アウラを人類と共存させてみた   作:やわら烏

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断頭台のアウラ回か
驚いた。正気を失ったと聞いていたが、よもや過去回想で我を取り戻すとは
お前が主役の回だったのか?それは悪い事をした
先にリュグナーと連れ立って戦場に向かってしまった
いずれ近くの街から、俺に華を持たせる為の魔法使いや戦士がやってくるだろう
俺は手始めにエルフと戦ってくるが、お前はどうする?


閑話.敗走のリュグナーじゃない

勇者ヒンメルの死から13年後

-北側諸国 ケーニギン城跡-

 

 

「……退屈だわ」

 

北側諸国の森の奥に存在する大きな古城。

その城の王の間で、断頭台のアウラは玉座に腰を掛けながら大きな欠伸をしていた。

 

「……城も取り戻したし、軍勢も増えてきたけれど」

 

元を辿ればこの城は人類の所有する物であったが

アウラが半世紀以上昔に占拠し、以来居城として使用してきた。

しかし、勇者ヒンメルに敗れて、軍勢も力も損ない敗走。

それからの屈辱に塗れた数十年を経て力を取り戻し、大魔族は再び舞い戻ってきた。

 

そして、かつては勇者一行に阻まれた『グラナト伯爵領の制圧』を目標として

13年程前から活動を再開。

 

「念には念を入れて、外堀を埋めていく作業は順調だけれども」

 

まずは伯爵領と密接に繋がりがあると思われる、周辺の町や村落を

不死の軍勢の調達も兼ねて攻め落としていった。

外部からの補給を減らしていけば、疲弊していずれは負けを認める。

仮に認めず最後まで足掻かれた所で、飢えに苦しんだ住民などが内部で反発し

勝手にくたばる。

計画的にコトを運ぶアウラらしい慎重さであるが、

 

「いざ攻勢に出てみれば、トントン拍子過ぎて味気ないわね」

 

"服従させる魔法(アゼリューゼ)"の性質上、どうしても直接的な戦闘にはならず

不死の軍勢を操って戦う国盗りゲームのような形になる。

 

軍勢を率いて攻め滅ぼし、増えた軍勢でまた別所を堕とすの繰り返し。

流石のアウラもその単調作業に退屈さを感じていた。

 

「こう……いい感じに軍勢を跳ね除けて単身で斬り込み、いい感じに軍勢に阻まれて苦戦する」

「そんな感じの英傑がもっと居ないとつまらないわ」

 

最近は不死の軍勢ではなく魔族の部下達に任せる事もしばしある。

操り人形と違って生身故に、多少は歯応えのある戦闘をしてくれるだろうという余興も兼ねて。

 

そして今回も、リュグナー率いる大勢の魔族に他所を攻めに行かせたのだが……

 

「遅いわねぇ。もしかして、結構苦戦してたりする?だとしたら帰ってきた時の土産話もさぞ面白いんでしょうけど」

 

遅い。

既に1週間が経過していた。

飛行魔法を使い、進軍速度が人類の比でない魔族なら

3日で往復出来る距離であろうに。

 

「……待っててもしょうがないわね。取り敢えず何か飲みましょう。……リーニエ!ドラート!」

 

人類に勝つのは大前提として、手に汗握る戦いの報告を楽しみに待つ大魔族は

美酒を嗜みながら成り行きを見守る事にした。

 

「…………チッ。あいつら何処かでサボってるのかしら?」

 

呼んでも中々来ない配下に痺れを切らしたアウラは自ら飲み物を取りにその重い腰を上げ、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────アウラ、様」

 

掠れるような声が、廊下の方から聴こえた。

やがて部屋の入り口から遠征に行っていた筈のリュグナーが姿を現した。

 

「リュグナー……その怪我はどうしたというの?」

 

魔力探知に引っ掛かるかどうかという弱々しい魔力。

壁に手をつきながら、ヨタヨタと力無く入室してきた配下の姿にアウラは目を細めた。

勿論そこに、心配だとか、気が動転したような様子はなく

魔族特有のドライな対応ではあるが。

 

「申し訳……ありません。敵の力を、見誤りました……」

 

片手は力無く垂れ下がり、腹部の辺りに血が滲み、歩く度足元に血が点々と落ちていく。

"血を操る魔法(バルテーリエ)"で出血を軽減しているようだが、相当の深手のようだ。

 

「付いていった他の魔族は?」

 

「全滅、しました……」

 

「あらそう」

 

首切り役人以外の魔族の配下……いや、()()()

服従する魔法で洗脳した者、七崩賢という格上の存在を前に己から膝をついて傘下に加わった者。

参入した過程に差異はあれど、どれもこれも首切り役人にやや劣るか、よくて同等といった有象無象。

アウラが付き従える不死の軍勢の中には、生前は名だたる英傑であった者の死体も含まれている。

正直言って、そういった選りすぐりのコレクションの方が

アウラとしてもまだ戦力としては期待していた。

だがそんな木端同然のゴミ共の中でも、重要な戦力と呼べる存在もいる事にはいた。

 

 

そう、魔族の将軍として名前の通っていた────

 

「グロースは?」

 

「グロースは死にました」

 

即答、今まさに重要な戦力として扱われた魔族は既に亡き者にされていた。

 

「……」

 

これにはアウラも眉を顰める。

13年程前、グロースという魔族はとある村を滅ぼしていた。

そこをアウラが服従させる魔法で使役し、部下同然に使っていた。

 

戦斧のグロースという異名があった彼は魔族の"将軍"であった。

"将軍"というのは人間の役職でいうところの戦士に当たり

悠久の時の中で研ぎ澄まされた武術と、強大な魔力で強化した身体能力を以って人類を蹂躙する。

 

「一応聞くけど、あいつはかなり強かったわよね?」

 

「はい」

 

「それも貴方よりも」

 

「……はい、お恥ずかしながら」

 

"服従させる魔法"の支配下故に、多少はスットロい木偶の坊と言えなくもないが

魔法使いというのは近接戦闘においては戦士に対して圧倒的に不利な筈だ。

 

「相手は?」

 

「……一人、だけです」

 

「一人?まさかたった一人相手に負けたというの?」

 

信じられない、という呆れ顔のアウラに対して

神妙な顔をしたリュグナーが絞るよう声で言い分を申し立てる。

 

「相手は、飛行魔法を使っておりました……」

 

「だから何?そんな魔法一つで私達が不利になる訳ないじゃない」

 

魔族の専売特許であった飛行魔法を人類が手にして早20と余年。

しかし、生まれた時から歩くのと同レベルで飛ぶ事が可能な魔族と違い

人類は飛行魔法を十全に使いこなせるだけの域には達していない。

仮に空中戦になったとしてもその差は埋まらず、寧ろ未熟な人類では一手遅れる戦闘となるだろう。

 

「それに加え……や、奴は"ゾルトラーク"で我々を……」

 

"人を殺す魔法(ゾルトラーク)"

 

これもまた、人類が魔族から猿真似した魔法の一つだ。

元はかの腐敗の賢老クヴァールが編み出した史上初の貫通魔法だが、

クヴァール封印後にこの魔法の解析を続けた人類は

ものの数年で自分達の魔法体系に組み込んでしまった。

噂によると、とある一人の魔法使いがその解析に大きく貢献したとかしないとか。

 

時折りふらつき、意識が飛びそうになりながらも

リュグナーは報告を続ける。

 

「しかも、ただの"人を殺す魔法"ではありません。……魔族を殺す事に重点を置いて、改良の施された……」

「あれは最早、"人を殺す魔法"というよりもっと何か、別の……」

 

「ふぅーん」

 

これ以上リュグナーを責め立てても事態は変わらない、そう思い

アウラは玉座に座り直して思案する。

飛行魔法と"人を殺す魔法"を用いて魔族を殺戮していった、まだ見ぬ強者(つわもの)

恐らく人類でも上澄みの、最高峰の魔法使いなのだろう。

 

「そいつの名前は?」

 

「…………葬送のフリーレン。以前、勇者一行に居たエルフの魔法使いです」

 

「あぁ、あの時のエルフね」

 

なんだあいつか、という感じで

未知なる強者へ思いを馳せていたアウラの表情は一気につまらなそうなものに変わる。

洗練された魔力で、正確無比な攻撃魔法を放ち、不死の軍勢を蹴散らしていたエルフの魔法使い。

しかし魔力量は大した物ではなく、軍勢と戦わせ続ければ魔力切れを狙える程度。

以前は軍勢の隙間を縫うように攻撃魔法を喰らいこそしたが

それもアウラ自身が前線に出なければ防げるものである。

そして、よしんば"服従させる魔法"による魔力勝負になっても、まず負けない。

 

「(前に私を倒せなかったのが、そんなに悔しかったのかしら?)」

「……そういえば、"人を殺す魔法"の解析に貢献したのも、あいつだったかしらね」

 

きっとあれから修練を積んで、人類と己の対魔族への戦力を高める事に尽力したのだろう。

 

「まぁ、もし次戦う事になっても、その時は全力で叩き潰してやるわ。……首無しエルフなんて貴重でしょうし、防腐の魔法でも考えておこうかしら?」

 

端から結果の見えている戦いを妄想し、悦に浸るアウラであったが

ふとリュグナーに目を向けると、今にも倒れそうであった。

 

「……よくやったわリュグナー、後はいいわ。一応、城の周囲の警戒をリーニエや────」

 

「それでしたら先程、リーニエと……ドラートに、言いつけておきましたので……」

 

手が早い。

どうりで姿が見えないと思ったら既にリュグナーの指示で動いていたのか。

致命傷を負いながらも、次の一手を怠らないその姿勢。

魔力が全てで融通の利きにくい魔族の社会でも珍しい柔軟な対応にアウラも感服させられる。

 

「そう。……なら、貴方は怪我を治す事にでも専念しておきなさい」

 

「……御心遣い痛み入ります」

 

軽く礼をしたリュグナーは、部屋を出ていこうとする。

 

「……ちょっと待ちなさい」

 

それをアウラは呼び止めた。

 

「…………何か、ご要望でもお有りでしょうか?」

 

養生しろだの待てだのと、二転三転する主に辟易しながらも

リュグナーは黙って次の指示を待った。

 

 

 

 

「相変わらずタフな身体ね」

 

リュグナーの全身を睨め回しながらアウラはそれだけ言う。

 

「は……はぁ?」

 

意図の読めないその発言にリュグナーは困惑し、生返事をする。

 

「(普通の魔族なら……いえ、私でさえも、あんな怪我を負えばひと溜まりもないわね)」

 

並の魔族なら損傷した箇所から魔力が漏れ出てとうに絶命している怪我も

"血を操る魔法"を使えるリュグナーなら止血や欠損した部位の補填が利く。

 

「……もういいわ、呼び止めて悪かったわね」

 

ちょっとやそっとじゃ(くたば)らない、多少の無茶にも黙々と従う便利な配下。

仮に死んだとしても、悲しみの一つすら湧かないだろう。

 

「あ、そうそうリュグナー。ついでだけど、喉が渇いたから何か飲み物取ってきて」

 

「…………はっ、只今」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、この忠臣に対して

アウラはそれなりに厚い信頼を置いていた。




リュグナーの過去回想でフリーレンに負けたのは普通に考えるに80年前。
しかし、アニメだと飛行魔法を使ってる。

これをどう解釈すべきか、アニオリのミスなのかと迷ってましたが、

・リュグナーが以前フリーレンからフェルンと同じ魔法(恐らく改良ゾルトラーク)を受けた
・残影のツァルトとの戦闘時に未来フリーレンが解禁しない辺り、この頃のフリーレンはまだ通常ゾルトラークすら会得していないと思われる
・リュグナー回想でフリーレンが魔族の死体の山を造っていたが、小説を基準にするとアウラの配下の顔触れは80年前から今と大体同じ

これらの情報から
「伯爵領よりも後の時代に、リュグナー率いる魔族の部隊が、飛行魔法でゾルトラるフリーレンにボコられたのではないか?」
という結論に至り、補完も兼ねて書いてみました。


小説限定の戦斧のグロースはオマケで添えました。
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