アウラを人類と共存させてみた   作:やわら烏

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二次創作にありがちな「ぼくが考えた設定垂れ流しタイム」になると
キャラに長々と喋らせるか地の文が長くなるかで偏るのは
個人的に何とかしたいです
地の文と台詞量とをいい感じに調整してくれる民間魔法って無いんですかね


後日譚2.最初の町

「アウラ、そろそろ次の町だよ」

 

「え!ほんと!?」

 

グラナト伯爵領から続く街道を延々と歩くフリーレンとアウラ。

何も無い草原をただひたすら歩き続けるという退屈極まりない行為に

いよいよウンザリし始めていたアウラの表情は

フリーレンのその言葉で一転して喜びに溢れ

「どこ?どこ?」と目を凝らして辺りを見渡す。

 

「ほら、アッチだよ」

 

フリーレンの指差す方角、距離にして数キロほど先に

確かに小さな町が見えてきた。

 

数にして数十軒以上の家々が点在し

石造りの防壁と空堀でぐるりと周囲を囲われた町であった。

中心部には教会らしき高い塔や、統治者が住んでいると思われる屋敷が見え

それらの建物の外壁の真新しさから

町としての歴史はそこまで深くない事が窺える。

 

「……ここ、まえに見た時は、なんにもない草原だった気がするわ」

 

アウラの朧げな記憶では、この土地は見渡す限り草しか生えていなかった筈の場所であった。

 

「前って言っても300年前でしょ?人間にとってそれだけの時間があれば、村どころか街ひとつ興すのすら造作もないよ」

 

門兵が手渡してきた羊皮紙に名前を記入しながら

フリーレンは目線だけこちらに向けて話す。

手続きを無事に済ませた2人は中央通りを歩きながら町を散策し始めた。

 

「りっぱな町ねぇー」

 

石畳が敷き詰められた立派な道を歩きながら

アウラは感嘆の声を漏らす。

 

「でしょ?伯爵領と比べても遜色ないくらいだよね。それに、前に私が立ち寄った時よりも一層栄えてるし」

 

フリーレンも、以前よりも発展した町の景観を眺めながら同意する。

 

「ねぇねぇフリーレン。……昔はなんにもなかった場所なのに、なんでここに町なんてできているの?」

 

「やっぱり知りたい?その話になるとちょっと長くなるけど……」

 

なんでなんでというアウラの質問攻めに

寧ろ待ってましたと言わんばかりに

フリーレンは町が出来るまでの経緯を話し始めた。

 

「元を辿れば伯爵領の人口増加が関係してるんだけど──」

 

フリーレンの解説を要約するとこうであった。

 

元々、広さにして数キロもないグラナト伯爵領。

かつて北側諸国全域で魔族が盛んに活動していた頃ならば

城壁に囲まれた街の中でも事足りる程度の人口しか無かった。

しかし時代が移り変わり、治安や交通の便が良くなると

それに比例するように移住者は増え始めた。

領内に新たな建物を建てられるだけの土地は少なくなっていき

ついに限界を迎えたある時、当時の領主は

志願者を募って新たな居住区を造ろうと乗り出した。

 

「もちろん、そう易々と出来る事じゃない」

「国の許可や統治者問題、それとお金も凄くかかるし」

 

新しく村を興すのは経済面、労働面でも問題は山のようにある。

 

「あとは伯爵領と違って、防護結界もなしにどうやって魔物を退けるかなんかも考えなきゃいけない」

 

また、フランメの防護結界に護られた街と違い

魔法的な産物による防衛機構が存在しない場所というのは

魔物や魔族がいつ襲来してもおかしくない危険地帯である。

 

「そう考えると、伯爵領が千年間健在だったのはあの結界による所が大きいね。流石は師匠(せんせい)が作っただけあって──」

 

「フ、リ、ィ、レ〜ン」

 

ずっと外の世界の移り変わりを知らなかった者からすれば

目眩すら覚えるほどの小難しい単語と内容のオンパレードだったのだろう。

ほんの数時間前の'航空船"やら"空飛ぶ馬車"やらの解説に比肩するほどの長話は

説明を求めたアウラ自身によって遮られた。

 

「むずかしい話はよくわからないわ、もっと簡単におねがい」

 

「……ざっくり言えば、『住む場所が足りなくなったから移り住んだ』って事だよ」

 

話の腰を折られたにも関わらず

フリーレンは不機嫌な態度ひとつ見せずに更に噛み砕いて説明をする。

 

「だって、フリーレンの話って長いんだもの」

「ときどき、関係ない話もまじってよくわかんなくなるし」

 

「これでも結構かいつまんで説明したつもりなんだけどね」

「…………それに私も、誰かと旅するなんて久々だから色々と話したいし」

 

「ねぇねぇ!そこのあなた、ちょっといい?」

 

「おや、私かい?」

 

「……聞いちゃいないや」

 

既に興味の対象が移ったアウラは、そこら辺を歩いていた老婆に声を掛けており

これにはフリーレンもふうっと短い溜息を吐く。

 

「あなたに聞きたいことがあるの」

 

「お嬢ちゃんは旅人さんか何かかい。いいよ、何でも答えてあげるとも」

 

町の住人らしい老婆は、不躾に尋ねてきたアウラに気を悪くする事なく応対する。

 

「えぇっと、この町ってできてどれくらいになるの?」

 

「『この町が出来て』?……んん〜……」

「そうだねぇ……この町が出来て今年で大体、50年くらいにはなるかねぇ」

「私は町を興した時からいたんだけどね……」

 

創設当時を思い返している老婆の顔は

幾度もあったであろう町興しの苦労を思い出すような、

しかし同時にそれらを懐かしむような遠い目をしながら話し始めた。

 

「職人や護衛の兵士も同行したんだけど、お陰で大所帯になったからもう大変で大変で……」

 

「ふーん、たとえばどんな?」

 

「ん?そうねぇ、例えば……ふふっ、そうそう、折角建てた寝所が初日に風で崩れちゃってね……」

 

「え、風でたおれちゃったの!?」

 

明らかに笑い話では済まない内容なのだろうが

そんな苦難すらも良い思い出のように笑顔で語る老婆と、それに全力で聴き入るアウラ。

 

「(こりゃあ長くなりそうだ)」

 

老婆とアウラ、完全に2人きりの世界で夢中で話してる様子を

フリーレンは止めるでもなく、微笑ましい表情で眺めていた。

 

 

 

 

「……で、どうだった?面白い話は聞けた?」

 

「うん、すっごく面白かったわ」

 

10分近く老婆と立ち話していたアウラは再びフリーレンと中央通りを歩いていた。

老婆から聞いた昔話の内容と、その感想を身振り手振りを交えながら

楽しげに語っている。

 

「こうやってみんなで材料をはこんで、すこしずつ組みたててたんですって!」

 

「うんうん」

 

「しかもそれを魔法もつかわずに!すごいけど不便よねぇ」

 

「まぁ、皆が皆魔法を使える訳じゃないから」

 

「あ!それとそれと、夜が来る前に、"かせつ住きょ"?……っのを作らないといけないそうなのよ。なんでなのかしら?」

 

「そりゃあ大多数の人間は魔物に襲われたら一溜まりもないからね。寝泊まり出来る最低限の場所は確保するものなんだよ」

 

「へぇ〜、フリーレンもくわしいのね〜」

 

「まあね」

「(…………私が話した内容とちょっと被ってるんだけどなぁ)」

 

老婆が話した内容には、先程のフリーレンの解説と若干被っているものも含んでいたのだが

どうもアウラの脳内には、そちらの話はあまり残らなかったらしい。

 

「(それだけあの老人の体験談の方が夢中になれたって事か)」

 

それを少し残念に思いながらも、敢えて口には出さず肯定的に捉える。

 

「──で、フリーレン」

 

「……ん?」

 

そんなフリーレンを他所にアウラは再び質問を投げ掛けた。

 

「私たちがこのまえ行った、ほら……えぇっと、アウラ村……だったかしら?」

 

「アルム村ね」

 

「その、アルム村はできて何年くらいになるの?」

 

フリーレンは「何でまたそんな話に切り替わったんだ」と内心思いながらも

ここ数百年の記憶を遡りながら、ざっくりとした年数を頭の中で算出する。

 

「そうだなぁ、村として成立してから今年で大体……300年弱ってとこかな」

 

「……この町よりちっちゃかったわよ?」

 

「だね。それがどうかしたの?」

 

「ん〜〜…………なんでもないわ」

 

「……??」

 

何か納得がいかないような顔をしながら

アウラはそれ以上話を続けようとはしない。

そんな彼女の様子をフリーレンは不思議に思い、一体何が原因なのかと思案する。

 

「(……あっ、そういうことか)」

 

そして、何か思い当たる節があったのか

フリーレンはやや不機嫌そうなアウラに呼びかけた。

 

「アウラ、この町とあの村とじゃ発展に差が出るのはしょうがない事だよ」

 

「……どういうこと?」

 

この町よりずっと歴史があるにも関わらず、アルム村が小規模な事に納得がいかない。

それに気が付いたフリーレンは、優しい口調で説明をする。

 

「この町は伯爵領に向かう人がよく立ち寄るから人や物の流れが活発なんだよ」

「逆にアルム村はここらじゃ有数の小麦の生産地ではあるけど、それ以外の目ぼしい物はあまりない」

「しかも街道から離れすぎてるから好き好んで来る人もいないしね」

「だから、同じ年月に対しての発展の度合いも変わってくるんだ」

 

「……そういうものなの?」

 

「そうだよ。……それにね、大きければ何でもいいって訳じゃない」

「人が大勢集まれば、それに釣られた魔物が来る可能性も高まる」

「だから、この町はこの町なりに、これだけの規模を保つ為の防衛設備や衛士の配置に力を……」

「……あー、つまり、石壁が壊れてないか確認したり、代わりばんこで見張りが必要って事だ」

 

町に入る際にチラリと目に入った、防壁に魔物がぶつかって出来たであろう傷跡や

一定の間隔で周囲を巡回している衛士達の姿を思い出しながら

フリーレンはそれらにかかる労力を一つ一つ、

且つ、また小難しくならないように丁寧な説明を心掛ける。

 

「……つまり、アルム村は今の大きさがいちばんよくて、この町はこの大きさがいちばんいい……ってこと?」

 

「そうそう。なんだ、アウラもちゃんと分かってるじゃないか、偉いぞ」

 

アウラの学習能力の高さも込みで

フードの上から彼女の頭をよしよしと撫でるフリーレン。

 

「……え、えへへ〜。そうでしょ、えらいでしょ?」

 

これにはアウラも気分を良くして

「もっと撫でるじゃない」と言わんばかりに頭をフリーレンの方へと傾けた。

 

「……っとと!フードが取れかけてるよ」

 

その際に角が見えそうになるのを慌ててフリーレンが直す。

 

「町中で角を見られたら色々と危ないから、気をつけてよね?」

 

「はーい」

 

分かってのか分かってないのか怪しい生返事に

色々と物申したい気持ちになったフリーレンだったが

ひとまず、それ以上とやかく言うのは辞める事にした。

 

「フリーレン、この町にはどれくらいいるの?」

 

「アウラはどれくらい居たい?」

 

「ん〜、……2年くらい?」

 

「ちょっと長過ぎるかな……4、5日くらいでここを発とうか」

 

少し昔の自分に似た、悠長な時間感覚をした発言に

フリーレンは今後の旅の予定と擦り合わせながら答える。

 

 

 

人間と感性がズレていて、しかも酷く我儘な手の掛かる子供が増えたような旅路。

 

「(ずっと町にいるだけじゃアウラも退屈だろう)」

「(明日はアウラを連れて、簡単な依頼でも受けてみるかな)」

 

 

そんな気苦労が絶えないであろう旅を

フリーレン自身は少し楽しんでいた。

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