪霊にぶつける。

 

夏油は後方に飛び引いて回避し、ペリカンの呪霊は押し潰された。

 

ペリカン呪霊を押し潰した瓦礫の中から、白いシャツを着た黒人のグラサンの男と、上半身裸の金髪のマッチョが飛び出てきた。

 

 

 

「残念。せめて少しは話をと思ったんだが。」

 

「オ前ガノコノコ出テキテ話モクソモナイダロ!!」

 

 

「まあね。流石に私のことは知ってるみたいだね。」

 

 

そう言いながら不気味なほど爽やかな笑顔を夏油は私達に向けてくる。

 

私は緊張を隠して問いかける。

今は少しでも援軍が来るまでの時間が欲しい。

 

 

「夏油傑…最悪の呪詛師。京都高専に何の用ですか。」

 

「だから言っただろう?友人として君に協力して欲しいんだよ。」

 

…敵意も欺きも感じない。心からの本心だと実感で分かる。それが逆に気味が悪い。

 

「残念ですけど、私は大量殺人鬼と友達になる趣味はありませんから。」

 

その一言に、夏油は心底不思議そうにキョトンとした顔をして

 

 

「ああ!」

 

そう何かに気づいたように拳をポンと掌に乗せた。

 

「そうか!君は自分のしたことを知らないのか。まあ、上層部の奴らの考えそうなことだな。」

 

 

「……?」

 

「まあ、その辺の話はおいおいといこう。」

 

「それでは早速…」

 

「夏油!」

 

 

背後から聞こえた歌姫先生のその声に振り向くと、歌姫先生と楽厳寺学長、それに見覚えのない術師が数名、東堂先輩を始めとした1年、2年も集まってきている。

 

 

 

「これはこれは。久しいですね、歌姫先輩。教師になられたとか。お似合いですよ。」

 

「あんた…ここに何しに来たのよ!私の生徒から離れなさい!」

 

「残念ですけど、それはできません。私は神楽輪さんと友人になりに来たんですから。」

 

そう言いながらも、睨み合いながら互いの陣営は静かに臨戦態勢に入る。

それでも歌姫先生は続ける。

 

「もう全国の術師に通達が行ったわ!どんどん術師が駆けつけるわよ!さっさと逃げた方が…」

 

 

「悟は私の放った特級呪霊を祓いに福岡まで飛んでる、でしょ?」

 

 

その一言に歌姫先生の声が詰まる。

 

「あれはあんたが…」

 

 

「残念ですけど、悟が来なければ別に何とでもなりますよ。さて、それじゃあ輪さん、話の続きを…」

 

「悪いけど、話すことは何もありません。」

 

 

そう突っぱねると、夏油は心底残念そうに首を振って、赤いムカデのような呪霊を複数体出現、さらに一つ目の大入道のような呪霊、白い着物の女の呪霊、さらに…

 

気がつくと、軍隊とも呼べる数の魑魅魍魎の呪霊達が私たちを取り囲んでいた。

 

「それでは…」

 

「三輪ちゃん、来るよ!」

 

「呪い合いで語るとしようか!」

 

 

戦闘が、始まった。

 

 

 

 

 

 

 

**************

 

 

 

「さて、まずは数で攻めようか。」

 

その一言と同時に、百足のような呪霊が、神楽輪と三輪霞に向かって雪崩のように突っ込んでくる。

 

 

「シン・陰流・簡易領域!」

 

三輪霞は簡易領域を発動、半径2、21mの獲物を即座に切り捨てるシン・陰流最速の技…が。

 

「数が多すぎる…!」

 

神速の斬閃と言えども、刀一本でどうこうできるレベルの数ではない。十数体を切り捨てたところで、百足が刀に絡み付く。

 

「しまっ…」

 

目の前には更なる百足の群れ。その雪崩が一斉に三輪霞に…

 

「させるか!」

 

神楽輪は三輪霞を抱き寄せ、呪力を二人分回し、百足達を弾性の呪力特性で弾いていく。

 

「ッ!すみません!」

 

「気にしないで!離れないでね!」

 

「でも、このままだと…」

 

確かに状況的には夏油側が優位に立っている…そう一見すれば見える。

後方の楽厳寺学長を始めとした術師達も呪霊の群れとそれを指揮するラルゥに手間取っている。

 

神楽輪も三輪霞を守りながらでは思い切った行動はできない。…彼が居なければ。

 

「三輪ちゃん、忘れてない?東堂先輩の存在を…」

 

 

パァン!!!

 

 

次の瞬間、三輪霞が後方の呪術師の集団に居る東堂と入れ替わる。

自然、神楽輪が、東堂を抱きよせている形になる。

 

「!?」

 

夏油達はその光景の唐突さと異常さに一瞬思考が止まる。

 

 

パァン!!!

 

 

さらにもう一度拍手。

 

神楽輪と夏油の位置が入れ替わる。東堂が夏油を即座に抱きあげて、持ち上げる。

 

「はああああああ!!!!」

 

東堂がそのまま夏油を頭から地面に叩きつける。その技は…プロレスのバックドロップ!!

 

さらに神楽輪が続く。

 

「オウッ!!」

 

入れ替わる前に、夏油の近くに控えていたミゲルの顔面を呪力を集中させた右腕でぶん殴る。が…

 

「アウ!痛テエ!」

 

「は?」

 

想定外。

神楽輪の渾身の一撃を、ミゲルは踏ん張って耐えた。さらに耐えながら殴った後の神楽輪の右腕を掴んでいる。

 

「オ返シダ!!」

 

「ッ!!」

 

神楽輪の胴体にミゲルの蹴りの凄まじい一撃。呪力特性で耐えたが、ゴムボールのように神楽輪は校舎まで吹き飛ばされる。

 

「ベストフレンド!」

 

咄嗟に東堂が意識をそちらに向ける。

それが命取りだった。

 

「余所見!」

 

バックドロップを小さく柔らかい呪霊をクッションにして耐えた夏油が、即座に立ち上がり、呪具を取り出し、振りかざす。

それは…特級呪具『遊雲』

 

 

ドゴオオオオッ!!!!!

 

 

咄嗟に腕でガードしたが、東堂も凄まじい勢いで弾き飛ばされる。

…東堂には、神楽輪のような呪力特性によるガードはない。

両腕の骨折。

さらに肋の骨の数本も折れた。

 

「ぐ…あっ…」

 

「惜しかったね。良い手だったが、詰めが甘かった。」

 

 

「百斂 穿血!!!」

 

「このっ」パァン!!!

 

呪霊の群れから抜け出した加茂憲紀と禪院真依の穿血とショットガンによる呪力の篭った弾が、夏油を襲う。

 

「ッ!」

 

咄嗟に夏油は呪霊を出現させ盾にするが、その盾を穿血は貫通する。

 

「おっと」

 

だが夏油は穿血を上半身を仰け反らして躱した。

 

「夏油傑…呪霊操術の使い手がここまで動けるとは…!」

 

加茂憲紀は思わずその見事な動きに驚愕する。

 

「まあ、それなりに鍛えてるからねェ。いやはや、にしても今年の学生は出来が良いね!呪術界の未来も明るそうで嬉しいよ。」

 

「ただ、非術師の近代兵器を使うのは、正直私はどうかと思うがね。いや、工夫は認めるが。どうも私は好きでは…」

 

「…んなことどうでもいいのよ。」

 

夏油の長々とした台詞を激怒した真依が遮る。

 

「あんた…私の輪に何の用があんのよ。」

 

その一言に、夏油は怪訝な顔を一瞬するが、笑顔で答える。

 

 

「ああ、彼女は素晴らしい力を持っているからね。是非とも、私の家族の一員になって欲しいんだ。」

 

 

「もし良かったら、君もどうだい?術師は歓迎…「あんたは!」

 

 

「あんたは…輪があの術式のせいで、どんなに苦しんでるか分かってるの!?」

 

「…………」

 

 

「それをあんたみたいな部外者が急にしゃしゃり出て、利用しようとしてんじゃないわよ!」

 

「君は、神楽輪の何だい?」

 

その一言に、真依は何の躊躇もなく答えた。

 

「恋人よ!!!」

 

「……そうか。」

 

そう呟くとと、夏油は悲しげな顔をして語り始めた。

 

「勘違いさせたならすまない。でも、私は神楽輪をただ利用したいわけじゃない。むしろ逆だよ。」

 

「逆…?」

 

「呪術界から体よく制御させられ、非術師のためにと利用される彼女を、私は救いたいんだ。」

 

その言葉に、微塵も嘘はなかった。だからこそ、真依と加茂憲紀には夏油の真意が微塵も理解できなかった。

 

「何を訳の分からないことを…」

 

「理解してもらえないか。残念だよ。」

 

次の瞬間、さらに凄まじい数の魑魅魍魎が夏油の背後から現れる。

 

「悪いが、今は君たちに理解してもらえなくても構わない。少し寝ててもらうよ。」

 

その魑魅魍魎の群れは、一斉に二人へと襲いくる。

 

「真依!構えろ!」

 

「分かってる!」

 

「赤麟躍動!!!」

 

「呪力変形…盾!!!」

 

加茂憲紀は術式により体にブーストを、真依は呪具を変形させ、それぞれが応戦の構えに入る。

 

 

一方、神楽輪もまた…

 

「悪イガ、仲間ヲ助ケニハイカセナイゾ!特級!」

 

「…こいつ、強い…」

 

死闘を、繰り広げていた。

 

 

 

 

 

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