ワイらがこの先生き残る為には   作:食べる辣油

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ある日の夜中

 

 

「成る程、古代ヴァルキュリア人ってのは本当に御伽話みたいな人種だったんだなぁ。それで、当時の生活とかはどうだったんだい? 何かこう、今と違う所とかあるのかい? こう……ジェネレーションギャップというか……」

 

「…………あまり、分からないな」

 

 

 日没から数時間。外が完全に暗闇に包まれる中、とある宿舎の個室に、大きくないメモ用紙にスラスラと文字を書き連ねていく男と、表情を変えず何を考えているか分からない、長い銀髪が特徴の女が居た。

 

 片や中立国家の観戦武官で、片や戦争当事国の軍人?であり、軍属という以外での2人に接点はない。そんな2人が出会ったのは数ヶ月前、ポーゼンで行われた一連の戦いが原因だった。

 

 ポーゼンの戦いで大損害を被った帝国軍は、攻勢は勿論ヴァルキュリアの投入も渋る様になる。ヴァルキュリアで戦線を突破した所で毒ガスを使われては後続を送り込めず、またヴァルキュリアへの毒ガスの影響が未知数な事、帝国軍が再編のために守勢に回った事でヴァルキュリアである彼女はあの戦い以降戦場には立っていない。

 

 塹壕戦が始まってからというもの戦線は全く動かず、お互い決め手のない膠着状態。ただしお互い陣地構築の妨害、ハラスメントの為に砲弾の応酬は絶えなかった。下手に散兵壕に籠っていると砲弾によって消滅する可能性がある事、必ず情報は持ち帰れとのお達し故に、観戦武官である彼も後方での勤務が続き暇を持て余していた。

 

 そんな時、両者はある日の深夜にバッタリ会う事になる。

 ヴァルキュリアの歴史や文化について知りたい、彼は出会い頭にそう言い放った。しかし、最初の頃の彼女はその話を突っぱねていた。

 しかしその程度で男は止まることはなく、次の日、また次の日と日々が過ぎていく中、一ヶ月か二ヶ月を過ぎた時、あまりのしつこさについに彼女が折れる形で今現在男は話を聞く様になった。

 

 彼女は自分が知りうる限りの知識で彼の質問に答えていた。戦場に出る事もなく、また何かをする訳でもなかった彼女は暇つぶし程度に付き合っていた。数週間の内で済むと思っていたが、気が付けばこのやり取りも数ヶ月目となる。

 彼女にとっては男の様な人間は珍しかった。ヴァルキュリアとしての暴力的であり神秘的な力に、一切興味を示していなかった。

 彼の関心は、彼女が生きた時代と目にしてきた歴史にのみ集中していた。気になる事は些細なことでも聞いてくるし、知りたい事に関してはとことん口が回る。

 

 時には彼女を無視して完全に自分の世界に入って終始無言になったり、メモを取りながら独り言が絶えない時間も多々あった。

 しかし、彼女にはそれがどうも面白く見えたらしい。彼女にとって彼はたまたま見つけた、害の無い不思議な珍獣の様な存在である。また彼が語る話の内容も、後方でただ日々が過ぎるのを見ているだけの彼女にとって、丁度良い暇つぶしになっていた。

 それ以降、このやり取りは今現在まで続いている。

 

 

「分からない、と言うのは?」

 

「私が生きた時代と比較はしづらい、と言うべきか。だが数百年前よりは随分進歩している」

 

「成る程。つまり古代の時点で現代と同等かそれ以上だったと……しかし、そうなるとヴァルキュリアと言うのは長寿なのかい?」

 

「そんな事はない、寿命も普通の人間と変わらない。病に罹り傷を負えば死ぬ事もあるし、天寿を全うすれば死ぬ」

 

「根本では人と同じなのか……しかし、そうなると君はどうやって過去の知識を知り得ているんだい?」

 

「私の場合、過去にも何度かこの世に呼び戻された事がある。ラグナイトから力を取り出し扱う咒術、その適性の高い者を依代とし、過去に存在したヴァルキュリア人の遺物を媒体として。そして、指輪の契約によって甦らせた者の行動を縛る事もできる」

 

「成る程、あぁ……ちょっとウチ(日本)だと倫理観とバッティングしそうかな……」

 

「本来、召喚の儀式自体死者を呼び戻す禁忌の術でもある。生前、私の記憶が正しければ数あるヴァルキュリアの英傑や賢者を、復活させると言う試みはあった。だが、お前が言った通り倫理的な問題から、研究自体放棄された筈だった」

 

「それを帝国が遺跡から発掘したと?」

 

「過程は判らない。だが、あの禁術は完全に放棄されず帝国へと継承された」

 

 

 コーヒーを一口飲み、彼女は話を続ける。

 

 

「私が死を克服したなどと言われているのも、それが原因だろう。だが、実際は途方もなく虚しいものだ」

 

「そうなのかい?」

 

「父も、母も、友人も、恩師も、叔母も、叔父も、皆遠い過去に過ぎていってしまった。なのに私は、老いることすら出来ず、この世に縛り付けられ、皆の下に行く事が出来ない」

 

 

 召喚されたヴァルキュリアは、基本歳を取らない。指輪の契約を結んだ当事者が死ぬか、彼女自身が戦いに敗れるか、契約の指輪が破壊されない限り、その姿を保ちながらこの世に存在し続ける。食事も睡眠も必要なく、敵意によって傷つけられない限りは傷を負う事もない。

 何故そんな事が可能なのかは彼女にも解らないが、要は意識のある腐らない死体と同じ部類。また契約上、自分の意思で死ぬことも出来ないのだ。

 

 自害せよランサーとかアウラ、自害しろとか言われれば話は別だが(小声)

 

 誰もが羨む不死、死を克服したと言われたヴァルキュリアの彼女にとって、死ねない事は一種の地獄でもあるらしい。

 

 

「他人より長く生きた所で、日々が苦痛なだけだ」

 

「おぉう、急に蓬莱人みたいな事を言うな」

 

「蓬莱人?」

 

「え? あぁ……まぁ、そうだね。ウチの国にある昔話みたいなもんだよ。蓬莱の薬を飲んで、不老不死になったって言う昔話……」

 

「……私と似ているのか?」

 

「……あ、えぇ……そうだな……いや、ちょっと違うかもしれない」

 

「どう言う事だ?」

 

「君は契約者が死んだり、契約に必要な指輪が破壊されたり、もしくは君自身が誰かに殺された時、そういった時に君は解放される、所謂死ねる可能性があるんだったね」

 

「……概ね、そうだ」

 

「蓬莱人に関しては死の概念がないんだ。人ではなくて魂みたいな一種の概念、そんな存在に近いかもしれない。生きてもいないし死んでもいないって書いてあるしね」

 

「……それで、その後はどうなるんだ? その蓬莱人と言うのは」

 

「憐れまれたり、畏怖されたり、崇拝されたり、存在そのものを気味悪がられたりしてたかな。それ以外の不死に関する物語も最後には似た様な結末になるし」

 

 

 どこか口を滑らせてしまったかの様な反応をしめした男だったが、幸い彼女がこの話の真相(原作)を知っている訳ではない。

 当然といえば当然で、別に嘘は言っていないし作り話でもない。本当に存在する情報を多少偏向して彼は伝えただけだ。

 

 しかし安心して欲しい、彼女はそんな事一切気にしてなどいなかった。むしろ男が多少脚色を加えた昔話(偽書)の内容に、少し意識を向けていた。

 不老不死を望みながらも、その後に何が待っているのか。形は違えど自身の心境と境遇に当てはまる様な言葉が存在する蓬莱人の昔話。

 

 彼女の興味は次第に大きくなっていく。

 

 

「……時間がかかってもいい。その本と資料を、私に見せてくれないか?」

 

「え?あぁ……まぁ、時間がかかるって事はないかな。ただあっち(日本)は良くてもこっち(帝国)の許可が下りるかどうか……」

 

「その時はブリュンヒルデの名を使えばいい。無理強いじゃなければ、大概通る筈だ」

 

「……大丈夫なのかい?」

 

「召喚に応じ、契約以上の働きはして来たつもりだ。多少の事は心配ない」

 

 

 現に十数世紀に渡って、その都度召喚に応じ馬車馬の様に働き続け、また召喚され働くと言う死んでも労働と言うルーティーンを、不本意ながら行って来た彼女の言葉は重かった。

 

 

「そうなると資料や本を読んで整理する時間も必要だろうし、暫く来るのは控えるよ」

 

「いや、その必要はない」

 

「どうして? 一応帝国語に翻訳されている物を持ってくるつもりだけど……」

 

「翻訳されていると、誤訳や誤植があるだろう? なら、正しい意味や表現を詳細に知っている人間は、私の周りにはお前しかいない」

 

「わ、分かったよ……ただ、こっちも日中は予定があるから、遅くなるのは勘弁してくれよ?」

 

 

 その後、彼は知っている限りの(即席ででっち上げた)話を彼女に話し始め、気が付けば質問と回答の立場が入れ替わり、本来の古代史を聞き出すどころか、逆に何も知らない(サブカルに疎い)彼女に蓬莱とそれに纏わる日本史や昔話を話す羽目になっていたと言う。

 

 その日以降、彼は夜更かし気味の偏頭痛になる事が増えたと言う。

 

 




とある観戦武官
欧州やアジアに限らず世界中の戦史、歴史を学びたいと防衛学校へ入学。大学と違い詳しく中身を調べられる防衛研究科で歴史や戦史を学び、将来は防衛研究所への所属を夢見ていた
が、大規模演習や陣地戦で士官としての才能を見出された結果。早々に防衛研究所からは引き離され、現場士官としてのスキルを徹底的に叩き込まれボロ雑巾の様に扱かれていた
そんな時に欧州で戦争が始まり、実戦での空気を感じたいと彼は進んで志願し帝国へと渡った。ただ実際は教練隊から逃げる為に志願した模様。知られたら殺されるね(確信)

また避難先でヴァルキュリアと言う生きる歴史書を見つけた結果、持病のせいで絡み続けた。その結果が彼女から話を聞き出すどころか、今では日本史とそれに纏わる昔話の講師として活躍している。残当

ちなみにある日の軽井沢では目撃情報があるとかないとか



ブリュンヒルデ
過去何回か帝国での召喚に応じて働き続ける真性の社畜。古代ヴァルキュリア人に分類され、人間国宝級の咒術士が100人いても敵わないとされている程強い。そりゃ近代軍隊相手にワンマンアーミーしますわな(納得)

とある歴史キチが絡み続けた結果、仏頂面である事は多いものの、時折表情を顔に出す様になった
今では歴史キチ(馬鹿)が教えた蓬莱人に関する資料に夢中であり、それに纏わる物語や創作物にも興味を持ち始めている
少し前までは話を聞く為に男の方から押しかける事が多かったが、最近は事あるごとに彼女の方から来る様呼びつけることの方が多くないって来ているとか





帝国
「クリスマスまでに終わはなかった……」

二重帝国&共和国
「あぁ^〜人命が溶ける音^〜!」(被害甚大)

協商
「クリスマスまでに決着つかなくて良かったぁ(建前)良くねぇよ(本音)」

プロイセン
「毒ガス強ぇ!! このまま逆らう奴らぶっ殺して帝国全土に毒ガスばら撒いて死滅させようぜ!!」

ヒスパニア
「ワァ…ァ……!!」(遠征軍としてなけなしの軍隊が徴発されて壊滅&追加徴兵と物資徴発)

日本
「もう(仲介した意味)ないじゃん……」



ステイツ
「大陸中央にも中継都市欲しいなぁ……」(シムシティ)

コロンビア
「観光地都市整備してアメリカから観光客呼んでドル箱にするのが、気持ちええんじゃ」(トロピコ)

アジア諸国
「今日もいい天気!」
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