愛ほど歪んだ呪いは有らず   作:カバー

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加茂くんが輪ちゃんの影響で一級術師にまで進化してます。
後原作で東堂達の上の学年は全く触れられてないので独自設定で補完してます
ご了承ください。


愛ほど歪んだ呪いは有らず その3

 

 

私と三輪ちゃんと楽厳寺さんは、揃って徒歩で京都校に向かった。というのも、楽厳寺さんは京都校の校長でもあるのだ。

よって、住む場所も必然的に京都校に近くなる。

 

私は子供だからという理由と体質もあって、呪術の鍛錬を屋敷の屋内でしていたのみなので、度々顔を出す加茂さんから色々と話を聞く程度しか知らなかったけど。

 

荷物はもう既に先日寮に送っているので手ぶらでいい。まあ、私の荷物といえば数冊の本と学習道具、あとはパソコンぐらいのものだけど。

 

「そういえば、なんで輪の制服だけパーカーがついてるんですか?それに厚着ですし…」

 

道中で三輪ちゃんが楽厳寺学長に尋ねる。まあ、そりゃあ気になるか。

 

「輪は昔から太陽に弱くての。体も弱い。故に厚着にカスタムしたんじゃよ。天与呪縛というやつでな。」

 

「あ、そうなんですか。なんか…ごめんね?」

 

そう三輪ちゃんが私に謝ってくる。本当にいい子だな…

 

「ううん。大丈夫。」

 

「ほれ、着いたぞ。」

 

そんな風に話していると、山の中に立派な門が現れる。複数の建物が広大な土地に建てられており、いくら公的な財源があるとはいえ、これは驚いた。立派すぎる。

 

「えっと…生徒数って全員で何人でしたっけ?」

 

「4年が三人、3年が二人、2年が三人。お主らも含めて一年が四人。合計で十二人じゃの。」

 

「に、人数の割に規模でけー…。」

 

そう隣で三輪ちゃんが驚きの声をあげる。

まあ無理もない。ここは学生の学舎でもあるが、西日本の呪術会の本拠地でもあるのだ。

その意味合いの方がどちらかといえば強い。

 

恐る恐る中に入っていくと、いくつかの建物を通り過ぎたあたりでいかにも学校とかいう雰囲気の木造建築の前に3人が立っているのを見つけた。

…いや、若干一名人と言えるのか怪しいのがいるけど。なんだあれ。メカ?メカか。

 

「おお。ちょうどおったな。あれがお主らの同級生と歌姫先生じゃ。それでは、わしはもう行く。頑張るんじゃぞ。」

 

「はい。ありがとうございます。」

 

そう礼を言って会釈をして私と三輪ちゃんは3人の元へ向かう。

 

「あ、ちょうど来たわね。よし、これで全員揃ったわね。では改めて、私が京都校の教師の歌姫よ。よろしくね。」

 

そう巫女服のような衣装を着た素敵な女性が手を叩いて言う。あと二人は、黒髪で短髪の不機嫌そうな美少女と、メカである。メカである。

 

「貴女たちも同級生?よろしくね。」

 

「よろしく頼ム」

 

「うっわ、メカだ!メカがいる!」

 

「ちょ、三輪ちゃん、分かるけど自己紹介自己紹介。」

 

そう4人でワチャワチャとやっていると、歌姫先生が声をあげる。

 

「それじゃ、とりあえず中の教室に行きましょ。2年生と自己紹介の時間よ!」

 

「3年生と4年生はいないのカ?」

 

「あー。3年の二人は術式が便利でね。現場に出ずっきりなのよ。4年生はもうほぼ卒業前だから多分あんまり会うこともないと思うわ。」

 

「ふうん。優秀で羨ましいわね。」

 

そう黒髪の少女が嫌味っぽく言う。

 

「学校なのにそういうこともあるんだ…。」

 

「実質術師予備軍だからね。私たちは。」

 

そう言いながら私たちは2階に上がり、教室の前につく。すると歌姫先生は何やら顔をひくつかせこちらを振り向いた。

 

「…あと一つ忠告しておくけど。東堂ってやつの奇行には構わなくていいからね。」

 

「へ?」

 

「それだけ肝に銘じておいて。京都校で一番大事と言ってもいいことだから。」

 

「どんな奴がいるのよ…」

 

そう黒髪の美少女が困惑しながら言う。

それに無言で歌姫先生は答えると、静かに扉を開けた。

 

そこには、見知った顔の加茂先輩と、金髪の嬉しそうにこちらを見る小柄の美少女。そして…筋肉が居た。筋肉が居た。なぜか上の学ランを脱いで筋肉を見せつけている。いや、何故だ。立派だけども。

 

「東堂…あんた、学ランを着なさいよ!」

 

そう歌姫先生が吠える。どうやら彼が東堂先輩らしい。が、

 

「悪いが歌姫よ。それは聞けない。俺の大事な後輩を見定めるためだ。」

 

「はあ?」

 

「…放っておきましょう歌姫先生。言っても無駄だ。」

 

そう加茂先輩がどこか達観した雰囲気で言う。

…なんか、もうすでに東堂先輩のことが分からなくなってきた。

 

金髪の小柄な美少女は見るからに瞳を輝かせ、こちらをガン見してくる。

 

「うっわ!まともそうな女の子が3人!3人も来たよ!やっと私に潤いが来た…!!」

 

…なんか、凄い切実さを感じる。

 

「静かに!静かに!これから1年生の自己紹介するから!静かにしなさい!」

 

歌姫先生がそう言うと、元から静かにしていた加茂先輩と、不気味にこちらを見定めている東堂先輩、黄色い歓声を上げていた美少女の先輩が静かになる。

 

「はい。それじゃ自己紹介を。等級と名前で簡潔にね。それじゃ真依から。」

 

「…はい。私は禪院真依。3級術師よ。よろしくね。」

 

パチパチパチ…小柄な美少女の先輩だけが拍手をしてくれているが、二人は無言だ。居た堪れない。

 

「えーと、次。メカ丸。」

 

「…メカ丸ダ。準一級術師。よろしく頼ム」

 

「ほお…傀儡操術か。見事だな。」

 

そう加茂先輩が静かに称賛する。…ああ。傀儡操術師なんだ、彼。

ちなみに小柄な美少女の先輩も控えめだが拍手をしている。

 

「それじゃあ三輪。」

 

「あっ、はい!初めまして三輪です!3級術師です!不束者ですがよろしくお願いします!」

 

クスクスと隣の真依ちゃんが笑う。それに三輪ちゃんが顔を赤らめる。

小柄な金髪の美少女が、よろしくねー!と拍手をしている。

 

「じゃあ最後に…神楽。」

 

「神楽輪です。未熟者ですがご指導の程宜しくお願いします。特級術師です。」

 

「ああ、改めてよろしく頼む、輪。」

 

その瞬間、返事をした加茂先輩と歌姫先生以外の空気が止まった。

東堂先輩は僅かに目を見開き、他の人間は驚愕の色を浮かべている。

三輪ちゃんに至ってはヒェという声まで聞こえた。

 

…そんなに珍しいのだろうか。特級って。

関わったことのある術師が加茂先輩と楽厳寺学長と五条さんぐらいなのでいまいちよく分からない。

 

その沈黙の中、歌姫先生がパンと手を叩く。

 

「はい一年生のみんな、ありがとう。それじゃ2年生も自己紹介を。加茂から。」

 

「…加茂家次期当主の加茂憲紀だ。1級術師。よろしく頼む。」

 

三輪ちゃんが一人だけ所在なさげに拍手をする。

 

「よろしくお願いします。」

 

私はそう加茂先輩に頭を下げる。それに加茂先輩は静かに微笑んだ。

 

「はい次、西宮。」

 

「あ、えーと…私は西宮桃!アメリカ人とのハーフ!可愛い後輩大歓迎!二級術師!よろしくね!」

 

三輪ちゃんと私、それに真依ちゃんも拍手をする。次だ。例の人物がやってきた。

 

「最後、あー。東堂。くれぐれも下手なことは」

 

「俺は東堂葵!一級術師!」

 

「聞けよ!」

 

そう歌姫先生が叫ぶ。…なんか苦労してそうだな、この人。

 

「まずお前たちに聞きたいことがある。どんな女がタイプだ!?…男でもいいぞ!」

 

「…………は?」

 

一瞬一年生全員の思考が停止する。

何言ってんだこいつ?

 

「返答次第では、今ここで俺が揉んでやる!」

 

「ちなみに俺は…身長(タッパ)(ケツ)がデカい女がタイプです!!」

 

何言ってんだこいつ?

 

「「はぁ…」」

 

歌姫先生と桃先輩が同時にため息を吐く。

加茂先輩に至っては無表情に磨きがかかっている。

 

「…なんで初対面のあんたと、そんな下らない話しなきゃいけないのよ。」

 

そう真依ちゃんが言う。全くもって道理だ。

 

「自己紹介したろ。これで友達だ。さっさと答えろ。」

 

なんだその理屈は?

 

「性癖にはそいつの全てが反映される。女の趣味がつまらん奴は、そいつ自身もつまらん。俺はつまらん奴、特に男は大嫌いだ!」

 

…理には適ってる、のか?

 

「さあ、さっさと答えろ。まずはそこのお前、あーっとメカ丸からだ!」

 

「ハッ!?いや、俺はそんな別ニ…」

 

「即答できん時点でまだまだだな。次!」

 

「おい東堂!度が過ぎるぞ!」

 

「そうよそうよ!」

 

そう加茂先輩と歌姫先生が怒鳴る。が、

 

「黙ってろ糸目。性癖も語れん男が。」

 

そう軽く一蹴してしまう。

 

「次!真依!」

 

「は?なんで答えて貰えると思ったの?」

 

「いいから答えろ!」

 

「…絶対嫌。」

 

「論外。次、三輪!」

 

これはもしかして…

 

「え、いや、ハハ…やだ、恥ずかしい…」

 

「恥じらいがある時点でまだまだだな!次!特級の輪!」

 

…意外と、これは理に適ってるのかもしれない。

恥ずかしいことで判断を鈍らせない決断力。

自身の現状を客観的に見る判断力。

それを…見ている…?

 

「…その前に、一つ宜しいでしょうか。東堂先輩。」

 

「なんだ!!」

 

「これは、貴方発案の問いですか?それとも別の方の?」

 

「…フッ。これは俺の師匠の問いだ。俺をここまで強くした原動力だ。さあ、答えろ!」

 

…やはり、そうなのか。先輩が全力で私たちを導こうとしている。ならば、それに全力で答えるのみ!

 

「…おい、輪。こんな問いに答えなくても…」

 

そう加茂先輩が気を遣って言ってくれるが、それに甘えていては成長できない。

 

一見清楚だけど、エッチな女の子がタイプです!」

 

その瞬間、場の空気が凍った。

 

「…ほう。流石は特級だ、他の有象無象とは違う。だがまだ曖昧だ!お前の言うエッチとはなんだ?」

 

「脱いだら凄い系の女の子です!」

 

その瞬間、東堂と輪を除く全員の頭の中に、変態という文字が浮かんだ。場の空気がさらに冷え込む。

そんな中で、東堂先輩のみが私に拍手を浴びせていた。

 

「…見事だ。お前は優れた術師のようだな。」

 

「はっ!光栄です!」

 

「ちょ、ちょっと、そこまでに…」

 

そう歌姫先生が割って入ろうとする。が、それを無視して東堂先輩は続ける。

 

「…見事。実に見事だ、ベストフレンド。俺はお前を先輩として誇りに思う。が、まだ粗い。」

 

「…最初にお前は、脱いだら凄い女の子が好きだと言うべきだった。最初のエッチな女の子というのは漠然としすぎだ。まだお前は磨ける。」

 

「なるほど…勉強になります。」

 

「それで納得するなヨ。」

 

周りの目とは真逆で、私と東堂先輩の間だけどんどんヒートアップしていく。

 

「グラウンドに出ろ!俺が直々に組手してやる!」

 

「了解です!」

 

「いや、ちょ…この後は簡単に今季の授業の概要説明を…」

 

そう歌姫先生が言うが、耳には入っていない。

私たちはずかずかと教室を出ていく。

 

「あーっ…もう!とりあえずみんなグラウンドに!組手を見学してから説明するから!」

 

こうして、私たちの学園生活は波乱の幕開けを迎えた。

 

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