久々に続きを投稿できましたよレヴォルテ様!
褒めて────
『久しぶりだねアウラ、あれから1ヶ月か』
私の目の前にフリーレンがいる。
──どうしてあなたがここにいるの?
『ずっとお前を探していたからだよ』
彼女の手には、見覚えのある天秤が掲げられていた。
──なんであなたがその天秤を持ってるの?
『なんでって、お前を殺すためだ』
『──アウラ、自害しろ』
フリーレンがそう言うと同時に
いつの間にか私の手に握られていた剣が独りでに動き
首筋に当てがわれる。
──やめ……やめて
私の意思に反して、どんどん剣は強く押し当てられる。
──ありえない、この、私が
刃が強引に首に沈み込み、肉を切り裂く感触と激痛が──
「──────ヒゥッ!!!」
そこでアウラは目が覚めた。
「……どうしたのアルムちゃん」
隣のベッドで寝ていたヒルフェもアウラの悲鳴で目を覚ます。
「なんでもない」
「……怖い夢でも見た?」
「なんでもないってば」
「……一緒に寝る?」
「…………」
アウラは何も言わずにヒルフェのベッドに潜り込む。
震えている彼女が眠りに落ちるまで、ヒルフェはずっと頭を撫で続けた。
◇
「(もうこの人間達の家で生活して1ヶ月近くが経つわね)」
翌日、アウラは3人とテーブルを囲んで食事をとる。
「(畑仕事は相変わらず死ぬほどつまらないし)」
「あっ、おいアルム!俺に野菜押し付けるなよ!」
「ユンゲ、私の分まで食べなさい」
「いらねーんだって!」
「(ユンゲ……クソガキは五月蝿いし)」
「アルムちゃん、ちゃんと食べないと大きくなれないぞ?」
「……じゃあ食べます」
「父さんの言う事は聞くのかよ……」
「(人間を食べてないからか、あまり調子が乗らないし)」
「昨日はよく眠れた?」
「えぇ、"ありがとう"ヒルフェ」
「私も小さい頃は1人で寝るの怖かったから、いつでも頼ってね!」
「("ありがとう"、"ごめんなさい"……人間がよく口走る
「(人間3人と私生活を共にするのは、正直言ってしんどいし疲れる)」
「(他人の些細な事を気遣わなきゃいけないし、単純な力の序列関係が当て嵌まらないし)」
「(自分を抑圧して生きてくのって、全然楽しくないわ)」
アウラは、この1ヶ月でヒルフェ一家の一員として馴染んでいたが
それはあくまで表向きの振る舞いのみ。
内心は、魔族の社会とは似ても似つかない生活サイクルにだいぶ精神的に参っていた。
「(もしかして私、このままずーっとこうして生きていくのかしら)」
「(この3人が年老いて弱っても、殺す訳にはいかない)」
「(だってここを出てったらいよいよ行く宛てがなくなる)」
幾ら人間を欺く進化をした魔物といえど、人間を騙した果てにあるのは捕食か殺人。
その終着点を迎えず、延々と欺き続け、生活を共にする事に秀でている訳ではない。
「(毎日食卓に並ぶ、変わり映えのない貧相なメニューを突っついて)」
「(畑仕事でヘトヘトになって、そうでない時はヒルフェと野草集めて)」
「(暇な時は子供の遊び相手させられて)」
「(そんな生活がずっと────)」
終わりの見えない、肌に合わない日常生活にアウラは辟易しており────
コンコン
誰かが玄関の扉を叩く音がした。
「おや、こんな朝早くに一体誰かな」
父親は席を立ち、玄関の方へと向かう。
「誰なんだろうねー、もしかして冒険者の人かな?」
「……私もちょっと見てくるわ」
続いてアウラも席を立ち、廊下に顔を少し出す形で遠巻きに玄関の方を覗く。
「(こんな僻地に人がそうそう来る筈はないわ……)」
「(冒険者?それとも盗賊?)」
「(身体中が嫌ってほどざわつく……こういう時は大抵良くない事か起こる)」
500と余年の歳月で磨き抜かれた危機回避本能。
アウラは、直感的に妙な胸騒ぎがしたのだ。
「はい、どちら様でしょうか?」
父親は扉を開けて、来訪者と顔を合わせる。
「朝早くからすまないが、少し尋ねたい事が」
アウラの視線の先に、見覚えのある甲冑姿が映った。
「(伯爵領の衛兵……ッ!!)」
「──1ヶ月程前──"ある魔族"が──探して──」
「──その人相書きが──、とても危険な魔族で──」
途切れ途切れにしか聴こえないが、明らかにアウラの事を探してあるのは明白だ。
「うーむ……」
衛兵の見せている人相書きを見ながら、低く唸る父親。
「(マズい……私を探しているわ……!)」
「(何故今頃!?捜索の手がここまで及んだっていうの……ッ!?)」
「(危険な魔族だなんてバラされたら、あの男は間違いなく私の事を喋る──ッ!)」
「アルムどうした?」
「……なんでもないわ」
「でもすごい顔が真っ青だよ?」
アウラの動揺ぶりはユンゲとヒルフェから見ても分かる程で、
その動揺を見せまいとするあまり更に顔色は悪くなる。
「……ちょっと気分悪いからトイレに行ってくるわ」
アウラは忍び足で裏口の方へ行く。
「……気分悪そうならいつでも呼んでね!」
「……戻ってくるまでお前の食事ちゃんと残しといてやるからなー」
背後から心配の声を掛ける2人には振り返らず
アウラは裏口の扉を閉め、
そして全力で森の方へ走っていった。
アウラの退屈でつまらなく、そして平穏な日常は、何の前触れもなく終わりを告げた。
◇
「(逃げないと……逃げないと……ッ!)」
森の中を駆け続ける。
「(でも何処へ?そんなの分からない、とにかく逃げないと)」
「────ッあダッ!?」
突然、木の陰から飛び出してきた、"棒のようなもの"に足が引っ掛かったアウラは盛大にコケる。
「──ッ痛っつぅ……!」
絡れた足を庇いながら、地面から起き上がろうとする。
「ここに居たのか」
そんな彼女の背後から、
「────ッ!!!!」
恐る恐る、後ろへ振り返る。
「1ヶ月ぶりだね、アウラ」
そこに立っていたのは、1ヶ月前に会ったばかりの魔族殺しのエルフの魔法使いであった。
「驚いた、大魔族様がこんな辺鄙な所に
「──あ」
「『どこぞの貴族がお忍びで城下町に来た』って例えるにしては……随分と魔力制限が板についてるね」
「──あ……あぁ……ッ」
「地位も財産も捨てて身を落とす趣味にでも目覚めたの?アウラ」
いつか見た悪夢が現実のものとなり、
目を見開いて身じろぎ一つ出来ないアウラに対して、フリーレンは一方的に話し掛ける。
柔らかい口調に反し、目は笑っていない。
「──お……」
「……ん、なにか言った?」
「──お願いフリーレン!!私を見逃して!!」
「……?」
「わ……私はこの1ヶ月、人間たちと平和に暮らしていたわ!!」
「………………あぁー、はいはい、
「私は帰って、人間達の畑仕事の手伝いをしないといけないのッ!!」
「それは偉いね」
「少し離れた場所に民家がある!そこに行って聞いてくるといいわ!本当よッ!?」
「わかったわかった、すごいすごい」
必死の形相で弁明するアウラには目も合わせないフリーレン。
アウラが一通り捲し立てるのを見計らって、ひと呼吸した後
フリーレンは口を開く。
「──で、今の"鳴き声"は一体誰から真似たんだ?」
「──えっ、な……鳴き声……?」
「喋る内容から察するに平和主義の善良な村人か……あっ、恐怖に泣き叫ぶ幼子って線もありそうだね」
「────ち、ちがう」
「この先の民家に行ったら惨殺死体でもあるの?お前が殺した何の罪もない人間の遺体が」
「違うッ!わ、私はこの1ヶ月慎ましく──ッ」
「黙れ、何も違わないだろ。お前達魔族が口にするのは鳴き声に等しい"声真似"だ」
「人類が口にした単語を意味も、そこに込められた気持ちも理解せず、『こう言うと上手くいく』から口走るだけの条件反射でしかない」
「そんなものはオウムだって出来るし、何なら場面場面で耳障りの良い言葉を使い分けてくる分タチが悪い」
どれだけ媚びた表情をしようとも
どれだけ都合の良い言葉を的確に喋ろうとも
「魔族が口にした」というその一点だけで、フリーレンにとっては酷く耳障りの悪い雑音としてしか処理されない。
「じゃあねアウラ。500年間人類に迷惑を掛けるだけの、お前の無意味で有害な魔族生もこれで終わりだ」
涙を流して歯をカチカチ鳴らすアウラの恐怖に満ちた顔を、フリーレンは心底どうでも良さげに見つめる。
「(嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ)」
「(終わりたくない。こ、こんな風に私の人生が)」
「(──死にたくない)」
アウラの頭部へ照準を合わせた杖の先へ
確実に死に至らしめる光が収束していき……
「フリーレン殿!こちらにいらっしゃいましたか!」
「────ッ!?そいつはもしや、断頭台のアウラですか!?」
その時、森の向こうから先ほど訪問していた衛兵が走ってきた。
「……うん。おかしな揺らぎ方をしてる魔力源が逃げ出したから先回りしたらコイツがいたんだ」
「なんとッ!……となると、あの家主はそいつを庇って……いや、脅されていたというのか……ッ!」
「……ん?今なんて言ったの?」
妙な事を聞いたフリーレンの興味は、アウラの抹殺から
衛兵の話を聞く事へと移った。
衛兵の方へ近寄り、何があったのかを聞き取りを始めるフリーレン。
当然、アウラへ向けられた杖先の攻撃魔法は未だに光り輝いている。
「実は、この先の民家で──」
「──という訳でして、一応中を拝見した所、おかしな点は全く見受けられず……」
「子供の1人は手洗いに行っているとかどうとか」
「……なるほどね」
一通りの話を聞き終えたフリーレンは、再びアウラへ向き直る。
「……な、なんの話をしてたの……?」
「……やめた」
「………………え?」
撃ち放たれようとしていた魔力を霧散させ、フリーレンは杖先を降ろした。
「お前をこの場で殺すのはやめると言ったんだ、アウラ」
あと一歩まで迫っていた死の恐怖で、未だに怯えているアウラに
フリーレンは言い放つ。
「お前への沙汰はグラナト伯爵に任せるよ」
一般次話投稿魔法は
ネット小説初心者にとっては比較的難しい魔法だから
反射神経で無意識に話を書けるほどの経験は積めていないんだ
どうしてもその対処はたった一瞬、ほんの誤差のようでエタり一歩手前の時間だけれども
思考する分だけ投稿が遅れることになる