脱社畜を目指してパルデア1のブラック企業に勤める話 作:永久冬眠
そんなこんなで(前回参照)、四天王戦で利用されるリーグのバトル場にやってきたコヨミとオモダカだったが、そんな2人に待ったをかける声がかかる。
「ちょい待ってくださいよトップ。アンタこの後予定あるの忘れてはるやろ。後一時間もないですよ」
「ないですのよ」
「!………チリ、ポピー……い、いえ、勿論忘れていませんよ」
「いや絶対嘘やん。ちょっと動揺してもうてるやん」
「あのーお二人は一体?」
現れた2人組に詰め寄られるオモダカにコヨミが助け舟を出す。
「失礼しました。彼女達はチリ、そしてポピー。2人ともこのパルデアリーグの四天王を勤めています」
「まいど、チリちゃんですー」
「わたくしがポピーですの」
「あ、コヨミです。よろしくお願いします」
挨拶が済んだ一同は改めて、オモダカに説明を求めて向き直る。
「大体何でこの人とバトルすることになっとるんですか」
「2人にはまだ話していませんでしたが、こちらのコヨミさんには今後テラスタルエネルギーの研究者として働いていただくことになります」
「あ、そこは採用なんだやったー」
「そしてテラスタルについて研究する上で避けられないことが一つ……」
「パルデアの大穴、エリアゼロって訳やな」
「その通り」
「エリアゼロ?それは一体?」
「詳しい説明は一旦省きますが、現在立ち入り禁止になっているテラスタルの研究施設等がある場所です。テラスタルの研究をする上でおそらくあの場所には特別な意味があると思われるため、コヨミさんにも向かってもらう必要があります」
「へぇ、研究施設が……ん?立ち入り禁止?」
「ええ、あの場所に出現するポケモン達は通常の野生のポケモンよりも遥かにレベルが高い強力な個体が多く、並のトレーナーが立ち入るにはあまりに危険なのです」
「成程、それでバトルの実力が必要だと」
「はい、その通りです……四天王や私を護衛として調査に同行する方法も考えましたが、私もチリも多忙の身、1人でこなせるならばそれに越したことはありません……かといってポピーに護衛を任せるのは少々……ね」
小声でそう付け加えたオモダカにコヨミもチリも同意する。
「「それは確かに」」
「?」
「そういう訳ですので、申し訳ありませんがあなたを試します」
「そういう事なら、喜んで。何かルールはありますか?」
「先程申し上げた通り、時間もあまりないのでお互いに選出は一体のみ、制限時間は10分とさせて頂きます。チリ、審判を頼んでも?」
「はいな」
コヨミとオモダカがそれぞれの位置につき、それを確認したチリはその間に立ち審判として合図を出す。
「2人とも準備はええですか?」
「ええ……四天王用のバトル場を使うのはいつぶりでしょう」
「僕も準備できてます」
「了解……それじゃ……いざ尋常に……」
チリが右手を上げて………振り下ろす。
「始めぇ!」
「頼むよ、ルカリオ!」
「行きなさい、ドドゲザン!」
同時に2人がポケモンを繰り出す。コヨミはルカリオをオモダカはドドゲザンと呼ばれるポケモンを。
「ドドゲザン?初めて見るポケモンだな」
「おや?ドドゲザンは見たことがありませんでしたか?」
「ええ、生憎とシンオウ地方では見ないポケモンですね……」
そう言いつつコヨミは目の前のドドゲザンという初見のポケモンを観察しながら考えを巡らせる。
“見たところ、イッシュ地方にいたキリキザンの近縁種、或いは進化系……進化系だとすればあく・はがねタイプの可能性が高そうだ。見た目だけならはがねタイプは確定だろうけど……かくとうタイプを持つルカリオを出せたのは正解だったか?いや、まだ決めつけるのは早いか“
そこまで考えてコヨミはルカリオに指示を出す。
「ルカリオ、初めて見るポケモンだけど、何にしてもまず必要なのは情報だ。最初はダメージを与えることは気にしないで、探りを入れていこう」
「くわんぬ」
「よぅし、そうと決まればいつものオハコだ!ルカリオ……しんそく!」
コヨミが技を告げるや否や、ルカリオはノータイムでドドゲザンへと一直線にしんそくで肉薄する。
コヨミはドドゲザンをひとまずはがねタイプであると断定したがその上でかくとう技ではなくノーマルタイプのしんそくを選んだ。それは単に情報を集めるために他ならない。
投げやりに聞こえるがポケモンとの高い信頼関係を必要とされる動き方、これがコヨミの昔からの戦法。だからこそ、それをよく理解するルカリオはコヨミの意図を読み取りより早く動き出せるのである。
「ドドゲザン!つじぎり!」
「ドォゲ!!」
オモダカの声を聞いたドドゲザンは既に目の前に迫っていたルカリオの顔面に向かって拳を置くようにつじぎりがはさみ込むが、すんでのところで勢いを殺したルカリオは眼前に迫るドドゲザンの拳をバク転しながら受け流し、勢いそのままにコヨミの近くまで引き下がる。
一連の動きを見たオモダカはコヨミとルカリオへの感心を抱く
“しんそく……ノーマル技ですか、素直に受けてカウンターを狙ってもよかったのですが……にしても、速い。技を伝えられてから実行するまでも、技そのものも、つじぎりを受けてからの立て直しも、脊髄反射と言っても良い反応速度。筆舌に尽くしがたい練度、信頼関係ですね“
「大丈夫かい?ルカリオ」
「くわんぬ」
━━━━誰にいってんのよ。
そう言わんばかりに鼻を鳴らしてルカリオは余裕そうに答えた。
「へへっだよねぇ、失敬失敬」
「素晴らしい信頼関係ですね、危うく一撃貰うところでした」
「綺麗に対応しといてソレ言われちゃうとヘコみますよ」
「チャンピオンですので、それに……そちらもダメージは受けていない様子……中々ありませんよ技を受け流されるのは」
「それはどうも」
“つじぎり……あくタイプ技か……判断材料としては少ないけど、時間が無いしこれ以上考えるのはよそう。やはり最初の予想は合っていたかな……鈍足、高耐久なあく・はがねタイプと考えるのが丸そうだね……そうと決まればやることは一つ“
つじぎりの存在からコヨミは当初の予想通り、ドドゲザンのタイプをあく・はがねと断定。先程までの情報集めからは一転、
“どうやらドドゲザンのタイプに勘づいた様子、かくとうタイプをもつルカリオが相手な以上、できれば気づかれる前に有効打を与えておきたかったのですが……なかなかどうして……“
一方のオモダカもコヨミの様子を見て、ドドゲザンのタイプに気づかれたことを悟り、タイプ相性の圧倒的不利からの逆転の一手へと考えを巡らせる。
「ルカリオ!……アレをやろう」
「!……くわんぬ」
━━━━!……昔練習したやつね
「!……来ますか」
「行くよ……………しんそく!」
先ほどと同じく、コヨミがルカリオに技を伝えるとほぼ同時に地面を蹴ったルカリオが、文字通り神速で動き出す。
“!……先程よりもさらに速い……まだ上がるのですか………ですがはがねタイプと知りながら
「悪手なのでは?………ドドゲサン!受けてローキック!」
“多少のダメージは許容して、まずは
オモダカからの指示を受けたドドゲザンは正面から迫るルカリオの進行方向を予測し、正面に対してカウンターを放つ要領でローキックを置くように放つ。
しかし、ルカリオは直前で床に片手をつけ爪を立て、その手を軸に床を掴むように円を描き、横からドドゲザンの背後へと回り込む。
ドドゲザンのような鈍足寄りのポケモンが自身より高速で動くポケモンに待ちの姿勢から放つ技には、全てではないがある特徴がある。高速でのヒットアンドアウェイで攻撃のチャンスを逃さないために、相手の攻撃がくる場所へ置くように技を出しがちなのだ。
チャンピオンたるオモダカのポケモンであるドドゲザンとて、例外ではなかった。最初のしんそくの当たりでこれを見抜いたコヨミは、昔ルカリオと特訓したある技術を思い出し、実行に移した。
それは、しんそくという技そのものを移動手段として考え、その後に続く攻撃へのブラフにする事。
「な!……これはまずい……!」
「やれ!そのままインファイト!」
驚愕の表情を浮かべるオモダカとドドゲザンをよそにコヨミは続け様にルカリオは指示を出す。
ガラ空きとなったドドゲザンの背後から、しんそくの勢いも乗ったインファイトによる連打が容赦なく突き刺さる。
“よっしゃモロにはいった!いくらチャンピオンのポケモンといえど流石にこれは……“
しかし
半ば勝利を確信したコヨミを嘲笑うがごとく、未知の光がコヨミとルカリオを照らす。
「ええ、本当に危なかった……間に合わなければ間違いなく、ドドゲザンは落ちていました」
「うっそでしょ………」
クリスタルのような輝きを纏い、光を放つドドゲザン。その頭上には風船のようなものが付いていた。
「見るのはおそらく初めてでしょうか……
これがテラスタル
トレーナーを、パルデアを導く光です」
「うっわ、悪い顔してはるなトップ……」
「あくにんがおっていうんですの」