ワイらがこの先生き残る為には   作:食べる辣油

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朝のナパームは格別って話

 

 

 揚陸艦の甲板上で無数に回るプロペラと、猛々しく鳴るエンジン音を背景に兵士達が持ち場へと駆けずり回っている。

 

 1929年7月17日、南大西洋に展開した連邦海軍は、再三の警告を無視したパラグアイ政府に対し、ブラジルとの協定とパラグアイ政府の国際法違法を理由に宣戦を布告、太平洋艦隊から引き抜いた機動艦隊によって大西洋側の南アメリカ大陸沿岸を封鎖、制海権を掌握していた。

 

 作戦は第二段階に移り、パラグアイ軍が占領しているパラナ、サンタカタリーナ州の強襲作戦の前哨として、空母艦載機による空爆の後、引き続き艦載機の掩護を受けながら航空連隊が突入するというものである。

 

「エンジンの調子は?!」

 

「クソ万全であります!サー!!」

 

 返答を確認した指揮官は腕時計を見やる。時計の針は午前5時を通過している。

 

「出撃の時間だ!!順次上がっていけぇい!!」

 

 中佐の階級章をつけた兵士がヘリに乗り込み、メガホンからラッパの音が鳴り響く。それを皮切りに揚陸艦や駆逐艦の艦上から多数の武装ヘリ、輸送ヘリが発艦し一路南アメリカ大陸へと飛行を開始する。

 

 70余機によるヘリコプターの大編隊は羽音を立てながら目的地であるブラジル沿岸を目指す。この大編隊は道中に妨害を受けるはずもなく、約1時間のフライトを終えパラグアイ軍の占領下であるパラナ州を眼前に捉える。

 

 軽快な機動力と汎用性から、主に密林や山岳に籠る山賊や海賊を相手にしてきた手前、人を撃つことに躊躇いはないが、組織的な軍隊が相手は初めて。そしてパラグアイ軍は欧州式の練兵に戦術と兵器を使っていると言う話に、部隊内では妙な緊張感が存在している。

 

「中佐ぁ!後続の機体が飛んできまぁす!!」

 

 ヘリ部隊に遅れて空母艦載機の編隊が轟音を上げながら飛んでいく、数分もすれば陸地から爆音と黒煙、爆炎が見え始め本格的な空襲が始まる。

 

 ありったけの爆弾とミサイルを落とした機体は、満足そうに洋上の母艦へと帰路についていく。

 

「岸までどれくらいだ!」

 

「凡そ20分!」

 

「よし、突入作戦開始だ! タンゴ1、2!音を徐々に上げていけ!!」

 

 合図を境に、複数機に取り付けられた違法改造拡声器から音楽が流れ始める。皆が彼の性格から騒がしくて厳つい音楽でも流れてくると考えていたが、拡声器からはバイオリンやコントラバスと言った、弦楽器の穏やかな曲調のものが流れてくる。

 

《中佐の選曲とは思えませんね!頭でも打ちましたか!》

 

「何分初めての実戦だ!リラックス出来るだろ?」

 

《眠気で照準が狂いそうであります!!》

 

「味方を撃たないならヨシッ!!」

 

《サー!》

 

《目標地点まで3分!》

 

 穏やかだった曲調も徐々にテンポを上げ、強弱のついたものになってくる。

 

 このタイミングで各々が自身の装備の最終チェックに入る。マグチェック、動作確認、機関砲の試射、全ての動作を終えると、爆炎と黒煙が立ち上る沿岸を見据える。

 

 広い砂浜には、街道を爆撃され散り散りになった敵兵や装甲車両が右往左往している。大音量で垂れ流している楽曲は、相手にも聞こえているのか空を見上げて、自分達が相対している敵を見る。が、統制は取れないせいか少数が小銃による散発的な対空射撃しか行ってこない、大半が逃げる様に彼方此方へと走り回っている。

 

 楽曲もいよいよ最高の場面といったところで、甲高くテンポも激しいものになってきている。

 

《撃ち返すくらいの気概はある様です!》

 

「倍返しにして差し上げろ!!」

 

 中佐の合図でロケットポッドから夥しい数のロケット弾が混乱した歩兵部隊に降り注ぎ、文字通り地面を耕していく。

 

それが終われば機銃掃射が始まり、装甲車と輸送車両は優先して潰されて、穴あきチーズにされて行く。

 

 それが過ぎれば今度は輸送ヘリから小銃や擲弾による空襲が始まり、右往左往するしかなくなっている地上の兵士達は、次々と地面に伏して行く。

 

《抵抗は微弱!》

 

「いいぞその調子だ!撃ちまくれ!!」

 

《別の車列が!艦載機の撃ち漏らしです!》

 

「よし!そのまま焼き払え!!」

 

 木陰に隠れて運良く生き残っていた車列に50口径の機銃掃射とロケットポッドの一斉射が加えられ、瞬く間に屑鉄の山と化す。辛くもこの掃射を生き延びても、小銃の撃ち下ろしが加えられ瞬く間に歩兵が刈り取られて行く。

 

 70余機のヘリ部隊は4機単位の小編隊に分散し、四方八方から侵入と離脱を繰り返し、その度に機銃小銃ロケットポッドを地上にありったけばら撒く。

 

 奇襲から数十分で敵部隊は壊滅的な打撃を受け続けているが、その中でも恐慌状態から立ち直る者もおり、その一部は本来対物用に導入されている機関砲で対空射撃を始める。

 

 元々が対魚雷艇用の物を流用しているだけに、威力と射程もあり攻撃ヘリは兎も角、輸送ヘリには十分脅威になり得る。

 照準も付けずにとにかく空にばら撒く射撃だが、それでもラッキーパンチで輸送ヘリの複数が被弾し始める。

 

《被弾、被弾!》

 

《バイザーの真横を掠めやがった!!》

 

《木陰にデカい機関砲を確認!》

 

「周辺をくまなく焼き払え!」

 

 怒号ののち、攻撃ヘリ編隊により街道一帯にナパーム弾の斉射が行われる。消火しにくいジェル状の可燃物質は、あらゆるものに付着し高温を伴いながら燃え続ける。

 

 果敢にも対空射撃を試みた銃座と、それ以外に空爆を免れていたトラックや馬車諸共、火炎に包まれていく。

 

 それだけに留まらず、他の機体から残ったロケット弾を叩き込まれ、最早銃座は原形をとどめないほどに周辺ごと破壊された。

 

「やったぜ!」

 

「良くやった!帰ったらビールを奢る!」

 

「一番高いので頼みます!!」

 

「だったらもっと狙うことだ!」

 

 空襲が始まってから数十分、微々たる抵抗だったものの最初の頃に比べ抵抗は皆無、頼みの綱だった機関砲も一部を除いて全て消失し、敵部隊は戦意を喪失していた。

 

 しかし投降した訳では無いため、容赦なく攻撃は続けられる。空爆も第二波が現れ、ロケットや爆弾をしこたま地上に垂れ流し、また母艦へと戻っていく。

 

「中佐、アレを!」

 

 部下が指差す先には、鉄パイプと布切れの即席の白旗を必死に振り続ける兵士が居た。

 よく見れば彼の周りには手を挙げた多数の兵士が群がっており、他の兵士も武器を捨て同じように無抵抗の合図を送っている。

 

「攻撃中止攻撃中止!敵は投降しているぞ!これ以上発砲した奴は国際法違反並びに連邦軍法違反だ‼︎

 

 ヴァイパー各機は引き続き上空で警戒、反撃されない限りは撃つなよ!」

 

 この機を逃さずヘリ部隊は広い浜辺に強行着陸、歩兵部隊を展開させ再び空中に退避していく。

 

 浜辺を完全に掌握した部隊は即席のヘリポートを設営し、フレアで各機の着陸、離陸誘導を行い始める。

 中佐が搭乗するヘリが浜辺に着陸した頃には、先鋒による戦後処理が行われていた。

 

 所有していた武器は一箇所にまとめられ、それ以外の携帯口糧や工兵用具に分別され積み上げられていた。

 

「ここに指揮官はいるか?」

 

「えぇ、あそこに!」

 

 兵士の一人が燃え盛るトラックを指差す。居るには居るが中身はこの世から旅立ってしまった後だった。

 

「火葬も済んだようだな」

 

「で、捕虜はどうしますか?」

 

「丁度いい、俺から話をしておく。それより周辺地域の掌握を急がせろ!」

 

「サー!!」

 

 数度の会話をした後、中佐は捕虜になり集められたパラグアイ人達の前に立つ。

 

 爆炎や硝煙に呑まれながらも生き残った彼らに無傷なものはほとんど居らず、大半が何かしらの負傷を負っていた。

 

 過剰なレベルで爆撃と銃撃を執拗に浴びせられ、殆どの兵士が極度に疲弊していた。

 

『諸君、先ずはお勤めご苦労! 我々は今から君達を預かることになった!あぁ〜心配するな!ブラジル軍より遥かにマシな待遇を約束しよう!』

 

 見知らぬアジア人に流暢なヒスパニア語で話され、捕虜達は困惑している。しかし困惑している程度が中佐にとっては有り難かった。無駄に頭が回るより終始状況を理解できていないほうが、御し易いと考えているからだ。

 

『重傷者には手当てを施そう、君達を収容する施設も立派な設備を保障しよう!食事も運動も、娯楽だって決められた労働さえすれば自由にしてもらって結構だ!!』

 

 捕虜達は耳を疑った。敗軍の兵卒に見合わない待遇だ。負傷兵は傷の大小に関わらず治療を受けることが出来るし、なんなら労働の対価まで保障している。

 

 まさに破格、侵略者であるパラグアイ兵にブラジル兵は容赦という言葉は存在しない。南米大陸ではナメられた奴から死んでいく、自然もナメたら殺される、気候と過酷なジャングル故にマッポーめいた倫理観が具わっているのだ。

 

 生き残れる可能性が浮かび上がり、捕虜達の気が緩んだ時中佐はドスの利いた声で「ただし!」と続ける。

 

『もし、少しでも我々に抵抗の意思を見せた場合ッ!!』

 

 中佐が合図した時、艦載機の編隊が一斉にヤシの林へナパーム弾を投下した。

 

 16機から投下されたナパームは今までの比にならないレベルの火炎と火柱を上げ、投下地点を一瞬で消し炭に変えた。

 

『命の保証はない、分かったか諸君?』

 

 …………

 

『返事ぃ!!』

 

 ハイッ‼︎

 

『宜しい! 手当が必要なものは報告し、その他の奴には休息を許可する!!』

 

 そう言い終え捕虜の前を後にする。彼が足早に次に向かった先は海岸に着陸した大型輸送ヘリから降りて来たとある人間の元だった。

 

「やぁ元帥閣下、遥々北方から御足労な事ですなぁ」

 

「やぁ中佐殿、さっきの捕虜への演説は聞かせてもらったよ」

 

「中々名演技だったでしょう?」

 

「あぁそうだね、しかし私の気分は最悪だよ」

 

「同情はしますよ」

 

「全く、極寒の地にほったらかしにしておいて、用が出来たら赤道付近の熱帯地域に行けとは、連邦軍はいつから派遣会社になったんだ?」

 

「それが軍人ですよ、所詮我々は公務員ですから」

 

「そうだったな。有給も碌に取らせないし補償も寄越さない素晴らしい職場だよ…………で? 今後の展開はどうするんだい?」

 

「それをこれから話し合うんでしょうに、一先ず仮設指揮所にいつものセット(紅茶とブランデー)が届いてるので、それでも飲んで落ち着いてください。その間に私は南国を満喫することにしますよ」

 

 中佐はそう言ってヘリにロケットポッドと一緒に括り付けていたサーフボードを持ち出し、そのまま部下と共に波へと一直線に向かっていく。

 

 もはや何も言うまい、そう思いつつ元帥と呼ばれた彼は指揮所へと足を進めることにした。

 

 

 





 幕僚1
「そういやこの規模の軍隊指揮する人間決めてなかったなぁ……せや!帝国に派遣してた中佐呼び戻すべ!!」

 統帥本部
「そう言や陸さんの将校帝国にほったらかしだけど良いの?何も言われてないからかれこれ戦後4、5年以上向こうに居るけど」

 幕僚2
「ファッ!?不味いですよ‼︎」(労基機構的な意味で)

 幕僚3
「ヤベェよヤベェよ……どうすんだよこれ?」(自業自得)

 幕僚4
「有休使えっつったって流石にウチでも1000日以上の有休なんて例がないし出すわけにもいかんし……」

 幕僚5
「せや!戦中戦後も割とやる事やって情報垂れ流してくれてたし、長期に敵陣で諜報活動をしていたって事で、これまでの功績()を讃えて元帥号でも送ればチャラや!」

 幕僚1.2.3.4
「それや!!」(屑)


 元帥(元中佐)
「(憤怒の炎で)狂いそう……!」


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