「ハーメルンならあるかも?」
と探したけどなかったから
カッとなって書いた。
ふと、空を見上げた。
普段であれば綺麗な青に染まっているはずの空は地上からの黒煙で台無しで。
地上に目をやれば、見渡す限りの瓦礫、瓦礫、瓦礫。
消火する人間がいないからか、未だに燃え続けている建物の残骸に、所々で見える赤かったり黒かったりするのは……まぁ、ヒトのなれの果てかな?
ほとんどの民衆は避難などする暇なんかなかっただろうし、避難誘導をしなきゃならん側は指揮系統がガッタガタで役に立たなかったから犠牲者は少なくなさそうだな。
少し離れた場所にいるからか、もう誰もいないからかは知らないが、悲鳴やらうめき声やらが聞こえないのは大変いいことだ。
まぁ、率直に言って地獄以外の何物でもない景色な訳だけど……これがミッドチルダの首都クラナガンの終焉とは笑えるね。
さて、と。
「これが友人一同を裏切り続けて、母さんの仇となる胡散臭い連中と協力してまで得た結果らしいけど……いまの気持ちはどう父さん?」
「…………どうだろうね」
雑に伸ばされた艶を失った薄汚れた金髪に、濃い疲れを顔に残した父の声は、この状況が心底どうでもよさそうだった。
「ん?」
ふと聞こえた音に空を見上げると、黒煙を割って巨大な戦艦が姿を見せた。
聖王のゆりかごやん。結局、撃墜されなかったのか。
アルカンシェル搭載艦だって結構いたはずなんだけどなぁ……古代ベルカのロストロギアこっわ。
ゆりかごは瓦礫だらけになったクラナガンの上空を悠々と進み、そのまま飛び去った。
此処以外の管理世界でも破壊しに行ったのだろうか?まぁ、どうでもいいことではあるが。
「……」
「……」
「……………」
「……………」
「………………………………」
「………………………………僕を、恨んでいるかい?」
少しだけ長い沈黙のあと、絞り出すように俺に尋ねてきた。
「特に恨んだりはしないよ。まぁ、俺が
あぁ、でも。
「シオンって名前にしたことについては今でも「マジかよ」って思わなくはないけど」
名前の響きはすごい好きなんだけどね。いかんせん花言葉がなぁ。
専門は考古学とはいえ、優秀な学者で無限書庫の司書でもあった父は母の出身世界の文化だってある程度は知っているはずで、そんな父がシオンの花言葉を知らないはずはない。
「…………それは、すまないね」
「いいよ、シオンって名前の響きは好きだし。それに、よくよく考えたらシオンって名前以外は父さん思いつかなかったでしょ?」
母と揃えて花から名を貰うなら花言葉まで吟味するだろうし。それを考えたらシオンって名前は父の心情からしたらぴったりだっただろう。
「シオンは、どうして僕を恨まないんだい?」
「というと?」
「シオンからしたら、僕は良い父親ではなかっただろう?僕は法どころか倫理からも外れた犯罪者でしかない。シオンは愛から望まれた存在ではなく……
―――――それなのに、僕をどうして恨まないんだい?
そんなこと言われてもなぁ。
まぁ、確かに普通の子供ならこんなことを父親から言われたら「なら、どうして自分を作った!?」って恨んで憎んだかもしれない。
そういった意味では、俺という存在はちょっとどころか、かなり異質だろう。
「ほとんど覚えてないとはいえ、
精神的にはともかく、肉体的には幼い自分を連れての逃亡生活は決して楽ではなかっただろうに、
自分だってまだまだ子供と呼ばれる年齢だというにもかかわらず、父親として俺に接してくれていた。
ついでに前世の話をしたときは、そんなこともあるんだねって特に気にせず受け入れた人だし。
冷静に考えたら、俺より父さんの方が色々とおかしくね?ミッドは幼い頃から就業出来るから早熟な子が多いって聞いたことはあるけど、それにしてもだよ。
いや、おかしくなかったら俺を作ったりしてないのかも知れないが。
それでも、俺はこの人を父と呼ぶことに抵抗はなかったし、諸々の事情を知った上で父と呼んでいた。
「俺を作った理由とかを聞いて同情しなかった訳じゃないけど。一緒に過ごしてくれて、苦労しながら育ててくれたんだ。そんな父親を恨むわけないだろう」
「……………そっか」
「見た目は10歳くらい、中身は30歳オーバー。身体に精神が引っ張られてる実年齢は4歳のちぐはぐ息子だけどね」
「それでも、シオンは僕の………僕と
あぁ、もう。
なんでこの人は、こんな異質な俺に対しても真っすぐに色々言ってくれるかね。
本当にこの人の息子でよかった。
「ありがとう。父さん」
俺の言葉に嬉しそうな顔をした父はよいしょっと立ち上がり俺に向き合うと……。
「それじゃ、お別れだシオン」
さらっと、とんでもないことを言い出した。
いやいや、何で今の流れからそんな話になるのよ?親といえ、頭良い人の思考はマジでわからないんだけど。
無言で遠い空を指で指し示したので、そちらを見てみるととすげぇ遠くに人のような姿が見えた。
数は……2人かな?真っ直ぐに此処を目指してる気がする。
「空を飛んで来てるってことは、生き残った管理局の空戦魔導師とか?」
豆粒にしか見えないくらい遠いのに、父さんも相手もよく索敵出来るよね。
「シオンだってきちんと魔法を使っていれば気付いたはずだよ?僕がいるからってちょっと気を抜きすぎかな」
そんなことを言われても、補助魔法は父さんにマジで勝てる気がしないんだけど。
「最後に会ったのが数年前だけど、僕の見間違えじゃなければ多分クロノとフェイトかな」
いまの階級は提督と執務官だったはずだけどって、それってどちゃくそエリートじゃん。
「………………父さんは死ぬ気なの?」
「そんな気はないけど、いまの僕はとびっきりの犯罪者だからね。スカリエッティがやり過ぎてなければシオンだけならあの2人に頼めたと思うけど、クラナガンだけじゃなくて本局も壊しちゃったみたいだからね」
流石に2人とも許してはくれなさそうだからなぁ、って呑気に言ってるけど。どこまで本気で言ってるんだろうか。
「クロノとフェイトって、前に話してくれた父さんと母さんの友達だった人達?」
「そうだよ。僕が
懐かしそうな、それでいて嬉しそうな顔なことで。
「メメント・モリにその事件のデータも入ってるから、気になったなら後で検索して読んでみるといいよ」
あー、メメント・モリって父さんが無限書庫の司書やってたときにひたすら色々なデータをぶち込んで作ったって聞いてたけど、そういうデータも入れてあるんだ。
「よし、じゃあ2人が来る前にシオンを逃そうかな」
懐から古臭い感じのする
俺の足元にミッド式ともベルカ式とも違う、初めて見る魔法陣が父さんの魔力光で展開された。
「これは本当に珍しいタイプのロストロギアでね。一度だけ対象者1人を転移させるってシンプルな効果なんだけど、何でも対象者が望んだ場所に世界も時間さえ超えて転移させられるらしいよ」
それ…………父さんが使えば母さんが死ぬ前に転移出来るはずでは。
「シオンの言いたいことはわかるけどね、僕は、いいんだ」
ーーーーーだって、僕が望んだ場所に転移してしまえばシオンがいなくなってしまうからね。
「父さんは、本当にそれでいいの?」
「僕はシオンの父親だよ?」
あぁ、父はもう覚悟をしているのか。
そんな顔を見てしまったら、俺には何も言えないじゃん。
「シオン、きちんとご飯は食べるんだよ?」
「シオンは僕に似たのか、何かに集中すると食事を忘れるからね」
「しっかり睡眠は取って、寝る前にはきちんと歯も磨くんだよ?」
「誰に似たのか、シオンは人に頼るのが下手くそだけど」
「困った時は、誰かに頼っていいし」
「辛い時は、誰かに寄りかかっていいんだよ?」
「僕との逃亡生活のせいでスカリエッティの娘達くらいとしか交流させてあげられなかったけど」
「シオンが心から信頼できる友達を作って、穏やかに楽しく過ごせる日々を知って欲しいし」
「あとは………どんな形でもいいから幸せになって欲しいかな」
足元の魔法陣から光が溢れる。
「愛してるよ、シオン」
「シオンと過ごした4年間、僕は本当に幸せだった」
俺はいま笑顔を浮かべられているだろうか。
涙で滲む視界で、歪みそうになる顔を必死に抑える。
「俺もだよ、父さん。父さんと、母さんの息子として作られた俺だけど…………俺は幸せだよ」
最後に見た父さんの顔は、いつも俺を見守ってくれていた、見慣れた優しい笑顔だった。
「『世界はいつだってこんなはずじゃなかったことばっかりだよ』か。これで僕はもうプレシアを責められないな」
「そうだろう?クロノ、フェイト」
「6年ぶりくらいになるのかな?そうだね、久しぶりだね」
「それにしてもボロボロだね……それでもスカリエッティとゆりかごに相対して生きているなんて2人共流石だね」
「はやてやシグナム達はいないのかい?」
「ゆりかごを追っていったと……無駄なことをするね」
「ん?どうして無駄なのかって?」
「だって、クラナガンは壊滅させられたけど、他の世界まで破壊できるほど長くは飛べないからね」
「ゆりかごを動かせるのはコアとして聖王のクローンを使っているからなのは君達も知っているだろう?」
「聖王のクローンはまだ幼くてね。レリック等を使って無理矢理ゆりかごを動かせるように調整されているから、長くはもたないはずだよ」
「ベルカ史における聖王オリヴィエだって戦争をある程度止めることしか出来なかったのに、まだ幼いクローンがそんなにもつはずがないだろう?」
「あぁ、もちろん僕は反対したよ。無限の欲望と名乗るなら、古代ベルカ時代の骨董品や聖王教会の象徴なんて借り物の力を使わずに、スカリエッティ自身の手で作り出した物を使うべきだろうってね」
「本人は僕の言葉を聞いてやる気になってたみたいだったけど、いかんせん時間が足りなかった……管理局が優秀だったからアジトを何度か変える必要もあったらしいからね」
「言い方が悪いけど、君たちが頑張りすぎたからゆりかごが飛んじゃったのかもね」
「まだ聞きたいことがあるって?スカリエッティと僕はあくまで利害が一致した部分があるから協力関係にあったのであって、彼の計画については知らないことの方が多いよ?」
「たしかに、無限書庫で調べた情報を彼に流していたのは僕だけど……それだって僕が管理局を離れる2年くらいの期間だから彼がここまでやるとは当時は思ってなかったよ」
「え、そんなことより僕の息子を何処にやったのかって?」
「息子のことは管理局に存在すら知られてはいなかったと思うんだけど……あぁ、もしかしてレジアスから漏れたのか」
「彼が欲していたモノとは違うから、正直覚えてすらないと思っていたのだけど意外だね」
「それで、何処に送ったのかだって?」
「さぁ?ちょっと僕にもわからないな」
「ふざけてなんかいないよ。言葉の通り僕にもわからないんだ」
「過去か」
「未来か」
「管理世界か」
「管理外世界か」
「それとも、僕らですら知らない世界か」
「何処にいったのかは、誰にもわからない」
「もう使えないけど、そういうロストロギアなんだコレは」
「息子が心配じゃないのかって?」
「はっ!あの子を…………シオンを舐めるなよクロノ!フェイト!!」
「シオンは
「父親である僕は生きる上で必要な知識や魔法を教えた」
「一度も会ったこともない母親のなのはからは不屈の心と優しさを受け継いでいた」
「シオンはそんな僕となのはの自慢の息子だ!!」
「例えどのような世界に行っても大丈夫だと」
「そんな自慢の息子に育ってくれたんだ!!!!」
「なら!父親である僕がシオンを信じない訳ないだろう!!!!!」
「それに、シオンは独りじゃないからね」
「うん……そうだよフェイト。あの時に破壊されたレイジングハートはシオン用に改修されて、今はシオンのパートナーだ」
「大切な息子の旅立ちを見送れたんだ」
「だから、僕はもう心残りはないよ」
「それで、君たちはどうするんだい?」
「時空管理局提督クロノ・ハラオウン」
「時空管理局執務官フェイト・テスタロッサ・ハラオウン」
「君たちの前にいるのは管理局を崩壊させたジェイル・スカリエッティと協力関係にあった犯罪者だ」
「守るべき法を崩して、秩序を壊し、民も失わせた」
「管理局が無くなった
「地球にいる家族と、犯罪者の僕」
「僕は管理局の正義より自分の願望を選んだけど」
「君たちは、どちらを選ぶのかな?」
カッとなったから続くかどうかは不明。
需要があればチマチマ書くかも。