今日で文化祭当日。
それぞれのクラスは催し物を出し、予行練習も兼ねて準備をしている。
……のだけど…。
白羽「んーーーーー!!黒ちゃん可愛い!!♡♡♡」
……どうしてこうなった?
真黒「……しーちゃん、もう100枚も連写してない?そろそろお店の準備したいんだけど…。」
白羽「あ、ごめんごめん、黒ちゃんが可愛くてつい笑」
まったく、やる気あるんだか…。
そもそも僕に女装してくれって言ったのはしーちゃんだよ?
女子1「んー、私も秦野君の女装もっと見たいけど、そろそろ始めよっか?」
白羽「それもそっか!」
しーちゃんはスマホをしまい、早速準備に取り掛かった。
なんか、先が思いやられるな……。
ちなみに僕の担当は接客だ。
本当は調理が良かったんだけど、既にやりたい人がいたみたい。
つまり、この姿で接客しなければならない。
……まあ、最初は嫌々言ってたこの格好だけは慣れちゃったんだけど…。
これで接客できるのかな…。
真黒「メニュー表良し、席良し……。」
僕は、会場を再度確認していた。
既に装飾等は終わっているとはいえ、隅から隅まで再確認を怠らないようにね。
白羽「さあ、今日は盛り上げるぞー!」
こんな時にでも、しーちゃんは元気だ。
僕も見習わないとなぁ。
…この格好でだけど。
しばらくして文化祭が始まり、お客さんが入ってきた。
おもてなししないと。
真黒「お、お帰りなさいませ、ご主人様…///」
ああああああああ!!いざ人前でやるとなると恥ずかしすぎる!!!
黒歴史にだけはなりませんように…。
「は!?なんかすっげー可愛い子いる!?」
「うちの学校にこんな子いたか!?」
…盛り上がってる所申し訳ありません、男なんです。
真黒「と、とりあえず席に案内します。」
片言になりながらも、僕はお客さんを案内した。
一方、しーちゃんの方はと言うと…。
白羽「お帰りなさいませ~!ご主人様~♪」
「うおぉっ!でっか!!」
「おいおい、あまり興奮すんなよな笑」
しーちゃんの方は何の躊躇いも無く対応している。
ポジティブすぎて羨ましい。
……あとでっかって何?
そりゃあしーちゃんは出るとこ出てるし、男子からもウケが良い。
だからと言ってしーちゃんに手を出したら僕が許さないんだからね!
「あ、あの!一緒に写真撮っても良いですか!?」
真黒「…ん?」
突然、女子が僕の所に来た。
あれ?写真撮影ってOKだっけ?
真黒「あ、少々お待ちください。」
僕は女子を後にし、しーちゃんの元に行った。
真黒「ねえ、しーちゃん。」
白羽「ん?どったの?」
真黒「ここって写真撮影OKだっけ?女子が僕と撮りたがってるんだけど…。」
白羽「ああ、それならOKにしてるよ!思い出作りにしたいからね!」
どうやら大丈夫らしい。
……まあ、あの子が一緒に撮ろうとしているのが、女装した男というのは知らないんだろうけど…。
僕は尋ねた女子の所に戻った。
真黒「迷惑にならない程度なら大丈夫ですよ。」
「本当ですか!?ありがとうございます!」
そう言われ、僕らは写真を撮った。
「ありがとうございます!あなたみたいな可愛い女の人と撮れるなんて光栄です…!」
……あれ?もしかして気付いてない?
まあ、この格好だから仕方ないか…。
真黒「あの…、僕、男なんです…。」
「…え?……えぇっ!?」
…そうなりますよね。
文化祭は順調に進んでいる。
お店には在校生はもちろん、子連れの親御さんも来ているみたい。
……まさか、喫茶店がこんなに繁盛するとは思わなかったな…。
真黒(……やっぱり、僕の女装って需要あるのかな…。)
心の中でそう思った。
しーちゃんよりも僕に近付いてくる人がいて、なんだかむず痒い。
こんな姿、両親には死ぬほど見せられないな…。
「おー、ここが2組の店かー。」
誰か来店したみたい。
お招きしないと。
真黒「お帰りなさいませ、ご主人様……………。」
「……ん?もしかして、真黒か…?」
真黒「……。」
そう、ここに来店、そして目の前にいたのは……。
……僕の両親だったのだ。
さおり「え、えぇ?真黒?あなたどうしたのその格好……。」
真黒「あ……、えっと……。」
何でこんなタイミングで現れるんだああああああああああっ!!!!!
桃介「お前、本当に真黒だよな!?もしかして女装か!?」
真黒「あっ……、うぅっ……//////」
よりにもよって1番見せたくない2人を目の前にしてしまったのである……。
白羽「お帰りなさいませ、ご主人様……って、あなた達は…。」
そんな時に、しーちゃんも来た。
白羽「あーーー!!黒ちゃんのパパさんとママさんじゃないですか!」
さおり「あら…?もしかして白羽ちゃんかしら?」
桃介「白羽ちゃんか!?随分見ないうちに美人さんになったなぁ!」
白羽「ありがとうございます!」
しーちゃん、何気なく両親と話せるのすごいよ。
僕なんて気まずすぎて何も話せないよ。
白羽「あはは笑 黒ちゃん、アタシが代わりに案内しようか?」
真黒「お願い……します……。」
もうそうする他無かった。
だって実の親だよ?その親に女装見られたんだよ?屈辱でしか無いよ?
早く自由時間来てほしい…。
そんなこんなで、自由時間がやってきた。
しーちゃんと行動する事にはなっていたが、お手洗いに行ってるらしく、仕方なく待つ事にした。
そこで、父さんとばったり会った訳だけど…。
桃介「……なあ、真黒。」
真黒「……何?」
桃介「その……、似合ってたぞ。お前の女装……(苦笑)」
真黒「嬉しくないっ!!!」
大雑把に痛い所を突かれた。
桃介「まあそんな事は置いといて…。今の生活はどうだ?楽しいか?」
置いといてって何だよ…。
まあ、いつまでも四の五の言ってられないか…。
真黒「…楽しいよ。家も学校もそうだけど、しーちゃんとまた一緒に居られているし。」
桃介「そうか。お前は白羽ちゃんと仲良いもんな。にしても白羽ちゃん変わりすぎて、母さんが言うまで最初は誰だかわからなかったよ。」
真黒「同じ笑」
やっぱり父さんも、しーちゃんとはわからなかったか。
昔よりも美少女になっていたが、まさかギャルになってたなんて、僕も思わなかったしね。
でもしーちゃんは、今も昔も変わってない。
桃介「まあでも、2人共元気そうで安心したよ。母さんなんて、父さん以上に心配してたんだぞ?」
真黒「そう。母さんらしいね笑」
僕の事を心配してる母さん、何だか想像できるな。
母さんはそれほど優しいんだなって、一人暮らしをする前も改めて思った。
桃介「それで?白羽ちゃんとはどこまで行ったんだ?」
真黒「急に何?」
…と、父さんから話題を振られた。
桃介「何だよ、わかってるくせによ笑 告白とかしたのかって。」
真黒「こ、告白!?してないしてない!//////」
突然の恋バナに焦ってしまう。
まさか父さんの口からもそんな事が出てくるとは…。
桃介「ははは、そうかそうか笑 ま、精々頑張りな。応援してるからよ。」
真黒「……。」
桃介「お前は白羽ちゃんと仲良いんだし、きっと受け入れてくれるさ。まあ、いつするかはお前次第だけどな。」
真黒「そう…だね。ありがとう、父さん。」
どうやら背中を押してくれてるようだ。
しーちゃんに告白…か…。
うん、いつかできると良いな。
白羽『黒ちゃーん!お待たせー!』
…と、しーちゃんが戻ってきたみたい。
桃介「そんじゃ、父さんは帰るとするか。」
真黒「え?もう帰っちゃうの?もう少しゆっくりしていけば良いのに。」
桃介「そうしたい所だが、午後から母さんと一緒に用事済ませに行くからな。とにかく元気な顔見れて良かったよ。」
真黒「…そっか。なら仕方ないね。」
父さんも母さんも、向こうでは忙しいんだな。
桃介「進捗あったら連絡よこせよ?」
真黒「はいはい笑 じゃあね。」
父さんはそう言うと、向こうへ行ってしまった。
白羽「あれ?黒ちゃんのパパ行っちゃったの?」
真黒「うん。母さんも用事があるみたいで。」
白羽「そっかー。挨拶だけでもしておきたかったな。」
しーちゃんは少し凹みながらも、すぐに立ち直った。
白羽「じゃあ行こっか!午後の部も目一杯楽しも!」
真黒「うん。」
僕はしーちゃんと一緒に、お店を回る事にした。
白羽「ねえねえ黒ちゃん!あそこタピオカ屋やってるよ!」
あそこは確か2年生のお店かな?
しーちゃんは興奮して僕にそう言った。
真黒「僕、実はタピオカ食べた事ないんだよね。」
白羽「美味しいよ!せっかくだしドリンク頼んでみない?」
流石経験豊富なしーちゃんだな。
やっぱりしーちゃんは外で活動する事が多いから、こういうのも詳しいんだろうな。
白羽「んーーー!!美味しい!」
そんなこんなで、僕らはタピオカドリンクを堪能していた。
真黒「本当だ。初めてだけど結構いけるね。」
白羽「でしょ?アタシこういうの好きなんだ♪」
道理でしーちゃんが気に入る訳だ。
僕は苦いものは苦手だけど、これなら大丈夫かもしれない。
真黒「そういえばしーちゃん、3組には行かないの?」
白羽「……え。」
と、話を振ったのだが…。
しーちゃんは何故か顔を青ざめていた。
白羽「えーっと…、あやちーの所はいいかなー、なんて…。」
真黒「…?」
あれ?何で拒否してるんだろ?
僕、何か変な事言っちゃったのかな…。
真黒「僕も一緒に行くから、せっかくだし行ってみようよ。アヤネちゃんもきっと喜ぶよ。」
白羽「あ、待ってよ黒ちゃん…!あやちーの所は…!」
僕はしーちゃんの手を引いて、3組の店へ行った。
あれ、不意にしーちゃんの手を触れちゃったんだけど…。
この感じ、何だか懐かしいな。
いつもは僕が引かれていたのに、いつの間にか立場が逆になっていた。
でもしーちゃんのあたたかくて柔らかい手は、あの時のままだった。
真黒「あー…、なるほど…。」
とりあえず、アヤネちゃんのいる3組に行ってみたんだけど…。
しーちゃんが拒否する理由がわかった。
3組の催し物は、お化け屋敷だったのだ。
そういえばしーちゃん、ホラーはあまり得意じゃなかったっけ…。
真黒「えっと…、なんかごめん…。」
白羽「いやいや!黒ちゃんがせっかく誘ってくれたんだし!断ったら悪い気もするから大丈夫だよ!うん!」
…とか言いつつ、体震えてるの丸分かりなんだけど……。
白羽「大丈夫…大丈夫…お化け屋敷は所詮作り物…そう思えば大丈夫……。」
念仏を唱えるように何かぶつぶつ言ってるし。
とりあえず、3組のお化け屋敷に入る事にした。
中に入ると、かなりおどろおどろしい雰囲気が漂っていた。
すごい気合いが入ってる。
真黒「…しーちゃん、大丈夫?」
白羽「だ、大丈夫!怖くないよ、うん…。」
いやめっちゃ怖がってるじゃん。
念の為手を繋いでいるんだけど、その手まで震えてるのがわかる。
怖いなら正直に言えば良いのに…。
ヴアアァ……
白羽「うわあぁっ!!」
真黒「ちょ、こっちがびっくりするって…。」
白羽「ご、ごめん…。」
突然のしーちゃんの悲鳴で驚いてしまう。
さっきまでの威勢は何だったのか。
ガタンッ!!
白羽「きゃあぁっ!!!」ダキッ
真黒「わっ、しーちゃん…!?」
音でびっくりしたのか、しーちゃんが不意に抱き着いてきた。
白羽「ごめん、黒ちゃん…!しばらくこうさせて…!!」ガタガタ
真黒「う、うん…。無理しないでね…///」
とりあえず、この体勢のまま進む事にした。
幼馴染とはいえ、成長してる女の子の体が密着されている。
という事はつまり…。
真黒(うぅ…、しーちゃんの胸が当たってて全然集中できない……//////)
そういう事です。
キエエエエッ!!!
白羽「っ…!!!」ビクッ
進むごとにどんどんエスカレートしていってる。
3組…、これは気合い入ってるな…。
白羽「ぐすっ…、もうやだぁ……泣」
しーちゃんが恐怖で泣きそうになっていた。
早いとこここから出ないと…。
「…あれ?クロとシロじゃねえか。」
…と、聞き覚えのある声が聞こえた。
白羽「…!あやちー…!」
そう、アヤネちゃんだ。
アヤネちゃんも3組だから、当然いる。
というか、午後の部担当だったんだね。
……………しかし、そんなアヤネちゃんの姿は……。
アヤネ「凍えさせてやるぅ~…。」
白羽「…………………………。」
白羽「きゅ~……。」パタン
しーちゃんは倒れてしまった。
アヤネ「……あ、気絶しちまったか…?」
挙げ句の果てには目を回していた。
しーちゃんの抵抗のリミッターが限界を迎えてしまったようだ。
アヤネ「仕方ねえ…。クロ、ちったぁ手ぇ貸してくんねえか?」
真黒「うん…、わかった…。」
とりあえず、気絶したしーちゃんを出口まで運ぶ事にした。
真黒「……ところで、アヤネちゃんのその格好は…?」
アヤネ「雪女。」
真黒「あー…。」
~保健室~
とりあえず、しーちゃんを保健室で休ませる事にした。
アヤネちゃんはまだ営業を続けるからと言って、さっさと行ってしまった。
…あの格好だから、当然生徒や先生には驚かれたけど。
なんか物凄い気まずかった…。
白羽「う……ん……?」
しばらくすると、しーちゃんが目を覚ました。
白羽「あれ…?ここは…?」
真黒「保健室だよ。しーちゃん、気絶しちゃってたから。」
白羽「気絶…。ああ、そっか…。アタシお化け屋敷で…。」
どうやら、はっきり思い出したようだ。
白羽「…なんかごめん。」
真黒「ううん、行こうって言ったのは僕だし、寧ろ謝るのは僕の方だよ。」
白羽「いや、アタシが断れば良かった話だし…!」
真黒「そんな事ないよ、僕が無理矢理……。」
真黒、白羽「……………。」
真黒、白羽「「ぷっ…、あははは…!」」
何だろう、お互い謝ってばかりで返って馬鹿みたいになってた。
白羽「これじゃ、無限ループ起こりそうじゃん笑」
真黒「確かに笑 ならおあいこって事で良い?」
白羽「うん笑 あー、こんなに笑ったの久しぶり笑」
真黒「大袈裟だよ笑」
そんなこんなで、元気になったしーちゃんと笑い合った。
お互い考えていた事は同じだったみたい。
時刻は3時を示していた。
真黒「ところでしーちゃん、具合はどう?」
白羽「ちょっと寝たらだいぶ回復してきたよ。わざわざありがとね、黒ちゃん。」
真黒「そっか。そろそろ起きても良いけど、あまり無理しちゃダメだからね。アヤネちゃんも心配してたんだし。」
白羽「あやちーも?…そっか、後でお礼言っとかないと。」
そういう訳で、しーちゃんはベッドから起き上がった。
あと1時間だけど、幼馴染と一緒に残りの時間を楽しむ事にした。
一緒に食べたり、一緒にゲームしたり、一緒に写真撮ったり……色々な思い出が作れた。
~午後4時 夕方~
そして、閉会式が始まった。
司会『皆さん、本日はお疲れ様でした。沢山食べて、沢山笑って、目一杯楽しめた事でしょう。』
白羽「終わっちゃったね、文化祭…。」
しーちゃんは寂しそうな声で、そう言った。
白羽「でもまあ、楽しい時間はあっという間だもんね。それはわかってる。わかってるよ…。」
目を潤しながら、しーちゃんは呟く。
そうなったって事は、それほど楽しかったという事。
小さい頃のしーちゃんも、同じような感じだった。
「帰りたくない」と泣き喚いて、それを僕は慰めていた。
真黒「もう、子供じゃないんだから、泣かないでよ。背中さすってあげるから。」
白羽「…うん、ありがとね、黒ちゃん……。」
いつもはポジティブで、明るくハツラツなしーちゃん。
だけど、本当は誰よりも涙脆くて、感情的になりやすい女の子だ。
僕はしばらく、あの時と同じように、しーちゃんを慰める事にした。
真黒「落ち着いた?」
白羽「うん、ありがとう、黒ちゃん。」
しばらくするとしーちゃんは泣き止み、笑って見せた。
途中で通りかかったアヤネちゃんからも「ガキじゃねえんだからよ笑」と、愛想笑いで言われていた。
真黒「そろそろ片付けに行こうか。」
白羽「うん、ごめんね、時間取らせちゃって…。」
真黒「気にしてない。言ったでしょ?しーちゃんの我儘に振り回されるのは慣れてるって。」
白羽「そっか。」
そして僕らは自分の教室へと向かった。
真黒「これで大丈夫かな?」
クラスの皆と協力して、元通りの教室になった。
先生「皆さん、お疲れ様でした!今日は速やかに下校して、来週また元気な姿でお会いしましょう!」
先生からの号令で、皆は一斉に教室へ出た。
白羽「くーろちゃん!帰ろ!」
真黒「うん。」
さて、僕も帰る支度しないとな。
今日は本当に楽しかった。
途中トラブルも結構あったけど、それも良い思い出かな。
そして、自宅前に着いた。
文化祭の疲れのせいか、途中で少し寝てしまっていたが、降りるバス停の名前を聞いて起きた。
真黒「じゃあしーちゃん、また来週…。」
白羽「……。」
あれ?なんかそわそわしてる?
どうしたんだろ?
真黒「…しーちゃん?」
白羽「えっと、黒ちゃんが良いならだけど…。」
白羽「…今夜、泊まってもいいかな?」
真黒「……………。」
真黒「……………はい???」
あなたの好きな登場人物は?
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秦野真黒
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江波白羽
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鷺沢アヤネ