アウラを人類と共存させてみた   作:やわら烏

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懐かしいなぁジャンボベリーシリアス回
前書いた時はガキだったから全部食えなくて師匠と分けたんだよな……
あの頃は些細なシリアスで胃もたれしてたのに
いつの間にかほのぼの日常とシリアスを交互に欲するようになっちまっていた


後日譚4.人間を殺し喰らう生態

〜勇者ヒンメルの死から328年後〜

-北側諸国 ゾルゲ湿原-

 

 

町を旅立ったフリーレンとアウラ。

広大な草原を更に南下し、泥濘(ぬかる)んだ地面が続く湿地帯を歩いている。

 

「……こう、かしら?」

 

「そうそう、いい感じいい感じ」

 

そんな中、何やら二人は、側から見たらよく分からない会話を織り成している。

 

「アウラもだいぶ魔力制限が板に付いてきたね」

 

「むふー、当然よ!これくらいはできて当然じゃない!」

 

どうやらそれは、フリーレンによる魔力制限の指導であった。

 

「だけどまだ少し制限に粗が見える、卓越した魔法使いならその粗に気付く可能性が高い」

「この前のアデルみたいなのと旅先で出会わないとは限らないし」

 

「え〜、これでも結構上手くやってるつもりなのにぃ……」

 

「旅路はまだまだ長いんだ、ちょっとずつ練習してけばいいよ」

 

「むぅ、わかったわ。じゃあ今度はもっと魔力をおさえるから、ちゃんと見ててよ?」

 

「おー、それは楽しみだ。アウラは頑張り屋だね」

 

褒めて伸ばす教育で、どんどんやる気を出すアウラの姿勢に

フリーレンも師匠らしい事をしているという達成感を覚える。

 

「……でもこれむずかしいのよね、自分で自分の魔力がぜんぜん分からないもの」

 

「確かにそうだね、私も最初はビックリしたよ」

「まさかいきなりあの精度で魔力制限をやってのけたんだから」

 

「え、ほんと?……私ってすごい?」

 

「うんうん、凄いよ。アウラはとっても凄い」

 

「…………むふふ〜」

 

満足気なアウラの頭をよしよしと撫でくり回すフリーレン。

 

 

 

「(…………いやぁ、ほんとにビックリしたよ)」

 

撫でながら、ほんの数十分前の事を思い返していた。

 

 

 

 

街を離れた2人は道すがら魔力制限の練習を始めた。

まず初めにフリーレンはアウラにこう言った。

 

『アウラ、体外に放出する魔力を十分の一以下に抑えられる?』

 

フリーレンにとっては長い旅の道中の有効活用も兼ねて、お試しのつもりであった。

本格的な指導は野営の際に、手取り足取り教えればいい、と。

 

『……うーん、こうかしら?』

 

両手を握り締め、力むような姿勢を取ったアウラが

言われた事を実際にやってみようとする。

 

『………………これは』

 

『えっ、なになに?……どうしたのフリーレン?』

 

魔力の扱いに長けた魔族という生き物にとって

魔力制限そのものは造作もない技術である。

しかし、今のアウラは少し事情が違う。

自他共に一切の魔力を感知出来ないという特殊な状態なのだ。

そんなハンデを背負った状況下での魔力制御、本来は上手くいく筈はないと

フリーレンは考えていた。

 

 

『……流石だね、よく制御できてるよ』

 

『ほんと!?……なんとなくでやったのに……!?』

 

『うん、私からしたらまだだいぶ揺らいでいるけど、凄くしっかり制御出来ている』

 

それをアウラは、"なんとなく"の直感だけで一発でやってのけてしまった。

それはフリーレンの予想を凌ぐものだった。

 

 

 

 

「(やっぱり腐っても大魔族……って事にしておこうか)」

 

教える手間がだいぶ省けたのだが、それを素直に喜べないフリーレン。

 

「(アウラの体内の封魔鉱は、魔法の発動を間違いなく無効化している)」

「(…………だけど、それは何処まで(・・・・)なんだ?()()()()が魔法に含まれる?)」

 

今のアウラは魔法を使えない。

人類を凌ぐ魔族としての身体能力も、"魔法"として扱われているのかダダ下がり状態である。

 

「(私も封魔鉱に魔力を込めて光らせる際は、感覚だけでやってるけど)」

「(前知識の無いアウラが魔力制限をここまでの精度でやれたのは予想外だ)」

 

しかし、魔力の操作自体は問題なく出来ている。

 

「(今は魔力制限だけだからいい。……問題はこれを何処までやれるのかだ)」

「(例えば、対象に向かって魔力をぶつけるのは?術式を一切介さない魔力操作を、封魔鉱は何処まで封じられる?)」

「(『ただ魔力を体外に放ってぶつけるだけ』……これがもし可能なら、アウラの魔力なら一般人には充分致命傷を与えられる)」

 

術式を介さず、魔力を塊として撃ち出して攻撃に転用する。

魔法使いなら、そんな荒唐無稽な机上論の戦法など『あり得ない』として切って捨てるだろう。

だがフリーレンはそのあり得ない戦法を高い精度でやってみせた人物に心当たりがあった。

 

「(もしアウラが可能なら……アイツ(・・・)と同じやり方に辿り着いたら)」

 

そしてそれは皮肉にもアウラと同じ大魔族であった。

 

 

『何も分からない幼児にナイフを持たせても、どう人を刺せばいいのか分からない』

 

伯爵領でフリーレンは、当代のグラナト伯爵にこういう見解を述べた。

しかし、いざアウラがそのナイフを手にして

人を刺さないかと問われると少し不安になってきた。

第三者に危害を加える手段をアウラが再び手にしてしまうのは

フリーレンとしても何とか避けたい事である。

 

「……アウラ、ちょっと変な事を聞くけど」

 

「ん〜、なに?」

 

町ではアウラとのこれからの旅を心穏やかに描いていたフリーレンも

久々の二人旅でいかに己の心が緩んでいたかを自覚し、気を引き締め直す。

 

「私がアルム村から伯爵領に帰る途中でアウラに聞いた内容、覚えてる?」

 

「……えと、何か、あったっけ……?」

 

「『今日一日、周りの人間を見てどう感じた?』っていう、あの質問」

 

「…………あぁー、そんなのあったわね。……たしか」

 

「『おいしそうだとおもったわ』」

 

「そう!それそれ、よくおぼえてるわね」

 

言われてようやく思い出したアウラが感心するのとは対照的に

フリーレンは真面目な表情で尋ね続ける。

 

「……どうして人間が美味しそうだと思ったの?」

 

「どうしてって……うーん、そう言われても……」

 

あの時の空での問答と同じく、アウラは首を傾げたり頭を捻るばかりである。

そこには演技などは一切籠っておらず、本当に分からないらしい。

 

「…………」

 

そんな必死に頭を悩ます彼女を見ながら

フリーレンは心の中で自分のこれまでの人生を振り返っていた。

 

「(私は今まで、魔族について知ってるようで、知らないままだった事が幾つかある)」

 

『葬送のフリーレン』という異名がつくに至るまで魔族を殺してきた彼女だが、

魔族殺しのプロフェッショナルのフリーレンにとって、魔族とは人類の天敵種。

それ以上でもそれ以下でもなく、理解するという行為を全くしてこなかった。

 

「(……いや、『理解してこなかった』というのは語弊がある)」

「(寧ろ、魔族と相対する程に……死に際の鳴き声に耳を傾ける程に、『あぁ、こいつらとの会話は無駄だ』という理解だけが深まった)」

 

故郷を滅ぼした憎悪の対象である事や、"魔族"という生物を定義付けたフランメの教育を抜きにしても

史上最も魔族と敵対したフリーレンが導き出した答えこそが

『人類と魔族の共存は不可能』だ。

 

「("共存"か……)」

 

 

 

 

『お前が共存を望めば望むほど、お前の手で多くの人が殺される』

 

『それの何に問題がある?人類を理解出来ればいずれ共存の道が──』

 

 

 

人類への強い興味を抱き

人類との共存を望み

人類へのより深い理解を求める。

 

「(……その結果、都市一つを黄金に変えて、大勢の人間を殺め続けた哀れな魔族がいた)」

 

悪意と罪悪感を求め欲した大魔族(じんぶつ)との会話が

フリーレンの脳裏に思い起こされる。

彼は魔王と同じく、人類との共存を望んだ歪な魔族であった。

 

「(仮に心の底から共存や友好関係を望んでいても、人類と掛け離れた精神構造をした彼らとは、決して分かり合えない)」

 

『決して分かり合えない存在』。

……いや、分かり合おうという考えを持ち、付け入る"隙"そのものすら与えてはいけない存在。

故にフリーレンは、人に近しい姿と振る舞いをする彼らを殺す際、心の何処かで僅かな罪悪感を覚えながらも

『まずは1()』、『手負いの猛獣の駆除は骨が折れる』などと

あたかも会話の成立しない化け物のように扱う事で平静を保ってきた。

 

 

 

『だとしたら君の精神は人類のものとは掛け離れているわね』

『人の形をして、人の言葉を話す存在が許しを請うているのに、その言葉に耳を傾ける事無く殺し続けてきたのだから』

『もうどちらが化け物なんだか分からないわね』

 

 

 

 

「(…………やな奴の顔も思い浮かんじゃった)」

 

「人間をよく知りたい、研究したい」と称して、蛮行と殺戮の限りを尽くしてきた

残忍残虐な大魔族(ばけもの)のお喋りがミミズのように記憶の表層に這い出てきた。

彼女はある意味では人類の事を人一倍……魔族(・・)一倍理解していた異端者だった。

 

 

「(人類を言葉巧みに騙し、油断させ、殺し喰らう……それが魔族だ)」

「(最早習性として染み付いているその行動は、彼らが魔族である限り治せない)」

 

「……フリーレン、どうしたの?」

 

こんな殺伐とした心境も知らずに話しかけてくるアウラをチラリと見ながら

フリーレンは思う。

 

「(……今の彼女はどうなんだ?アウラの精神構造はぐちゃぐちゃだ)」

「(その壊れた心をピースみたいに嵌め直したら?その後は?)」

 

大きな幼女のようなアウラが正気に戻ったら。

その"正気"は、果たして人類の価値基準で正気と言えるのか。

胸の内をそんな心配事で圧迫されているフリーレンは

ふーっと息を吐くと、再びアウラに質問する。

 

「ちょっと難しすぎたね。じゃあ質問を変えるけど」

「昔のアウラ……そう、300年より前のアウラは、どうして人間を美味しそうだと思ったの?」

 

「んん?300年……前?……んーっとぉ……」

 

「あっ、思い出したく無いなら無理に思い出さなくていいよ」

 

「無理じゃあないわ……昔の私はねぇ」

 

顎に指を添えながら、アウラは

やや霞がかった遠い過去を思い出す。

 

「魔力がとっても高い人間は、とくにおいしそうに思えたわ」

 

「……魔力が高い人間ね」

 

これまでの経験から予想がついていたらしく、

フリーレンは「やっぱりか」という顔をする。

 

「じゃあ、魔力が殆どない一般人は?あと、お腹が一杯の時とか」

「それに今も、人間の魔力は感知出来ないでしょ。なのに何で美味しそうなの?」

 

人を喰う喰わないという魔族との無意味な問答が千年分あるフリーレンは自覚はしていないが

矢継ぎ早に、少し苛立った口調で問い掛ける。

 

「そうなのよね、魔力が感じられないからおいしくないはずなんだけど……」

 

フリーレンのピリついた雰囲気に気が付かないアウラは

心底疑問に感じていた事を、何とか言葉として表現しようとする。

そして、纏まりのない思考を何とか束ねて、それを出力した。

 

 

「……不思議とこんな気持ちがわいてくるのよね」

「『人間は食べる物だ』『殺してもいい物だ』って」

「……ほんとに何でかしら?へんよねぇ……」

 

「……」

 

「フリーレン?」

 

「…………分かったよ、ありがとうアウラ」

 

額に手を当て、とても深い溜息を吐いたフリーレン。

十数秒ほどその姿勢であったが、気持ちの切り替えが済んだらしく

パッと顔を上げてアウラに向き直る。

 

「アウラ。これからも人間を見る度に『美味しそう』だと思う事はあると思う」

「だけど、それを口にはしない事」

 

「……なんでなの?」

 

「なんでも何も……いや」

「例えばアウラは、『お婆ちゃんみたいだな』とか『クソババア』って言われたらどう感じる?」

 

「…………んんっ……?」

 

「例えが悪かったね。じゃあ、『お前は頭が悪い』とか『バカそうだ』って言われたら?」

 

「………ヤな気持ちになる……のかしら?」

 

「それと同じだよ。大抵の人間は美味しそうと言われても喜ばないし、むしろヤな気持ちになる」

「『自分がやられて嫌な事は、他人にしちゃいけない』。……できる?」

 

人類とはズレた精神構造の魔族は度々悍ましい事を宣う。

そんな会話を聞く度にフリーレンは、目の前の生き物を冷めた目で見てきた。

 

「……できると思うわ!……たぶん」

 

「多分でもいいよ、それをやろうとする心が一番大事だからね」

 

しかし、今の彼女がアウラを見る目は

無知な子供を見捨てずに、常識を教え込もうとする母親のような眼差しだった。

 

「じゃあ、魔力制限の練習をまたしよっか」

「今度は揺らぎを更に抑えながらだ」

 

「えぇ、揺らぎをもっと無くせばいいのね。感覚だけだけれど、やってみるわ!」

 

 

 

「うん、アウラなら大丈夫。きっと出来るよ」




封魔鉱の杖使ってもソリテールわからせ出来ないのはちょっと残念ですが
あいつは魔法使えなくなって追い詰められても
「素晴らしい」とか「貴重な体験だわ」とか喜びそうであんま意味ないですね
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