天才達の生存競争   作:よくメガネを無くす海月のーれん

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評価ありがとうございまぁす!(五体投地)

みんなも書こう!やばい女!あとぶっちゃけると評価されればされるほど書く優先度が上がるから評価して!(強欲)


そこの無様に転がってるゴミが今回の主犯だ。その横で正座してるのが共犯ね

目の前に~ポン刀持った~ヤバ女~

銃刀法は~何処に消えた~

 

篠傘 怜心の短歌

 

…はっ!戻ってこい現実っ!イマジナリー評論家さんがポン刀と銃刀法にえげつない×をつけてる場合じゃねぇんだよ!頭の中に浮かんだふくよかでいくらか御年を召した女性の方が赤ペンでデカく×を書く幻想を頭から追い出す。

 

頭を振って冷静になる。

 

古びたトイレ、男一人に女が二人、何も起きないはずもなく…実際に刀で貫かれかけるという稀有な体験をしたのは事実…恐怖に彩られた心を必死に抑えて思考を巡らせる。

 

唐突に名乗られた言葉を改めて反芻。そして記憶と照らし合わせてはたと思い出す。

 

目の前のヤバ女は剣道部所属と言っていた。ということは話に聞いていたスポーツ科の天才に違いないだろう。水泳部の双子と剣道部所属の一人…計三人がスポーツ科に居るはずだ。まぁ俺からは確認できなかった一年生の新しい奴かもしれないし、なんなら中高一貫だから後輩にも天才がいると仮定すると…最低三人という絶望の言葉に早変わりなんだが…。

 

姫咲と名乗ったヤバ女はキッと横の真っ黒ヤバ女その2を睨みつける。てかねぇ…!

 

「ワンチャン殺人事件起こしてたのに釈明はねぇの…んすか?」

 

「ない」

 

返答はあまりにもあんまりすぎる無慈悲な否定と、ポン刀をちゃきっと鳴らす音だった。なに?威嚇?威嚇なの?モーションキャンセルなの?ちゃきちゃき鳴らすな。しゃべれ。口に出せ。人だろ。てか…!

 

「のんすか?のんすかってなんだい?ねぇ、のんすか?のんすかって?のんのん?」

 

「うるせぇ揚げ足とんじゃねぇカス!」

 

頭をぐりぐりと押し付けながら、のんすかのんすか鳴き声のように言い続けるヤバ女その2を頭をひっつかんで抑え込む。ちょうどヘッドロックした形だ。てめぇトイレに沈めてやろうか…!人の揚げ足取るヤツはてめぇの足取ってトイレに沈めてやるよ…!その汚ねぇ心を洗浄してやる…!

 

ビュオンッ

 

「ひょわっ!?」

 

俺とヤバ女その2の間に煌めく斬撃が通る。すんでのところで避けたが、隙間を縫うような正確さで俺たちの距離を切り裂いたポン刀はそのままトイレの便器に触れる寸前で停止する。はらり、はらり、今度は俺の髪の毛が散った。

 

「離れろ怜に近づくメス豚が…!」

 

「おやおや…物騒だねぇ」

 

「俺死にかけてんだけど!?俺斬られかけたけど!?」

 

避けなかったら死んでたよ俺!?心臓ギュンってなったわ!キュッとかのレベルじゃねぇ!縮むとかそんなレベルじゃなく圧縮されたわ!心臓二回りくらい小さくなったよ確実にぃ!ばっくんばっくん鳴る心臓を押さえながら抗議するが

 

「問題ない。私が斬る相手を間違うはずがない」

 

「その自信はどこから来るんだよー!」

 

「天才だからな。私はこの道において私以上の強者を知らない」

 

「ファッキュー天才!神は俺が生まれた瞬間に死んだらしいなぁ!?」

 

頼む…!むごたらしく死んでくれ神よ…!すかさず両手を握って天に祈った。俺が生まれ落ちた瞬間にこの世から神の救いってのは消えたと俺は思ってる。だからこんなのポーズだ。てか俺自身が冒涜の具現化みたいな感じだからもし居たとしても救ってくれねぇとすら思ってる。じゃねぇとこんな過酷なことになってねぇし俺の今までは何なんだって話だ。救いがあるというには絶望が多すぎるから、救いなんてないと鼻から切って捨てたほうがいい。もし俺に前世があったなら前世で俺はどんな大罪を犯したというんだ?!名も故も知らぬ前世の俺への恨みだけが募っていく…!どこまでも不毛な祈りは果たして誰の耳に届くのか…。

 

祈ってる間にも事態は進む。ポン刀を構えて絶賛臨戦態勢のヤバ女その1、姫咲とやらはちゃきちゃきと威嚇音を鳴らしている。ヤバ女その2はぬるりと斬撃を避けてはこちらにねっとりと張り付いている。お前なんか人間にしては粘性強くね?スライムか?

 

「とりあえず…とりえあず「とりえあず?」うるせぇ!…先輩はポン刀…日本刀を納めましょう。怖いっす…そんでお前、そろそろマジで怒るぞ。揚げ足うざい」

 

「……くっ、わかった」

 

「は~い、君の言うとおりに…」

 

片や刀を納めながらも悔しそうな顔つきをし、片や耳元で囁きながらぬるっと離れていく…うえぇ~朝から胃がいてぇよ~。泣きたい思いに駆られるも事件は解決していないし、なんなら普通に入学式の騒動から抜け出してきたので戻ったら十中八九注目の的で怒られるだろう。なんだって…いや。待て…

 

「なんで先輩此処に居るんすか?」

 

そういえば今日は入学式で在校生は生徒会長の真宵先輩しかいないはずだ。何故先輩が…?

 

「一部の部活は入学式だろうと部活動があるぞ。さすがに体育館を使う部活動は休みだがな。ウチは武道館でしているから今日は普通に部活の日だ」

 

「オウシッ!」

 

海外の映画のごとく膝を叩いてオーバーリアクション。そういえばここガチの才能の方が集まる学校でしたね…そりゃ入学式だからと空いてるならやるってストイックな人ばっかですよね。俺が必死こいて勉強した試験やらを楽々突破した人たちですもんね!俺は二次試験の面接で落とされそうでしたがね!貴方が自信に思ってることなんですか?って聞かれたとき様々な人と親しくなれるコミュニケーション能力ですって皮肉を答えるしかなかったからね!具体的にはどんなものですか?って聞かれたとき、天才どもの実名出した実体験語ったら頭おかしい人間を見る目をされましたよえぇ!事実なんですけどねぇ!嘘じゃないんですよねぇ!最終的にどうしたかって?電話したが?交友関係を知らしめるために、かたっぱしから電話かけたが?アイドルにテレビにでも出てる有名探偵、女優、科学者、色々な奴を10人かそこら出したあたりでもういいですって言われたが?まだ居るが?電話がその後鳴り止まなかったが?最終的に電源切ったよ。切って面接終わったそのあと起動したら地獄のメッセージ三桁件で白目剥いたわ。一度隙を見せたらつけあがるやつばっかだ…!

 

「いや今は関係ないぞ篠傘 怜…!現実を見るんだ…!」

 

「悩んでる姿も可愛いねぇ」

 

「怜、こっちにこい。すぐに他のメス豚も来る」

 

外野がうるさいのをシャットアウトして…今なんて?

 

「今なんて?」

 

ふっと頭を上げて姫咲先輩を見る。他の…メス豚…?

 

「あぁ、私がいの一番に来たが、他も気づかれているだろう。外で待ち伏せしているライバルは多かった。一年生の中にお前がいないとわかったら周辺を探すはず。芸術科のアイドルだったか?あいつは手下を使っていたし、水泳部の双子は強引だ。さっさとここを離れないと捕まるぞ」

 

「わぁ…」

 

白目を剥いた。いや、待て。あたりだ。あたりと考えろ。此処でヤバ女その1とヤバ女その2に出会えたのは幸運だったと考えろ。そうか。こいつら…

 

「まだマシなんだ…!」

 

衝撃の事実…!日本刀持ったヤバ女となんかねっとりとしてるヤバ女はまだマシだった…!なんて最悪な最低保証なんだ…!これ以上があるっていうのかよ…!いや待て。このポン刀持った女が大言壮語を吐いてる可能性もある…!まだ信用は…

 

「ちなみにだが、水泳部の双子は部室に監禁、アイドルはお前を偶像に祀り上げる計画を耳にした」

 

「わぁい俺君たちに会えてとってもうれしい~!さいこ~!くそぼけタヒね。日本刀持った女がまだマシなのおかしいだろ」

 

神は死んだと思ったら俺が神になる側だった…!てかド直球に監禁かい!久々にまっすぐな奴だ!クソッ!未来が見えねぇ!誰か俺の未来を切り開いてくれ!なんで神か監禁かの二択なんだよ…!

 

「兎に角だ…!当初の目的がどっかにすっ飛んでいった気がするから戻すけど…!真宵先輩を怪我させた奴は絶対許さない。犯人を見つけて謝らせる。どうせプライドが高いんだ。純粋に謝らせた方がダメージはデカいはず…」

 

「まぁ私たちのような輩は自分に絶対的な自信を持ってるからねぇ…それが君を上回ることはないから君の考えるようなことにはならないだろうけど

 

「なんか言った?」

 

「言ってないさ…で?どうするんだい?これから」

 

「先輩を使う」

 

そうここには先輩がいる。使わせてもらうぜその凶器をよぉ!

 

「先輩、姫咲先輩、あなたは護衛です。いいですね?そこの女も含めて俺達を守ってください。してくれたら今週どっかでデートしましょう」

 

「わかった」

 

即答、ヨシッ!()チョロいパイセンで助かったぜHAHAHAと白目を剥く。これで今週の予定一つ潰れた。悲しいが仕方ない…コラテラルダメージと割り切る。問題は…

 

「ねぇ、私は?私は?」

 

コイツだ…。コイツは目先の餌に引っかからない。どうせ何かしらのエグ目のことを要求してくるはず…。ひとまず

 

「お前は矢面に立て。先生になんか言われたら迷ってたところを姫咲先輩に助けられて案内されました~って嘯け。あとばんばん才能使って思考を誘導しろ。俺達が怒られないように」

 

「ご褒美は?」

 

なんだ…コイツにご褒美…。ご褒美は何だ…!コイツにはまりそうなもの…!考えろ!何かあるはずだ…!こういう手合いには…!何か…!

 

いや、ある…!俺が学校入学が決まったことでいくつか作った秘策の一つ…!それがポケットに…!

 

「…は!じゃあお前には俺じきじきに作成した魔法の券を与えよう。複製してもいい。そこらへんはお前らの善性…いやお前が俺の真に嫌がることはしないっていう信用でもある。もし破ったら…俺が悲しむだけだ。それだけ。この券は俺が叶えられる範囲で願いをかなえる効果がある。いいか?()()()()()()()()()でだ。理解してるよな?」

 

ポケットから取り出した紙きれを渡す。俺の虎の子として作っておいたものだ。俺自身を切り売りすることで安全を確保する奥の手…!此処で切るのは痛いが…!まぁいい。

 

「ふぅん…なるほどねぇ。いいよ。やってあげようじゃないか。この紙切れの効力期間は?」

 

「あー…特に決めてないが…早めに使ってもらえると助かる。他の奴にも渡して渡した数を把握できなくなると困るし、正直忘れた頃に出されてもめんどいしなぁ…。まぁ、どうせめちゃくちゃタイミングの悪い時に使うだろうなって確信あるし、いいよ。ただ早く使ってもらえると俺の好感度が上がる」

 

「じゃあ使おうか。そうだな…君にも益になることにしよう。明日か明後日、明々後日でもいい。私の家で勉強会しようじゃないか。この学校は入学してすぐに試験があるからねぇ」

 

「え、マジ?」

 

え?何それ知らない。俺入学したらそれで終わりだと思ってたんだけど…え?

 

「知らなくても無理はない。私も朝情報を集めたところだからねぇ。中等部で上がってきた子の話だと、入学生とそのままエスカレーター式に進学した子との学力を見るために入って早々試験がある。その成績によって授業のレベルや進捗が違うクラスに振り分けるらしい。つまり入学式でのクラス分けは仮のものであるらしい。私も君と同じクラスがいいからね。勉強に付き合ってもらうよ」

 

ふむ…

 

すっと魔法の券を取り上げてポケットにしまう。

 

「おや?どこか気に食わなかったのかい?」

 

「や、単純に飛鳥ちゃんへの好感度が爆上がりしてるから何の対価もなしに勉強会しようかなって。本当によろしくお願いします。とりあえず今日の夜でいい?あと明日もいい?」

 

「ほう…殊勝な心掛けだが…私の才は『人心支配』だ。君も気を付けるべき側じゃあないのかい?真っ先に狙っているのは君だよ?」

 

「え、やだ忠告もしてくれる…なんだこのねっとり人間」

 

おおっとここで真宵先輩と同レベルでまともな人間に見えてきたぞ…さっきまでの揚げ足取りは何だったんだ…。

まぁ最初にイメージを下げてから優しくするなりでさらに印象をよくする所謂ヤンキーの捨て猫理論みたいにも感じるが、勉強が必要なのは事実だし言葉に嘘はないだろう。そうなると他のご褒美を考えないと…どうするか…。

 

「あー…ご褒美何がいい?」

 

「ん~…本音を言えば君の人生そのものが欲しいが…難しいんだろう?それに君は高校生活を謳歌したいらしいじゃないか。なら私はそれを尊重しようと思うよ」

 

「誰だお前は?!」

 

「黒柳 飛鳥だよ」

 

あまりにも欲がない言葉に思わずだいぶ失礼なことを言った。

 

「おかしい…天才なのにまともだ…こんな人間居るはずがない…」

 

あ、あり得ない…こんなまともで人格者な人間が真宵先輩以外に居ていいはずがない…!こんなのがいるなら俺の周りに居たのはいったい…ウゴゴ…そんなことを思っていると、平然とした顔で髪をいじりながら

 

「かなり失礼なこと言うね。普通に好きな人の嫌がることをしたくないだけなんだが…乙女心を理解できないようじゃ君が望む青春なんて送れないよ?」

 

「誰だお前は?!(二回目)」

 

「だから黒柳 飛鳥だって言っているだろう…」

 

本当に誰…?こんな人間がいていいのか…?おかしい…。幻術か?いや幻術ではない。いや幻術か?幻術なのか?混乱している間にぐいっと引っ張られる。

 

姫咲先輩だ。刀を引き抜き、俺と飛鳥の仲を離すようにする。そうしてがるるとまるで犬のごとく唸って…

 

「ステイ!姫咲先輩ステイ!」

 

「くぅ…」

 

よーしよしよしと片手で抑えて、日本刀を持った手を擦る。ステイ…いい子だろう…ステイだ…ちぃ!狂犬かよ…!扱いやすいと思ったがやはり中身は天才…!こちらが面倒だったか…!飛鳥とアイコンタクトで通じ合う。此処で無暗に時間を消費しても意味がない。ご褒美は勉強会の時に相談だ…。外に出ていったんこの状況をどうにかしてからにしようと目で通じ合ってから俺は言う。表情を変え、声色を変えて…

 

「じゃ、先輩行きましょう。頼みますよ。俺監禁とかされたくないっすから」

 

明るいというにはいやに縋るような声でそういうのだった。

 

――――――――――――――――――――

 

「はぁ…」

 

思わずため息を吐く。自分の不甲斐なさに嫌気がさす。

 

()()()()()()()()()()()()()()

 

入学式において在校生は私しかいないから大丈夫だと、あるとしても入学生からの()()だと思っていた。まさか、在校生からとはな…。

 

保健室、ガーゼをつけられた腕を撫でる。とっさに顔を守ったがおかげで腕を負傷した。幸い利き腕とは逆の方だからそこまで生活に支障はないが…

 

消毒液の匂いがツンと鼻を衝く。手当は終わり、職員室に向かわなければならない。心配されるというのも心労の一つで、今まで積み上げてきたもののおかげか、せいか、先生方の信頼は厚く、その分心配も重い。大丈夫と言っても心配されるのは疲れるものがある。

 

ただ一つ気になることがある。

 

「彼が傷つくかもしれなかった」

 

そう、それだ。それが私の脳裏に囁く。可能性が心に雫を落とす。

 

十中八九天才の仕業だろう。だから、万が一に彼が傷つくようなことはないようにしたはずだ。…だが、万が一がなくても億…兆…微小ながらも可能性があったとするならそれはするべきではないと私は判断している。

 

なぜなら彼はその微小を引き寄せてしまうからだ。あり得ざるを引き寄せ、あり得るを遠ざける。そういう風に()()()()()()()()子なのだ。

 

天才に愛されるためなら彼が望まなかったとしてもそういう運命にたどるようになっている。彼があの時傷ついた場合多くの天才、そして下手人が嘆き苦しむことになる。自業自得だというのに…。それを望まないからこそ、今回はそうならなかった。

 

だが、もし一人だけが苦しむだけだったら?私だけが負を享受し、他の天才どもが利益を享受するなら?きっと私は切って捨てられるだろう。そういうシステムになっている。そういう生まれになっている。より生存競争を高めるようにされている。

 

忌々しい生き方を植え付けた彼の母親を殺してやりたいがもう死んでいる。故人だ。それに禁忌のこともある。それを解明し、どうにか対処を見つけなければ、彼はいずれ破滅するだろう。生存競争だというが、あんなのは蟲毒でしかないのだから。

 

今回の場合、下手人どもが罰せられるようになるはずだ。彼があぁいうやり方を好まないことは知っているはず。それでも動いたということは堪え性のない馬鹿が暴走したか。

 

一つ息を吐く。深く息を吸って、()()()()()

 

私たちの家系に代々伝わる集中法みたいなもの…今まで見聞きした情報を思い出し、引き出しから取り出すような…あるいはファイリングしたものを引っ張り出すようなやり方で精査する。知っていること限定のパソコンのようなものだ。すべてを《覚えるしかない》完全記憶よりも上位のもの。私たちは記憶を自由に取捨選択し、思い出すことも忘れることも自由にできる。不必要な情報はゴミ箱に捨てられるが、必要とあらば取り出すことも容易なのだ。それが私たちに与えられた才…まぁ本質はほかにあるのだが…。

 

さぁ始めよう。犯人捜しを。

 

条件付け、先ず入学生は排除。入学生で体育館の配置を知ることはできないからな。

 

最近の体育館に出入りした業者を検索…なし。内部犯と仮定。

 

在校生の中でスピーカーに細工を出来る技術力を持った人間を検索…二件ヒット。一応ながらあのスピーカーは最新式で壊れるという事はないはずだからな。

 

そこから最近の体育館に出入りした記録と照合…

 

一件ヒット。コイツだが…もう一人いる。

 

体育館を出入りした記録で、コイツともう一人の人間がいる。二人が出入りしているのだ。もう一人は確か…商業科で…あぁなるほど

 

「二人いるのか…共犯だな」

 

生徒会長の権力によって見聞きしてきたこの学校の業者の出入りの情報や体育館の利用を記録した資料から怪しい人間が二人いることがわかった。

 

「待っていろ。怜。私が必ず…」

 

そうして、犯人捜しを終え、保健室から出た私が見たのは、廊下を歩く剥き身の日本刀を持った姫咲立花とその後ろに隠れる怜、そして確か…今年入学の黒柳 飛鳥…だったか?確か同じく才能を持っていたはず…。

 

奇妙な組み合わせの三人が、それぞれ周囲を警戒するようにゆっくり歩いてくる様を見て、困惑の表情を浮かべるしかなかった。

 

――――――――――――――――――

 

空気が嫌に重い。

 

ずんとお腹に響くような校舎の静けさに冷や汗が垂れる。

 

「ど、どうしてこんな重い空気に…」

 

体育館の寂れたトイレから渡り廊下を通り校舎へとたどり着くも人っ子一人いなかった。先生すらもだ。どういうことだ?誰かいたっていいはずなのに…。

 

姫咲先輩も異様な空気を察知したのか、日本刀を構えて警戒態勢となる。飛鳥も顔から表情が消え、何かを探しているようだった。

 

三人、まるでこれからボス戦が始まるって様な雰囲気で…

 

「…君たち、何をしているんだ?」

 

「おっぎゅえっ!?」

 

いきなり声を掛けられた拍子に立ち止まった姫咲先輩の肘がお腹にめり込む。ぐぅえっ!けほけほとせき込んでから声の主に目を見やれば

 

「何をしているんだ…大丈夫か?」

 

そこに居たのはけがをしたはずの真宵先輩だった。

 

「お、あ、真宵先輩!お久しぶりです!怪我大丈夫ですか?!」

 

「あぁ問題ない。大した怪我もしてないから手当をしてな。これから先生方に報告しようとしていたところだ」

 

駆け寄って無事かどうかを確認する。腕に当てられたガーゼが痛々しいが、血が滲んでいるようには見えず、軽傷で済んだらしい。よかった…。ほっと一息ついてから、この空気のわけを聞く。

 

「で…あの~…なんで人っ子一人いないんですか?あとなんでこんな重苦しい空気なんですか?」

 

「あぁ、あの後先生方の判断で入学生は下校になった。在校生もね。それで先生方は職員室で件のスピーカーについて対策会議と電話対応をしている。御曹司やご令嬢もいるからこういう不祥事はね」

 

「おぅ…」

 

やべぇ…、間接的に俺のせいで先生方が被害に…。それに帰らされたって俺達放置か…とも思ったがそりゃ対応早くしないとダメだし、二、三人居なかろうと帰ったって思うよな…。

 

「で、君たちはなぜ…?姫咲に至っては日本刀を…さすがに今回は擁護できないぞ」

 

「…わかっている。だが、異様だ。殺気に満ち過ぎている」

 

「殺気…?」

 

なに?この異様な雰囲気殺気なの?殺気ってゲームやマンガの世界にしかないと思ったけどあるの?リアルに?マジ?

 

「眉唾みたいな話だが…おかしいのは事実だよ。集団の気配が2つある。1つは職員室ならもう1つは…ね」

 

「なんだよ…言えよ」

 

急にだんまり決め込んだ飛鳥の肩を持って揺らす。おう、お前ら独自の判定基準でビビってんじゃねぇよ俺にも共有させろソレ。わかんねぇよなに?気でも感じればいいのかよ。こちとらゴキブリホイホイ搭載されただけの凡人なんだよ。なぁ。おい。なんとか言えよ…おい。…おい!

がくんがくん揺れながらも目を逸らす飛鳥は終ぞ何も言ってくれなかったのでとりあえず今後の身の振り方を聞く。誰にって?真宵先輩にだよ。

 

「とりあえず…今日のところは帰っていいですかね?」

 

「あぁそう、忘れないでくれたまえよ勉強会の事。一応約束だからね」

 

「いやさっきのことだし忘れてないが?」

 

「…怜、私のデートも忘れるなよ。今週土曜でどうだ?」

 

「え、あー…はい。まぁ土曜で良いっすけど」

 

え、なに?なんで今日の予定確認?とも思ったがはたと気づく。

 

ははーん、これ真宵先輩の当てつけだな?と思って真宵先輩を見やれば案の定…いや普通に真面目な顔してるわ。普通に溜息吐いてる。呆れてるね。え、そこ嫉妬とかしないの?嫉妬させるムーヴしたんじゃないの?え?じゃあ何?なんでこいつ等当てつけしたの?…なんで?

 

「怜、あまり自分を削る真似するな…といっても周りがそうだと難しいだろう。ほどほどにな」

 

「え、あ、はい。わかりました…?」

 

え、諭されたじゃん。普通に人格者だよ。うん。

 

え、じゃあマジでなんでこいつ等当てつけした?はぁ?

 

「一先ず、今日は帰ることだ。今は先生もいない。帰るなら今の内だ」

 

「わかりました…」

 

頭の中を?が支配し、めちゃくちゃ腑に落ちないながらも頭を下げる。え、最初の方とか中盤わかりかけてたのに一気にわかんなくなっちゃった…。てかなんで俺此奴らのせいなのに諭されてんの?おかしくない?此奴らは結局何がしたかったの…?

 

わからない…もう何もわからなくなってしまった俺は教室に置いてきた荷物を持ってさっさと帰ろうと思い、まだついてくるのがわかる飛鳥となんでついてくるかわからない姫咲先輩を連れて階段をのぼ…

 

「なんで付いて来るんすか?」

 

平然と後ろについてきた姫咲先輩に質問

 

「ん?帰るのだろう?」

 

「帰りますが…」

 

「だからだ」

 

「え?」

 

「ん?」

 

わ、わかんない…。日本語で会話してる?別言語じゃないよね?もう俺わかんなくなっちゃった…。帰るんだよな?えぇ帰りますけど…だからだ…えぇ?の問答を幾度かを繰り返しては疲れ果てて突っ込むのを放棄した俺は渋々階段を上る。急に足取り重くなっちゃった…なんでやろなぁ…。

 

二階、三階、四階と上って、今朝知った一年生の仮のクラスへと行く。一年生は四階に振り分けられてんのおかしくね?階と年が反比例してるんよ。足がつれぇ。なんて泣き言抜かしていると

 

「あ、ようやくか…おーい、怜。君だよ、君。他は知らないが君だけは来てくれ」

 

と一番奥の部屋の前で手を振る白衣の女が一人…

 

「あぁ〜…俺が何かしましたっけ…?」

 

「しいて言えば今朝の事件の関係者かな」

 

「お前がやったのか?なぁお前が真宵先輩を?俺がそういうの嫌いだってわかってるよなぁ?」

 

おう、今この瞬間後ろでポン刀ちゃきろうとしてる狂犬にGOサイン出してもえぇんやぞ。全然虎の威を借りていくからな俺は…!クソ情けねぇ他力本願を見せつつも脅しに掛かる。

 

「違う違う…首謀者ではないよ。どちらかといえば被害者だ。私の研究成果を台無しにされたんだからね…今朝の事件の首謀者はその部屋の中にいる。私()はけじめをつけるために舞ってたのさ。中を見てみると良い」

 

おうおう、けじめがなんぞ知らんが許さんからな…!首謀者がいるという部屋…確か空き教室だったはずの扉に手をやり、勢いよく開ける。おらぁ!カチ…コ……ミ………おっと?

 

空き教室の中には少なくない学生。うちの学校はネクタイやリボンの色で学年が分かるという判別しやすい仕様だが…おや?二年生しかいない。部屋の中心を囲うようにして、立っていたり、椅子を引っ張り出して座っていたり、スマホをいじったり、他に何かよくわからんことをしていたりとしているが、目線は此方へと向いている。怖い…怖いよ…首だけこっち向かないでくれ…。

 

その中心には二人の学生がいる。一人は苛烈なまでにボコされたのか、制服はボロボロ、スカートは破けかけていて、なんとなく見覚えのあるポーズで倒れている。そう確か…ヤ〇チャが倒れているような…

もう一人はそれはそれは綺麗な正座をしている。顔はまぁボコられたのだろうか。赤くなっていてすごい不貞腐れた顔をしている。首には『自分は馬鹿な真似をして篠傘 怜を困らせました。お好きなように処罰してください』と書かれた札を下げている。

 

「何…コレ…」

 

と聞けば、後ろで扉の柱に寄りかかった白衣女が

 

「そこの無様に転がっているゴミが今回の主犯だ。その横で正座しているのが共犯ね」

 

「さぁ、君の言う通りにしたんだから、()()にもご褒美をくれよ」




主人公君はギャグっぽく、されどシリアスな時はシリアスになれるようにしたい。

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