遊戯王 ビルドモンスターズ   作:最近の虫野郎

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アーゼウスがガンダムガンダム呼ばれてたからつい。


1ターン目 「遊戯王バカのヒラメキ」

「――っし!!! ラー通った! ラー通った!! ライフポイントフルで捧げて……当然最大出力に決まってるだろう!?」

「ちょっ、やめっ、やめろォっ!? 攻撃力……1万6900!? バカなんか!? なんや!? ライフ二回分吹っ飛ぶやないか!!」

「態々重量クラスのモンスター三体捧げたんだぞ俺はお前を消し炭にするぞォオお前ェ!」

 

 あぁ。なんと美しい事か。机の上に堂々と君臨(モンスターゾーンに召喚)する黄金の神……ラーの翼神竜! 相手の攻撃力2400を誇る大型モンスター、真紅眼の黒竜が、ただの雑魚に見える程の、圧倒的なステータス差!!

 相手のライフが8000満杯だろうが一発で消し飛ばす……! コレが、コレがラーの翼神竜の圧倒的な性能……!

 

「ふふ、レッドアイズデッキは攻撃反応型の罠とかそんな何枚も詰む余裕なんざねぇよなぁ!? このラーの前で攻撃表示でレッドアイズを立たせた時点で、お前の敗北は決まってたんだよォ!? 焼き尽くせェ! ラーの翼神竜の攻撃! ゴッドブレイズキャノン!!!」

「クソガァアアアアアアっ」

 

 相手のライフを削り切って勝利! 後攻ワンターンキルゥ……! 机の上に突っ伏して砕け散る我がフレンドの頭の上、極上のオーバーキルに溺れながらのガッツポーズ、余りにも気持ちよすぎるぅ……エクスタシーに流されるまま、褐色の掌を、差し込む太陽の光を握り込む様に、強く握りしめた。

 コレだから――『遊戯王』はやめられねぇんだ!

 

「――うるさーい! マリク! リュウザキ! アンタら、また学校に関係ないカードゲーム持ち込んで!」

 

 ……まぁこの快楽は誰にも理解されるものではないんだが。金玉が縮み上がりそうな激怒ボイスの発生源、委員長は理解できない者のお一人。

 教室の後ろ側の扉を、バーンッ!と勢いよく開け放って、肩をいからせ、はしゃぎ過ぎた愚かな俺達を一睨み。心なしか、トレードマークのポニテも逆立っている様にすら見えるような……うん! 怖い!

 

「アカンっ!? 委員長や!?」

「クッソずらかるぞ! この魂のデッキ、没収されてたまるか!」

「こらっ、待ちなさーい!!」

 

 椅子を蹴とばすように立ち上がって、委員長とは真逆、教室の前の方の扉を目指して走り始める。マットは残念ながら諦めるしかあるまい……金のかかり方が違うのである。いや真面目な話。リュウザキは既にお気に入りのニット帽の中にデッキを隠しおおせている辺り、同じ気持ちだろう。

 ええいおのれ委員長。我が遊戯王の面白さが何故理解できないのか……『ガンプラ』に関してはアホ程寛容だっていうのに!

 

「娯楽差別だ! 訴えてやるぜェ!!」

 

 

 

 

 

 

 ……とはいえ、コレで一体何度目の追いかけっこなのかという話で。流石に何時までも委員長に捕まるようでは歴戦のデュエリストとはいえないだろう。

 見事我らデュエリストコンビは、聖鳳学園の弾圧の魔の手を逃れ、校舎周りのとある茂みの影に再集合せしめたのだ。ふはは、今の我らのスピードは、E・HEROの展開力に匹敵するのだ。妨害一つで止められるものではない!

 

「に、逃げ切ったぁ……」

「ったく、委員長めぇ。我ら遊戯王クラスタへの弾圧、コレで一体何度目やねんなホント……!?」

「仕方ねぇよリュウザキ。俺達の幼馴染様は、生粋の『ガンプラ』マニア。他の娯楽には厳しいんだ……」

 

 とはいえ、流石に泣きたくもなる。

 我々はただ、『遊戯王』を楽しみたいだけだというのに……あの委員長、我々を見つけるや否や目くじら立てて追いかけてくる。

 全ては……彼女が『ガンプラ』次元の住人であるが故なのである。

 

 ガンプラ。

 それ即ち、アニメ『機動戦士ガンダム』シリーズに登場するロボットを忠実に再現したプラスチックモデルの総称。

 1980年代に一大ブームメントを巻き起こした……らしいソレ等は今、もう一度大きな波を引きずり起こしている。言わば、『第二次ガンプラブーム』とでも呼ぶべき、大きな大きな、渦を。

 

 今や、小学生ですら……爪切りっぽいなんか、器具を片手に、プラスチックの板からパーツを取り出す時代なのだ。おお、なんという大ブーム。

 

「……でも実際、委員長ガチでガンプラに嵌ってるから、ミーハーとかも言えないんだよなぁ。それに学校に関係ないモノ持ち込んでるのは実際俺らだし」

「言うなや……委員長は、『ガンプラバトル』の活動の為に必要なモノをキッチリ管理出来てるしなんも言えへん。負け犬の遠吠えをするしかないんや」

「この前なんて、ガンプラバトルのちょっとした大会で優勝したんだって委員長……なんだろう惨めになって来る、マジで……」

「泣くんやないマリク、俺まで泣けてくるわ……」

 

 そして……『第二次ガンプラブーム』の人気を牽引しているのが、この時代の最先端の娯楽である『ガンプラバトル』の存在である。

 

 ガンプラバトル。

 CG? 3D? 否、違う。自分達で作ったガンプラそのものを操作して戦えるというちょっとダメでしょそんな夢みたいな事しちゃあなトンデモな娯楽である。

 それは文字通り……自分の理想のヒーローを、自分で動かせるのと同義だ。

 

 少年少女の心を鷲掴みにするのは余りにも容易い程に魅力に満ち溢れている、と門外漢の俺だって思う。だって、自分のフェイバリットカードで立体映像でデュエル出来るんでしょ? そりゃあ……うん。

 

「……『遊戯王』だって、楽しいんだけどなぁ」

 

 なんだか、寂しくなってきながら、手元にあるカードデッキを見つめる。俺のマイフェイバリットデッキ、『ラーの翼神竜デッキ』……スリーブからケースまで、かの幻神獣族一色に染めた拘りのデッキ。

 『遊戯王』というカードゲームで遊ぶための、必需品だ。

 

 ……ガンプラバトルはこの時代最先端の娯楽であることは間違いない。だが、それが娯楽の全てではないのは当たり前。俺たちが嵌っているのは、この『遊戯王』というカードゲームの方なのだ。

 

「はぁ、アニメみたいに、モンスターがガチで『召喚』できるようにならねぇかな」

「そないな事出来てたら、遊戯王の人気はもっとうなぎ上りだったやろなぁ」

 

 ……アニメだって作られた程には、メジャーなのだ。

 ルールだって実際複雑だけど、ちゃんと理解出来れば、自分の好きなテーマを選んで、モンスターを展開して……それこそ、ビビるくらいの頭脳戦とか、反対に、笑えるくらいの脳筋な殴り合いとかも出来る。自由度の高い、楽しいカードゲームなんだ。

 

 ガンプラバトルが、ちょっと大人気過ぎるだけで……マジで。

 

「あぁ、こんな隅でクダまいてるだけとは情けない……」

「ホントだよ。ラーの翼神竜が、泣いてるぜ……」

 

 俺の大好きなラーデッキ。

 アニメでは、『三幻神』と謡われた伝説の三枚のカードの内の一つ、『ラーの翼神竜』を中心としたデッキ。巧くハマれば、他の追随を許さない位の圧倒的な火力で相手のモンスターを消し炭にする快感を味わえる、最高のデッキだ。

 モンスターとは格の違う『神』のカッコよさは、きっと誰だって好きになる魅力に満ちているのに……

 

「……もっとみんなが遊戯王やってくれれば、俺達もマイノリティとして迫害されなくて済むのかな」

「いや委員長が俺らを追っかけてるのは迫害とちゃうやろ」

「まぁそうだけど」

「でも確かに……なんつーか。もうちょっと、俺らの居場所も、欲しいよなぁ」

 

 俺達だって、好きで学校でやっている訳じゃない。しかしながら……遊戯王を手軽にやれる場所というのは、そんなにないのだ。カードショップにも、プレイスペースがあるところはそんなにない。大手を振っているのは、やはりガンプラの方だ。

 では家でやればいいじゃないか、と言われても、やはり何時だって何方かの家が空いているという訳ではない。俺もリュウザキも、互いに家庭の都合があるのである。うん。

 

「……もっと、遊戯王がメジャーになればなぁ」

 

 リュウザキが、ニット帽を片手で押さえながら、天を見上げて言う。

 そうすれば、もっとプレイスペースも増えて、俺達もそっちで遊べるし、委員長を怒らせることも無い。そしたら、昔みたく仲良くやれたり……

 

「広告とか、高校生で打てるかなぁ」

「無理やろ流石に」

「だよなぁ……タダで広告とか、出来ねぇかなぁ」

 

 ただで広告なんて。無理だと思う。

 それこそ、誰でも注目して、俺達でも出れて、そして上手い事、広告塔的なモノが準備できる……そうだなぁ、それこそなんかの大会とかが良いんじゃないか。

 俺達でも手を出せる位には敷居が低けりゃあ、もうそれこそ大歓迎だ。

 

「……あぁ、広告打ってあるわ」

「何処に」

「ほれ、目の前。ガンプラの大会」

「あー……世界大会の奴なー。ったく、ユウキ先輩が出るからって、頑張っちゃってまぁ」

 

 そうそう。あんな感じに、派手に広告が撃てれば最高だなぁ、と思う。学校の有志が集まって作ったポスター。出場確実、ユウキ先輩を応援しに行こうってな。

 しかし、それだけじゃなくて他の奴もガンプラに誘う文句なのが強かっていうか。ガンプラは自由、キミの想像力を爆発させよう、ねぇ。

 

 全国に俺らの想像力を見せつけてやろうってか。まぁ、ガンプラって意外にそこまでは金掛かんないらしいし、敷居も低いらしい……し?

 

「……待て」

「ん? どしたマリク」

「これだよ、コレだ!! タダで打てる広告!!」

「……はぁ?」

 

 思わず立ち上がって、詰め寄る様にポスターに近寄って……一本一本、丁寧に画びょうを抜いてから、手に持って掲げた。

 

「ガンプラバトルだよ!!」

「は、はぁっ!?」

「ガンプラバトルの世界大会に出場して、『俺達』が広告塔になるんだ! 遊戯王を俺たちの手で、宣伝すんだよ!!」

 

 リュウザキがこっちを見上げてぱちぱちと目をしばたたかせている。完全に『えっ、正気』っていう感じで目が点になって、口もぽかんと開いているが、残念ながら、俺はいたって正気なのである。

 

「考えても見ろ、世界のガンプラ様だぞ! テレビ中継位される!」

「ま、まぁそりゃあ確かに」

「その大会に――『遊戯王のモンスターたちを模したガンプラ』で出場すれば、それだけで広告になるかもしれないだろ!?」

「――っ!!」

 

 リュウザキは、雷にでも打たれたかのように目を見開いて仰け反った。勢いでニット帽が吹っ飛んだ。

 

 ガンプラは自由なのだ。だったら遊戯王を模したガンプラの一つくらい、自由の中に許容してくれるだろう。そうして想像力をフルに発揮した、俺たちの遊戯王ガンプラが、お茶の間のテレビで注目されれば、一体どうなると思う?

 

「ガンプラが注目される→ガンプラの元ネタが調べられる→遊戯王に子供達が辿り着く→E・HEROやティアラメンツ、レッドデーモンなどのデッキに子供達の脳が焼かれる→こぞって遊戯王カードが売れる→遊戯王の展開力は宇宙になる→遊戯王の新規アニメの制作が決定する……!!」

「ザッツライト!!」

 

 流石は我が友、リュウザキ。ツーカーの以心伝心。

 

「おいなんちゅう天啓、正に毒を以て毒を制すって奴か……!」

「左様だ。ガンプラ一強の娯楽独裁時代を、ガンプラによって終わらせる」

 

 ふ、我々も敵をよく知る時が来たのだ。遊戯王という勢力を拡大する為に、必要なのは新たな武器。昔の人も、敵の武器を調べ、模倣し、そして敵に対抗したというし。コレは王道の作戦なのである。

 

 即ち。我ら遊戯王勢力が、ガンプラという新たなる武器を手に入れ、いざや反撃の狼煙を上げるのである!

 

「そうと決まれば、おいリュウザキ!」

「よし来たマリク! 早速調べようやないか!」

 

「「ガンプラバトル!!」」

 

 

 

 

 

 

 こうして、俺ら二人の『遊戯王復権大作戦』が開始したのだが。

 俺たちはまだ知らない……この作戦が、全盛期ドライトロンの完全制圧盤面に対し、一滴も夢幻泡影も壊獣もライトニングストームも無しに立ち向かうが如き、余りにも無謀な試みであることを。

 

 ガンプラバトルという、遊戯王以上の深淵を誇る場所に、我々は足を踏み入れようとしている事を……!

 




二人は小さい頃に遊戯王のアニメを見ながら、『僕と同じ名前のキャラがすごい活躍してた!!』って目をキラキラさせてたタイプの子供です。
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