ワイらがこの先生き残る為には   作:食べる辣油

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某大陸国家の密談

 

「えぇ……それはもう! 今回ばかりは感謝してもしきれませんよ! えぇ!運河の件も重々承知していますよ」

 

 それでは、そう言い残して受話器を下す。

 ホワイトハウスと呼ばれる建造物は、その名に反し先の内戦で所々焦げ付いている。

 ホワイトハウスだけではない、都市全体が戦場と化したことで街全体も焼け野原となっていた。それでも終戦後から比べれば大分復興してきた。焼け落ちた建物は再建され、塹壕で掘り返され有刺鉄線が張り巡らされ荒れ果てた公園や道路などは整備され、かつての街並みを取り戻しつつあった。

 

「例の移転計画ですか?」

 

「あぁ、丁度アヒージョ野郎(ヒスパニア)がきな臭いという事で、話が早く纏まったらしい」

 

「成る程、キューバの連中ですか」

 

 合衆国は建国以来2度目の危機を迎えている。海軍は消滅し、南部は経済基盤が破壊され、国民は長く続いた内戦によって疲弊し切り、消費も生産もあったものではない。

 現に東海岸を守護する海軍が機雷除去用の掃海艇数隻という非文明国以下の戦力である。沿岸砲台やまだマシな陸軍が居るものの、海上貿易ルートが遮断された場合、合衆国は国外に自国製品を持ち出せなくなる。それに沿岸砲台や要塞があったところで射程も守れる範囲も、内戦で破壊された為その数も限られている。要塞や砲台陣地を避けられれば、敵はノーリスクで合衆国の富を収奪できるのだ。

 

 その為早急な海軍の再建が望まれたが、その前にグチャグチャになった南部の鉄道網や主要都市の復興が最優先の為、なかなか手を回せない状況だった。

 

 そこにコロンビアから日本の旧式戦艦売却の話が舞い込んできた。

 日本の戦艦群の旧式化(当社比)に伴い、全てを一新する為に本来なら全てスクラップにする予定だったが、パナマ運河によって発生する利権が莫大な反面、他の南米国家と比較しても国防戦力、特に海岸線の長さに反して海軍が貧弱だということを危惧したコロンビア政府は、日本への戦艦購入を打診した。

 

 ただ全ての戦艦を購入したところで全てを維持も管理も出来ない。なので最初期に建造された秋津洲型(敷島型)4隻と敷島型(コロッサス級)2隻、その他駆逐艇(C型駆逐艦)10隻とその他雑多な魚雷艇の20隻をコロンビアが。

 6隻の敷島型(コロッサス級)と20隻の駆逐艇(G級駆逐艦)、コロンビア同様魚雷艇20隻を合衆国が購入し、整備・維持・管理の為の技術指導や整備設備移転を進めていた。

 

 最初こそヨーロッパを刺激する関係から、穏便に済ませよう(日本人特有のなぁなぁ)としたが、そこそこな規模だった合衆国の海軍が内戦で消滅して再建の目処が立っていない事、コロンビアは元々地理的要因から陸軍偏重で海軍が貧弱な事、そこそこな海軍と海外派兵能力を持っているヒスパニアがキューバにテコ入れしている関係上、カリブ海での緊張が高まっている事などが起因し、話は速やかに進んでいた。

 

「しかし、いつまでも日本のお古というのは私としても考えものだ。特にヨーロッパの連中と渡り合うとなった際は、特にな」

 

「難しいですな。南部の連中が作っていた装甲艦の技術はありますが、それも購入する日本の駆逐艇以下の性能です。帆船しか持っていなかった我々(合衆国海軍)にとっては、どちらも破格の性能ですがね」

 

「その為に長官、君を呼んだんだよ。率直に言ってどうかね? 諸外国に追いつきそうかね? 内戦からまだ一年足らずだが、順調に復興は進んでいる。解放された奴隷の労働力と戦災地での公共事業で、景気も失業率も大分改善された。私としてもなんとか4年……いや、少なくとも再来年にはなんとか予算を捻出できる様努力はするが」

 

「これ以上の戦力低下が見込めないという点では、確かに将来は明るいですよ。予算が確保できれば、現状海軍大将、中将、少将がそれぞれ実費を出し合いチマチマと涙ぐましい努力を行いながら研究している分に突っ込んだり、閉鎖された工廠を堂々と再稼働できます。ただ本格的に再建させるとなると10年以上は必要かと」

 

「そんなにかね? やはりあのレベルとなると」

 

「まず造船所の新設と、鋼鉄を安定供給できる生産体制の構築、あと整備用の乾ドックの新設後は日本から購入した戦艦の解析ですかね。

 少なくとも技術解析については日本側が了承している為、むしろ協力してくれるかも知れませんよ?」

 

「成る程、なぜそう思う?」

 

「私が日本の海軍長官ならそうします。日本は既に南北太平洋とインド洋という広大なシーレーンを防衛するだけでも複数の海軍基地と膨大な艦隊を整備運用しています。

 ただし、それは主に西から艦隊が来る前提で運用されています」

 

「信頼されているというわけか、我々は」

 

「あるいは簡単に捻り潰せるから、単純に放置されてるだけかも知れませんよ?」

 

 事実、日本の海軍基地は主にスリランカ、スマトラ、マレー半島、カリマンタン、パプア、オーストラリア、台湾、日本本土と何重も張られた防衛線の様に整備されている。

 艦隊もそれぞれ敵艦隊が西から来た際の航路が前提で配置されており、そこに新設された航空隊も加わるとなると、突破できる国家(史実米帝を除く)はあまりないだろう。

 

 今だけかも知れないが、確かに合衆国方面。東太平洋を意識した防衛はあまり想定されていない。

 まぁその代わり年がら年中巨大な魚雷(533ミリ魚雷)を複数搭載した哨戒機(爆撃機)が太平洋上を飛行してるけど。

 

 相手にされていない可能性はあるが、それならコロンビア同様戦艦の技術移転なんてすることは無いだろう。仮想敵をわざわざ自分で強化する国なんてないしね(史実アメリカを見つつ)

 少なくとも、アジア情勢に疎い大統領でも日本がヨーロッパからの圧力は減らしたいという意図がある事は分かってきている。

 

「まぁ、少なくとも双方デメリットは無いということか……」

 

「パエリア野郎がきな臭い今、我々としてもなりふり構ってられませんからね。海軍としては今後は強力な戦艦の運用と開発ノウハウを取得でき、いずれは自力建造出来ますからね。魚雷艇のエンジンや駆逐艇の艦砲の技術で野戦砲や陸上エンジンの開発が行えそうですし、陸軍にとっても悪い話ではなかったと言ってましたよ」

 

 現在進行形で歴史上の存在になってしまった海軍と違い、多少マシな陸軍だが、陸軍も陸軍で苦境に立たされていた。

 拡大しすぎたせいで戦後縮小されたが、その際に大量の人員と予算を削減され、今では警察力の行き渡らない地域での治安活動や戦災地や人里離れた場所に道を通す等の公共・復興行事にこき使われている。

 

 南軍の脅威は無くなったが、オレゴン・カントリーとコロンビア地区等の国境摩擦や紛争以来、連邦化したカナダとその背後にあるエディンバラとは長年睨み合いが続いている。

 西部一帯を守護する西部軍管区や、南北戦争の経験から首都圏を守護する為に新設されたワシントン軍管区は縮小こそされなかったものの、逆に言えば増強もされない為装備格差を考慮しても少々不安を覚えていた。

 

 そこにヒスパニアの圧力ときた場合、本格的にフロリダ半島やメキシコ湾が安全地帯ではなくなる為、早急な改革を求めていた。

 そこに舞い込んで来たのが日本からの戦闘艦の供与だった。陸軍に対して直接の恩恵は今の所ないが、海軍から艦砲や発動機といった技術を受け取れた場合、野戦砲や日本が使うトラックといった鉄道に依存しない新しい陸軍展開能力を確保でき、道さえあれば補給も行える魅力的なものだ。

 海軍同様、各将軍が実費で予算不足に喘ぎながら兵器開発をしている現状、少しでも希望があるならと陸軍が反対する事はなかった。

 

「しかし、なぜ彼らは我々に肩入れしてくれるのでしょうか」

 

「それは私にも分からんな。だが少なくとも、彼らが南部の綿花を買ってくれているお陰で消費先には困らない。お陰で南部にメスを入れやすいし、奴隷から労働者になった黒人にも賃金を払い易くなっているお陰で今の所暴動も起きない。輸入品には高い関税をかけてるお陰で、我が国の市場と産業は守られている。

 少なくとも、我々が彼らの神経を逆撫でする様な事をしなければ、牙を剥く事はないだろう」

 

「そんなものですかね。外交っていうのは?」

 

「そうとも、裏があろうがなかろうが我が国が先へ進むことができるなら喜んで手を結ぶさ。

 というか、裏があったら既に莫大な利権を抱えたコロンビアを独立なんてさせないだろ?」

 

「……それもそうですね」

 

「まぁ外交は私か、補佐官の仕事だからな。君たちは国防に専念してくれたまえ。

 それはそうと、譲渡された戦艦がまともに動く様になるのにどれくらいかかりそうかね?」

 

「まぁ少なくとも1年未満?半年以上? ですかね」

 

「もっとハッキリしてくれないか?」

 

 内戦で荒廃したヴィンランド合衆国。

 かつての栄華は破壊されて燃え尽き、栄光も地に沈んだ。

 

 しかし彼らは開拓者。過酷な未開の地を身一つで開拓し、何度も原住民と衝突し、遂にはかつての大帝国から独立を勝ち取った誇り高い植民地人(反逆者達)の末裔である。

 外道上等、屈辱上等。自由と生存の為なら汚泥だって喜んで啜り(尚現状は甘い汁)、最後に勝てれば無問題。

 

 そんな彼らは今日も先祖から受け継いだ幼くも偉大な国家を運営していく。

 その過程でヨーロッパ大陸(特に北の島国)が地盤沈下で全部海底2万マイルくらいまで沈んで一生浮上しないでくんないかなぁと神に祈りながら、内心滅ぼしたい思いを押し殺してヨーロッパとの外交交渉に励むのであった。

 





ヴィンランド合衆国
北アメリカ大陸のほぼ全てを国土として領有する巨大国家
名前はヴァイキングが名付けたブドウの地から来ている。
独立時は東海岸の13州のみだったが、持ち前のフロンティア精神を発揮し西へ西へと開拓し、時には外交交渉で領土を増やしていった。
北にあるカナダ連邦は元より、南のメヒコ帝国とは存分に仲が悪い

内戦から立ち直りつつあるが、五体不満足者が両足切断者になっただけでまだまだ国内はボロボロ。でも最近西の大帝国が色々気に掛けたり面倒見てくれるお陰で大分国政は楽になっている。旧式(当社比)とは言え戦艦と駆逐艇を購入し大西洋の向こう側への脅威に対応する為にチマチマながら海軍や陸軍を整備している。
そんな中でちょっかいをかけようとしているヒスパニアへの感情は最悪の一言。
そこそこ仲が悪いメヒコ帝国への感情が「大人しく(衰退して)座ってろぉ!」なのに対してヒスパニアへの感情が「キッショ!2度と来るな!そして死ね(未来予知)」なので雲泥の差である。

ラグナイト以外の燃料資源に興味津々であり、西の大帝国の支援を受けてテキサスやカリフォルニアなど全土で資源開発に勤しんでいる。
とある大帝国の元権力者によれば「魔王を育ててる感覚ってこんな感じなんだな」との事。

なお、当然の様にエディンバラ連合王国とは仲が悪い。


合衆国
「欧州なんて知るか! 俺は自分の大陸に引き籠らせてもらうぞ!!
 あとエディカスはしね
 あほしね(直球)」

エディカス
「植民地人が何か言ってるけど訛りすぎて何言ってるか解んねぇなぁ?」(煽り全一)
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