「では、我々は座して見ているほかあるまいと?」
ロンディニウムの国会議事堂で行われている定例閣議では、とある話で揉めていた。
それは極東から日の出の如く現れ、現在ではアジア太平洋地域の大半を手中に収め、今なお成長している大日本帝国連邦についてである。
現在、欧州は二つの勢力にまとまりつつある。
その一つがエディンバラ連合王国を中心に革命で王家や政府要人が定期的に水揚げされるナシオン・フランセーズ、最近になって隣国と旧宗主国がきな臭くなってきて西側よりに落ち着いたプロイセン連邦、破産寸前ながらなんとか国体を維持しているヒスパニア王国、未だに都市間で対立が絶えないが祖国絶対統一するマンことガリバルディのお陰で何とか統一が完了したサルディニア王国、長年火種が絶えなかったせいで国土の運河を拡張し要塞まみれにしたネーデルランド王国
これらの西ヨーロッパの国々からなる協商連合。
対してルーシ帝国改めて、東ヨーロッパ帝国を主軸にポーレ=リエタ連邦共和国、宗教狂いで帝国ですら扱い方を持て余すハプストリア=マジャル二重帝国、スラブ系で割と仲の良いブルガール帝国、最近借金を踏み倒されそうになり渋々逃げ出せない様首輪を繋いだグレキア王国
これら東ヨーロッパに存在する諸国からなる東ヨーロッパ帝国連合。
協商と帝国連合は中央ヨーロッパを境に長年対立し、それゆえに欧州では勢力均衡が保たれ、ここ数十年は平和が保たれていた。
そんな中現れたのが大日本帝国連邦であり、常日頃国際情勢を注視していたエディンバラでも予想外の展開であった。
広大な領土と領海を防衛するための巨大な陸軍と強大な海軍、巨大な経済圏から生まれる生産力と工業力、そして圧倒的な人口。現状でそんな国家が味方になれば頼もしい以外に他なかった。
「それしかないでしょう。我々が容易に手出しして良い問題ではない。我が国だけで済めばいいが、下手したら新大陸の連中まで勝ち馬に乗る事になるぞ?」
「では帝国の連中と手を組まれた際、我々はどうやって対抗するのかね?」
「それにつきましては、当分心配する必要はないかと。連中、巨大なラグナイト鉱山に色目を使って連邦を刺激しましたからね」
「つまり当分は、連邦は帝国を意識して動くと?」
「可能性はあります。ただあの国は鎖国気質なのか
味方になれば頼もしい。
しかしながらこの方覇権国家との外交なんぞ経験したことのないエディンバラの外交官たちにとっては、合衆国を相手にする以上に労力を使う仕事だった。
そもそも技術体系が異なる上に、技術開発競争でも一歩二歩どころではないレベルで自分たちが遅れている。技術供与で靡くほど日本は遅れてはいない。
ラグナイトも使わない為交渉材料としての魅力はない。領土欲も少なく、全てが自活できている彼らに何かを与えると言った行為は殆どが意味をなさない。
防衛協定にしたって、あちらがエディンバラと協定を結ぶ事についてのメリットを提示しなくてはならない。
しかし今の所、日本にいかようのメリットがあるのかが見出せていないのが現状だった。
「そんなに違うのかね、日本と言うのは」
「間違いなく。平気な顔で
「陸軍から見てもか?」
「えぇ、そうです。我々が出資して開発を行なっているマシンガンと言うものがあります。要は機械を使った連発銃ですが、彼らはそれを少なくとも10年前には実用化させ、部隊に配備している。
これが事実なら少なくとも大隊、いや中隊単位で我々は火力で負けています。また野砲の射程も脅威です。我々が
「……性能諸元が盛られているとかは?」
「多少の誤差はあるでしょう。どの国も兵器の正確な性能を載せる馬鹿は居ません。しかし少なく見積もっても
「海軍からも。あの大きさのハリボテを動かせるなら、少なくとも我らの主力艦と同サイズの中身が詰まった実用的な戦闘艦は保有しているものかと」
防衛用の戦力で燦然たる格差を見せつけられた彼らにとって、万が一でもあの火力が自分たちに向くことだけはない様に意見する。
もしあの火力がパナマ運河を越えて欧州に向かうものなら、島国のエディンバラは国土が焦土と化すだろう。まぁ東の島国ではミサイル開発が進んでいる為、そのうち内陸国にも安全な場所は無くなるんですけどね。
少なくとも陸海軍以外、各省庁の意見も大まかにまとめれば日本との友好路線は確定してはいる。エディンバラの内閣内ではこの方針でほぼ決まりだが、問題はある。
協商加盟国が何かしらやらかさないかと言う事だ。
特に破産寸前のヒスパニア。何をとち狂ったかコロンビアの運河利権に色目を使っているせいで、合衆国の協商への心情がすこぶる悪くなっている。
同じ同盟国であるが、頼むから死ぬなら1人で死んでくれといつでも同盟から破門できる準備をしているのがエディンバラ流。火事で全焼するならお前の家だけにしろと言わんばかりの姿勢である。
つい最近にグレキア王国と言う前例がある為、尚更警戒心が高まっている。
しかし、ここまで真剣に閣議まで開いているが、当の日本のエディンバラ感情は別段悪くはない。
スリランカ産の茶葉はよく買ってくれるし、
等のふわふわした意見が多く、逆に言えば少しでも色目を使った帝国への心情は悪い。エディンバラへの感情が「同盟するなら吝かでもない」なら、帝国への感情が「先制攻撃だ!攻撃戦だ!」なので雲泥の差である。
「成る程、ではまず同盟締結まで持ち込む必要があるな」
「はい、その様に」
「海軍としては、政治については口を挟む気は有りませんが、なるべく我々に仕事が回ってこない事を祈ります」
「陸軍も同じく」
「……仮にも、そうなった場合。君たちはどうするのかね?」
「喜んで反旗を翻させていただきます」
「我々は国家を守るのであって国家を滅ぼす政治家を守る義務は無いんですよ」
「ロンディニウムが火の海になったところで、エディンバラは存続できますが?」
ほぼ全ての大臣が反旗を翻しそうになっている現状を踏まえ、気を配らないと首相としての政治生命が終わると確信した。
長年海上覇権で食ってきた国の政府機関だ。名誉や栄誉は大切だ、重んじるべきだろう。しかしそれが通用しないなら、自分達から死ぬ様な選択肢は最初から選ぶつもりはないのだ。
「では大まかではあるが対外方針は決まったので、次に予算会議に移ろうと……」
「陸軍は海軍の提案に反対である」
「まだ何も発言していないんだが?」
「どうせ対日戦略で馬鹿が考えた計画艦と過剰な予算を通す気だろうが!! 我々は絶対認めないぞ!」
「巫山戯るな! 海上防衛こそ我が国家の国防の主軸だろうが!! 貴様らだってマシンガン以外に対帝国で大分予算を食ってるだろうが!!」
「海軍ほどでは無いわ!! 国税の無駄飯食いは一生フジツボでも磨いてろぉ!!」
「言ったな貴様!?」
「掛かってこいやぁ! お貴族様だからって上品ぶってんじゃねぇぞ!!」
「あ、情報局はちょっと増額してほしいです。支部と人員補充分で」
「……じゃあ、今のうちに内訳と見積もりを」
彼らは今日もエディンバラ連合王国が安寧と発展を享受する、それだけを考えて国政に励むのだ。
欲は言わないからその過程で帝国も爆発四散して、東側の国家も民族自決で爆発四散して、ヒスパニアもサルディニアも爆発四散して、フランセーズは一生革命で無法地帯になってて、数百年程度でいいからグチャグチャなっててそのままなぁなぁで滅んでくれないかなぁと、彼らは今日も神に祈っている。
後ついでに
エディンバラ
欧州の優等生(自称)
昔ヒスパニアと仲が悪く近所のネーデルランドと一緒に戦った事がある。今では大西洋の海運を支配し急成長している
自国の利益最優先で動きがちな為、ごく稀に事故る
普段が安全運転(当社比)なので事故の反動も大きい
外交上手ではあるが自分達に無関心な覇権国家との外交なんぞ生まれてこの方したことがない為、四苦八苦している
協商という巨大な同盟組織を管理運営しているが、一緒に立ち上げたナシオンくんは年が変わると仲良くなってた指導者が水揚げ(意味深)されて顔ぶれが変わってたり、最近入ってきたサルディニアは未回収地域以外興味ないし、そこそこ国力のあるヒスパニアはコロンビアに色目を使っている
まともに話が聞ける奴は前線が近いプロイセンかネーデルランドのみ
ヤダ……うちの陣営纏まりない…?(盟主並感)
とりあえずヒスパニアは死ぬなら1人で死ね(エディカス並感)
コロンビア
「なんか最近ヨーロッパの国が色目使ってて……要らないなら自衛のためにその戦艦購入していいすか? 後合衆国も欲しいらしいんで、うちで話し通すんで何とかなりません?」
合衆国
「南部のモニター艦に消し炭にされたのと、南部の海軍が当然の様に総自沈したんでウチ自前の海軍消滅しちゃったんで」(掃海艇数隻)
日本
「やっぱり欧州怖いなぁ……(欧州恐怖症)
ええで。ただしメンテに必要な設備や技術はウチから移転するから当分時間はかかるから、それでも良いならええよ」
コロンビア
「やったぜ」
合衆国
「やったぜ」