遊戯王 ビルドモンスターズ   作:最近の虫野郎

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10ターン目 「ターンエンド」

 遊戯王のカードには、それぞれ様々な効果がある。

 有名なモノでは、他のカードを手札に持ってくる『サーチ効果』、相手のカードの能力を無効化する効果、変わったものでは、モンスターの種族を変更する効果、なんて言うのもある。正しく、千差万別な物ばかり。

 

 その中でも……実に分かりやすい効果が、破壊効果。相手のカードを破壊するだけの、実にシンプルで、強力な効果だ。時代によって評価は変わるかもしれないが……遊戯王の様々な時代を通してずっと強い効果だと、俺は思っている。

 その中でも、俺が一番最初に覚えた破壊効果は……確率と引き換えに、モンスターを毎ターン除去できるという、初期の遊戯王に置いてはかなり強力な効果だった。

 

『コイントスを三回行い、表が二回出たら相手モンスターを破壊する』

 

 本当に、分かりやすい効果だ。

 その効果を、どうやって、ウォドム・リボルヴに組み込もうかと考えた。両腕、頭を回転式弾倉拳銃、リボルバー型に改造し、デザインを似せただけで、本当にリボルバー・ドラゴンを再現しうるだろうか?

 

 ――俺は、NOだと思ったのだ。

 

 

 

 

 

 

 委員長は、自分の得意な距離、即ちは懐に迂闊に飛び込めば、短射程とはいえまぎれもないビーム砲が襲い掛かるというリスクを背負っている。

 

 だがしかし、リスクがあるのは俺も同じ。如何に正面を固めていても、背後や側面はまぁガラ空きだ。委員長のドラゴンガンダムの機動力があれば、容易く背後を取る事も可能だし更に言えば――通常のドラゴンガンダムよりも長い、第三の刃が俺にとっては致命的。

 取り回しも良く、一瞬で相手の急所を貫けるあの刃は、とても小回りが利くとは言えないこのウォドム・リボルヴにとっては文字通りの天敵だ。

 

「――ハッ」

 

 総合的に見て、俺が『圧倒的に』不利って所か。

 笑ってしまう。自分なりに創意工夫を凝らしたガンプラを作り。必死こいてファイターとしての実力も付けた、と思っている。ここ暫くで、かなり成長した、と思っていたというのに……そんな僅かな成長なんざ所詮は付け焼刃だって事を思い知らされてしまう。

 

 積み上げてきたものが違う。そもそも俺はアイツのガンプラを知っていて、アイツは俺のガンプラを知らない。此方の一方的な初見殺しと、同じく一方的にガンプラのギミックを知られているアドバンテージ……それで、漸く『互角』である。

 機体を何とか想像通りに動かせる俺と、手足のように操れる委員長とでは、格が違い過ぎる。同条件だったら間違いなく、瞬殺されていただろう。

 

 ガンプラの完成度が違う。俺のウォドム・リボルヴも遊戯王のモンスターの再現という点ではそれなりだと思う……だがしかし。委員長のガンプラは、戦って、相手を倒すまでのビジョンまでが確りと構築されている。

 

「……あぁ、畜生……!」

 

 ガンプラを知ったからこそ、初めて理解できる――委員長の凄さと言うモノを。

イオリ先生の事はビルダーとして、同士として、純粋に尊敬しているが……委員長は、文字通り格が違う。ここまでビルダーの腕とファイターの腕を、高次元で両立できるもんなのか、と。

 

 そして……だからこそ。

 

「全部をぶつけねぇと失礼だろうが……!」

 

 ――遊戯王に置いて。

 圧倒的に強い相手、凶悪なデッキ、そういったモノに勝った時の、あの快感。持っていないファンデッキで、持っているモノ共を打ち崩した、エクスタシーは、余りにも大きい。

 それは、どんな強大な相手でも、真剣に戦って、全てを賭けて戦うからこそだ。負けると分かった試合でも、『何もせず』に即サレンダーなんざ、興醒めも良い所だろうと思う。

 

 デュエリストとして。

 どれだけ不利でも、足掻くのだ。手札にサンダーボルトが来ることを祈って。

 

「――なぁ、オイ!!」

 

 頭の砲塔をで――狙う。目標はたった一人、ドラゴンガンダム影鬼。

 だが、その僅かな動きにも、俊敏に彼女は反応する。既に一歩踏み出している。いいや構うな、シリンダーを回す。砲撃準備に入ったとみて――影鬼が、足元を砕く勢いで、踏み込もうと――

 

「――ここだっ!!」

 

 そこで、武装を切り替え。信管を起動。複数の発射音と共に、脚部に残ったミサイルが、一斉に解き放たれる! 砲塔での狙う動きは、フェイント。ぶっつけ本番だったが上手く行った――相手の動き出しに、このミサイルを合わせられた。

 残る弾丸は七発。それなりの威力、追尾性を持つ優秀なミサイルだ。しかし、相手に当たるかどうかは微妙に分からないタイミングでのブッパ。

 

「勝負を焦ったわね!」

 

 やっぱり、委員長の反応は機敏だった。一歩の踏み込みから動き出そうとした、その姿勢から――背後へ跳ぶステップへと瞬時に転じて一発目を回避。そして。

 

 ――しゅぱん

 

 遅れてやって来る二発目が、鞭のようにしなる髪刃で切り裂かれた音が聞こえる。続いて聞こえる二つの爆音、切り裂かれた後、再び左右で爆ぜたのだろう。なんと的確な対処だろうか、委員長相手では、残りのミサイルもあっさり無効化されてお終いだろう。

 

「このミサイルの無駄撃ちは、明確な失策よ!」

「そうでもねぇさ!!」

 

 確かに、俺みたいな初心者に、狙いを付けなくてもいいミサイルは重要だとは思う。大事にするべきかもしれない……だが、そんな大切な武器の、残弾全部使いきってでも――俺はこの、僅かな時間を買いたかった。

 

 この――距離を取るのに必要な、僅かな隙を。

 敵に背を向ける、情けない、必死の遁走だが、例え得意な距離まで逃げ切れなくても、ほんの僅かでも、距離を稼ぎたかった。一瞬で詰められない程度の距離さえあれば。

 

コイツの、大技が使える。

 

「――うぉぉおおおおおっ!!」

 

 七発目の破裂音。どうなっているのかは確認しない。そのままドラゴンガンダムがいた所に向けて、地面を滑るように――ドリフトじみた動きで身体を反転させる。偶然だ、必死に走り過ぎたせいで、勢いを殺し切れないで……結果としてそう言う姿勢になった。

 

 視界に、まだ距離を詰められていないドラゴンガンダムが映る。流石にミサイル全部を撃ち落とした直後に行動は起こせないだろう――ここだ。

これが、最後の、逆転のチャンス……!

 

『食らえや必殺――』

 

 コマンド選択。実行。

 がこん、という――重なる三つの音。全てのリボルバーのシリンダーが、死刑執行の合図を奏でる。狙いは、特に付けない。強いて言うなら、若干軌道を下げる感じで……!

 

「フルバレット・ガン・ショット・ファイア!!」

 

 金属の咢が奏でる竜の咆哮と共に――三つの撃鉄が、振り下ろされて。

 両腕、頭、全てのリボルバーの銃口から、焔を纏った弾丸が吐き出される。

 

『――三つの巨大砲塔でのっ……!』

『一斉攻撃!!』

『ミヤノくんっ!!』

 

 若干、射線は下げ気味。地面に着弾させて――三つの弾丸の巻き起こす爆撃にアイツを巻き込む! 巨大爆発による広範囲のに渡る重波状攻撃、コレが、最後の反撃だ。コレでしくじったらもう、俺に『後はない』。

 

 当たってくれ、と祈る様に視線を向けて――その一瞬、俺は見た。

 

 クラウチングスタートのように、低く伏せる影鬼の姿。そして――その姿勢から伸ばされているのは、二対のドラゴンアーム。それが、ウォドムの目の前の地面辺りに、かみついたのが。

 

「――はぁああああぁぁっ!!!」

 

 ドラゴンアームが、縮む。同時に、地面を思い切り蹴とばして――

 

 飛んでくる弾丸よりも、更に速く、ドラゴンガンダム影鬼は飛翔した。

アームの引っ張る力と、跳躍の加速力、二重の推力をもってして、地面すれすれを、滑空するように――それこそ、それの弾丸の軌道を潜り抜ける程に、低く。

 

 ほんの僅かに――アンテナの先を掠める程に、紙一重の所を。委員長は、吐き出された三つの弾丸の間を交錯して、すり抜けていく。

 

 それを見て……レバーを握る手から、力が抜けていくのが分かる。

 

『負けかいな?』

「あぁ、完敗だ――」

 

 最早、こっちに『抵抗は出来ない』。無防備に、攻撃を受ける事しか出来ないだろう――そう考えている内に。

 

「――ハァッ!!」

 

 懐に潜り込んだドラゴンガンダム影鬼。立ち幅跳びの着地のように、両足を地面に付けての着地で、正しく、前傾姿勢になったウォドムを打ち抜ける絶好の位置を陣取って。しゃがんだ姿勢から、飛び上がるように繰り出されるアッパーカットが、ウォドム・リボルヴの胸部を打ち抜かんと――

 

「……っ……?」

 

 思わず、目を閉じて。

 だが……俺のウォドムが破壊される音は、何時まで経っても聞こえなかった。

 

 恐る恐る、目を開けて。画面を見つめる――影鬼の拳は、此方の胸の装甲を打ち抜く寸前で、ぴたりと止められていた。

 俺は、呆然とその様を見つめる事しか出来なくて……反応すら出来ないそんなザマを咎めるように、軽く、装甲の前で止められた手が、顎のあたりをコンコン、と叩いた。

 

「私の勝ち。文句ある?」

「……」

「初心者が頑張って作ったモノ、渾身の力で無残にぶち壊す程、無粋じゃないわよ」

 

 ……思わず、腰が抜けて、へたり込んでしまう。

 

「……その割には、最初は砲塔へし折りに来てましたよね」

「そりゃそうよ。本気で行かないのは失礼だし……最大の武器を潰した方がさっと終わるとは思ってたから。粉々にするのとは違うでしょ?」

「まぁ……そうだな、うん」

 

 こっちは、委員長の頑張って作ったガンプラ、粉砕するつもりで最後の大技を撃ったっていうのに……何ともまぁ、器の大きさってもんが、違い過ぎる。

 

「――ひとつ、聞かせなさい」

「ん?」

「最後、なんで動きを『完全に止めてた』の。胸部ビーム砲で、まだ抵抗は出来た筈よ」

「……あー、分かっちゃいますか、そこ」

 

 それに加えて……委員長様には、そこまで見破られている模様だった。よく見ていらっしゃる……こっちは最初から影鬼の性能を知っていても、最後の跳躍を予想すら出来なかったって言うのに。格の違いを見せつけられるのは、もう何度目か。

 

()()()()()()だけだ」

「出来なかった?」

「アレだけの威力の大砲、三つとも一斉にぶっ放すんだ、流石にウォドム君でも体に反動がくる……撃った後はほんのちょっと、完全に動けない空白の時間が出来ちまう。ま、リボルバー・ドラゴンの効果は『一ターンに一回』だけだからな……あぁ!」

 

 ……正直、コレが出来た時、若干嬉しかった。カードの効果、完全再現だ!とか思って。後から冷静に考えて完全に弱点だと悟って落ち込んだ。でも……これだからこそ、リボルバー・ドラゴンだと言えると思ったから、このままゴリ押した。

 まぁ、その弱点を突かれた結果、徹底的にガンプラバトルの先輩としての凄みを分からされてしまった訳だけど。

 

 相手のモンスターを除去してくれる拮抗勝負も生憎無く、手札のサーチ札も全部止められて……最後の抵抗のサンダーボルトも、無効化された。

 全ての抵抗が無意味に終わったなら。もう後は、気持ち良く。

 

「――降参だよ! 俺の負け!」

 

 サレンダーするしかないだろう。

 




ターン一制限ってガンプラバトルに置いては致命的過ぎるという風潮に今更気が付いた作者(震え声)
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