脱社畜を目指してパルデア1のブラック企業に勤める話   作:永久冬眠

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チャンプルタウンっていう名前がもう美味しそう

 

 

 

 

パルデア、西3番エリアに位置するチャンプルタウン。

 

パルデアの大穴、ナッペ山、オージャの湖等様々な風光明媚な自然に囲まれたビジネス街。

 

仕事に疲れた社会人たちを癒すがごとく、所狭しと並んだ飲食店は庶民的なB級グルメから、高級料亭やレストラン、仕事終わりの大人達のためのバーに居酒屋などよりどりみどり。

 

チャンプルタウンへと歩を進めたコヨミは、屋台で買い食いをしつつ働き口を探す為、ひとまず人が多い飲食店で情報を集めてみることにした。

 

 

「…えっと、じゃあこのガケガニスティックの串揚げを一つ」

 

「はい、お待ち!」

 

「どうも……うーんシンプルな串揚げのB級感漂う見た目からは想像できない上品な風味だ」

 

「ははは!初めて食べる人はみんなお兄さん見たいな顔するよ!美味いけど、思ってた美味さじゃないってね!観光で来たのかい?」

 

「いえまぁ、仕事探しにパルデアに来たはいいものの中々働き口が見つからなくて、ひとまず人が多い飲み屋なんかで情報を探ろうかなあと」

 

「ふーむ人が多いねぇ……チャンプルタウンで人が多い食事処といえば、まあ宝食堂だな、ここのジムリーダーのアオキさんもよく行く人気店だから、学生から老人までいろんな人がごった返してるよ」

 

「宝食堂……なるほど行ってみます、ありがとうございます」

 

「おう!頑張りなよ!」

 

 

屋台の主人の言葉を受け、コヨミは宝食堂を目的地に設定。ビルの山々を抜けて宝食堂についたコヨミは店内に足を踏み入れた。

 

 

「おぉ、屋台の人が言ってた通り、すごく賑わってるな」

 

店内を見渡すと、昼間から飲み会をするご老人や、仕事中のランチとして訪れたビジネスマン、そして……

 

 

「学生が多い……のか?」

 

「いらっしゃいませ!宝食堂へようこそ!」

 

 

店員の話を聞くに、ここはジムチャレンジの会場としても使われているらしく、なんでも設定された特殊なメニューを注文することで、ジムリーダーに挑戦する権利を与えられるらしい。

 

シンオウ地方のトレーナージムとは違い、学生が多いパルデア地方では社会体験を促すジムチャレンジが多いのが特徴なのだ。

 

カウンター席へ案内されたコヨミはジムチャレンジに勤しむ学生達を横目に、メニューを眺める。

 

「へぇ、自分である程度カスタムができるのか……ここに来るまでに屋台にも寄ったし、軽食にしておこうかな。お、焼きおにぎりあるじゃん」

 

「ご注文はお決まりですか?」

 

ちょうど良い軽食を見つけたコヨミにこれまたちょうど良いタイミングを見極めた歴戦の店員が声をかける。

 

「あ、焼きおにぎり(・・・・・・)を……流石に一個じゃ少ないかな……二人前(・・・)で」

 

「!………焼きおにぎりを二人前(・・・・・・・・・・)………ですね、焼き加減はいかが致ましょうか?」

 

“ん?なんか店員の顔つきが変わったな、変な注文だったかな。にしても焼き加減かどんなのがあったか……“

 

そう思いつつチラリと横目でメニュー表を眺めながら数秒迷っていると店員の方から声をかけられる

 

「美味しさを追求するなら強火のだいもんじがオススメですよ。ソースが良く馴染んでパリッとした食感が楽しめます」

 

「へぇ、だったら強火……ん?…あいや失礼、()()()()()で」

 

“なるほどねぇ強火はだいもんじって表記なんだな。ローカル感があっていいね”

 

「……だいもんじ(・・・・・)……ですね、つけ合わせはいかが致しましょうか?」

 

「付け合わせ……何があるんでしたっけ?」

 

「粉チーズかレモンになります」

 

「え?」

 

「粉チーズかレモンになります」

 

“粉チーズと……レモン……ってなんだその謎の組み合わせ”

 

この時、奇しくもつけ合わせ無しという選択肢はコヨミの頭には無かったのである。

 

“うーんどっちもいらねぇ……けど粉チーズよりは……レモン…か”

 

「じゃあ、レモンで」

 

「!レモン(・・・)ですね、かしこまりました……少々お待ちください」

 

終始神妙な面持ちだった店員は厨房の奥にいる女主人と何やら話し込んでいる様子だ。

 

 

「どうでしょう、トレーナーのようですが、ジムテストを受けに来た感じはない気もしますけど」

 

「とはいえ、決まりだしねぇ」

 

“何かとんでもない勘違いをされている気がする”

 

「……あの」

 

声をかけようとした所で奥で話していた女主人がコヨミの近くまでやって来るとコヨミを上から下まで一瞥した。

 

「……学生って歳でもなさそうだけど……いや、学びに年齢なんて関係ないよねぇ、ごめんなさいね」

 

「は?いや、あの」

 

「アオキさーん出番よ!!」

 

“いやちょっと待って!?もしかして今の注文!?ジムテストの答えだったの!?ほぼほぼ誘導尋問だっただろ!!“

 

「はい、どうもアオキです」

 

コヨミの隣でおにぎりを食べていた疲れ切ったサラリーマン風の男がどうやらここのジムリーダー、アオキその人であるらしい。

 

「隣に居たんかい!」

 

「では、バトルの用意を……」

 

すると突然、店内のテーブル席が丸ごとひっくり返り、バトル場へと変貌する。と同時にジムチャレンジを一目見ようと店内の客はギャラリーに変わる。

 

ざわざわと先程までとは別の賑わいを見せる宝食堂。ギャラリーたちの視線に耐えかねたコヨミはたまらず声を上げる。

 

「ちょ、ちょっと待って下さい!」

 

「「「?」」」

 

全員の視線が集まる。

 

「僕は!」

 

「ジムチャレンジャーじゃ、ないです……ハイ

 

先程まで熱気に満ちていた食堂が一気に静まり返り、静寂といたたまれない空気感がコヨミに襲いかかる。

 

 

 

 

 

 

「あー、勘違いしちゃったみたいで……なんかごめんねぇお兄さん」

 

「いえ、まぁ途中で言い出せなかった僕も悪かったですし」

 

「迷惑かけちゃったし、お代はいらないよ。アオキさんもごめんなさいねぇ」

 

「いえ、自分は特に気にしていませんので」

 

コヨミの隣の席でそう答えるのはチャンプルジムのジムリーダーであるアオキ。彼の前には山のようなおにぎりが置かれており彼の尋常ならざる食欲を表していた。

 

「へぇーお兄さんはシンオウ地方からわざわざ仕事を探しにパルデアまできたのかい、大変だねぇそりゃ。アオキさんいい働き口とかないの?」

 

話を振られると思っていなかったアオキは内心面倒臭いと思いつつ、上司からの頼みを思い出して目の前の青年に尋ねてみる。

 

「……ちなみに、シンオウ地方では何をされていたのですか」

 

「改めまして、僕はコヨミと申します。前職の名刺で申し訳ないですが、こういう仕事をしておりました」

 

そう言ってコヨミは前職の名刺をアオキに差し出す。

 

「これはどうもご丁寧に………!シンオウエネルギー研究局、主任研究員ですか……ここまでの役職がありながら何故パルデアに?」

 

「本当にちょっとした事情があってシンオウ地方を離れる必要があったので、仕事探しをしようとしていたんですが、なんでもパルデアにはテラスタルという未だ謎多きエネルギーの研究者が不足しているという記事を見てそれで……ははは………やっぱり怪しいですかね」

 

怪しい、確かに怪しい。シンオウ地方でそれなりの権威ある地位に就きながら、それを蹴って今後の進退も分からない状態で異国で職探し。間違いなくこの青年何か爆弾を抱えている。と、アオキはコヨミを観察しながら、どう対処すべきか考えを巡らせる。

 

が、突然店内に設置されていたテレビを見ていた女主人がコヨミの顔とテレビを行ったり来たりしながら声を上げる。

 

「ん!?お兄さんまさか、テレビに写ってるあの人じゃないかい!?」

 

「はい?テレビ?」

 

女主人言われるがまま、コヨミとアオキもテレビを見る。そこにはアオキがリーグの休憩室で見ていたゴシップ系ニュース番組が流れており、飽きもせずに連日話題のシンオウチャンピオンの熱愛報道を報じ続けていた。

 

 

「え“……何コレ、僕知らないんですけど許可出してないんですけど」

 

「チャンピオンシロナの取材許可ありってテロップに書いてあるわよ」

 

「シロナァ“ァ“!!」

 

目の前でギャースカ騒ぎ散らかす二人をよそにアオキの視線はテレビに釘付けだった。他人のゴシップになど微塵も興味のないアオキではあるが、この時ばかりは報道の映像を食い入るように見た。

 

一般人が撮影したであろうスマホロトムか何かの映像、その中でかの有名なシンオウチャンピオンシロナと熱いキスを交わす人物は、どう見ても目の前の青年である。本人の言動と焦り様からもチャンピオンシロナとの関係は疑うまでもない。

 

となれば身元の不安要素は粗方取り除かれた、大方この騒動でシンオウ地方に居づらくなったとかそんなところだろう。と、アオキは当たりをつけた。

 

トップのお眼鏡にかなうかまでは分からないが、この青年であれば条件を満たすかもしれないと考え、アオキはコヨミに話しかける。

 

「コヨミさん、貴方に紹介したい仕事があります……よろしければ一緒に来て「行きます」いただけますか」

 

アオキが言い終わるより早く食いついてきたコヨミを引き連れ、自身の上司であるオモダカにメールを入れながらリーグへと向かう。

 

 

『例の件、いい人材が見つかったかもしれません』

 

 

全てはそう、ボーナスのために。

 

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