脱社畜を目指してパルデア1のブラック企業に勤める話   作:永久冬眠

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プロローグ1

 皆こんにちは社畜お兄さんこと、コヨミと申します。

 

 まずは少し自己紹介というか、身の上話を。

 

 シンオウ生まれのシンオウ育ち、今年で26になる一介の技術者です。子供の頃はありがちだけどポケモンマスターとか、リーグチャンピオンとか、ジムリーダーとか、そういうのを目指してました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 両親はとにかくポケモン好きで、幼い頃からポケモンに囲まれた生活を送ってきた。両親の育てたポケモンの中でも、よく懐いてくれたルガルガンは1番の親友だった。他の仲間達よりも小柄で、野生にいた頃は仲間はずれにされていた所を両親にゲットされたのだそう。小さいながらも真面目な性格で生まれた時から僕の世話をしてくれていたこともあり、僕自身ルガルガンのことを頼れる兄のように思っていた。

 

 

 

 10歳を過ぎた頃、旅に出た。両親からは好きにして構わないという風に言ってもらえたので、ルガルガンと僕と旅の途中で出会った相棒達と共に色々と努力してジムバッジ集めて、15を過ぎる頃にはリーグに挑める程度に実力をつけたつもりだった。

 

 

 

 いよいよリーグに挑めるのだと息巻いて次の目的地を目指し、旅をしていたある日、見たこともないポケモンに出会った。何年も前の事だから思い出せないのか、そのポケモンの特性なのかはわからないけれどその姿はどうしても思い出せない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ただ覚えているのは、そのポケモンの攻撃から僕を庇ったルガルガンはその命を散らしてしまったという事。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ぴくりとも動かなくなった親友を抱えて、命からがら逃げ出した僕はとにかく走った。運動は苦手で、近所の年下にも負けるくらい足が遅い僕だけど、あの時ばかりはこの世界の誰よりも足が速かったと思う。

 

 

 

 やっとの思いでポケモンセンターに着いた頃にはもう手遅れで、中に入るなり、親友を助けてくれと叫んだ僕の腕に抱かれたルガルガンを見たジョーイさんは、悲しそうに顔を歪めてただ首を横に振るだけだった。そんな彼女の顔を見て、腕の中で冷たくなったルガルガンを見て初めて、親友(ルガルガン)はもう帰ってはこないのだと理解した。

 

 

 

 

 

 

 僕が初めて喋った言葉がパパでもママでも無く『るがるがー』だった事に両親は頭を抱え、ルガルガンは大喜びで僕に飛びつき、首元の岩が頭に当たってギャン泣きした事。

 

 

 初めてルガルガンに自分でご飯を用意した時、ケミカルな色合いに盛り付けられたお皿にルガルガンがドン引きして結局食べてもらえ無かった事。

 

 

 初めて野生のポケモンを捕まえようとボールを投げるも、嫉妬したルガルガンに投げたボールを空の彼方まで弾き飛ばされた事。

 

 

 

 昨日の夜、キャンプで寝る前に他の仲間(ポケモン)達には内緒でこっそりポフィンを食べたのがバレてリンチされた事。

 

 

 

 

 ルガルガンとの思い出が溢れて止まず、未だ人の多い昼下がりのポケモンセンターの中で、人目も憚らず泣いた。鼻水を垂らし大声をあげながら大粒の涙を流す僕の顔はさぞ醜いものだっただろう。でも、泣き喚く僕を見て笑う人は一人も居なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 この世界は楽しくて愉快で美しく、そして時に残酷。

 

 

 どんなに屈強そうに見える生物でも、何の拍子で命を落とすか分からない。

 

 

 今目の前で情けなく涙を流す少年は明日の自分なのかもしれないのだとその場の全員が理解しているから、どんなにみじめに見えたとしても誰も彼を笑ったりなどしない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 リーグ挑戦を目前にして相棒を失った僕は挫折した。怖くなってしまったのだ。ポケモンを戦わせる事自体が。

 

 

 

 その後は実家へととんぼがえり。帰ってきた僕を見た両親は唖然としていた。生まれた時からの親友を失った僕の顔はそれはそれは酷いものだったらしい。両親にルガルガンのことを話して、うちの庭の中でも特にお気に入りだったモモンの木の根本にその亡骸を埋めて墓標をたてた。

 

 

 

 何人かライバルと呼べる人達がいて、その人達にリーグ挑戦はやめる旨をメールなんかで伝えたら、そのうちの一人の女の子が直接引き留めに来たけれど、僕の顔見た途端に顔色を変えて頭を胸に抱えるように抱き寄せられて、彼女は僕に何か言おうとしてつっかえたようにただ一言ごめんなさいと謝罪の言葉を残して帰って行った。

 

 

 

 何を言おうとしていたのかは正直分かりかねている。リーグ挑戦を途中でやめるのを引き止めようとした事への謝罪なのか、それとももっと別の何かを伝えようとしていたのか、結局チャンピオンになった彼女に一般人の僕が簡単に会う事も出来ない為、今となっては闇の中。

 

 

 

 

 

 

 トレーナーとしてやっていくのを諦めて二十歳を迎えると同時に、機械を弄るのが得意だった僕は技術者としてエネルギー開発の研究という仕事を手に入れた。入所して知ったことだったが、なんでもこの研究所は最近シンオウ地方で名をあげるギンガ団との繋がりがあるとか無いとか、ギンガ団に関してはきな臭い噂も耳にすることもあるが、一介の技術者である自分には関係ない事だと思っていた。

 

 

 下っ端の下っ端の木端研究員というカスみたいな立場からのスタートで、ネチネチしたおっさん主任にいびられながらも、自分の仕事はきちんとこなし、時には自分以外の仕事もこなし、時にはネチネチ主任もヨイショして、行きたくもない飲み会の幹事をしたりしながら、研究所の資料を読み漁り必死に勉強した。

 

 

 

 数年が経って、技術者としても研究者としてもようやく一人前になり、研究成果を上げた事で、研究所でもそれなりのポストをもらい順風満帆な生活を送っていたある日のこと、僕は知ってしまった。ギンガ団の悪事を、彼らが裏で何をしているのかを。

 

 

 

 最初は見なかった事にしようと思った。僕はただの技術者だ。今の仕事には満足している。誓って人を害するような仕事では無い。ただ宇宙エネルギーとその活用について研究をしているだけなんだと心に言い聞かせていた。僕はギンガ団とは関係ないのだと。

 

 

 

 

 ギンガ団の悪虐によって大怪我をしたポケモンを抱えて涙を流すトレーナーを見るまでは。

 

 

 僕の目には、かつての自分と死んでしまった親友の姿が彼らに重なって見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 僕は一体何をしていたんだ。

 

 自分には関係ないだと?

 

 ふざけるな

 

 だったら今目の前にいる彼らは何だというのだ?

 

 研究所で高い地位にいるからなんだというのだ?

 

 僕がギンガ団の悪事を見なかった事になどしていたからこうなったのだ。

 

 

 こんなザマで僕は親友(ルガルガン)に顔向けできるのか?

 

 

 

 否、断じて否である。親友が命をかけてまで守ってくれた僕がそんな卑怯者であって良いはずなどない。

 

 

 

 

 

 ごめん。自分を見失っていたよ、親友。

 

 でももう大丈夫、約束するよ。

 

 二度とこんな間違いは犯さない。

 

 だから見ていてくれ。

 

 

 

 

 

 

 

 誓いを胸に、想いを拳に乗せて

 

 

 僕の隣で高笑いするギンガ団の高官を

 

 

 力の限り殴り飛ばした。

 

 

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