遊戯王 ビルドモンスターズ 作:最近の虫野郎
隠していたつもりもない。とはいえ、ハッキリと言った事はない。
我ら二人、遊戯王の民として、ガンプラバトルに挑戦しにまいった……なんて事は。まぁあれだ。一応こっちの流儀に合わせて、ガンプラやガンダムについて学んでいるので、そこまでこうサツバツ! したつもりもないが。
兎も角。なんでかバレてた委員長を除き俺達はこの胸の内を明かした事はない。イオリ先生にすら、世界大会出場までは言ったけれども、事情があって出たい、としか言ってないので俺達の理由は知らないだろう。
「……分かるもんですか?」
「ガンプラを見れば分かる」
……まぁ、言葉には出しちゃいないが、ガンプラではこれでもかって程に表している訳なんだけれども。にしたって、見ればわかる、ですか。
「ガンダム、ガンプラへの誠意があり――そしてそれを上回る程の、強烈な個性がある。ガンダムとは別ベクトルから差し込まれたエッセンスが。しかもそれは……此方に向けて『見せつけられる』様に、あからさまだ」
「はっ……流石はガンプラの猛者。見ただけでお見通しとは」
ある意味誇らしかった。見ただけでそう言われるというのは、俺のウォドム・リボルヴが、確かに遊戯王モンスターとしての個性を強烈に組み込めている、という。俺のビルダーとしての腕を認めて貰えたような気がしたから。
ほんの少し。寂しそうに。ラルさんは少し視線を逸らして……唇を噛みしめてからもう一度、此方を見る。
「だが……そのエッセンスは、誰にでも歓迎されるモノではない」
「……でしょうね」
「どの業界にも、頭の固い保守派や、狂信的な原理主義者はいるものだ。そう言った者達の目には、君のガンプラは余りにも刺激的に映るだろう。それこそ……彼らの過剰な防衛本能を、叩き起こす程には」
……ガンダムと言うのは、息の長いコンテンツだ。
息の長いコンテンツには、いわゆる『古参』がいる。新人を優しく導いてくれる、目の前のラルさんのような人もいれば――新参勢を『勝手に』厳しく見定め、コンテンツから追放するような悪質な輩まで。
まぁ、俺みたいな奴のガンプラが、そいつらの目にどう映るかは……容易く想像もつくってものだ。
「そう言った彼らの瞳に、君達が確かに抱いている『ガンプラへの愛』が映るかは、保証はしかねる」
「……その人たちも、ガンダムを大切に思ってるだけですからねぇ。悪いとは言えませんし当然の事ではあると思いますよ」
それに。
ラルさんは気を遣ってそう言った困った人達の事しか言っていないが……そういう人達だけじゃないだろう。俺達のガンプラに眉を顰めるのは。
そもそもの話。ガンプラ、というのは、『機動戦士ガンダム』のプラモデルだ。その人気の基盤には機動戦士ガンダムへの熱い愛が確かに有る筈で。
目の前にで、リカルドとレイジの戦いにヤジを飛ばしている、気の良いおっちゃんたちも機動戦士ガンダム、と言う作品を愛している。そう言った人達にとって、俺達のガンプラはどう映るだろうか?
「ガンプラを楽しみ、そしてガンプラというコンテンツを通してガンダムを楽しむ。ガンプラの遊び方としては、ごく普通の事……そこから考えてみると、俺達は違いますからね」
「……うむ」
ガンプラへの愛はある。当然だ。触れるコンテンツを無感情に浪費しないのは最低限の礼儀だ。だけど……それを踏まえて尚、俺達が見せたいのは、ガンプラを通して見せたいのは違う……『遊戯王』だ。
本来、ガンダムを楽しみたい人達の目の前に突如として現れる異物。
ラルさんのように度量広く受け入れてくれる人も、いるだろうが……大抵の人は困惑するだろう。俺達の狙いは、困惑していたり、かっこいいと言ってくれた人が、遊戯王に少しでも触れてくれれば……と言う所なのだが。
『あんなのはガンプラじゃない』
そう思う人だっているだろう。ガンプラを愛しているからこそ、そこから大きく外れたモノを敢えて作り上げて殴り込みをかけた俺達の事を敵と……『侵略者』として認識しても決して不思議じゃない。
「……睨まれても上等じゃないですか」
……敢えて、その気遣いを踏みにじる様に。
強い言葉を吐いて。掌に拳を叩きつけたのは。
「こちとら、ただ馴れ合いに来た訳じゃない。ガンプラと言うコンテンツに、戦いを挑みに来たんですよ」
ラルさんがしてくれた、若者への気遣いにキチンと返す為だ。俺の……俺達の意志を。お礼と、感謝の意味を込めて、強く。
「ガンプラと言うモノに、俺達は挑戦する為にこうしてガンプラを学んでます。俺達が青春捧げた一つの文化を、盛り上げる為に……負けていない、魅力的だ、と証明する為に」
「マリク君……」
「イオリ先生の模型店に初めて入った時なんて、敵地に入るつもりで行く、とか変に息巻いてましたからね。ま、今は肩の力も抜けて、挑戦者として挑む決心もつきましたけど」
ガンプラの楽しさを知って。ガンプラバトルに触れて。熱中して……だからこそ、根っこの思いは変わらない。どうせやるなら真剣にやろうと思った。
ガンプラを否定するつもりは毛頭ない。でもガンプラを組む時は、ガンプラバトルをする時は。自分達の目標を敢えて思い起こし、侵略するつもりで本気でやる。
楽しい遊びだからこそ、それ位真剣に。そうじゃないと遊戯王の宣伝にもならんし。ガンプラバトルを本気で楽しんでいる人たちにも、失礼だと思う。
「それに……味方も、います。事情を知ってる人、事情を知らない人といますけどまぁ。孤独じゃないんで、存外と」
そうやって真剣にやったからこそ――俺達に協力してくれる人達も出来たというもの。
「イオリ君や、ミヤノくんだね?」
「そうっすねぇ。イオリ先生は俺達にガンプラを教えてくれた人ですから当然で……委員長は、もうほんと……」
『ああそうだ。遊戯王っての、後で私にも教えなさいね。アンタ達がやってたのを見た事もあるけど、複雑そうだから全部は分からなかったし』
『『えっ?』』
『なによ。何か変な事言った?』
『ああいや言ってないけど……なんだよ急に』
『アンタ達の目標を聞いて、んで一緒に頑張るって言ったのよ? アンタ達がそんなにも布教したいものを知らないままで一緒に頑張るなんて、片腹痛いじゃない』
『……委員長』
『好きになれるかどうかは、アンタ達次第だけどね?』
『へへっ……当然、俺らの遊戯王プレゼン力は天下一や! のうマリク!』
『うん。委員長が楽しめるように、俺達もちゃんと手を引くよ。任せてくれ』
『んで? 分かりやすくてあんまり複雑な動きしなくて覚えやすくてそこそこ強い……そう言うのある?』
『『いきなり無理難題押し付けて来たなぁオイ!?』』
……クソ真面目だと思う。そんなことしなくたって良いのに。俺達の目標の事を真剣に考えて、本気で協力してくれてる。本当に、俺は良い幼馴染で……友達を持った。久しぶりに委員長と遊べたのも……楽しかった。
今まで迷惑かけた事、今回の分の事も合わせての詫びは、コレが終わってから幾らでもしようと思った。
俺達の青春に、俺達の侵略に、俺達の挑戦に……一緒に付き合ってくれると言ってくれた事は、それ位に大きかった。
「そんな人達がいる。俺達の『遊戯王』愛は誰にも穢せない。なら……折れませんよ」
折れてたまるか。折れられるか。最早俺達の挑戦は、俺達だけのものじゃないんだからと牙を剝いて――敢えて、笑った。
「――そうか。実に強固な意志だ。
「まぁそうっすねぇ。社長の言葉をかり……る……なら……?」
……とんでもない台詞が聞こえた気がして、ラルさんの方を向き直る。
いたずらが成功したように笑って、一つ、茶目っ気たっぷりにラルさんがウィンクをしたのが見えた。
「……ラルさん、あの」
「好きな事をずっと続けるコツを知っているかね? 少年」
「あ、いえ……」
「適度に距離を取る事。狂信的にならない事。そう言った事を意識し、本気の趣味以外にも楽しめる遊びを持っておくのが、イイ大人の知恵だ。私の場合は……頭の体操にも丁度いいカードゲームなども、そう言ったものに含まれる」
そう言って、ラルさんは懐から――ブルーアイズのデッキケースを取り出して見せた。
「それ……!」
「ガンダムのカードゲームに触れた時に、一緒にね。ガンプラ程には熱中していないがね。それでも、青と言うのが気に入って、このデッキを使って時折楽しんでいるよ」
……要するに。
ガンプラを見て分かった、と言うよりは……元々、遊戯王を知っていたから、俺の思惑が何となく分かった、という事だろうか。
なんか、体から力が抜けて、危うく椅子からずり落ちそうになった。なんというズルだろうか。あんなプレッシャーかけられて、こちとらちょっとマジトーンだったというのに。
「……俺がガンプラ組んでた時からバレバレってことじゃないすかぁ……」
恥ずかしい。俺がいきがってガチになっているのを、この人は何も言わずに優しく見守ってくれていた事になる。ありがたい、ありがたいが……それとこれとは別だ。ちょっと今は床に両腕を叩きつけて叫びたい。
「ははは、いやすまない。君の本気度合いを確かめたくなってね。だが安心したよ。君もまた、いいビルダーにしてファイターになるだろう!」
「……度量の広いこって」
「ガンプラバトルの如く、ね」
ガハハと笑うラルさんにぐうの音も出ない。実際そうだし。
体勢を立て直し。せめて八つ当たり気味にジト目を向けようとして――ふと、此方に差し出されたブルーアイズのデッキが目に入る。
ケースから出されたそれは……グフの描かれたスリーブに入れられている。
それは、デュエリストならごく当たり前の『シャッフル』のお誘い。
そして――それをするって事は、だ。
「さぁて、折角デュエリストが二人そろっているのだ。やる事は一つではないかね、少年」
「――良いですよ。悪戯のお返しに、徹底的にやりましょうか!」
応えるように懐より取り出したるは。
マイフェイバリット、ラーの翼神竜デッキである。ケースから出したそれを、此方も交換するようにラルさんの目の前に差し出す。
互いのデッキを相手に預けてシャッフルする。公平に、且つ対等に……デュエル開始の合図だ。
さて……ガンプラバトルの腕はかなりのモノのようだが、此方は如何ほどか。
「「デュエル!!」」
「先行ドロー!」
「うむ……ところでマリク君。ミヤノくんから聞いたのだが……」
「なんです?」
「日本からの出場をしないつもり、というのは本当かね?」
「……まぁ、そうっすね。少しでも出場確立を上げたいなら、そうするしかないって言うのが委員長の見解らしいっす」
ラルさんみたいなカッコいいおじさまなら、色々多趣味かな、と……遊戯王が二十五周年で、ラルさんが30代、意外といい年齢で遊戯王が誕生しているので、やってても不思議じゃないかなぁ、と思ってこんなキャラ付けしました。
レジェンド級のキャラは幾ら属性を盛ってもいいとされているのは知っているな?