遊戯王 ビルドモンスターズ   作:最近の虫野郎

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13ターン目 「燃え尽きろ野試合」

「――貰ったぞ、ティターンズ!」

 

 その声に、咄嗟に背後に向けてカメラを回す。

 

 星の海から、此方に突進してくる機体が一機。

ちらりと見えた右手にはヒートホークが構えられている……のだが。緑色のヒートホークに見覚えはなく、そしてそれを構えている、酷く細い足から、特徴的な形の横縞が入っている様な構造の肩に至るまで、見覚えのないガンプラだ。

 のだが……

 

「ノリ的にジオン残党だろ! 文句なら過去の連邦に言えってんだァ!」

 

 抜き放ち様に、黄色に輝くビームサーベルを背後に向けて振り払う――確かな手応えと共に、バチバチと二人の間で弾ける火花。迎撃成功……反応があと一歩遅れていたら、ジムⅡの紅いボディに、致命的なダメージが入る所だった。

 

「ぐぅっ……最早ヅダはゴーストファイターではないというのに……っ!」

「ヅダっていうのかソイツ、良い奇天烈具合だ……!」

 

 ……速度重視の奇襲で完全に態勢が整っていない所に、カウンター気味にヒートホークとサーベルがかみ合って――有利なのは確実に此方だった。苦労する事も無く、そのままサーベルを押し込んでいって。

 

「嫌いじゃないぜ、そう言うデザイン!」

 

 一気に、振り抜いた。

 

 黒と青の胴体に刻まれる一文字の傷、それと共に、動きを止めるヅダ。バチバチと激しさを増していく火花。漏れ出す光と共に――

 

「――そうか。良い機体と、言ってくれるか。それならば、我がツィマッド魂も報われるというモノ……ありがとう、少年……」

 

 ……また一人、ガンプラおじさんのガンプラが、空に散った。

 

「……死んだわけじゃねぇだろうに迫真すぎんだろ。まぁ、ファンの鑑って奴か」

 

 ガンダムオタクにして、ガンプラオタク。筋金入りの変態共を相手にしていると、此方まで感化されていく気がする。Zガンダムに登場したティターンズ・エゥーゴの双方で使われた複雑な歴史を持つ、このジムⅡの歴史に思いを馳せそうになる位には。いやマジで、一番複雑な機体なんじゃないかなぁこいつ。

 

「――残念ながら、ティターンズでも連邦でもなく、デュエリストな訳だが……! サァて次は、何処からだ」

 

 しかし。腰にマウントしていたビームライフルを構え直しながら思う。なんというか、俺が熱意を込めて作り上げたウォドム・リボルヴは、かなり出来の良いガンプラだったんだなと。自画自賛的な思いを。

 このジムⅡは、一応ちゃんと組まれたガンプラだ。表面処理とかもされてはいるが……しかしながら、そう言った作り込みは最低限の域を出てはいない。

 

 イオリ先生の作ったガンプラは愚か、俺の部屋に飾られてるガザCにも若干及ばないレベルかもしれない……故に、動きがこう、若干鈍い。

 

「はっ、自分にハンデをかけて、それなりに強い奴と乱取りまがいのガンプラバトル。めっちゃ荒々しいけど、いい練習になる!」

 

 ――そんなガンプラを使っていると、自然とその機体のポテンシャルを出来るだけ引き出すように戦わないと、勝てない。

 故に、こうして何も考えず交戦しても、戦い方から操縦方法、細やかな立ち回りまで自然と体が覚えていく……スパルタもいい所だが、腕が上がっている実感がある。

 

「ド初心者が『カッコいいから』って言って宝玉獣握った結果、下手な経験者よりも遊戯王上手くなっちゃった事例もあるしなぁ……ホント、実地の経験は何よりも人を成長させるってもんだね」

 

 とはいえ、俺の愛しのモンスターガンプラ、ウォドム・リボルヴが恋しくなってくるのも事実で……まあいいや、今は置いておくと。問題は……レイジの方だろうか。

 

「さっき、アレだけのおっさん達相手に、バチバチに煽り決めてたからなぁ……流石にボール一機で多対一はムズイんじゃねぇのか?」

 

 ……この店に集っていた、ガンプラ趣味のおじさま達に『お前達じゃ相手にならない』とか、かなりの煽りかまして、んでもって俺と同じ……いや、俺以上のハンデを負ってそのおっさん達とやり合う事になっている、筈だ。この宙域内ステージの何処かで。

 

流石に、ちょっと大人げない感じになってしまっている。まぁレイジにも悪い部分はあるとはいえ、放っておくのもアレだし、加勢したい所ではあるんだが。

 

「――ん?」

 

 今、何かが爆発したような気が……ミサイル? いや……違う! 爆発したのは……!

 

「ボールの腕だ!!」

 

 焦げて僅かに残る、何を掴むのかってレベルの単純構造のボールのアーム。元は作業用の機械だったっけか……? いや今はそれはいいか。

兎も角、視線の先のボールは、かなりの数のガンプラに囲まれて、もう既に両腕が無い状態になっている。どうやら、危惧した通り、不利に不利が重なり、タコ殴りにされているようだった。

 

「ラルさんが無茶だって言ってたろうに……!」

 

 スラスターを吹かす。このビームライフルの性能じゃ当たらんだろうが、最速で近づきながら連射すれば威嚇くらいにはなるだろう。兎も角、レイジをタコ殴りにさえさせなけりゃあ……っ!?

 

 真横――発光――ビーム兵器――近くじゃない――遠距離から!?

 

「クソッたれがァ!?」

 

 急停止……じゃダメだ。レイジの所に行くのが間に合わなくなる。直線的なビーム兵器、真横からなら、バレルロールの螺旋の動きで、上下に機体を振ればなんとか――!

 

「っぉおおおっ!? あっぶねぇ!?」

 

 ……間一髪。ジムⅡのコックピット付近を掠めるように、ビームライフル――じゃないかなり太めの光条が抜けていった……か、かなりデカめにロールしておいて正解だったようだった、だが……っ!

 

「……くっそ、追いつかれたかい……!」

「向こうへの加勢はさせんぞ少年」

 

 その一瞬、バレルロールへの軌道変更により、僅かにタイムロスした俺の前に立ちはだかるは……紫と、紅い十字の頭の装飾が印象的な機体。

 

 コイツは分かる。リックドム……ではなく、その改良型のリックドム(ツヴァイ)、片手には――ヒートトマホーク。遠距離武装はマシンガンか。遠距離から撃ってきたやつとは別人だろう。

 二対一……明らかに連携の取れた動きに、思わず歯ぎしりしてしまう。

 

「……流石に、ボール相手に多対一は、大人げないんでは?」

「君の言わんとする事も分かるが、アレは彼の無謀な挑発の招いた結果だ。それがまかり通ってしまうとなると、この店のファイターたちの沽券に関わるというモノでね」

「若さゆえの失態ですよ、許してやってくれませんか……ってのは、無理か」

 

 とはいえ、コレで諦める程に薄情でもないし、いい機会だ。

 この二機、連携とかも見るとどうやら他とはレベルが違うらしい、彼らを即座に突破してレイジのボールが撃墜されるまでに間に合ったら……そりゃあ、一皮も二皮も向けるってもんだ、俺の腕も……!

 

 シールドを投げ捨て、ビームライフルを腰にマウントしなおして……抜き放ったビームサーベルを、両手で握って腰だめにゆっくりと構える。

それを見て――相手は、僅かに笑った。

 

「コイツを見て、尚サーベルを抜くかね……!」

「そう言う勝負がお望みなんでしょうに。受けて立つぜ、『古強者(ロートル)』!」

「くくくっ、気風のいい返事だ。気に入ったぞ『新鋭(ニュービー)』、楽しもうではないか!」

 

 ……懐に飛び込んで、一撃で切り捨てられるか。近距離はまだ安定しないが、それでも最速で抜けるならそれしかない――ん?

 

 再び、視界に写る閃光。しかし、あれはさっきのとは違う……桃色のビームの輝き。そして……そのビームの一撃が撃ち落としたのは……ボールに襲い掛かろうとしていた敵機。

 そちらにモニターを向ける。見えたのは――俺の見覚えのない、ガンプラだった。

 

「なんだ、あのモビルスーツ……碧の、片翼のガンダムだと?」

「まさか、アレは――あり得ん、何故奴がここに……!?」

 

 リックドムⅡのパイロットが、信じられない、と言った様子で呟いた。

 

「イタリアのガンダムファイトのチャンプ、リカルド・フェリーニ……!」

 

 ……思わず目を剥いてしまう程の、予想外の闖入者によって。

 

 戦場は、更に混沌を深めていく――!

 

 

 

 

 

 

「――すっげぇな、マジで。流石イタリアのチャンプ。というか、そんなチャンプについていくいい動きすんなやレイジ君……」

「はははっ。アレだけの彼は正に、天才といっていいだろうな」

「ったく、あんな奴と一緒に修行しなきゃならんと思うと……気が重い」

 

 という事で、ちょっと私怨渦巻く野試合も一区切りついて。

 挑発に乗って熱くなり過ぎたガンプラおじさん達に変わり、ただいまレイジが戦いを挑んでいるのは……浅黒い肌の、少しへらっとした雰囲気の伊達男。

 

 イタリアのチャンプ、と聞いていたのでラルさん位の年齢の、ゴットファーザーみたいなヤベェ奴かと思えば……結構若い。うなじ辺りで雑にカットされた黒髪の艶もギリギリのこっている、若者とおっさんの間くらいのナイスガイ。

 リカルド・フェリーニ。あの機体の名前は、ウィングガンダム・フェニーチェ。

 

「――勢いは良いが、後ろがお留守だ!」

「なっ――めんなぁ!!」

 

 ……ちょっと斜に構えたイタリアの伊達男、自由人の風来坊。

 

 そんな『最初』の印象は、レイジとのバトルを見ている内に綺麗に消し飛んだ。

 

「しかし、イタリアのチャンプの正体が……ただのガンプラバカとは。イオリ先生と同じで道は違えど、我らのご同輩か」

「ウィングガンダム・フェニーチェは、彼が少年の頃から修理と強化を繰り返して来た歴戦の相棒だ。ガンプラへの思いが人一倍なのも当然だろう」

 

 見てりゃあ分かる。あんなに楽しそうに、嬉しそうに、ガンプラを動かすなんざ……いやもうだって、相手のモンスター生贄にしてラーの翼神竜出した時の俺みたいにウキウキした顔してんもんなぁ。いや、あんな悪辣ではないか?

 

「……アレが世界のレベル、ですか」

「うむ。そして、君やミヤノくんが挑もうとしている領域でもある。どうだね、世界のレベルを見た率直な感想は」

「いやー……笑い声しか出て来ませんなぁ。初めてリンク召喚に触れた時の衝撃を思い出しますねぇ。マジで、『次元が違う』って感じ」

 

 そして、その嬉しそう、楽しそうのレベルの高い事。さっきのリックドムⅡの使い手がマジで弱そうに見えてくる。あの人が弱い訳では決してないのだが。

 マジで、上空を駆けるフェニーチェは、自由だ。まるで鳥の如く。重力の枷などない様にジャングルの木々の葉の上に、影を落としながら飛び回っている。

 

 勿論、ただ飛ばしているだけならああはならないだろう……レイジもつられてレベルが上がってるのか、ジャングルの木々を足場に、兎みたく跳躍して切りかかるとかいう離れ業を見せてくれてる。それさっきまで俺が使ってたジムⅡですよね? 動き全然違うんですけど。

 

「――ま、競り負けるつもりは無いですけどね。俺だって、まだまだ育ち盛りですから」

 

 とはいえ。そのレベルの実力が見れたって事で。参考にさせてもらうだけだが……軽く背筋を反らし、伸びをしてリラックス。実に呑気だと、自分ですら笑ってしまうような俺を見て、ラルさんも笑った。

 

「悲観しないのは良いことだ。それに、レイジ君だけでなく、君にも才能は十分にあると私は思う。世界大会出場、難行ではあるが、無謀ではない」

「えー? 俺より後に始めたレイジの方が強くなってるのにぃ?」

「才能がない始めたての初心者が、ミヤノくんとそれなりの勝負はしないだろうよ」

 

 ……そう言ってくれるラルさんの表情は優しい。

 照れくさくなって、軽く礼をしてから、目の前の戦闘に視線を戻す。大空を舞う騎士に挑んだ無謀な戦士が、叩き落とされるのが目に入った。

 

……ラルさんの言葉を信じるなら。あの二人のような奴がゴロゴロいる戦場に、殴り込みをかけるレベルまで行ける可能性は、ある。根拠があるかは分からないけど、なんだか少し安心した。

 

「だがしかし、君が向き合うべきは、そこだけではないよ、少年」

 

 ――そんな心の温もりに、一滴、切り裂くような水。

 

 ちらりと……今度は、自分からラルさんを見る

 厳しい顔をしている。真剣な眼をしている。リラックスしていた体を……思わず正した。

 

「……君がガンプラバトルに挑むのには、ガンプラバトルへの熱意以外にも……それを上回る、確かな理由があるね」

 

 ひゅっ、と息を呑む。

 ガンプラバトルへの熱意はある――その上で、それを上回る理由がある。

 

 それは単に、別に理由がある、と口にするよりも――確かに俺の内心を見透かした、鋭い一言だった。静かで、厳かな声には、確信の意があった。

 

 




イグルー出身の試作機のヅダがジムⅡに切りかかり、その次に統合整備計画出身のリックドムⅡの相手するとかいうジオン対元連邦二連戦という割とロマンマッチ。
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