天才達の生存競争   作:よくメガネを無くす海月のーれん

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司法は待ってくれないし、天災は止まってくれない

「ちょっと待ってくれよ司法…!」

 

「司法は待ったをかけてはくれないねぇ…システムだもの」

 

思わず頭を抱えて司法に待ったをかける。が、飛鳥に論破された通りきっと司法は待ってくれないだろう。司法はいついかなる時も厳格で公平だから司法足りえるのだ。でもちょっとくらいは慈悲をくれてもいいじゃねぇかよ司法。

 

俺の不用意な発言によってこんな惨状になってしまったのならそれは主犯が俺ということになるのではないか?そういう可能性がどうにも頭をちらつく。情状酌量の余地はないのか…?俺はリーダーじゃねぇんだよ…!

 

「どうして、どうしてこんなことに…!」

 

確かに俺は下手人をぶちのめしたらご褒美云々を、と言った。言ったさ。これは間違いない。吐いてしまった言葉は呑み込めないのだ。おとなしく認めよう。だが、言って一時間も経ってないのに実行されたら、俺対処できないんだよ。前言撤回の余地がない。スピーディーがすぎる。仕事出来過ぎ、上司追いついてねぇんだわ。仕事任せた一時間後に仕事終わらせたら部下持て余すに決まってんだろ。対応できねぇよ。無能な上司ですみませんねぇ!俺がこの手でやってやるみたいな流れだったのにねぇ!早いよ。俺何もしてないじゃん。これじゃあただパシっただけじゃないかい!

 

どれだけ言っても回った時計の針は戻らない。起きてしまったことを変えることはできない。だから、無理やりにでも現実を見て、現状の確認と、今後を考えなければいけない。

 

空き教室の惨状はそれはそれは酷かった。見るも無残だ。いじめ現場かと見まがうほどに。

 

まず机と椅子で簡易的なリングが形成されている。その内で暴を行使する人間と、外でゴム鉄砲のような何かで撃ったのか、玩具が散乱していた。途中で飽きたのかゲーム機も散乱している。おう、スマ〇ラやってんじゃねぇよ。そして、そこでも争ったのか椅子が横倒しや逆さまに捨て置かれており、壁には傷がついていた。割と激しかったのだろう周りの人間は髪が乱れて、服は脱げかけていたり、ひっかき傷も見える。おい、リアル乱闘もしてんじゃねぇよ。学校ぞ?馬鹿なの?なんで争った?アホなの?

 

そんな渦中、現場のド真ん中でヤム〇ャポーズで倒れている方…入学試験直前勉強会に参加していた…確か、そう発明オタクだ。

 

埃にまみれ、顔は前が見えねぇ状態であり、トレードマークとかほざいていたクソデカ瓶底眼鏡はひび割れ、フレームが変な方向に曲がっていた。強い力で引っ張られたのか服は伸び切っており襟はだるだるとなっている。一目で死んでる状態だ。生きてるのか…?いや死んでいる…シュレティンガーの発明オタだ…。

 

そう、生死不明で捨て置かれているコイツは工業科のやべー方で発明オタク、名を閃陽 毬。

 

機械工学に傾倒し、自らの作ったモノを最終的には破壊して全身に浴びることを楽しむという、頭がちょっとおかしなことになっている希代の発明馬鹿だ。僕っ子、だぼだぼで手が出てこないほどオーバーサイズのクッソきたねぇ黒い研究服をアイデンティティと言い張る個性の塊。ちなみに黒い研究服なのは、さっき教室に案内してくれた工業科のもっとやべー方たるマッドサイエンティストに対抗心を燃やしたかららしい。雑に染色したせいでクッソ汚くなっているのにどや顔するから、それでいいのかとあきれた記憶がある。

 

確かに、コイツならスピーカーに細工できるだろう。それだけの技術も、時間差で落ちるように細工する小賢しさも持っている。アイスを食べるためだけに自分が行く道の歩行者信号をすべて青に変えるというカスの所業をしたのだ。ちなみにそのせいで多くの車が唐突に替えられた信号に混乱して事故をしかけたというオチだ。幸い、大きな事故を起こした人はおらず、せいぜい車同士のトラブルが頻発してニュースに取り上げられたくらいだ(白目)おうそこそこデカイ問題じゃねぇかというのは目を瞑ってくれ。()()()()()()()

 

しかし、一つ懸念点がある。コイツは体力がなさ過ぎてスピーカーが設置されている場所まで行って細工をするという事を想像できないということ。

走ると数秒で倒れるという翡翠もびっくりの儚い生態をしているコイツが、高所での作業なんて出来るはずがない。高所に持っていこうものならバランスを崩して落下の勢いで死んでしまう。落下死ではない。落下中に死ぬのだ。マンボウの親戚くらいか弱い。

 

と、ふと思い立った。あぁ、だから()()か。もう一人の方に目を向ける。

 

それはそれは綺麗な正座をして不貞腐れた顔してこちらを見る女。ロングで朱色に染まった髪は乱れに乱れ、据わった目で口をへの字にしている。手は後ろ手に縛られており、首にはプラカードを下がっていた。そこには『自分は馬鹿な真似をして篠傘 怜を困らせました。お好きなように処罰してください』という何とも言えない字で書かれている。なんで俺の名前だけそんな達筆なのに、他ガッタガタなの?誰かに書いてもらったの?

 

そんな彼女は…いや誰だ?わからん。初めて会う人だ。姫咲先輩と同様こちらを一方的に知ってるパターン…のはず。あだ名を言われたら気づくが…。

 

「えー…そちらはどちら様で?」

 

思わず敬語で聞くと後ろにいた黒髪ロング白衣という癖の塊マッドサイエンティストが手元のバインダーをいじりながら

 

「そっちは商業科の奴だ。話に聞いていないか?お前に借金を吹っかけてる奴とは別の、起業して成功したギャンカスの方」

 

「あー!ギャンブラーか。…え、なんで?」

 

なぜ商業科の起業家ギャンブラーがこんなことを…?思わず見てしまい、目と目が合う。視線はずっとこっちを向いていたようで異様な居心地の悪さを感じる。

 

「訳は本人から「賭けだよ賭け」…だそうだ」

 

「賭けって…どういうことだよ」

 

「アタシは生粋のギャンブラーだ。だもんで可能性が低ければ低いほど燃え上がる」

 

「はっ?」

 

初手の言葉、聞く限り最悪な印象しかない。なんだ?賭けで人を殺しかけたのか?思わず拳を握るも、その後に続く言葉に耳を疑った。

 

「お前のためだけにアタシ自らが名乗ってやる。商業科2年B組、賭口 梓。ヒリつくほどのギャンブルが好きで、金は山ほどある。企業だってしてるシャッチョさんだぜ。今回はアタシが出資した。コイツを焚きつけてな」

 

ニヤリ、と、今の自分がどういう状況なのかも眼中にないように、嗤う。笑う。その表情に悍ましさを感じる。天才特有の悍ましさを。なんだって危険アラートが鳴り響いて、今すぐ逃げろと勘が言う。だが逃げ場なんてない。周囲を見やれば、誰もがこちらを見ているからだ。逃げたら…ははっ、背中を向けたら食われるなんてのは簡単に予想できる。

 

「と、賭口先輩か。な、…なんだってこんなことを「負けるからだよ」

 

わけを聞こうとして、そうしてパンドラの箱を開いたことを須臾に理解した。

 

雰囲気が変わる。聞いてしまったことを後悔する。歪んだ人の本性がまろび出る。息が詰まる。あぁ、嗤っている。

 

「先手を打っただけだぜ?なんせ…」

 

「アタシは別にテメェ等みたいな才らしい才もねぇ。勝ってるって思ってんのは決断力と先見の明と切り替えの早さと誰も見つけてねぇニーズを見つけ出すことと運だ」

 

「結構勝ってんじゃねぇかよ」

 

ただの自慢かよオイ…。と思ったが苦虫を嚙み潰すような顔にそうでもない様子だ。

 

「ちげぇよ、逆だ逆。それだけなんだ。逆に言えゃそれだけしかねぇんだ。決断力はあるし先を見る思考だってある。が、何かを作り出すってのはてんでダメだ。ニーズを見つけられてもそれを満たす技術も才もねぇ。見つけるだけなんだよ。だから起業してんだ。アタシが見つけて、アタシができないことを部下に任せる。だから成功してる。だが…」

 

「それだったらいいだろうがよ…何がダメなんだよ」

 

「ダメもダメだ。なんせほかにもっとできるやつは山ほどいる。隣の芝生は青いとかそういうのじゃねぇ。明らかに不利なんだよ。コイツだって作るって点ではトップだし、其処でアタシをボコボコにしやがった水泳部の双子だってフィジカルエリートだ。アタシにはそういう他を出し抜く手札が少ねぇ」

 

瞬間顔を上げる。その顔はどこか、能面のようで、息がひゅっと詰まってしまった。

 

「なぁポーカーって知ってるか?」

 

引き攣る言葉を一息吐いて吐き出して、二息吐いては吸っていって…覚悟を決めて言葉を紡ぐ。唐突に言われた言葉に虚を突かれるも辛うじて頷けた。

 

「あ、あぁ。インディアンポーカーとか…テキサスポーカーとかだろ?」

 

「そうだな。他にもまぁあるが…知ってるならいい。教えてやるよ。ポーカーでいっちゃん大事なことをな。わかるか?何が大事だと思う?」

 

「大事って…運…とか?まさかイカサマとか言うんじゃねぇだろうな…」

 

「違う違う。それよりも前だ。運でもいいしイカサマでもいい。それ以上っつーかそれ以前に大事なことだ」

 

「…いいか?ポーカーで大事なのは役なし(ブタ)でも突っ張れるような面の厚いブラフでも、良い役を揃える剛運(ロイヤルストレートフラッシュ)でもねぇ。もちろんイカサマでもねぇ」

 

一つ、二つ、三つと指を立て、そのすべて折って言った。

 

「大事なのは……勝負の舞台に上がることだ」

 

「どんだけ強かろうと弱かろうと、勝負の舞台に上がれない時点で雑魚も同然なんだよ。勝負を降りるってのはそういうことだ。舞台に上がれたんなら雑魚でも強者になる。アタシは勝負の舞台にすら立てずに終わるなんてそんな屈辱ごめんだね」

 

「…アタシに配られたカードは()()

 

「アタシのカードと他のカードを見比べたとき、明らかに差があった。別にそれだけならいい。やりようはいくらでもある。だが問題はそれを相手に気づかれることだ」

 

「アタシが弱いと知られたら、アタシは勝負の舞台にすら立てなくなる。アタシは舞台から降ろされんだよ、出番を失うんだ。使い道がない駒に用はない。だから今勝負に出た。今なんだよ。今。今しかねぇんだよアタシには…!」

 

「…確実にアタシは脱落する。それは見えてる。それがいつだかは正直わかんねぇが…ライバルを蹴落としてその椅子に座るくらいのことをしないとアタシはこの先勝てやしねぇ」

 

「テメェ等の中で最も距離が近く、最も面倒な奴は会長だった。頭も切れるしフィジカルもある。なにより才能が面倒だ。放っておくとぶくぶく膨れ上がるラスボスみてぇな奴を初手でどうにかできたら勝率はぐっと上がる」

 

「分の悪い賭けだろうが賭けるしかなかった。リスクは馬鹿みてぇに高ぇ。だがアタシはコイツに賭けた。コイツがうまくやって、そんで会長の知恵を運で上回ったなら落とせたはずだ。分の悪い賭けだが可能性が0じゃねぇならやる価値はある。それに、一人落とせたら誰だって警戒するはずだ。そこに食いつく。それがアタシのプランだった。…会長に一手上回られたがな。コイツに手を貸した理由は以上だ」

 

淡々と、それでいて急ぐように紡がれた言葉に呼吸すら忘れて絶句した。

 

そ、それだけのために…こいつは…周りの人間を巻き込む可能性すら許容して…!そのためだけに…!こんなバカげたことを…!

唇が、目が乾く。かすかに手が震えるのを押さえて、見据える。そうだろ。そういう奴ばっかだろうがよ…!いまさら何へこたれてんだ…!がんばれ…!俺!対処してきただろうが…!

 

「他にやりようが…「お前が欲しい」

 

言い募ろうとするもさえぎられる。とても重苦しく、タールのようなヘドロのような、粘性の高い言葉が耳に張り付く。

 

「ほしい、ほしいんだ。お前が欲しいんだよ」

 

手を縛られ、床にどうっと倒れ伏してなお、こちらを見上げ、ずりずりと近づいてくる。

 

「なぁ、お前が欲しいんだよ。どうしようもなくお前が欲しいんだ。なぁ選べよ。アタシを選んでくれよ。わかるだろ?()()()()()()だって理解してんだろ?ならいいじゃねぇかよ…」

 

芋虫のように、身体を這い動かして、こちらを見上げる視線は粘ついて、絡めとられそうで…思わず手を引かれたそのまま後退る。見やれば、飛鳥が手を引いていて、その眼はとても、とても冷たい目をしていた。

 

「こっち見ろよ。なぁ、アタシを見てくれよ。初めましてでもピンと来たんだ。アンタしかいねぇって。写真で見て惚れて、現物を見てもっと惚れたんだ。アタシにはアンタしかいねぇ。アンタがそばに居ないとアタシは“ダメ”なんだよ」

 

這う這う、机を体でどかし始める。頭を机の脚にぶつけて、押しのけて、道を開いて、それでも前に。前に出ようと。あぁ、誰も止めない。誰も気に留めない。誰もが俺を見る。視線が逸らされることはない。そうか。こいつ等、()()()()()()。誰もコイツに興味がない。

 

「会長なんかに渡すもんかよ…!こいつ等も、邪魔だ。邪魔なんだよ!死んじまえとすら思ってんだ!でもお前は望まないんだろう?だからこうしてやったんだろうがよ…。手加減してできる限りお前に合わせたじゃねぇかよぉ…なぁ…」

 

机のリングから飛び出した梓といったギャンカスは、芋虫のまま、俺の足に張り付いた。俺の足はまるで石膏みたいに固まって動かなくなっていて、その足に猫みたいに縋りつく姿に、底なし沼に引きずり込む幽霊を幻視する。背筋が茹って、喉が震える。あぁなんだって…こんな…

 

「愛してくれよ。アタシを。好きと言ってくれよ。アタシを。それでいいんだ。それだけでいいんだ。頼むよ。なぁ、この際嘘でもいい。嘘でもいいんだよ。その言葉だけで満足するんだ…なぁ…頼むよ……」

 

吐かれた息は甘く、重く、鼻腔をくすぐり、その奥の脳の鈍く麻痺させる。離れてるはずなのに、脳が震えて、言葉にすらならない声が漏れる。

 

どいつもこいつも…興味があるのは、ただ()()()

 

「お前みたいな弱者が怜に触るなっ!慮外物がっ!!」

 

横合いから飛び出した蹴り、その主は姫咲先輩だった。振りぬかれた足先は寸分たがわぬ精度で梓先輩の鳩尾へ。めり込み、貫かれるように振りぬいたことで吹き飛ぶ梓先輩は壁に叩き付けられ、苦し気にせき込み、荒く息を吐く。

 

「姫咲先輩!やめろ!」

 

「くっだが…」

 

「ステイ!!!」

 

「っ…!」

 

ポン刀ちゃきちゃきし始めた姫咲先輩にステイをかけて賭口先輩に近づく。はぁいおりこうさんだねぇ!蹴らなかったらもっとよかったねぇ…!となだめすかして間に入る。クソッ狂犬が過ぎるだろホント…!どうしろってんだよ!

 

()()だ。また俺のせいでこうして問題が…!いや今はいい。手当が優先だ…!手慣れた手つきで梓先輩の様態を見る。どうやら鳩尾に青あざが出来ているのか触ると苦し気にうめく。身体のいたるところに軽い怪我があるものの、深いものはなさそうだ。ハンカチで汚れをぬぐっていると、ぐいっと身体を寄せられる。

 

「け゛ぅ゛っえ゛っ…えほっ…あぁ…なぁ…いいだろう?」

 

「そこまで…!」

 

身体を擦り寄せ、耳元でそうのたまう様はまるで中毒者みたいで…あぁそうかよ怪我してようがお構いなしかよ…!俺は中毒症状がある劇物化なんかかよ…!猫かなぁ!?俺全身からマタタビでも分泌してるぅ!?うぉっ、放せェ…!粘着つっよ!張り付くんじゃねぇ…!気色悪ィ芋虫がよぉ…!血が滲んでんじゃねぇか!!!クソっ、滲み始めた血をハンカチで当てながら、張りつく芋虫を押さえつけようとして…

 

「はいはいはいはーい!!!!なら僕も僕も!僕もおなしゃーす!」

 

クソ厄介な芋虫を引きはがそうとしていると後ろから耳障りな高い声が響く。

 

「今度は何!?」

 

後ろを見れば、ヤム〇ャってた発明オタクが元気よく立ち上がって手を挙げる。てかお前普通に生きてたんかい!!!

ボッロボロの黒い研究服を振り回しながら、裾に隠れた手を元気よく回す。ただ目つきだけが、にたり、にちゃにちゃと湿気を含んでいる。歪み、湿り、汚泥のようにドロっとした粘性の瞳を堪えて…あぁそうだよな。お前もだよな!

 

「はい!はい!はい!!梓ちゃんが許されるなら僕も許されていいと思いまぁす!!!」

 

「許したなんて言ってねぇ!!」

 

「じゃあ抱きつきたいです!!!」

 

「文脈ってわかるかナ!?!??!?赤ちゃんかナ?!!??!?!」

 

「だってずるいじゃん?梓ちゃんだけハグされるなんてさ~。あ!」

 

「不可抗力ってわかる!?てかこの状況で?!」

 

「でもでも赤ちゃんにはなりたいです!!!!!君の子供になりたい!!!!」

 

「日本語喋ってくれるかナ!?!?」

 

「アイキャントスピークジャパニーズ!!アイムベイビー!!!」

 

「ファ~~~~~!!!!(怒りが沸騰する音)Shut up!fu〇k off!!」

 

「わお流暢。いいじゃんか~別に子供が一人くらい~」

 

「僕も怜君が好きでやったことだから!愛ゆえに…だよ!愛ゆえに…!ほら、べそかいちゃうよ…?泣いちゃうよ…?」

 

「そんな愛こっちから願い下げだ!勝手に泣いてろ!」

 

「育児放棄いくなーい!!!そして当商品はクーリングオフできまっせぇーん!!!!」

 

どーん!赤ちゃんだぞー!!!と言いながら、こっちに突っ込んでくるのをよけようとするも、粘着芋虫のせいでロクに回避を取ることもできずに発オタ、ギャンカス芋虫と一塊になる。あぁクソ!べたべた触るな!手つきが気色悪い!ケツ触るんじゃねぇ!男のケツ触ったところでだろうがっ!

 

「僕だってさぁ!勉強会の時からずっと悔しかったんだもん!ずぅーっと会長がべたべた張り付いて~!!!僕だってさぁ!ばぁぶ~~!!!!ぁ、かふっ」

 

「だぁ~!!!!幼児退行すんじゃねぇ!あてめぇ吐血したな!?」

 

さらにぐちぐちと言い募ってくる発明オタの頭を押しのけ、虚弱体質だからぶつかった衝撃で吐血したのをハンカチで拭ってやって

 

「あ、何それ~ずるーい!私も~赤ちゃんやる~」

 

抱き着こうとしてくるアイドルを粘着芋虫女ガードで防ぎ…!

 

「ふぅん…そういえば今朝のこと…本当ですの?」

 

あんまり関わりたくない借金こさえさせてきた女に弱り切った発明オタを押し付け…!!

 

「ずるいね、凛「ずるいね。漣」「「私たちも行きましょう」」

 

二人がかりで襲ってくる水泳部の双子を芋虫女でフルスイングし…!!!

 

「ふむ…馬鹿らしいな。終わったら言ってくれたまえよ」

 

「あぁ。とりあえずだがスマ〇ラの続きでもしよう。リアル乱闘はアリだ。」「無論、わかっているとも」

 

関係ないとばかりにスマ〇ラし始めた小説家とマッドサイエンティストに青筋を立て…!!!!

 

「いいね。君の表情。絵に描くね。賞のテーマ決まったかも」

 

「怜氏…!今季のアニメOPED豊作ですぞ…!」

 

俺の顔を絵に描こうとスケッチブックを開いたエゴイストエキセントリック女とアニソン布教してくる音楽オタについに堪忍袋の緒が切れる…!!!!!

 

「お前らおとなしくしろよァー!!!!!!!!!」

 

「もう我慢ならん…!怜、斬り捨てるぞ…!」

 

「俺も斬られちゃうからNO!!!」

 

「そこの虚弱を押し付けないでくれる?貴方で処理しなさい。そんなことより今朝の…」

 

「どわっ、けほっけほっ、わぁ~命の危機だよ怜君!心中…しよ?」

 

「なぁ…怜、いいだろ。なぁ…」

 

「アトラクションみたいだね~がんばれ~」

 

「怜氏は今季どのアニメリアタイするつもりで?」

 

「こわいね、凛「怖いね。漣」「「怖いからもっとくっつきましょう」」

 

「お前らホンッッットに自由かっ!?!?あ上ぇい!?」

 

人の塊となってごちゃごちゃわちゃわちゃしてる間に差し迫った命の危機たるポン刀に気合を入れる。全力で足に力を込めて、反復横跳びの要領でぇ…!唸れぇ俺の足腰ィ…!

 

横っ飛びした瞬間、発明オタのせいでかき分けられていた机の存在に気づかず、思いっきりぶつかる。幸い、肉盾となった発明オタのおかげでこちらはノーダメだがその衝撃のせいで吐血する為俺の顔に真っ赤な血の花が咲く。死んだ目をして無我の境地になり、そして着地する瞬間、足にいやな、そうとてもいやな音と感覚が、かかと、足先、くるぶしを伝って、ふくらはぎ、太もも、尻…背中、そして脳に雷が走る。

 

ゴキッ

 

「おごァ…!」

 

KO

 

格ゲーならその表示が出るであろう鈍重かつスローかつすっとろい動きでどぅえ、どぅえっと倒れ伏す。

 

倒れ伏して足を負傷した俺に、人の塊は地獄に引きずり込むようなへばりつくゾンビの群れへと姿を変える。口々に「愛してくれよ~」だの「ごはっ、えほっ…アカチャン!アカチャ…ごはっごほっ…ン!」だの死にかけながらうわごとのように言い、「怜氏~イベントが今度あるので某と遠征行きましょうよ~」だの「いいね。もっとその顔みせて」とか言いやがる化け物ばかりだ。「私は~?」あぁそうお前もいたなァ!ふにゃふにゃ掴み処の無い人間だからいつの間にか居ていつの間にか居ないとかあるんだよなお前はよォ!アイドルだろぉ!?存在感出せやぁ!

 

どうにか脱出しようと辛うじて自由な上半身で這う這う逃げようとする。その姿を飛鳥は頭上から屈み、その真っ黒過ぎる黒髪を呆れたように揺らして、アメリカ人のようなオーバーなリアクションで肩をすくめた。

 

「君はどうにも苦労人だねぇ」

 

「飛鳥も見てねぇで助けろください馬鹿野郎!」

 

「丁寧なのか罵倒なのか…あと女性に対して使うなら野郎ではなく女郎だよ」

 

「馬鹿女郎でいいですか!助けろください!足が…!足が今ゴキッて…!」

 

「はいはい…」

 

だがしかし、一人の力では到底この馬鹿共を引きはがすことはできなかったので、リアルス〇ブラに発展しかけていた文学部の先輩とマッドサイエンティストと姫咲先輩を何とか説得して俺はこのゾンパニから抜け出すことが出来たのだった。




明るくポップに仕上げました。ラブコメってこれで良いの…?
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