人理修復with不死身の杉元 作:死ねない作者
設定が複雑だし、設定が複雑だし……あと、設定が複雑すぎる。
翌日、近くの街で情報収集をしていたカルデア一行。
あらかたの上方は集め終え、一行は早速リヨンの街へ来ていた。
「酷い……」
藤丸の声が彼らの耳に入る。
町は既に破壊され尽くし、もはや人の気配の欠けらも無いほどな凄惨な光景が広がっていた。
「……ドクター、生体反応はありますか?」
『────』
マシュがロマンへそう問いかけるが返ってくるのは砂嵐のような雑音。
通信障害。ロマンを頼らずに各々が各々の足で探すしかない。
杉元はすぐに切り替え口を開いた。
「……このまま俺たちで探そう。マシュと藤丸とジャンヌさん、マリーさんとアマデウス、それから俺の3行動だ。何かしら気づいたら上空に向かって魔術でもなんでも打ってくれ。そうしたら集合だ」
「……うん、杉元さんの案で行こう」
その考えにみんな頷き、早速探索を始めた。
だが、そんな中でも杉元は頭を回転させる。
このリヨンという街に竜殺しのサーヴァントがいるというのは敵もわかっている事だ。それなのになぜしっかりと仕留めてないのか。
やはり罠。おびき寄せての一網打尽を狙ってるのか。そんな考えが頭をよぎる。
「………」
無言で歩く杉元。
歩きながら手にした歩兵銃を持ち替え、銃身を両手で掴み、バッドを握り込むように構えた。
そうして、後ろを振り向きざまに足を踏み込む、全力でフルスイング。
「………ッ!?」
「……で、お前は誰だよ?」
バキッと音が響き、後ろから忍び寄っていた何者かの顔面に銃床がクリティカルヒット。
たまらずよろけたその男の口や鼻からは血が流れ出ていた。
その顔つきは味方では無い。睨むその目は敵対者の目。
杉元は腰から銃剣を抜き歩兵銃へとセット。
いつでもその喉元に突き立てられるように構えた。
「人は私をオペラ座の怪人と呼ぶ。竜の魔女の命により、この街は私の絶対的支配下に──」
「そうか死ね」
言葉途中に一歩踏み込み銃剣を前へと突き出す杉元。だがそれをバックステップで距離を取りつつ避ける"オペラ座の怪人"。
何かあれば合図する。
杉元自身の言葉だったが……この瞬間、この街が敵に狙われていることを理解。竜殺しのサーヴァントを探すのに手間取って増援が来ることは避けたい。
故に変に騒ぎを起こし捜索を中断させるより、この場で速やかに杉元自身の手で始末する方が効率がいい。その判断の元、彼は引き金に指を掛けずに目の前の怪人と相対した。
「……ッ」
「クッ…!」
杉元の次の手は歩兵銃の投擲。
やり投げのごとく真っ直ぐに怪人へと向けて投げた。
当然、それを避けようと怪人は体を動かす。しかし、そこへ走り込む杉元は腰に差した刀……あの日、誠の旗を心に掲げた一人の男から託された"和泉守兼定"を抜く。
怪人の爪と刀がぶつかり火花が散った。
鍔迫り合い。しかしこうなると──
「………!?」
──やはり膂力で勝る杉元が怪人を押していく。
やがてそのまま怪人を壁にまで押し込み、その腹に向かって蹴りをかました。
それは後ろの壁にクレーターを作るほどの威力。怪人の口からは血が吐き出されていた。
そんな中でも杉元は止まらず、地面に落ちた歩兵銃から銃剣のみを取り外し、そのまま怪人の胸元を滅多刺しにする。
反撃とばかりに怪人は爪を立てて杉元へと攻撃を仕掛けるが……もはや力も籠っておらずスピードも遅い。
刀で腕を切り飛ばし、銃剣はトドメとばかりに喉元へと突き立てた。
「グ……ゴボッ…!」
「…………」
倒れる怪人を冷たい目で見下ろす杉元。
決着は一目瞭然。
刀を鞘へ、銃剣もホルダーに。歩兵銃を拾い上げ、スリングを肩にかけ彼は、今まさに光の粒子となって消えゆく怪人を背に歩き出した。
そうして歩いていると、遠くで打ち上がった黒い魔力弾。
ガンド。藤丸が使える魔術。
合図だ。そう確信して杉元は急ぎ足でそこへと向かった。
「──藤丸。どうした?なにか見つけたか?」
合流してきた杉元。
もう既にそこには全員が集まっていた。
「あ、杉元さん。見つけました。ジークフリートさんです」
そう言って藤丸は横に立つ鎧を身にまとった男を指し示す。
白い髪に筋骨隆々の肉体。見ただけで分かる歴戦の猛者。剣を携えたその出で立ちはまさに英雄。
彼こそが竜殺しの英雄、ジークフリートだった。
「見つけられたのなら良かった。それなら早くこの場を──」
『良かった!やっと通信が繋がった!みんな!早くその場を離れるんだ!』
杉元の言葉途中に割り込むロマンの声。
慌てた様子でその場に言葉が響いた。
『サーヴァントを上回る超極大の生命反応!猛烈な速度でそちらにやって来るぞ!それだけじゃない、サーヴァントも三騎追随!逃げた方が良い!』
サーヴァントを上回る……十中八九ファヴニールだろう。
さらにそこにサーヴァントも来ている、となってはここは撤退が吉。
流石の杉元でも相手がサーヴァント、対人であれば無類の強さを発揮するものだがドラゴン怒鳴れば話が変わってくる。
ジークフリートがいると言っても体勢がまだ整っていない。
逃げの一択。その場にいる彼らの心は既にひとつだ。
しかし、
「……無理だな。もう俺でも感じれるほどに接近されてる。今逃げ出してもすぐ追いつかれるな」
「……迎え撃とう」
杉元の言葉に決意の籠った目の藤丸。
倒せなくていい。何とかデカい隙を作る。それだけでいい……のだがそれがどれだけ難しいことか分からないわけじゃない。
そんな時だった。
「──何を見つけたかと思えば瀕死のサーヴァント一騎ですか。諸共、滅びなさい!」
【─────ッ!!】
上空から降り立った黒い巨大なドラゴンと黒いジャンヌ・ダルクこと竜の魔女。
声にならないファヴニールの咆哮がカルデア一行の耳を劈く。
「………ッ」
杉元はそれを見て歩兵銃を構える手に力を込め、鋭い目付きで目の前の敵を睨んだ。
杉元ならファヴニールの攻撃すら耐えてくれるさ(遠い目)