好き勝手生きて何が悪い 作:バタートースト
学校の昼休み、俺は教室の前でもじもじしているアインハルトをとっ捕まえて中庭に連れてきていた。
「今日は迎えに来なかったんだな」
「申し訳ありません』
今日の朝はアインハルトが迎えに来なかった。
おそらくヴィヴィオと顔を合わせるのが気まずかったか、こいつもこいつで気にしてるんだろう。
「うちの妹は弱かったか」
「いえ…充分だと思います」
「趣味と遊びならか」
確かにこいつにとってヴィヴィオの格闘技は遊びに見えるんだろう。
事情を知らないこいつにとってはそう見えたって仕方がない。
「なぁアインハルト、次の試合本気でやってくれねぇか」
俺はアインハルトに向き合って真っ直ぐ見つめながら言う。
ヴィヴィオの想いをここで全て伝えるのは俺の役目じゃない、あいつが自分自身で伝えることだ。
「あいつは格闘技を楽しんでる。でも、それは遊びでやってるからじゃない。あいつなりの想いがあるんだ」
「想い…ですか」
「ああ、きっとあいつはそれを全力でお前に伝えるはずだ」
でもそれを伝える手伝いくらいしてやりたいんだ。
これでも俺はあいつの兄ちゃんだから。
それにアインハルトにだってこのまま一人で戦い続けて欲しくない。
この試合の中で少しでも何か答えを出してほしい。
「お前にとっては知ったこっちゃないと思う。でも、頼む。あともう一度だけでいい、先祖も何もかも忘れてその時だけはあいつと向き合ってやってくれ」
俺はアインハルトに頭を下げた。
「あっ、頭を上げてください。言われなくとも無くても私は全力でお相手するつもりでしたから」
俺はアインハルトに言われて頭を上げる。
そうか、それなら安心だ。余計な事だったかもな。
「信じているのですね。ヴィヴィオさんを」
「ああ、妹だからな」
普段はわがままで可愛く無くて暴力的で、それでも努力家で甘えん坊で可愛い大切な妹だ。
「では私もあなたに誓います。次の試合、覇王流の名にかけて全力で彼女と向き合い、彼女を倒します」
俺の手を取って目を真っ直ぐ見つめて俺に宣言する。
律儀なやつだ。でも今はそれがありがたい。
「ありがとな、アインハルト」
「いえ…当然のことですから」
こいつの目を見てると何故か不思議な気持ちになる。
付き合いなんてここ数日なのに何故かこいつは信じても良いと思えてくる。あとは何故か無性に懐かしく感じる。
昔どこかで会ってたのか?いや、今はいいか。
俺とアインハルトは別れてそれぞれの教室へと帰っていった。
『アインハルトはやる気になってくれたようだな』
「ああ、この試合であいつも何か答え見つけてくれると良いけどな」
『ヴィヴィオの事はどうする?吹っ切れたように見せてはいるが…』
「あいつには助けてくれる奴がたくさんいるだろ」
『ヴィヴィオにはお前も必要なんだ』
「…分かったよ」
デバイスに諭されるようじゃ俺ももう歳かね。
◇◇◇
その日の夜
特に大きな事も起こらず高町家は夕食を取っていた。
ヴィヴィオが今日あった出来事を笑顔でなのはとクロウに語り二人がそれに相槌を打つ。
そのあとヴィヴィオはいつものようにトレーニングをしていた。
「相変わらず熱心なことで」
「そっちこそ珍しいね私のトレーニング眺めるなんて」
「たまにはな」
普段クロウはヴィヴィオのトレーニングに一切興味を示さない。
誘われても断る彼が自分から興味を示すなど明日は雨でも降るんじゃないかと彼女は思う。
「で、成果は?」
「一日二日じゃ変わらないよ。でもやれる事は全力でやるつもり」
「なのはさん直伝の全力全開だな」
「うん!」
そういう時クロウはヴィヴィオの前に立ち、構える。
「なら、俺もたまにはお兄ちゃんらしいことしないとな」
「えっ?ほんとに!?」
構えるだけでクロウが何をするかヴィヴィオはすぐに分かった。
普段ダラダラしてお願いしても全く相手をしてくれない彼がどういう風の吹き回しか今、相手をしてくれると言うのだから彼女は目を輝かせた。
「バリアジャケット着て全力で来い。魔法は家壊れるから無しな」
「うん!行くよクロウ!セットアップ!」
ヴィヴィオは元気にセットアップしかつて見た聖王の姿になった。
その姿を見てクロウは少し複雑な表情を浮かべるが彼女に悟られる前にいつもの表情に戻した。
「クロウは着ないの?」
「俺は良いよ、お前が全力出しても余裕だからぁ」
「言ったなぁー!」
ヴィヴィオの繰り出す拳をクロウは冷静にいなしていき、隙が出来た瞬間に軽く拳を打ち込んだ。
その動きは以前見たアインハルトの動きそのものだった。
「アインハルトさんの動きっ!」
「アインハルトの覇王流はこんなもんじゃねぇぞ」
今度はクロウから拳が放たれる。
特別早い打撃ではないが一つ一つ丁寧に、変則的に打ち込まれる拳に翻弄されながらもギリギリのところで防ぐヴィヴィオだったが、寸止めされた拳に気を取られて腹部に打撃を喰らってしまう。
それをクロウは逃す事なく額に掌底、頬を往復ビンタされふらついた所を投げられてしまった。
「いったーい!」
「はい俺の勝ち、まだまだだな」
「もう一回!」
それから二人は何度も拳を合わせた。
ヴィヴィオの拳をいなし、受け止め、隙をついて打撃を彼女へと打ち込んだ。
ヴィヴィオも負けじと何度も彼へと立ち向かう。
何度も何度も吹っ飛ばされても諦めずに。
彼もまたいつものちゃらんぽらんな様子は鳴りを潜めて真剣な眼差しで模倣覇王流で彼女へ向かい合った。
少しずつヴィヴィオがクロウの動きに対応して来るたびに彼女の成長を感じる。
「どうだ?ちょっとは慣れてきたか?」
「そうだね、さっきよりは読めるようになってきたかも」
「よし、じゃあもう一回行くか」
「うん!行くよー!」
もう一度向き合おうとした瞬間、二人は桃色のバインドに捕えられた。
二人は一瞬で状況を理解しギギギという音が聞こえそうなくらいゆっくりと振り向くと、そこには。
「二人とも何時だと思ってるのかな?」
笑顔でありながら黒いオーラを全開で放つ高町なのはがそこに居た。
◇◇◇
「昨日は流石にやりすぎたな」
「だねー」
私はクロウとのんびりと学校に向かっている。
昨日はスパーリングし過ぎてなのはママにコッテリと絞られちゃった。
クロウが相手してくれるのが嬉しかったから張り切っちゃったね。
「不安は無くなったか?」
「うん!」
普段はちゃらんぽらんでバカで無神経で甲斐性なしのダメ人間だけど、私が本当に困ったときには全力で助けてくれる。私を守ってくれる。私のそばにいてくれる。
「ねぇクロウ」
「おー?」
「危ないことしないでね」
「なんだ急に」
「するとしてもちゃんと私に伝えてね」
「しねぇよ、俺がめんどくさいこと嫌いなの知ってるだろ」
「マリアージュ事件の時は関わったのに?」
「あれは関わったんじゃなくて巻き込まれたの」
マリアージュ事件でクロウが瀕死になったって聞いた時、怖くて怖くて仕方なかった。寒くもないのに震えが止まらなくなって涙が止められなかった。
あの時のことはもう思い出すだけでも苦しくなる。
もう二度とあんな思いはしたくない。
「約束してね」
「分かった分かった」
「クロウ」
真面目に聞かないクロウの手を掴んで無理やり私の方へ向ける。
他の話は受け流しても良く…はないけど、これだけはちゃんと約束して貰わなきゃいけない。
「約束して」
「なぁ、さっきからどうした…さっさと行こうぜ」
「いいから、約束して」
「痛っ…分かったよ。約束する。約束するから離してくれ痛いから」
「あっ、ごめん」
思ったより力が入ってたのかクロウはちょっと痛そうに手首をさする。
悪いことしちゃった。
「私、クロウを守れるくらい強くなるからね」
今度は私がクロウを助けたい。
クロウが辛い時、苦しい時、危ない時、今度は私が助けられるように。
今はまだ子どもで弱いから頼りにならないかも知れないけど、いつかきっと強くなるから。
「おう、頼んだよ」
頭に置かれた暖かい手を握って歩き出す。
誰にもあげない。どこにも行かせない。
私だけのお兄ちゃん。
心理描写書くから中々話が進まない…
早くオフトレ書きたい