アウラを人類と共存させてみた   作:やわら烏

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後日譚12.衛兵のおっさん②

翌朝。

衛兵の鎧を完全に脱ぎ去り、私服姿になったヴェヒターが三人の前に現れた。

 

()()がそうか……まったく、面倒事はごめんなんだが」

 

馬と分離された状態で、屋内に格納されているラオベンの馬車を眺めながらヴェヒターは昨日の会話を思い返す。

 

 

『明日はヴェヒターにあの馬車の修理を頼みたくてね』

 

『はぁ?俺は衛兵であって馬車の修理業者じゃないぞ』

 

『あの馬車は魔道具だから普通の所じゃ駄目なんだよ。そういうの得意でしょ?……どうせ門の前でずっと待ち惚けなんだし、それにもう警戒網を張る必要もなくなったんだから』

 

『そんな物そこらの魔道具店でやって貰えば済むだろう』

 

『出来ないの?……出来ないんだね。出来ないならいいや、そこらの魔道具店に──』

 

『……おい、出来ないとは一言も言ってないだろう』

 

 

半ば誘導されるようにして承諾してしまった事を悔やみながらヴェヒターは毒を吐く。

 

「フリーレン、あんたは本当に若者をコキ使うのが上手い奴だな」

 

「失礼だな、ちゃんと信頼している証だよ。ヴェヒターの腕は確かだというね」

 

「……年寄りってのは本当にまぁ人を煽てるのが上手なこった……分かったよ直してやる。だが、すぐには終わらんぞ?問題箇所を隈なく探す所から最終点検まで含めると、最低一週間は必要だ」

 

「元よりそのくらいは滞在する予定だ。どんなに時間が掛かってもいいから、簡単に壊れないくらい念入りに頼むよ」

 

「当たり前だ」

 

そう言うとヴェヒターは明かりを灯す魔道具と細長い杖を携えて荷台の下に潜り込んだ。

 

「どう、直せそう?」

 

「もう少しやってみなけりゃ分からんな……部品の損傷による物理的なものなのか、術式の摩耗による魔法的な要因なのかをじっくり調べない事にはな」

 

片手に持った明かりを灯す魔道具で荷台の裏側を照らしながら、もう片方の細長い杖で照らした場所を小突いていく。

突いていく度に杖先は僅かな火花を発し、馬車に刻まれた術式の模様が鮮明に浮かび上がる。

 

「すっごい本格的だ……」

 

「えぇ、そうね」

 

その様子を見ながらラオベンは感嘆し、アウラも同調した。

荷台に潜って何やら作業するという点だけなら彼女が以前にやっていた事と同じだが

専門的な修理器具を用いながら繊細な作業をこなす姿からは、付け焼き刃の応急処置とは全く異なる本職特有の迫力がある。

 

そうして修理が始まって凡そ数分。

 

「……それじゃ私は城代の下へ行かなきゃいけないから、そろそろお暇するね。二人のこと宜しく」

 

修理の様子をずっと眺めていたフリーレンは、タイミングの良いと思った所で不意にそう告げた。

 

「なに……?おいおい、俺はガキの御守りまでするつもりはないぞ」

 

これには流石のヴェヒターも作業の手を止めて荷台から這い出してくる。

 

「そうは言っても二人とも修理の様子を見たそうにしてたからさ。大丈夫だよ、二人ともそんなに手はかからないから。それに飽きたら街中を散策するだろうし」

 

そしてヴェヒターの返答を待つ事なく、フリーレンはそさくさと入り口から出て行った。

 

「おい……!ったく、本当に調子のいいババアだ」

 

既に人混みの中に消えていたが為に、入り口まで飛び出したヴェヒターは追うのを諦める。

 

「えっへへ〜……まぁその、宜しくお願いしますゥ〜」

 

「……はぁ、不法入国する様な小娘が『手がかからない』、か」

 

振り返ると媚びるような下手くそな笑顔をしていたラオベンに対して

苛つき半分、諦め半分の溜め息を吐き出して作業に戻るヴェヒター。

 

「……私も見ててもいい?」

 

「勝手にしろ、ただし邪魔だけはするんじゃないぞ」

 

近づいたアウラに対しても同じように無愛想に返して、馬車の修理に専念した。

 

「全く……人の休日を何だと思ってるんだ」

 

ブツブツと不満を漏らしながらも、精緻さが問われる作業の手は一切抜かず、指先まで神経を張り巡らしている。

 

「……」

 

やがて、作業に没頭する内にそんな不平不満も無くなっていく。

代わりに、目の前の魔道具に関する感想を呟くようになった。

 

「それにしても随分な年代物……というよりは最早骨董品だなこりゃ。術式の配列も内部構造も現代の魔道具とは似ても似つかねぇ。いつの時代……それも何処で製作された物だ?……術式を搭載する場所にしてもそうだ。日常的に使うにしては明らかに不要な組み方……馬車本体が損傷しても魔法だけは最後まで作動する様な位置……何か実戦的な状況を想定してたのか……?」

 

馬車の古さ、そして日用魔道具とは掛け離れた異質な構造に感嘆しながら考察するヴェヒターに対してラオベンは横から話し掛ける。

 

「確かフリーレンの話だと、"統一王朝"……?とかいうのの少し後の時代の物らしいけど。あと私の故郷の南側諸国の、それも戦争で使われたやつだってさ」

 

「統一王朝ォ!?……なるほどな、道理で古い訳だ。少なくとも千年以上は昔の代物だってのに、随分と状態が良い。…………仮にこれを博物館なんかに寄付したら、きっと多額の──」

 

「言っとくけど売らないよ?爺ちゃんの形見でもあるし」

 

「……分かった分かった、野暮な事言って悪かったよ。それと、形見だってんならもっと大切に扱ってやれよ?歴史的な価値抜きに、良い魔道具ってのは丁寧に使えば子々孫々に遺していけるものだからな」

 

衛兵としての激務の原因であった少女への嫌悪の情はすっかりなくなり、直すべき魔道具の持ち主への柔らかな口調である。

良くも悪くも仕事人間なヴェヒターは、時折りラオベンが投げ掛けてくる質問にも

懇切丁寧に返すようになっていた。

 

「…………ヴェヒター、だったかしら?」

 

そして、その会話の輪にアウラも加わる。

魔法術式の動作確認から、馬車本体の不具合箇所の点検に移り

木槌で叩いたり手を奥に突っ込んで軸棒を揺らしていたヴェヒターは

素性の知れないフードを被った少女に対しても快く返答する。

 

「なんだ?」

 

「……こういう魔道具とかの仕組みに、ずいぶん詳しいのね」

 

「あぁ、ウチの実家が魔道具店を営んでるんだ。……俺の親父も祖父も、そのまた親父も皆こういう物をバラすのが好きだったから、俺もガキの頃から自然と触れてるもんでな」

 

「ふぅん……兵士をやりながら魔道具の修理も仕事にしてるの?」

 

「いや、本職は魔法使いと衛兵の二足草鞋だ。俺は家業を継がなかったから、あくまで趣味の範疇に過ぎない……とはいえ、こういう仕事への憧れは未だに心の何処かに残ってるがな」

 

プライベートな話も包み隠さず話し始めた彼の顔は当初の仏頂面からだいぶ崩れて、気のいい壮年の男の表情となっていた。

 

「……フリーレンとは昔からの知り合い?」

 

「昔から……というよりは二級に上がった時の試験官だったのが最初の出会いだったな。それから一級になって実質的には同僚となったが、あいつの方が歳でも魔法使いとしてのキャリアでも目上だから俺もなるべくは下手に出る様にはしている」

 

「へぇー、そうなのねぇ……ん?『同僚』ってことはつまりフリーレンは……?」

 

アウラの疑問に対してヴェヒターは作業の手を少し緩め、顔をこちらに向けて返答した。

 

 

 

「つまりも何も、奴も"一級魔法使い"だ…………聞かされていなかったのか?」

 

「えッ!ちょっと待ってそれ初耳!!」

 

横から急でドデカい声を上げたラオベンが会話に乱入し、ヴェヒターは思わず耳を塞ぐ。

 

「……聖都で仕事をしてるとは聞いてたけど……しかも一級魔法使いだなんて、凄いじゃん!!」

 

ラオベンは大袈裟に驚いたのも無理はないのだろう。

一級魔法使いといえば、大陸魔法協会の規定でいう所の最高位にあたり

つまりこの世界の魔法使いの頂点近くに位置する。

未だ魔法使いとしての資格すら取得していない彼女からすれば雲の上のような存在である。

 

 

「…………アウラ、ちょっと」

 

「ん、なに?」

 

そして、アウラをちょいちょいと手招きで近づけさせ、その耳元で小声で囁く。

 

「"一級魔法使い"って何?」

 

「…………知らずにおどろいたの?」

 

「だって知らないって素直に言ったら恥かきそうな雰囲気だったから……」

 

……幾ら偉い役職といえど、肝心の前知識が無くてはその偉大さも伝わらない。

戦乱の火が絶えない南側諸国出身でその手の情報に疎く、魔法史の勉強もろくすっぽやっていないラオベンには

まるでその凄さが分からなかった。

そんな知ったかぶりをした彼女に対してアウラは呆れながらも淡々と答える。

 

「そうね……一級魔法使いっていえば、この大陸で最もすぐれた魔法使い達の事よ。本にそう書いてあったわ」

 

「へぇ……まぁ、『一級』っていうからには一番上の階級なんだろうけどさ…………なんかアウラに知識で負けたのは癪だけど、ありがとう」

 

「今なんか……いえいいわ。私ももうそのくらいじゃ怒らないもの」

 

「(ありゃ……?てっきりいつもみたいに怒るのかと思ったのに……ま、いっか)」

 

一言余計な軽口に怒りもせずに流された事に拍子抜けしつつも

一級魔法使いの何たるかを知ったラオベンは

先程飛び出していったツインテールのエルフの姿を思い出しながら

その経歴を脳内で幾度も思い返していた。

 

「フリーレンって本当にお偉いさんなんだね……聖都で仕事してて、一級魔法使いで、しかも勇者一行の一人だってんだから」

 

「勇者一行?あぁ、確かそんなんだったなあいつ。……まぁエルフだから長生きすれば色々と経験してるんだろ。……あのゼーリエもエルフ故に、大昔は偉大な弟子を何人かとってたらしいしな」

 

「えっ、ゼーリエって人もエルフなの?」

 

「それも知らなかったのか……あいつ、ガキにちゃんと一般教養くらい教えておけよ……」

 

魔法使いとしての一般的な知識に欠けるラオベンにとって

ヴェヒターから聞かされる情報はどれも目新しいものばかりである。

旅の中でフリーレンもそれなりに色々な事を懇切丁寧に教えてくれてはいたが

大陸魔法協会についての事は殆ど聞いた事がなかった。

 

「(エルフって珍しい存在なのかと思ってたけど……もしかして魔法協会には沢山いるのかな?)」

 

「言っておくが協会に所属しているエルフはフリーレンとゼーリエの二人だけだぞ」

 

「あっ……流石に沢山はいないんだね……」

 

表情に出ていたのか、ラオベンの抱いていた疑問を読み取ったヴェヒターはすぐに否定する。

 

「当然だ。言動は老練で口論も達者、その癖身体は若くエネルギッシュだから人を(てい)よくコキ使う……あんな不老長寿な種族がそうわんさか居てたまるか」

 

その返答には、彼がフリーレンやゼーリエにかなり振り回されてきたという気苦労も垣間見える。

 

 

それからも三人は他愛のない会話を続けていた。

 

「あの地面を盛り上げて攻撃する魔法って何?……岩が好きだったりするの?」

 

「"大地を操る魔法(バルグラント)"か。あれは先祖代々うちの家系に伝わってるだけだ、別に好きとかじゃない。……便利だとは常々思ってるがな」

 

「城門のあの魔法は?」

 

「"命懸けで宝物庫の扉を閉じる魔法"のことか?アレは実家でよく目にしてただけだ」

 

ラオベンはヴェヒターが使っていた魔法に関すること。

 

「……魔道具ってどれもこうやって直したりするのかしら?」

 

「物によるな。直せる範囲内の物は直すし、イチから買い直した方が早い物は諦める。……この馬車みたいな古代の遺物は市販の店じゃ手に負えないだろうがな」

 

「ふぅん……作るのは?」

 

「作るのに関しては素材と職人の腕次第だ。高度な魔道具にはそれなりに希少な材料が必要だし、組み込む魔法術式をそっくり転写してから刻んでいくのもかなり忍耐力がいる。……興味があるのか?」

 

「まぁ……あるのかもね。昔から好きだけど、バラしてるところは初めて見るから」

 

アウラは魔道具に関すること。

各々が興味のある質問を魔法学校の生徒の様に口にする。

そんな質問の数々を修理の作業中だろうがおかまいなしに投げ掛けられるヴェヒターであるが、

煙たがる事なく気前良く答えてくれ、その内彼の方からも質問を返すようになっていた。

 

 

「……ただいま。どう、捗ってる?」

 

「あっ、フリーレンおかえり。もう終わったの?」

 

「うん、やっぱりここの城代は話が分かるから要点だけ纏めてトントン拍子に事が終わって助かるよ」

 

やがて、城代の下へ行っていたフリーレンも戻ってきた。

フリーレンは部屋の中を見回し、相変わらず馬車の修理にあたるヴェヒターと

先程よりも彼に近い距離にしゃがんでいる二人を見た。

 

「……なんだか、行く前よりも仲良くなってない?」

 

「気のせいだろ。俺は何も変わってないぞ」

 

それまで朗らかな顔をしていたヴェヒターだが、フリーレンを見るなり元の顰めっ面に戻って言う。

 

「ヴェヒターってほんとに魔道具にくわしいのよ」

 

「うん、得意な魔法に関しても色々と教えて貰っちゃったよ!」

 

一方の二人は彼から聞いた多くの話を、まるで学校で先生から教わった話を帰ってすぐに親に披露する子供のように、弾むような声で話した。

 

「なんだ仲良くなってるじゃん」

 

「…………いつも鎧に包まれて堅苦しい仕事ばかりだと流石の俺も気が滅入る。こうやってガキ共の質問に付き合ってやるのも気分転換としては悪くない」

 

観念したかの様に、顰めっ面を綻ばせたヴェヒターは苦笑しながら言う。

 

「さぁ、保護者のお出迎えだ。お前達は街の見学にでも行ってこい」

 

「えぇー、まだ居てもいいじゃん」

 

「問題箇所の確認作業の第一段階は終わった。俺は今から魔法術式を紙に転写する作業に移る。……薬剤やら何やら使って吸うと身体に悪いから、暫くは見学もなしだ」

 

そう言って大ぶりな石板と養生シート、薄手の紙を幾枚か持ってきて、部屋から出る様に促した。

 

「だってさ、行くよ二人共」

 

「もうちょい見たかったんだけどなぁ」

 

「あとで何やったのか教えてもらえばいいじゃない……ほら」

 

「チェッ……分かったよ」

 

最後まで渋るラオベンを引っ張るように、三人には部屋から出ていった。

 

 

 

 

「……話してみたら結構気のいいおっさんだったね」

 

「でしょ?あいつは意外と面倒見はいいから。……あと、まさかとは思うけど『おっさん』って──」

 

「本人には直接言ってません〜〜」

 

宿の方に戻りながらフリーレンとラオベンは他愛のない会話を続ける。

 

「…………そういえばフリーレン。あなたが"一級魔法使い"って聞いたんだけど」

 

アウラも会話に加わり、先程ヴェヒターから聞いた情報が本当かどうかをフリーレンに確認してきた。

 

「まぁそうだね。それが?」

 

「なんで教えてくれなかったのよ」

 

「聞かれなかったからね。それに話して自慢するようなもんでもないから」

 

本当に、今まで聞かれなかったから言わなかっただけ、という雰囲気からして

別に意図して隠していたという訳ではないのだろう。

 

「…………」

 

「どうしたの?」

 

「……別に、なんでもないわ」

 

「そんな重要そうな情報は聞かれなくてももっと早くに教えて欲しかった」、という言い分をジト目で訴えたアウラは、ひと呼吸ほど間を置いて質問に戻った。

 

「一級ってなにをやるの?」

 

「色々だね。普段は魔法使いとしての私的な活動や探究、ゼーリエから頼まれたら仕事をこなしたり、一級試験の試験官を引き受けたりもする。……私はあまり頼まれる事はないけど、やり甲斐はあるかもね」

 

「へぇ……他には?」

 

「青色で統一された服を着させられるくらいかな。……別々に洗濯しないと色移りして面倒だから、呼ばれた時以外着ないけど」

 

魔法使いの頂点の証である称号を誇るでもなく、仕事上の役職程度のものという様に淡々と話す。

 

「もっと自慢すればいいのに」

 

「うん、アウラの言う通り、『むふー、私は一級魔法使いだよ』ってアピールすれば周りももっと恭しくするだろうから勿体ないよ」

 

「そうやって役職や偉さをふれ回るのはお勧めしないよ、変で嫌な奴と思われちゃうからね。貴族や王族なんかも身なりを着飾って見た目でアピールこそしても、『私は偉いんです』って口で説明する人は少ないでしょ?」

 

「「うーん……」」

 

社交場での立ち振る舞いを噛み砕いて説明するも、ラオベンやアウラはあまり納得いっていない様子だ。

特にアウラなどは著名な魔族である都合上、七崩賢や大魔族などの肩書きを名乗る癖があった為、慎ましさなどは無縁であった。

 

「……他には、何か聞いたりした?」

 

淀んだ雰囲気になってきていた為、空気を切り替えようと今度はフリーレンから話題を持ち掛けた。

 

「んー、そうねぇ…………あぁ、魔道具を直したり、イチから作ったりとか、そんな話を…………よく考えてみれば、ああやってバラバラにして、中身を見るような事なんて今までぜんぜん無かったわ」

 

魔法に関連した物品……主に魔剣や魔道具などに強い関心を示す習性を持つ魔族であるが、基本的にその取得方法は人類からの奪略や窃盗が主である。

既製品しか目にしないアウラにとって、人類の生活圏内で魔道具が正しい手順を踏んでバラされたり、修繕される場面というのは非常に新鮮なものに映ったのだろう。

 

「へぇ……。……!そうだ、ねぇアウラ」

 

 

絶好の機会。

これはアウラの800年の人生の中で、新鮮且つ情操を育み得る絶好の機会と思ったフリーレンはある提案をした。

 

「……じゃあ、明日この街の図書館にでも行ってみようか」

 

「図書館?……っていうと、あの本がタダで置いてあるところかしら?」

 

「そうそう。ここは物流も人の往来も盛んだから、街の中央辺りの大きな魔道具店に付設してるんだよ。ああいう所には魔道具の図解本も置いてある。……タダと言っても、借りたら返さないと駄目だからね?」

 

図書館の場所と、利用法。そして、利用する上での基本とも言える注意事項。

粗相がないようにと逐一レクチャーする。

 

「そうなの?なら気を付けるわ」

 

それらを聞かされたアウラは、しっかり己の頭に叩き込む。

そして、

 

「ですって、返さないと駄目らしいわよ?…………あとくすねたりもしちゃ」

 

徐にラオベンの方を見て、受け売りの注意喚起をする。

 

「ちょっと!失礼だなぁ!流石に公共施設から盗ったり…………いや、私だって、もうそのくらいじゃ怒らないもんね〜」

 

べーっと軽く舌を出したラオベンは、アウラが本気で言ってる訳でないのも、さっきの仕返しという事も理解しつつ悪戯っぽく笑った。

 

「しかし図書館かぁ。……よし!私も行ってみよっと!魔法史に関わる話されても、恥かかないくらいの勉強はしときたいしね」

 

「そうね、私も魔道具以外にも…………魔法史で色々と調べてみたい事があったから」

 

意気込み胸を張るラオベンに、アウラも同調しながらそう返す。

 

 

 

 

「明日が待ち遠しいわね」

 

今まで知らずにいた世界への知見を深められる事への期待に、胸を弾ませながら。

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